【コラム】「究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性」は、本当に集中力が上がるのか!?
2022年4月29日(金)、株式会社デラから新譜『究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性』がリリースされた。
◆『究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性』 関連動画&画像
同社は数多くのヒーリングミュージックなどを手掛け、CDがなかなか売れないこの時代に驚異のCD販売数を誇っており、『究極の眠れるCD』は約40万枚のヒットアルバムとなっている。そのデラが新たに手掛けた全6曲のアルバムは、muneroによって制作されたもの。早朝、朝、昼、夕方、夜、深夜という6つの時間帯をテーマにした楽曲構成となっており、これを聴くことで集中力を向上させ、仕事や勉強などをより効率よくできるようにした作品だ。
しかし音楽を聴くことで本当に集中力を向上できるのか? この点についてデラでは30~50歳代の男女10名の被験者に対し、音楽聴取した場合とそうでない場合で、集中度およびパフォーマンスの違いを検証する実験を行い実証している。
ここでは環境音および今回制作の音源を聴取しながら、それぞれ25分読書を行い、その際の集中度の変化を最新のヒューマンセンシング技術で数値化。また時間内に読むことができた文字数を比較。結果としては10人中9人において、効果がみられ集中力の上昇率は3%~37%。文字数は6%~43%上昇したという。監修は東北大学加齢医学研究所教授・医師・医学博士の瀧靖之が行っており、『究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性』は、集中力の低下を防ぐ効果がある可能性があるとしている。
実際にmunero、瀧靖之、株式会社デラの担当者にこの作品が作られたきっかけ、どのように楽曲を作っていったのか、そもそも株式会社デラとはどんな会社なのかなど聞いてきた。
■モチベーションを上げ、作業効率を上げる音楽
■作業時のBGMとして効果を発揮する作品
今回『究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性』を発売した株式会社デラは1972年創業で、主にヒーリング系のジャンルに特化したコンテンツを展開している。近年は生理学的データに基づいた音創りにより、検証を重ね、メンタルヘルスをはじめとする予防医学への施策、また治療にかかわる医療分野への進出など、ミュージック・セラピーの普及に尽力。2019年に国内初の音のサプリメント“Sound Supple(C)”を開発し、利用者のメンタル状況や症状に適したサウンドをレコメンドするアプリケーションを提供しているなど、医療チームとの研究開発を始めとし、科学的な分析などによって人々が抱えているストレス・不眠・不安・精神的疲労などの緩和・改善・予防に対して、画期的かつ合理的なシステムを構築している。
株式会社デラという社名自体は聞いたことがない方も多いと思うが、タワーレコード、HMV、TSUTAYA、山野楽器、LIBRO、新星堂、LIBRO、紀伊國屋書店、有隣堂、東急ハンズ……など、全国約1500か所に同社が制作したCDが並んだ棚が置かれているので、そのCDなどを見かけたことのある方は少なくないはずだ。
さて、今回リリースされた作品が作られることになったきっかけは、テレワーク中の300人を対象にしたアンケートにあったとのこと。そのアンケート(※1)では、約98%の人が「モチベーションが下がった、集中力が切れたことがある」と回答しており、担当者はこれを見て、テレワークや受験勉強、試験勉強において周りの環境に左右されずに集中力を維持し、モチベーションを上げ、その作業効率を上げる音楽を制作し、作業時のBGMとして効果を発揮する作品を目指したという。
※1 調査元:株式会社ネクストレベル 縁結び大学(https://jsbs2012.jp/date/telework-motivation)
実際に楽曲制作を行ったのは、ビートグランプリ2020ファイナルリストで、2021年2月には3作目となる「The Book of Pictorial Records」をリリースしたmunero。バークリー音楽大学卒業 (パフォーマンス科)を経て、 2017年11月 munero名義として1作目「noble」をリリースし、2018年7月には2作目となる「update of policy」をリリース。2018年11月には、中村佳穂「AINOU」の収録曲「GUM」の英詩を担当するなど、CMでの楽曲制作、ギタリストとしてアーティストのライブサポート、楽曲提供……といったように幅広く活躍している。
▲munero
普段作る音楽とは違った要素を求められた今回の楽曲についてmuneroは、「仲間内で音楽制作に関する情報を共有する際よく話に出るのが、いい音質やカッコいいメロディ、フレーズで、いかに人の目に留まりやすいか、などです。一方、今回求められた内容は、これらを出してはいけない禁欲的な部分があり、どういった音楽の要素を残して、何を外すかを考えました。その中で、一定の旋律の繰り返しというのが楽曲コンセプトにあり、特にミニマル・ミュージックを中心にヒントを得ながら工夫をしました。単純に同じフレーズを繰り返し聴いていれば当然退屈になっていくのですが、退屈になりきる前に雰囲気は残したまま違う要素を混ぜて、和音、新しい音を出していくなど展開を持たせていきます。今回制作した全6曲は基本的に旋律の繰り返しという要素を持っています。2小節の繰り返し、4小節の繰り返し、3分ごとの繰り返し……などをベースに絶妙なバランスを保っています。1曲の全体の長さは10分ぐらいで制作しており、曲を通して聴くと同じ骨組みで統一感があり、ゆっくりと変化していくのですが、たとえば1分間隔ごとで曲を飛ばせば変化の感じられる曲になるので、そういったところも楽しんでいただきたいですね」と話す。
