【インタビュー】SEAMO、コロナ禍をサヴァイブするラッパーの愛すべきリアル

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■新しいアルバムを出すことが、ツアーの一番の演出

──「老GUY」という曲は、インパクトありますね。ジェネレーションギャップの問題を、ユーモアとペーソスを駆使して描いていく。これも、今のSEAMOのリアルですか。

SEAMO:そうです。僕らの若い時に、ベテランの人たちに「メシ喰いに行こう」と言われたら必ず行ったんですよ。長く生きている人たちの経験は宝物だし、この世界でサヴァイブしていくための必勝法を教えてくれるわけだから、いくらでも聞きたいし「俺たちの時代はさ」っていう自慢話でも全然苦にならない。でも今の若い子には、そういう話が説教になっちゃうんですね。「メシ喰いに行こうよ」「今日、用事あるんで」って、サクッと断られたりして。僕らの経験が化石扱いされて、話してても噛み合わないことがある。そこにギャップを感じることがあるんですね。

──うーん。同じことを感じることは多々あります。

SEAMO:これは愚痴になっちゃうんですけど…僕らの時代には、クラスで一番イケてる奴とか、一番変態な奴が音楽を選ぶみたいな感じだったんですけど、今の若いミュージシャンってクラスで一番目立たない奴が家の中で作っていたものが世に出て、それが評価されるということがあって、いいことだとは思うんですけど、そういう人たちと話してるとギャップを感じることが多いんですね。たとえばYOASOBIが紅白歌合戦に出て、「初めて人前でちゃんと歌うのが紅白です」みたいな、もうびっくりしちゃって、そういう時代なんですよね。僕たちの時代はとにかく場数を踏んで、やっとデビューできて、さらにライブで場数を踏んで、恥かいて汗かいて、それを繰り返してやっと大きなステージに立てるという順番だったのが、何段飛ばしで一気に紅白に出れちゃう。僕はラジオをやっているんですけど、ゲストで来るそういう世代の人たちとしゃべっていると、「そんなふうに考えているんだ」と思うことがたくさんある。それはミュージシャンに限らず、現代社会においても僕の感性と噛み合わないことが多くなってきているんだけど、これが今の時代だから受け入れないといけないし、ニュージェネレーションの気持ちも理解しなきゃいけないなということを、おもしろおかしく描いたのが「老GUY」という歌ですね。ユーモラスではありますけど、メッセージの根底にあるのはそういう気持ちだったりします。

──これは、アダルト世代は必聴ですよ。しみじみ、思うところがあると思います。

SEAMO:あと、僕の下ネタが通用しないところにも時代錯誤を感じてます(笑)。今は下ネタも違うし、笑いの感覚も違うし、変化を求められているというか、変化しないと生き残っていけない時代ですよね。だからシーモネーターとか、一歩間違えればセクハラやパワハラになりかねないんですよ。存在自体がモラハラというか(笑)。

──あはは。そういえばシーモネーター、そろそろ周年ですよね。

SEAMO:来年がデビュー20周年なので、「20周年イヤーに突入した」という感じです。なので、今回の全国ツアーが終わったら、世間の状況にもよりますけど、シーモネーターで何かやっても面白いかもしれない。

▲『NORA』通常盤

──アルバムラスト曲「スーパーヒーロー」も、アダルト世代のリアルを描いた、すごくエモーショナルな曲。アーティストを辞めていったかつての仲間に贈る応援歌で、これって実際にあったことですか。

SEAMO:いっぱいありますけど、誰か一人のことではないです。僕と同じ時期にデビューした子はほぼ残っていないんですよ。まだ音楽業界にいる子たちも仕事をしながら歌い続けている子もいますけど、違う職種に行く人もいて、たまにライブに顔を出してくれたりする。そこで僕が歌っているのを見るとうらやましく感じるとか、元気をもらえるとか、「頑張ってやり続けてくれよ」と言われることもあって、もはや自分だけの音楽人生ではないというか。お客さんもそうですけど、そういう子たちの夢も背負っていると思うんですね。その頃の仲間と話していて、「今は違う職種でこき使われてるよ」とか言われて「いやいや、おまえの過去は絶対に誇っていいことだよ」とか、そういう話をしていたことがあって、それを歌にしたのが「スーパーヒーロー」です。

