【インタビュー(前編)】マルシィ、1stアルバム『Memory』を引っ提げついにメジャーデビュー
Z世代女性リスナーが大注目の福岡発3人組ロックバンド、マルシィがついにメジャーデビューを発表した。1stアルバム『Memory』は、「絵空」「白雪」「プラネタリウム」など初期の代表曲から、最新ヒット「最低最悪」「未来図」まで、各種ストリーミングサービスで大ヒットを記録した楽曲に加えて、新曲を含む全11曲(ボーナストラック含む)を収録。マルシィというバンドの魅力を全方向から伝えるアルバムの全貌について、吉田右京(Vo&G)、shuji(G)、フジイタクミ(B)の3人にたっぷりと語ってもらおう。
■積み上げてきたものが一つの到着点を迎えられたかな
■アルバムが完成した時には達成感に近い感覚がありました
――3月27日の渋谷WWW Xでのワンマンライブで、メジャーデビューを発表しましたね。現場で見ていて、すごくエモーショナルなシーンだと思ったんですけど、あの日のライブはどうでした?
吉田右京(以下、右京):メジャーデビューを発表した瞬間がすごく記憶に残っています。あの時の歓声は忘れられないですね。僕たちを応援してくれているんだな、祝福してくれているんだなということが知れてうれしかったです。ただライブとしては、ワンマンはまだ2回目なので、改善点はけっこうたくさんありましたね。次のツアーが7月から始まるので、今それに向けてみんなで話し合っているところです。
shuji:間違いなく、今までやってきたライブの中で一番感動しました。本当に記憶に残るライブだったということと、メジャーデビューを発表した時に感極まってしまったので、一生忘れないなと思います。ライブの出来で言うと、僕も右京と同じでやっぱり反省点がいくつかあって、そういった意味でも忘れられない1日でしたね。ライブ経験があまりないので、これから経験を積んでいく上で、あの1日でいろいろ見つけられたなと思っています。
フジイタクミ(以下、タクミ):僕はライブ全編にわたって本当に楽しくて、楽しいホルモンがずっと出ていました(笑)。ベースを弾きながらお客さんのほうを見ると、本当にあたたかい目で見てくれていて、すごくいいお客さんたちだなと思いました。あとから映像を見直して、反省点はもちろんあるんですけど、今までのライブの中でも一番良かったんじゃないかなと思います。
――あの日、アルバムから一足先に新曲をやったでしょう。「牙」という曲を。あれは早くみんなに聴かせたかった、ということですか。
右京:そうですね。ただ、楽しみはあとに取っておきたい気持ちもあって、ほかにもやりたかったんですけど、1曲にしておいたほうがあとから楽しんでもらえるかなと思ったので、そうしました。「牙」はお客さんがノッて聴いてくれている感じがあったので、リリースが楽しみです。
――その、新曲も収録されたメジャーファーストアルバム『Memory』。とても良いアルバムだと思います。
右京:ありがとうございます。
――今までリリースしてきた曲も、アルバムの中でまた違った聴こえ方をするし、けっこうアッパーな曲も多いんだなとか、「未来図」みたいに新しいサウンドの曲もあるだなとか、いろんな発見がありましたね。メンバーそれぞれの、完成した手応えは?
右京:この間のライブでも言ったんですけど、一言で言うと「宝物」になったなと思います。よく作ってこれたなというか、途中までは1曲1曲作っていて、今回ようやくアルバムを出せるということで…まだ実感が湧いてはいないんですけど、ボーナストラックを入れると11曲を並べて聴いた時に、今まで積み上げてきたものが一つの到着点を迎えられたかなという思いがあって、完成した時には達成感に近い感覚がありました。
――途中までは1曲1曲作っていて、ある時期からアルバムを意識し始めた、ということですか。
右京:そうですね。(制作の)後半に行くにつれて、「今までこういう曲があるから次は違った曲を作ろう」とか、バンドとしてやっていないことをやっていきたい気持ちがあったんです。それを探して、見つけて、曲に落とし込むという、その作業が大変でした。
shuji:マスタリングが終わって、全部の曲を通して聴いた時に感じたのは、「やりきったな」という感じと、もう一つは「バランスが良いな」と感じました。たとえば1曲目は「ラブストーリー」というバラードから入って、「プラネタリウム」みたいにアップテンポの曲があって、「ピリオド」でまたバラードをはさんで、「未来図」のような今までとは違うサウンドがあって…というふうに、飽きずに聴ける内容だと思いますし、重厚感のあるサウンドも多いので、そういった意味でもバランスの良いアルバムになったなと思います。
――曲順はみんなで決めたもの?
shuji:はい。主に右京が中心になりながら、「この流れはどう?」とかみんなで提案しながら、決めて行きました。
――そこは3人とも、かなり一致した?
shuji:大まかには一緒でした。全部が一致したわけではないですけど、ある程度は似ていたような気がします。
右京:うん。
――1曲目をバラードの「ラブストーリー」で行こう、というのも?
