【インタビュー】椎名佐千子、「前向きに元気になっていただける曲を届けるのが私の役割」

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2021年に20周年を迎えた演歌歌手・椎名佐千子。歌唱力、表現力はもちろんのこと、ステージで太鼓を打つ、YouTubeでギター弾き語りに挑戦するなど、演歌の枠だけにとどまらない活動をしているアグレッシブさも魅力の歌手だ。

◆撮り下ろし画像

今回、椎名佐千子は2021年リリースの「潮騒みなと」続編となる「面影みなと」をリリースする。本楽曲では、別れを経験し、それでも一途に前を向こうとする切なくも強い女性の姿が椎名佐千子だからこその表現で描かれている。

BARKSではリリースにあわせ初めてのインタビューを実施。穏やかに丁寧に言葉を紡いでくれる椎名佐千子に、芯の強さを感じることができた。彼女が「面影みなと」、そして演歌にかける思いを知っていただけると幸いだ。

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■20周年を経て最初の一歩を踏み出すような気持ちで歌うことができました

──BARKS初登場、ありがとうございます! まずは、新曲「面影みなと」の制作経緯を教えていただけますか?

椎名佐千子:2021年、デビュー20周年に歌わせていただいた「潮騒みなと」の続編を創りたいというのが制作のきっかけです。別れた女性の切ない心情を歌った曲ですが、「きっときっと信じてる」という歌詞は、歌っていくなかで私の感じ方が変わっていきました。1日も早くお客様の前で歌える日が来ることを「きっときっと信じて」歌ようになり、自分の歌に背中を押されるような気持ちになったのです。聴いてくださる方からも、元気をもらえたと言っていただくことが多くご好評をいただきました。まだまだ大変な毎日が続くなか、皆さん頑張っていらっしゃいます。私ももっとステージに立てるように願っています。新曲では、より椎名佐千子の世界観を前面に押し出し、自分自身を信じる気持ちを感じていただけるアップテンポな曲を創ろうという話になりました。そして、出来上がったのが「面影みなと」です。



──岡千秋先生が作った曲に、日野浦かなで先生が歌詞を乗せたそうですね?

椎名佐千子:はい。曲を初めていただいたとき、「この曲を聴いて、きっと前向きになっていただける」と嬉しくなりました。自粛期間は、歌と向き合う大事な時間になりましたが、やっぱり皆さんの前で歌いたい……ともやもやした気持ちがありました。「潮騒みなと」もそうでしたが、より爽快に歌える曲をいただいたなと感じます。力強さもあり励まされるようなサウンドで、歌っていてスカッとする曲ですね。岡先生も緊急事態宣言中は、お宅に居る時間が長くなり、毎日黙々と曲を作り続けていたそうです。私やディレクターが、新曲のお願いに伺った際は「新曲がたくさんあるから、好きなだけ持って行きなさい」と大盤振る舞いしてくださいました(笑)。

──大物作曲家らしい豪快なエピソードですね。

椎名佐千子:ええ。ですが、結局は改めて作っていただきました。高名な先生なのに、とても柔軟でありがたいです。頂戴した曲の中にも素晴らしい曲がたくさんありました。カップリング曲はそのなかの1曲から選ばせていただいたものです。

──皆さんの想いが込められた新曲なのですね。

椎名佐千子:はい。驚いたことに、歌う前は岡先生から「あまり練習するな」と助言をいただきました。楽曲を頭の中に叩き込みながらも、レコーディングはぶっつけ本番みたいな感じになるため、「大丈夫かな」とドキドキで……。ですが、先生やディレクターから「思いっきり歌っていい」と言われたことで、自分の中のギアが切り替わる感覚がありました。もともと自分を信じて力強く歌っていましたが、声をかけていただいたことで歌が目に見えて変わるのが分かりました。母音を二度押しするようなところは繊細さを意識しながら、全体としては「椎名節」を全開に、20周年を経て最初の一歩を踏み出すような気持ちで歌うことができました。デビュー当時のがむしゃらさ、純粋さに近いものを感じながら思い切り歌えましたね。


──歌詞の中でとくに大切にした感情は?

