【インタビュー】湯木慧、プロジェクトTANEtoNEから開けていく創作活動「判断基準は、楽しいかどうか」
心というよりも、命そのものに寄り添うような音楽を発信し続けるシンガーソングライター湯木慧。小さい頃から曲を作り始め、ツイキャスやYouTubeなどで楽曲を発表しながら高校卒業直前に現事務所のLD&Kに所属。音楽制作はもちろん、アートワークや舞台装飾、衣装にグッズなど幅広い創作の場で個性と才能を発揮してきたアーティストだ。そんな彼女が今年、自身のレーベルTANEtoNE RECORDS(タネトーンレコーズ)を設立。9月には、秋田を舞台にした映画『光を追いかけて』の主題歌として書き下した「心解く」もリリースされた。今回はその楽曲制作にまつわる話に加え、彼女の幅広い創作分野のホームともいうべきプロジェクト「TANEtoNE」の未来についても言及。「判断基準は、楽しいかどうか」だと瞳を輝かせながら、ふくらむ夢の一部を語ってくれた。
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■種って全ての始まりでもあるし、一番最後に残るものでもあって。
──湯木さんが音楽事務所LD&Kに所属し、作品を発表するようになって丸4年が経ちました。5年目の今、活動の状況としてはいかがですか?
湯木慧:初期の頃は、“いる人とやる”感じだったんです。自分から誰かいい人を探そうとか、自分がやりたい人を選ぶとか、それこそチームを作るみたいなことをやっていなかったけど、音楽を作る上で“人”ってすごく大事なんだということを改めて感じたので、徐々にですが、環境も整ってきて、どんどんやりやすい状況になってきました。
──今年の6月、23歳の誕生日に行われた日本橋三井ホールのワンマンで、自身のレーベルTANEtoNE RECORDSの設立を発表されましたよね。
湯木慧:はい。あくまでもLD&Kの中でやらせてもらっているものなので、自分で経理をしてとか法人契約をしてとかそういうことでは無いんですが(笑)、これまでと変わらず自由にやらせてもらっています。でも、私の気持ちは大きく変わりました。いろんなことをやるにあたって、「楽しいかどうか」が判断基準だって大々的に掲げられるようになったから。(自分の気持ちの問題として)人のレーベルで「楽しいのが一番!」とはなかなか言えなかったんだけど(笑)、ここは自分の場所だから、心からそう言える。もともとLD&Kはすごく自由な場所だけど、心まで自由にやらせてもらえるようになったって思っています。
──この「TANEtoNE」という言葉、すごく素敵ですよね。いくつもの意味を感じるし、湯木さんらしさもあって。
湯木慧:今の環境になる前、メジャーレーベルにいた時に個展など音楽以外のことも色々やってきたんですが、今後は服も作りたいなと思い、アパレルブランドを立ち上げるために「TANEtoNE」という名前を考えました。その後自分でレーベルを立ち上げることになったので、せっかくだし、とても気に入っている言葉でもあったから「TANEtoNE RECORDS」にしたんです。私という人間が何かを作る上では絶対にそうなるんだろうなという感じですけど、自分の中に、命とか植物っていうものがずっとテーマとしてあるんです。
──音楽や絵画、写真、グッズ、ステージ演出など、これまでも湯木さんが手がけてきたいろんな創作の中で表現されてきましたね。
湯木慧:私のホームページでは「種のように未来へ繋がり 根のように這い回り 花のように鮮やかに咲いては散り 実をつける。」という文言を使っているんですが、種って全ての始まりでもあるし、一番最後に残るものでもあって。「TANEtoNE」は種と根。トーンと読むことで音楽的な要素もあります。全ての始まりになるような作品、実りの成果を発表する場所として、「TANEtoNE」というプロジェクトをこれから長くやっていこうと思っています。
──音楽に限らず、ということですね。
湯木慧:はい。音楽はすでにTANEtoNE RECORDSというものがスタートしていますが、例えばアパレルだったらTANEtoNE FASIONとして服を出すとか、TANEtoNE PLANTSとして植物を売る店としてやっていくとか、そういう夢も持っているんです。今までは湯木慧を有名にしたい、湯木慧が売れたいみたいなところがあったけど、今はTANEtoNEを知って欲しいし、TANEtoNEがブランドとして1人で生きていけるような感じになればいいなって思っているんですよね。
──湯木さんの創作活動を、スッキリと集約する場所とも言えそうです。
湯木慧:本当に。私はすごく頭が固くて不器用だから、ルールや秩序がないと行動できないんですね。創作って、本来そんなのいらないはずなのに(笑)。それこそ「楽しいからやる」だけでいいのに、(関連性という意味での)繋がりとかルールが欲しくなってしまう。だけど「TANEtoNE」という、全てを許容してくれる象徴ができたことで、めちゃくちゃ自由で生きやすくなりました。とは言えまだ始まったばかりで成果がないというか、じゃあ「TANEtoNE」で何をしたのって聞かれたらまだ名刺というか資料みたいなものが1ページもないから、とにかく早くアルバム作ろうとか、早く個展やろうとか、もっと服も作ろうとか、今そういうテンションなんです。別に生き急いでいるわけじゃないけど、楽しすぎてキャパオーバーになりかけています(笑)。
▲湯木慧/「心解く」
──ではここからは、TANEtoNE RECORDSから発表された湯木さんの最新作「心解く」について聞かせてください。この曲は秋田を舞台にした映画『光を追いかけて』の主題歌として書き下ろされたそうですね。
湯木慧:しっかり言葉で説明できないんですが、作品についてのお話を聞いたり、あらすじを読んだりして、絶対にいい曲が作れると思ったんです。私だったら作れる、絶対に作りたいと思い、話が決まってすぐに秋田に行きました。成田(洋一)監督自ら案内してくださったんですが、主人公の彰が座っていた席に座ってみたり、自分も屋根に登ってみたりして、実際にどんな景色を見ていたのかとか、そこで言っていたセリフのことを思い出したりしながら、秋田でロケ地巡りをさせてもらいました。
──監督のコメントにもありましたが、最初はエンドロールで音楽を使うはずじゃなかったそうですね。
湯木慧:そうなんです。でも編集の過程で映像を使うことになって、映像を流すなら音が欲しいって話になったそうなんですが、もともと監督が湯木慧の曲を聴いてくださっていて。最初はラジオでたまたま私の楽曲が流れたのがきっかけで、そこから湯木慧の楽曲にハマってくださって、お声がけをいただいたっていう。
──正しく音楽が届いた結果ですね。
湯木慧:本当にそう思います。そんな風に、もっと音楽とか物事が回っていけばいいなって思う。「いい」と思ったものに対してそんな風に動いてくださって、そりゃいいものになるよなっていう始まり方でした。
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