右京:逆に、そこは違ったかもしれない(笑)。
shuji:確かに(笑)。俺は違うことを言った気がする。
タクミ:俺は「ラブストーリー」だった。
右京:それぞれ「自分だったらこの順番にする」というものを出して、理由を聴いて、最終的にこのアルバムの世界観として、僕の中に全体を通して伝えたいことがあったので。それを表現する上で、二人の意見も参考にしつつ、まとめたという感じです。
shuji:「牙」の位置(9曲目)は、すごく好きですね。終盤にこういうマイナー調の曲が入って、次の「白雪」でしっとり終わる感じが僕は好きです。マスタリングを終えて全部聴いたあと、感動しました。
タクミ:全曲が良い曲だと思っていますし、僕はマルシィの楽曲が本当に好きなので、「この曲、全部俺が弾いてるんだぜ」って言いたいです(笑)。人生初アルバムですし、本当にうれしいです。うれしさのカタマリです。アルバムが出来て本当に思ったのは、このバンドのメンバーで、この曲たちのもとでベースを弾けて本当に幸せだなということですね。マルシィの1stアルバムにふさわしい内容だなと思っています。
――曲を作っている右京くんが考えていた、アルバム全体のイメージ、コンセプト、ストーリーは?
右京:最終的には聴いてくれた人の自由であればいいと思っているんですけど、僕の中では一本の筋みたいなものがあって…たぶん6、7曲出来上がった段階で『Memory』というタイトルにすることを決めて、そこで「一つの恋」の始まりから終わりまでを一本のストーリーとして描きたくて。そうした時に、パーツ的に足りない部分があったので、それを補っていきました。
――それは曲調も、歌詞も含めて?
右京:曲調もそうですけど、主に世界観ですね。歌詞的な部分で。
――ここから、新曲4曲について掘りさげて行こうと思います。まずは1曲目「ラブストーリー」ですけど、これは一本のストーリーのテーマ曲ということですか。
右京:見方によって変わると思うんですけど、僕の中では主役の1曲で、『Memory』というアルバムの顔になる曲だなと思います。1曲目になっていますが、実は僕の描いたストーリーの中では最後になる曲なんですよ。終着点からアルバムを始めるという流れを作りたかったので、順番をこういうふうにしました。
――言われてみれば、確かに。「ラブストーリー」は、終わった恋を振り返る視点で描かれている。
右京:そうなんです。そのあとに、出会ったばかりの頃の「プラネタリム」から始まっていくという構成になっています。
――映画みたい。回想シーンから始まるみたいな。
右京:そんな感じです。
――そして「プラネタリム」「ワスレナグサ」を経て、新曲「君のこと」へ。このあたりは、幸せなシーンを描いた曲が続きますね。
右京:そうですね。「プラネタリム」も幸せを描いてはいるんですが、まだ付き合いたてで恋は盲目というか、一点しか見えなくなっている感じがあるんです。「君のこと」は少し時間が経って、お互いのことをちょっとわかりだしてきて、盲目な状態は変わらないんですけど、「プラネタリム」よりも具体的に映像が浮かぶような曲にしたいなと思って作っていきました。
――なるほど。…って、ずっと右京くんに聞いちゃいそうなので、話を戻して。二人にとって「ラブストーリー」はどんな曲ですか。前半はストリングスとピアノだけで、バンドは後半から入って来る、とてもドラマチックなアレンジになっていますが。
タクミ:マルシィは、わりとそういう曲が多いですよね。最初の方のしっとり聴かせたい部分は、あんまりガチャガチャせずに、ストリングスとピアノですごくいい雰囲気を作っていると思います。
shuji:僕のギターの存在する位置として、右京の歌に寄り添うというのが僕の中でのテーマになっているんですね。「ラブストーリー」はバンドサウンドが途中で入って来ることによって、右京のサビの歌がより“映える”構成が僕は好きですし、曲の頭から熱くなるような曲であればそういうサウンドを作ります。それを使い分けている感じが「ラブストーリー」にもあって、僕は好きですね。僕のギターは歌メロに寄り添うものが多くて、「プラネタリム」も、“♪プラネタリムの”という歌詞とメロディにユニゾンするようなギターを弾いているし。「ラブストーリー」だったら、サビのあとのグッとくるシーンで映えるようなギターを弾く、それが一番いいところなので。
――逆に「君のこと」みたいな、アッパーに駆け抜ける曲は、いきなりギターでガツン!と行っていますね。
shuji:そうですね。「君のこと」は、イントロからギター始まりなので、僕の弾いているフレーズが、物語の始まるきっかけの音を表現できたかなと思っています。
――そして7曲目に置かれた新曲の「未来図」。これは今までになかったサウンドですよね。バンドサウンドから離れて、すごく構築された音作りになっている。これはもともと、そういうアイディアがあった?