椎名佐千子:別れの切なさもありますが、歌詞からは「私は誰に何を言われようと忘れない」という信念のようなものを感じていたので、それを大事にしながら歌いました。歌詞を読み込んでいて、描かれている男性像が新しいなと思ったんですね。男性は「幸せになれ」と突き放しますが、本音では待っていてほしい。でも、引き留めてしまうと女性を苦しめてしまうから言葉を飲み込んだ……はずなのに、そっと涙を流している姿がばれてしまう。その感じが、“草食系男子”っぽいですし、逆に、男性の真意を受け止め「私は信じて待っている」と強く思える女性像が今っぽいなと。そうした男女の描かれ方に新鮮さを感じました。

──ミュージックビデオはどこで撮影を?

椎名佐千子:地元・千葉の港町で撮影しました。以前、イベントでお邪魔したこともある場所で、近くにお住いの方々が見に来てくださいました。嬉しかったですね。「『潮騒みなと』を聞いてるよ」とか「歌ってるよ」と言っていただけ、直接コミュニケーションがとれる喜びを改めて感じました。その時は、ご当地のおいしいものをいただく時間的な余裕がなかったので、今度行ったら是非堪能したいですね。



──カップリング曲「雪のメロディ」は、ヨーロッパの街角を連想させるようなおしゃれな雰囲気が漂う楽曲ですね。

椎名佐千子:デモ音源を聞いたとき、6/8拍子で、映画のワンシーンを思わせるようなきれいな曲だなと思うのと同時に、私にとって初めて歌うタイプの曲。自立した女性の感情を、最初はどう表現したらいいだろうか悩みました。最初は語るように、サビで感情をぶつけるように歌いたいのですが……と私のイメージを、岡先生にお伝えすると、「それでいいよ」と言っていただけました。それで、迷いなくレコーディングに臨めました。

──2021年は、20周年の大きな節目を迎えられました。心境の変化はありますか?

椎名佐千子:デビュー当時は、自分が20年間も歌手として歌い続けていられるとは想像もできませんでした。いろんな事情で歌い続けられないことだってありえるなかで、こうして今も歌い続けていられることが本当に有り難いですね。今思うと、デビュー当時は「世界一の演歌歌手になる」と豪語して、向こう見ずだったなぁと(苦笑)。途中で何度も、「なんて大きな目標を立ててしまったんだろう」と、自分を責める気持ちにもなりました。でも、目標や夢は大きい方が挑戦しがいがあると思うので、これからもがんばって近づきたいですね。

──和太鼓やアコースティックギターの弾き語りなど、最近では色々と新しいことにも挑戦していらっしゃいますよね。

椎名佐千子:和太鼓の二重太鼓に挑戦したのは、五木ひろしさんから「20周年コンサートで二重太鼓ができたら見栄えもいいし、お客様も喜んでくれるよ」と言っていただいたことがきっかけです。11月のコンサートに向けて夏ごろから練習を始めたのですが、かなりしんどかったですね。腕で叩いているように見えますが、実際は全身を使うため息が上がってしまうんです。歌の途中で叩くため、歌が乱れないようにするためにはどうしたらいいか、太鼓の師匠と試行錯誤しながら当日を迎えました。その時の記憶があまりないくらい、必死で叩きましたね。後から聞いたら、二重太鼓はプロでもものにするのに10年かかるとか。事前にそれを聞いていたら、心が折れていたかもしれないので、知らなくてよかったです(笑)。



──ギターの弾き語りはいまも続けていますね?

椎名佐千子:はい。最初のきっかけはYouTubeの連載企画で、4か月連続で課題曲を弾き語りするというものでした。でも、やっていくうちにもっと上達したいと思うようになり、今も毎日触るようにしています。今は、カップリング曲「雪のメロディ」を弾き語りで歌えるよう、一生懸命に練習しているところです。

──YouTubeでは、手元を観ずに弾き語っていました。結構難しいと思うので、練習の成果を感じます。

椎名佐千子:ありがとうございます! 全く見ずに弾き語りしたいのですが、どうしてもちょこちょこ見ちゃうんですよね(笑)。ギターは10年くらい前に購入したのですが、そのときは挫折してしまいました。でも、自粛期間中に引っ張り出して弾いてみたら、弾くのが楽しく感じられたんです。コロナ禍ではギターを弾き語る動画をSNSにあげる人が増えましたが、音楽が近くにあると安心できるのかもしれませんね。



──「雪のメロディ」の弾き語りは順調ですか?

