【インタビュー】TEARS OF TRAGEDY、新たな幕開けを宣言するアルバム『TRINITY』をリリース
■季節ものシリーズみたいなのがあるんですけど
■今まで夏がなかったんですよ。
――次の「Innocent gram」という曲は、随分前に作っていたということですよね。
HAYATO:そうですね。サビだけは昔から頭の中にあったんですけど、突き抜けた明るい曲ですね。「It Like Snow」とか、TEARS OF TRAGEDYには季節ものシリーズみたいなのがあるんですけど、今まで夏がなかったんですよ。それじゃあということで作ったんですけど、最終的に行き着いたのが、こういう砂浜で遊ぶ馬鹿野郎どもみたいな雰囲気なんですよね(笑)。でも、イメージはホントにただ明るくということで、TORUちゃんには、SIAM SHADEの「グレイシャルLOVE」とか、そういうギターにしてくれって注文したりして。
――「グレイシャルLOVE」みたいなギターをと?(笑)
TORU:いや、曲の指定はなかったんですけど(笑)、SIAM SHADEっぽいバッキングがいいなぁっていう。いつも基本的に任せてくれるんですけど、初めて具体的なバンド名で注文がきましたね。
HAYATO:でも、思ったとおりの感じになりましたね。キーボードだと、ああいうのは思いつかないですから。
――とすると、歌詞も夏のイメージをリクエストしたんですか?
HAYATO:いや、お願いしますとも言ってないんですけど、夏だ、夏だって、さんざん隣で言ってたんですよ。
HARUKA:あまり歌詞の要望とかはないんですけど、夏、夏ってずっと言われてたので(笑)。しかも曲を聴けば、夏の終りじゃなくて、ギラギラしてる夏なんだなというのがわかったので、ちょっとあざとい感じで歌詞も書いて(笑)。歌い方もあざとさを出しながらでしたね。それが伝わるといいなって思いながら。
――“Innocent gram”とは、どういう意味なんですか?
HARUKA:これは造語ですね。“innocent”は純粋なみたいな意味だと思うんですけど、“gram”はインスタグラムとかのグラムなんです。何か夏の1枚みたいな、写真っぽいイメージなんですよね。
――なるほど。そう説明されると、よりわかりやすくなりますね。重厚かつハードに始まる「Outsider」は展開もまた聴きどころですね。
TORU:ものすごく激しく始まりますけど、ただの予定調和だとつまらないですし、むしろ、その後の展開をこうできるという可能性を出せた曲でもあると思うんですよ。いわゆるJ-POP、J-ROCK的なほうに行って、また少しロックのほうに戻って、中間部分でシンフォニックでキメがあったりとか。自分たちが日本に生まれて、そういった音楽を聴いて育ったからこそ、こういう曲ができたと思うんですよね。海外のシンフォニック・メタル・バンドだったら、もっとストレートにシンフォニックなまま激しく終わると思うんですよ。その意味では、これもシンフォニック・メタルの中では新しい方向にできたんじゃないかなって思いますね。
HAYATO:こういう曲調はアレンジが難しいです。どっちに舵を切ったらいいものか、音色でイメージが決まる部分はあるので。HARUKA:これは一番、イメージするのが難しい曲でしたね。だから、逆に固定したイメージを作らないで書き進めていったんです。何かよくわからないものから逃げているというか、具体的なものがないんですけど、逃げることができたけれども、逃げるのももうやめた、吹っ切れたような……ちょっと自分でも意味がわからないストーリーなんですよ。
■どこまで行っても
■きっと満足しない自分がいると思うんです。
――「after song」はアコースティックな曲ですが、ハードな印象の曲がある一方で、その対極に位置するものですね。
TORU:自分たちの曲のヴァリエーションの中に、こういうアコースティックな曲を作るというのは、わりと当たり前に選択肢としてあるんですけど、デモの段階から、他の曲と比べて、グッとくるものにしたいなぁと思ってて。最初はもっと平和な、もっと明るいだけの感じだったんですけど、何かワクワクする感じとか、素朴な中にも、幼心にある冒険心だとか、そういうものを感じさせるものがあればいいなぁと思うようになったんですね。あとは3人の感じをより出せればいいなと思って。いつもだったらストリングスとかも入れたりするんですけど、ホントにこのまま演奏できるような形になるべくもってきて。再生したときに、そこで我々が演奏しているかのように聞こえたらいいなぁって思いながら。
HAYATO:シンプルな曲だけに逆に難しいんですよね。転調があれば、ある程度、雰囲気も強制的にドンと変わるんですけど、この曲は転調がないので、どうやって起伏を出すか……しかも、単純に演奏楽器が減れば、その分、ごまかしも効かなくなりますからね。その意味では、和音の選び方から何から、一番気を遣った曲かもしれない。まぁ、バラードはいつもそうなんですけどね、ヴォーカルと音がちゃんと絡むように。
――確かにシンプルな楽曲は音の抜き差しが難しいですよね。
TORU:転調がない分、ギターもほとんどループみたいな感じでいってるんですけど、ちょっと変化をつけるのに、ジャズとかで使うようなコード進行を挟んで、後半に向けていくというのが、自分の中ではアクセントとしてありましたね。
――歌も必然的に前面に出てきますね。
HARUKA:歌も含めて3人でやっているので、すごく細かいニュアンスとか、他のロック調の曲では聞こえないような、歌い出しのちょっとしたブレスとか、語尾の余韻とか、歌い回しには気を遣いましたね。そういった部分がしっかり全部聞こえて、人の耳に届くという意味でも、一番、歌い甲斐がある曲ですね。
▲HAYATO(key)
――これは自分たちの姿を投影した歌詞と言えますか?