「今回の制作にあたり、スティーブ・ライヒ、テリー・ライリーなど代表的な方を含めさまざまな作曲家、アーティストを参考にしました。シンセサイザーのフィルタのカットオフを上げていくような微妙な変化、音型が少しずつ変わって聴こえてきたり、違う長さの音型が重なっていきランダムな演出が生まれていくことなど、これまで発表されてきたミニマル・ミュージックの定義になりそうな要素をまずはピックアップして、今回のコンセプトにハマるものを見つけては盛り込んでみたり、フレーズごとに合う音質を作ったり、6曲分の基礎となるフレーズは最初にすべて制作し、同時進行で最終的な完成まで持っていきました」(munero)
また、全6曲のテーマが早朝、朝、昼、夕方、夜、深夜というテーマを持っていることについてmuneroは、「CDストアであれば夜遅くまで残って棚卸しをしたり、営業職であれば一日中外を歩いたり、配達であれば朝が早かったり、工場勤務であれば夜勤があったり……。労働環境というと朝から深夜まで、さまざまな方が働いているので、テレワークに限定せずに早朝、朝、昼、夕方、夜、深夜に割り振って、そのカラーに合う曲を作ったらどうかということを担当者に相談しました。モチベーションを上げる要素として、朝は朝の雰囲気、夕方には夕方の雰囲気など、その雰囲気を増幅させて、より作業に集中できる音楽を作りました。なので、フレーズや曲全体が、それぞれの時間帯に合うように色付けしています」と話した。
リリースされた音楽は配信でもCDでも聴くことができるわけだが、作業用のBGMとして流すだけでなく、muneroが話していた工夫がどんな形で実現されているか探してみると、また違った楽しみ方ができる。
■これまで発信してきた脳医学の内容と逆を行くもの
■今回の検証結果について
実際に完成した楽曲が集中力に対して効果があるのかは冒頭にも書いたが、これらの効果については東北大学加齢医学研究所教授、医師、医学博士の瀧靖之が監修をしている。著書に「生涯健康脳」「賢い子に育てる究極のコツ」などがあり、これらは10万部を突破するベストセラーにもなっている瀧。海外でも多言語で翻訳本が出版されているが、今回はCDに付属している集中力を高めるための効果的な習慣についてのブックレットの制作も監修している
。
瀧は今回監修を務めることになった経緯について「私自身、さまざまな音楽ジャンルが好きですし、楽器演奏もします。なので、脳科学と音楽を繋げていきたいという気持ちを以前から持っていました。そこで微力ながらも役に立ちたいと思い、今回お受けしました。とはいえ、脳科学的にいうと、人はマルチタスクが難しいので、音楽を聴きながらの作業は本来パフォーマンスを落とすことに繋がります。ある意味今回の企画は、これまで発信してきた脳医学の内容と逆を行くもので、最初お話をいただいたときに引き受けるかすごく迷いました。ただ、muneroさんの楽曲を聴いたときに、美しさはありつつもゆっくり変化していくことによって、音楽に集中しすぎない、けど音楽的に魅力があるという、絶妙なバランスで作られた楽曲を聴いて、感動し、協力させていただくことになった次第です」と話す。
▲瀧靖之
また今回の検証結果については、「検証には、何段階かのレベルがあり、論文レベルになるとかなり厳密な方法で実施する必要があり、今回の検証は論文に出せるレベルではもちろんありませんが、こういった一般商品の検証では、そこまでの精度を必要としないことが多いように見受けられます。とはいえ、今回の検証内容は十分には妥当性があると考えています。内容的にもとても誠実的で、十分な効果が見られる、と考えました」とのこと。検証からも集中力の低下を防ぐ効果がある可能性があると判断されているので、実際にテレワーク中にBGMとして流してもいいし、音楽的にも楽しめる「究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性」、その効果のほどを試してみてはいかがでしょうか。
■柴崎祐二(音楽ディレクター/評論家) 評論コメント
ミニマル・ミュージックや、ネオ・クラシカル、エレクトロニカ、ポストロック等……様々な音楽語彙が巧みに溶け込んだその内容は、うるさ型のリスナーへも十分にアピールするものだろう。テリー・ライリーや、ギャヴィン・ブライアーズなど、様々な固有名詞の影を各曲に嗅ぎ取りながら聴くのも楽しい。
とはいえ、全体としてはあくまで聴きやすく、いつの間にか「音楽を聴く」というより「音に取り囲まれている」状態へ運ばれていくのもわかる。そこでは既に、上に挙げたようなジャンル名や作曲家名が想起させる音の具体性は蒸発し、本来の機能である「音楽以外への集中」が巧みに補助される。
ディープ・リスニングにも耐えうるとともに一方では実用音楽としても優れている本作は、熱心な音楽ファン、カジュアルなリスナー双方にお勧めできる作品だ。
文・藤本健
『究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性』
DLMF-3923 ¥1,980(税込)
監修:瀧靖之(東北大学加齢医学研究所教授・医師・医学博士)
音楽:munero
収録時間:約60分(全6曲)
◆商品サイト
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