右京:そうです。マルシィは3人なので、ドラムがいない中で「新しいサウンド感を取り入れたいね」という話はずっとしていて、最終的にここに行きついたんですけど、正直、葛藤もちょっとありました。「未来図」は打ち込みのドラムが入っていて、ピアノの音も加工してエレクトロっぽい感じになってるんですけど、今までの曲ではそういうアレンジはしてこなかったので、これを聴いた時に拒絶されないかな? 変わったなと思われないかな?という懸念があったんですね。でもメンバーで話し合った時に、楽曲の世界観を一番大切にしたいということがあって、この楽曲にはこのアレンジが一番合っているということになりました。自分たちもどんどん新しい一面を見せていきたくて、変わっていきたいという欲求があるんです。「未来図」は、これから新しい自分たちのサウンド感を探していく上での、第一歩の楽曲になったかなと思います。
タクミ:今までのマルシィの楽曲とは違う感じで、このサウンド感で、また新しく聴いてくれるリスナー層が増えたらいいなと思っています。ただ、新しいサウンド感がありつつも、曲はザ・右京という感じだし、歌詞とメロディが素晴らしいので、うまくまとまったと思います。
shuji:「ドラムを打ち込みにするか? それとも生がいいか?」とか、会議室でみんなですごい悩んでいたのを思い出しますね(笑)。それでもやっぱり、タクミが言ったように、右京は右京なので。右京の声がしっかりと出せているので、そういった意味を含めても、後ろで鳴っているモダンな海外向けっぽいサウンドがあっても、しっかり合う楽曲になったので、最終的にはすごく良い楽曲になったと思います。
――ちなみに「未来図」というワードは、「プラネタリウム」にも出てくるので、どこか、繋がっている感じがしました。
右京:そうですね。「プラネタリウム」と「未来図」もそうですけど、ほかの曲も、リンクしている部分はけっこう散りばめてあるんですよ。
――それは歌詞の言葉として?
右京:言葉もそうですし、世界観的にも。それを言わないで、どれぐらい気づいてもらえるかな?みたいなこと、ちょっと楽しみにしています(笑)。
――じゃあ、あんまりネタバレしないでおこう(笑)。みんなの想像力を刺激するために。
右京:アルバムを通して一本のストーリーにはなっているんですけど、それプラス、対になっている曲もいくつかあったりして。それに気づいてもらえたらうれしいなと思っています。
取材・文:宮本英夫
※アルバムインタビューの後半は後日公開予定
リリース情報
2022.06.01(Wed) Release
CD:3,300円(税込) UMCK-1713
1. ラブストーリー
2. プラネタリウム
3. ワスレナグサ
4. 君のこと
5. ピリオド
6. 花びら
7. 未来図
8. 最低最悪
9. 牙
10. 白雪
11. 絵空(CD のみのボーナストラック)
ライブ・イベント情報
7/1(金)大阪 music club JANUS
7/10(日)愛知 名古屋クラブクアトロ
7/22(金)福岡 福岡DRUM LOGOS
7/28(木)東京 渋谷クラブクアトロ
【全公演】指定席 \3,500( 税込) / 当日券未定
※政府/ 自治体のガイドラインに基づき、各会場収容人数の定員で実施致します。
※チケットはお一人様2枚まで(複数公演申込み可)※全公演
※未就学児童は入場不可、小学生以上はチケットが必要となります。
※転売チケット入場不可
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