HARUKA:いや、どっちかというと……難しいな。私がこうでありたかったなという未来と現実は全然違うんですけど、もしそうであった場合、自分はきっとこうだろうなみたいな話なんですね。違う人生を歩んだ自分。そんなところを書いた曲ですね。
――それは<夢は夢のままで>という表現につながってきますね。
HARUKA:そうですね。具体的なことを言うと、もっとバンドで大きくなりたかった……バンドでというか、音楽をもっとやりたかったんですけど、仮にそうだったとしても、どこまで行っても、きっと満足しない自分がいると思うんです。ただ、世界が大きくなればなるほど、重圧も大きくなる。そういうものに耐えられなくなってやめてしまう自分もいる……何を言ってるかわかるかな?(笑)
――<私は私を辞めたんだ>と終わる最後の一節がものすごく余韻を残す。どういうことなんだろうと、聴き手も思いを馳せることでしょうね。
HARUKA:そう思ってもらえたら嬉しいですね。その後のことは語らないけれど、どうなっちゃったんだろうって、いろいろ考えて欲しいなぁと思います。
――捉え方によっては、この人はここで命を落としたとも読み取れる。
HARUKA:そうですね。それでも正解だと思ってます。
――メロディック・スピード・メタル曲の「No.05」はHAYATOくんの作曲ですね。
HAYATO:これは1stアルバムの「Silence Ocean」みたいな、ちょっと速い、原点回帰的なものをやりたいと。大好きなXの「Silent Jealousy」みたいなことをやりたいと(笑)。全然違いますけどね、曲の感じは。ちょっと変わったことと言えば、間奏のピアノのところは、普段はやらないような、ちょっとお洒落な感じの要素を入れたりもしたんですけど、この曲はそんなに転調する曲でもないですし、構成も「Silence Ocean」とそっくりですね。イントロがあって、Aメロがあって、Bメロがあって、間奏にいって、またAメロが……これは1周目のAメロとは違うんですけどね。歌詞とかに関しても何もリクエストしてないんですけど……氷の世界ってイメージがあったぐらいですかね。
TORU:冬っぽいって言ってた気がする。デモが届いた時点で、「Silent Jealousy」強化版が来たなと思いましたね(笑)。その辺のBPMが好きなのは知ってるんですけど、それよりもうちょっと冒険しているテンポなんですよ。ただ、スピードが速いとフレーズにも制限がかかるというか、選択肢が限られてしまうんですよね。その中でどのように曲を彩るかというのが毎回速い曲での課題なんですけど、「Silent Jealousy」であるようなギターのバッキングを、わりとそのままやっているバンドもあると言えばあるんですけど、自分は絶対にそれをしないと決めているんですよ。差別化する意味でも、ヴァリエーションをつけるためにも。ギターは基本的に任せてもらっているので、より曲に幅が出るような方向で考えてますね。
――また意味深げな歌詞でもありますね。
HARUKA:そうですね(笑)。これはすごい抽象的な歌詞にしたんですけど、イメージしている特定の人物がいるんですね。ただ、聴く人にその印象がついちゃうとよくないので、具体的なことは言わないようにしてるんですけど……カメラを睨みつけているようなイメージなんですね。それに一番ハマるのは、このアルバムの中でこの曲だったんです。
――<僕だけが悪ですか?>といった、どう捉えればいいのか迷うフレーズも出てきますね。
HARUKA:何か難しいな……こればっかりなんですけど(笑)、どういう捉え方でもできるようにとは思って書いてはいるんですね。(言葉や場面が)つながってはないかもしれないですけど、そういった言葉ばかりをつらつらと並べて作った感じですかね。
――その特定の人に言い聞かせるような側面もあるのかなと思いましたが。
HARUKA:どうなんだろう……私がイメージしている人物は、きっとこう思っているんじゃないかなみたいな……ちょっと伝えるのが難しいですね。
