【インタビュー】ZAQ「人間ではない女の子たちが使命を帯びて戦っていくという物語にワクワクしました」
1月から9ヶ月連続リリースが決定しているZAQ。その第4弾となるのが、TVアニメ『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』のオープニングテーマ「ASEED」だ。4月20日にリリースされる22枚目のシングルについて、曲作りのこだわりなどをたっぷりと語ってもらった。
■「ASEED」はめちゃめちゃ気合が入って
■やりたいことを全部詰め込んでしまったんです
──『ブラック★ロックシューター』というタイトルを聞いたとき、どう思いましたか?
ZAQ:モンスタータイトルじゃないですか。私が、2012年にデビューしているんですけど、そのときにちょうど流行っていたと思うんです。
──最初のTVアニメが放送されたタイミングでもありましたからね。
ZAQ:イラストからボカロ曲(※supercellのryoがhuke氏のキャラクターイラストから着想を得て、初音ミクを用いて「ブラック★ロックシューター」を発表。大きな反響となった)ができて、そこから発展していったパターンの走りでもあると思いますし、タイトルを聞いたときは驚きました。だから、不安がめちゃめちゃでかかったですね。みんなの中のアンセムがあって、その上での新作アニメであり新曲ということだったので。
──今回の『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』は、まったく新しい物語になりますよね。どんな話なのか、というのは聞いていたんですよね?
ZAQ:最終稿ではなかったですけど台本は受け取っていて、プロットみたいなものも見ていましたし、キャラクターの相関図やイラストは見せていただきました。私、荒廃した世界とか廃墟とかが大好きで、その中で女の子たち……しかも人間ではない女の子たちが使命を帯びて戦っていくという物語だけでワクワクしました。そもそも絶望が始まっているというのが面白いですよね。終わった世界から始まるっていうところにすごく惹かれました。
──わりと大好物なところですよね。
ZAQ:(小声で)めっちゃ大好物です。世界一好きなゲームは『ニーア オートマタ』と言っているんですけど、それも終わった世界でアンドロイドが活躍する話だったので、私の性癖に刺さる感じだったんです。
──それなら不安も吹き飛びそうですね。
ZAQ:確かに今回は、プレッシャーに好きが勝ったかもしれない(笑)。この世界観だったら、歌詞は出てくるなって。
──歌詞は書きやすかったですか?
ZAQ:物語の軸がはっきりあって、主人公の使命もしっかりしていてブレなかったので、書きやすかったです。作品を読み込んで、伝えたいメッセージを書くということをこれまでもやってきたので、それは出せたと思います。でもそのくらい、メッセージを作品が伝えてくれたんですよね。
──楽曲でいうと、タイトルに“ロック”とあるだけに、方向性は決まっていたのかなと思うのですが。
ZAQ:ギターロック、バンドテイストというのがまずあって、私の曲でいえばこういう感じというリファレンスまでしていただいたので、すごく絵が浮かんだし、こういうものが求められているんだなと思えたんですよね。だから「ブラック★ロックシューター」という名曲に引っ張られることなくできました。この中で自由にお願いしますというくらいざっくりとした感じだったので、すごく作りやすかったです。
──クリエイターとしての自由度もあったんですね。
ZAQ:そうですね。でも、アニソンアニソンしない方向で行きたいとか、「ZAQさんはメロディアスな曲が多いですが、洋楽のような大きな譜割りの感じがあると嬉しいです」みたいなオーダーもあったので、サビの頭は突き抜けるけど、譜割りは大きく、みたいなことは意識しました。
──そのサビは、すごくカッコ良かったです。
ZAQ:この曲のサビは3段階あって、最初の8小節間はビートがハーフになって、そこで洋楽っぽさを出して、後半から倍の(BPMが)202になるんです。そのあとに日本人好みのクリシェのコード進行を使って一瞬泣かせるメロディを入れて、最後にロングトーンでバチッとカッコ良く締めるという展開を作ったんです。台本を見たときに、OPはバトルシーンが多くなると思ったので、曲の中でもメリハリが必要だなと思って、サビの中でも展開を付けたりしているんです。ただ、それでも最初は2段階で、3段階目の要素はなかったんですけど、シンプルすぎるというリテイクがあったので付け加えたところ、いい塩梅になりました。
──切なさが入ったという意味で良かったのかもしれない。でも、それ以外にも要素は盛りだくさんだった気もします。
ZAQ:「ASEED」を作っている時期の前年が2020年で、リリースがなくて自分の曲が作れない、出せないというストレスが大きかったんです。それで「ASEED」を作れることになって、しかもタイアップだから気合いがめちゃ入って、やりたいことを全部詰め込んでしまったんです(笑)。フルコーラスで聴くとよくわかると思うんですけど、1コーラスだけでも情報量は多いと思います。