椎名佐千子:今回はコードを鳴らすだけじゃなく、アルペジオにも挑戦しようと思っているので、頑張って毎日練習しています。発売日には、いい音で鳴らせるようになりたいですね。私は効率よく覚えるとか、そういうタイプじゃないので、とにかく練習あるのみです(笑)。

──なぜ、何事にも一生懸命取り組めるのですか?

椎名佐千子:20周年のコンサートで、挑戦したことを皆さんが「頑張ってたね」「よかったよ」と言ってくださいました。そうした反応をいただくと励みになるし、もっと新しい姿を見てもらいたいと思えるので、それが原動力になっています。弾き語りの連載では、あいみょんさん「マリーゴールド」などのJ-POPも歌わせていただいたのですが、ファンの方に受け入れられるか少し不安もありました。でも、見た方からは「こうしたポップスもいいね」という声をいただけて。そうした反応をいただくことが嬉しいですし、皆さんにも私をきっかけにいろんな音楽を聴いていただけたら嬉しいですね。

──ポップスを歌うことで、歌手としての気づきもあったのでは?

椎名佐千子:声の出し方ひとつとっても、演歌とは全然違いますから表現の幅が広がると思います。デビュー前は、安室奈美恵さんや浜崎あゆみさん、宇多田ヒカルさんも大好きで、カラオケでもよく歌っていました。でも、締めに歌うのは必ず演歌なんですよね。こぶしを回して声を張って演歌を歌うとスカッとするんです。「やっぱり演歌が好きだな」と思いますし、演歌に戻ってくる感じはいまも変わらないですね。


──20周年を経て、この先はどのような歌手を目指していきたいですか?

椎名佐千子:これまでにいろんな歌を歌わせていただいたことで、私のいろんな色を引き出していただけたと思います。その積み重ねがあったから、前作「潮騒みなと」と新曲「面影みなと」のように、椎名佐千子らしいまっすぐな思いで歌える曲をいただくことができたのかなと。私自身も歌っていて、自分らしく気持ちよく歌える曲ですし、聴いてくださる方が前向きに元気になっていただける曲を届けるのが、私ならではの役割なのかなと思うようになりました。

──新たに挑戦してみたいことはありますか?

椎名佐千子:ドラムです。20周年記念コンサートで、和太鼓を叩いたときに桝谷マリさんという女性ドラマーとコラボしました。「かっこいいな」と感激して、私も挑戦してみたくなったんです。実は、よく行くスタジオにドラムセットがあるので、すでに1度叩きに行きました(笑)。思っているだけではなかなか踏み出せないので、ここで「ドラムやる」宣言をします!

──21年も前向きに突き進みそうですね! では、最後に新曲を待つ皆さんへメッセージをお願いします。

椎名佐千子:21年も、椎名佐千子全開で行きたいと思います。皆さんに元気になっていただきたいので、そうなれるような歌声を届けに行きたいです。正直悩んだ時期もありましたが、それも必要だったのかなと今は思えますし、すべて歌につながっていると感じます。「世界一の演歌歌手」という大きな目標は引き続き掲げながら、私に携わってくださる皆さんに「椎名でよかった」と思っていただけるように頑張りたい。そうやって喜んでいただけることが、私の力、喜びにもなっていくので、一つひとつを大切にしながら明るくたくましく活動していきたいですね。

取材・文◎橘川有子
撮影◎清水隆行

「面影みなと」

2022年4月6日(水)発売
品番:KICM-31051 価格:¥1,400(税込)

1.「面影みなと」
作詩:日野浦 かなで 作曲:岡 千秋 編曲:伊戸 のりお
2.「雪のメロディ」
作詩:日野浦 かなで 作曲:岡 千秋 編曲:伊戸 のりお
3.「面影みなと」オリジナルカラオケ
4.「面影みなと」一般用カラオケ
5.「雪のメロディ」オリジナルカラオケ
6.「雪のメロディ」一般用カラオケ


◆椎名佐千子 オフィシャルサイト
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