――「frost flower」はピアノ始まりの曲ですが、TORUくんの作曲ですね。
TORU:作曲するときに鍵盤をかなり使うので、こういうフレーズも普通に自分で弾いて考えていることは多いんですよね。曲としては3rdの延長線上で、結構柔らかい曲がいくつかある中で、これもその一つだったのかなと自分的には思うんですけど、当初はそれに近い曲調のものを他にも収録したいと思ってたんですよ。そんな中でHAYAちゃんが、この曲は群を抜いていいと言ってくれて、なおかつ、「冬の曲だ」って高らかに叫んでて(笑)。自分はそんなつもりでは作っていなかったんですけど、どんなアレンジをしてくれるのかなと思ったら、ホントに冬を感じさせるようなものになってて。そこから一気に、じゃあそういう方向で作っていこうというふうになりましたね。さらに、この曲はメタル・サウンドにしたくなかったんですよ。TEARS OF TRAGEDY流のポップスでいいなと思って。こういうことをやっていいバンドだと思ってるんですよね。
――ギター・ソロもクリーンで聴かせますよね。
TORU:そうそう。それは初挑戦でした。実際に弾いているのはエレキなんですけど、箱物のギターをイメージして。
――HAYATOくんは冬を感じて、アレンジを進めたと。
HAYATO:そう、幸せな感じの冬なんですよ。「It Like Snow」とはまた雰囲気が違っていて、ウキウキした……だから、こっちも夏と一緒で、リア充の冬って感じですね(笑)。恋人はちゃんといます、仲良く買い物して、デートして、帰る。そういう冬なんですよね、イメージとしては(笑)。
――そういう歌詞じゃないですけどね(笑)。
HAYATO:そういう俺のイメージは無視しますから(笑)。
TORU:クリスマスとは言わないまでも、冬の時期にやっているお祭的な、イベント的なイメージという。
HAYATO:そう。サンタクロースみたいな感じなんですよ、ホントに。PVの映像まで浮かんだぐらい冬だったんですよ(笑)。でも、何がそうさせたのかはわからないんだよなぁ。
HARUKA:お祭のような冬のイメージだよって話は、私はされた記憶がないんですけど(笑)、冬の曲だよと渡されたんですね。そこで、TEARS OF TRAGEDYにはすでに冬の曲があったので、それの数年後、続きみたいなイメージで書いていくのはどうかなと思ったんですね。今までやったことがなかったので。
――<本のページをめくるように>という表現も印象的ですが、一つの別れがあり、その後ということですね。
HARUKA:そうですね。それを経て、嫌なこともいい思い出として捉えられるようになったぐらいの頃に、みたいな。だから、ページをめくっているのは、その前の曲のページをめくっているイメージなんですね。だから、その頃はその頃で、本を閉じて、さぁまた行こうみたいなイメージではあります。
――<また>という言葉も何度も出てくるんですよね。
HARUKA:そう。あえて前の曲と同じ歌い終わりをしてるんですよ。結局、同じようなことを繰り返してるじゃないですか、人生って。いいことも悪いことも、こんなことは前にもあったなぁみたいな。成長しているようで、あまりしていなかったり。そういう意味も込めて、<また>を多用しているんだと思います。
――冒頭でも話題に出た「クロノメトリー」は、アルバムの最後に置くことを念頭に書かれたようにも思えますね。
TORU:聴いたときに、必然的にこれは最後かなと思ったんですけど、みんな何も言わずとも同じような感覚で。だからすんなり決まったんですよね。
HAYATO:とはいえ、最後っぽくしようとしていたわけでもないよね。
HARUKA:だから歌詞も締め括りとしては書いてはいないんですけど、明らかに今までとは違う1曲だなと私は思ったんですよ。どっちかというと、曲に合わせてポジティヴに、あまりひねくれずに書きたいなと思ってて。飛んでるイメージみたいなんですよ。
――「飛んでる」というと?