──鬱憤が詰まっているんですね。
ZAQ:AメロやBメロもストレスが貯まるメロディラインというか、不気味な感じで進んでいってサビで大爆発するという。それはよくやる手法ではあるけど、今回はそれがより出ていたなと思います。
──でも、サビ前から“Wow Wow”というコーラスが聴こえてくるから、気持ちは高まりまくりでした。
ZAQ:ライブをやりたい!感がすごいですよね(笑)。めちゃめちゃライブで煽っているのが見える。
──フルだと、そこからさらにすごい展開が待っています。
ZAQ:1コーラス目は映像になることも考えて作るんですけど、2コーラス目からは、本当に1年間溜め込んだやりたいことを詰め込んでいて、2サビに行く前にブレイクを作らないで、そのまま四つ打ちに走るのもやりたかったですし、ベルカント唱法のようなコーラスが入ったあとにラップでカッコ良く落とすというもずっと頭の中で考えていたことなんです。それを曲にしているので、オタクだなぁと思いました(笑)。
──その要素を、破綻なく曲にできている凄さですよね。
ZAQ:いやいや。でも、これまでそういうことはたくさんやってきて、絵が浮かぶからやれたのかもしれないですね。最後のサビで転調するっていう、みんなが大好きなこともやっていますし(笑)。
──ちなみに、そのラップ部分もすごくクールで良かったです。
ZAQ:四つ打ちのキラキラ系、メジャーコードの明るい楽曲というのを作家として求められることが多くて、でもアーティスト・シンガーソングライターのZAQとしてはカッコをつけたいんですよ(笑)。ロックサウンドをやりたいし、私の声もそっち系だと思うんです。なので、いつか作りたいと思っていたレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのようなラウドな曲ということで、ラップを入れたりしました。
──ラップはカッコいい上に、作品の主人公のエンプレス[ブラックロックシューター]を表している歌詞が良かったんです。
ZAQ:歌詞自体、『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』以外だと当てはまらないくらい寄り添っているんですよね。ラップ部分もめちゃめちゃ気に入っていて、韻を踏んでいるとかではなく、とにかくエモーショナルで勝負をしようと思いました。英語のところはまさにエンプレスですし、そのあとの〈英雄か剥奪者かわからない〉というのも、戦いってそういうものじゃないですか。立場によって歴史も変わっていくのが戦いだし、このアニメのテーマもそういうところなんじゃないかなって思います。
──歌詞は、ほぼエンプレスについて歌っているのですか?
ZAQ:〈極彩色の正義が歌う〉とかはスマイリーだし、〈鐡は舞い続ける〉とかはブラックトライクの(エンプレスが乗っているバイク)だったり、一言一言が、あのキャラクターのあの部分みたいな感じになっているんです。でも軸はエンプレスです。エンプレスってクールな顔をしているのに一生懸命なんですよね。何のために自分が戦っているのかと葛藤している部分も含めて、曲に落とし込めればいいなと思っていました。面白いなと思ったのは、サビの歌詞の行の頭が一番最後の〈この身が〉まで全部漢字だったんですよ。そこは中二っぽいなと思いました(笑)。
──何だか、臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前みたいな感じになってますね(笑)。
ZAQ:そうそう(笑)。最初の〈穿て世界線〉とか中二感全開ですよね。
──個人的にはアウトロもすごく良かったと思っていて、これからまだ進んでいくような感じがしたんですよね。
ZAQ:アウトロを2個作るというのもやってみたかったことで、最初のほうで鳴っていたイントロのギターリフが最後のアウトロでもう1回くるんですけど、ビートの刻み方が違うんですよ。そこは物語は進んでいるというイメージですね。2期ある?みたいな感じは、確かにあったかもしれない(笑)。
──ギターリフもすごく良かったですし、アニメサイドから、生音へのこだわりもあったと聞いています。
ZAQ:バンドサウンドで仕上げたいということだったので、私としては珍しく鍵盤楽器がほとんど入っていないんですよ。イントロのリフも最初はシンセだったんですけど、ギターに差し替えていたり、ギターのレコーディングにはすごく時間をかけました。ドラムもhydeさんの後ろで叩いているかどしゅんたろうさんにお願いしているんですけど、スネアがバチバチにでかくて、四つ打ちの中にタテノリを感じさせてくれるので、ロック感が出ているのかなって思います。
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