──これはいい歌。沁みます。

SEAMO:僕がSEAMOとして「マタアイマショウ」で認知してもらった時は、セカンドブレイクだと思っているんですね。シーモネーターをファーストとすれば。そしてこのあと、たとえばDA PUMPのように、サードブレイクを狙うというか、街鳴りするような状況を作れたら、もっとみんなが「人生捨てたもんじゃない」「頑張れば何があるかわからない」と思ってくれると思うので。今の時代、何が当たるかなんてわからないじゃないですか。だから引き続きブレイクを狙っていきたいし、そうすれば、ほかの業種に行った子も報われるというか、そういうふうに思うんです。

──勇気、出ると思います。間違いなく。

SEAMO:それと、ステージの上で歌い続けることは自分と向き合うことなので、老いとの戦いでもあるんですね。今のR-指定とかSKY-HIとか、まくしたてるようなあのスタイル、シーモネーターの若い頃に僕もやっていたあの活舌が、なかなか難しくなってきている年代なので、勝負するポイントを変えていかなきゃいけない。そういう意味で今回のアルバムは、まさにそういうことを意識してあの手この手で自分を高みに持っていく中でやっていますし、「スーパーヒーロー」にはそういう思いも入っていますね。

──逆に言うと、もはやSEAMOにリタイヤはない?

SEAMO:できないところまで来てますよね。ほかのことをやれと言っても無理ですし、特にやめなきゃいけない状況でもない。「老GUY」にもつながるんですけど、そこで今の時代にも乗って行かないといけないし、今の僕にしかできないことを表現していかないといけない。難しい時代に突入しているとは思いますけど、大事なことは変わらないし、やることは変わらない。そこで新しいアルバムを出すことが、ツアーの一番の演出なんですね。たとえば若いアーティストのドームのライブを見に行くと、でっかいLEDのスクリーン、せりあがるステージ、特効もいっぱい使って…ということになるんですけど、裏を返せばそれをしないとテンションを保てないアーティストが実際いるわけですよ。それが使えないとなると、自分たちの味で勝負しなきゃいけない。そこで特効よりも何よりも一番の演出は「俺の今の心境を聴いてください」という、新曲を届けることだと思うんですね。だからこれからも曲を作り続けるしかないし、それが僕を応援してくれる人に対する恩返しなのかなと思います。

──『NORA』の新曲は、今のツアーでもがんがんやってるんですか。

SEAMO:いや、今回のツアーはベストアルバムのツアーなので、「15周年を仕切り直しでもう一度」ということなんですね。なので『NORA』の曲もやってますけど、基本は「懐かしい」と思ってもらえるようなセットリストにしています。でもこのツアーが終わったあとには、『NORA』にスポットを当てたような何かをしたいなとは思ってます。シーモネーターの周年もやりたいし、いろいろ思ってはいますね。

──楽しみです。いつまでもエネルギッシュでいてほしいです。

SEAMO:ネタ探しなんですね、ここまでやってると。思いついたネタを片っ端から、曲やライブにつなげていかないといけないので。楽しんでやってますよ、なんとか。

取材・文◎宮本英夫


■リリース情報

アルバム『NORA』
2021年2月24日 配信スタート
2021年3月6日 CDリリース
【初回生産限定盤】¥4,000(税込)
【通常盤】¥2,500(税込)

収録曲:
1.Time is money
2.みなさんのおかげです 【SEAMO×Crystal Boy×KURO×SOCKS】
3.Highway ※名古屋高速道路公社50周年ソング
4.俺は俺
5.NORA
6.新しい歌
7.Rainy day
8.老GUY
9.ダンデライオン
10.35年後の君へ
11.スーパーヒーロー

初回生産限定盤 DVD:
1.2020年LIVE DIGEST~コロナ禍の軌跡~
2.LIVE「課金・ザ・ファイヤー」DIGEST
3.Wave Your SEAMO TOUR Behind The Scene Shot
4.Highway Music Video

<仕切り直しでもう一度!15th Anniversary Again『PERFECT SEAMO TOUR』>

2021年3月6日(土)@浜松窓枠
2021年3月13日(土)@高松MONSTER
2021年3月20日(土)@金沢GOLD CREEK
2021年4月4日(日)@広島CLUB QUATTRO
2021年4月17日(土)@福岡IMZ HALL
2021年4月25日(日)@大阪BIGCAT
2021年5月2日(日)@東京LIQUIDROOM
2021年5月8日(土)@名古屋ダイアモンドホール
https://w.pia.jp/a/seamo/​

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