HAYATO:おじさんが飛んでるイメージ(笑)。
HARUKA:でも、それは違和感があるので(笑)、もうちょっと若い人たちが飛んでるイメージに落として書きました。
――でも、それが“クロノメトリー”というタイトルになったのがすごく不思議ですね。
HARUKA:これもすごく紆余曲折があったんですよ。最初、ジオメトリーという、幾何学を意味する言葉があって……。
――歌詞にも出てきますよね。
HARUKA:そうですね。幾何学模様って、無限ループしてるというか、全部がつながっていて、終わりがないイメージなんですけど、そういうところを辿っているイメージだったんですよ。でも、ただジオメトリーという言葉では表現できないなと思ったんですね。そこで時を意味するクロノという接頭辞をつけて、クロノジオメトリーにしたんです。でも、意味合い的にはよかったんですけど、響きが好きになれなくて、ギュッとしてクロノメトリーにして。絶対的にカタカナにしたかったのもあって、カタカナで書いたときにいい感じになるようにというのもありますね。
――なぜカタカナにしたかったんですか?
HARUKA:私、カタカナ英語みたいなのがすっごい大好きなんですよ。何でもそうなんですけど、インフルエンサーとか……。
――インフルエンサー?(笑)
HARUKA:何かわかんないんですけど(笑)、よく曲のタイトルでもあるじゃないですか。ああいうものにすごく目を惹かれるんですね、何だろうこの曲はって。そういうものが今回のアルバムに1曲欲しかったんですよ。そこでどれがいいかなと思っていたところ、心機一転の曲ではあったので、きっとこの曲だろうなと思って。
――言葉を辿っていくと、このアルバムは光に始まり、光に終わるんですよね。
HARUKA:あぁ、確かに。コンセプトみたいなものを立てたり、全部ストーリーになってるアルバムってあるじゃないですか。そういうものではまったくないし、この曲がアルバムの最後になることも後から決まったことなので……でも、ここは狙ってしましたと言っておいたほうがいいですか?(笑)
――むしろ、狙ってなかったというほうが神秘的だと思います(笑)。
HARUKA:まったく狙ってはないです。でも、TEARS OF TRAGEDYの代名詞みたいなものだと思うんですよね。クラシカルな曲とか、シンフォニックな曲とか、いろんな曲がありますけど、多分、ちょっとキラキラしている、光のある曲みたいなものが、TEARS OF TRAGEDYのイメージだと思うんですよ。
TORU:意外とロマンティストかもしれないけどね。
HAYATO:相当ロマンティストだよ。
――この3人で新たに始めるというタイミングゆえに、それぞれが見ていた新しい光が、自然と言葉なり音なりに出てきたという解釈もできそうですね。
HARUKA:確かに。3人全員が思っているかどうかはわからないですけど、もしかしたらそういうものが表れているのかもしれません。
――さて、本作のリリース後は、通常であればライヴをという計画ではあったと思うのですが……。
TORU:そのつもりでいたんですが、こういう事情ですので……アルバムの発売日自体も、当初予定していたものより後ろになったんですよね。希望的観測で、もし(新型コロナウイルスの感染拡大が)収まっていたら、ライヴができるかなと思ってて。でも、2020年も終わりに近づいていますが、まだまだだと思うので、年明けに無観客ライヴの配信をしようと考えております。
HARUKA:新曲を聴いてくださったみなさんに、お披露目したいですし。どういう形であっても、レコ発はやりたいですからね。
取材・文:土屋京輔
リリース情報
発売日: 2020年11月25日(水)
レ-ベル: Walkure Records
品番:WLKR-0050
定価:¥3,000+税
<収録曲>
1. Trinity
2. Nonsite
3. 幽玄
4. Innocent gram
5. Anonymous
6. Outsider
7. after song
8. No.05
9. frost flower
10. 時に鏡は嘘をつく
11. クロノメトリー
ライブ・イベント情報
Streaming Live「RGB」
配信日時:2021年1月31日(日)
配信スタート 20:00 (おまけ映像 19:30)
※LIVEパフォーマンスは事前収録となります。
■視聴ページ:YouTube channel
https://www.youtube.com/user/TearsOfTragedy2008
■アーカイブ配信
公開開始から2月1日(月)24:00まで
◆インタビュー(1)へ戻る
◆インタビュー(2)へ戻る
この記事の関連情報
<PURE ROCK JAPAN LIVE 2023>、摩天楼オペラ、Unlucky Morpheus、Aldious with 大山まき、TEARS OF TRAGEDY出演決定
TEARS OF TRAGEDY、11/25リリースの最新作『TRINITY』より「クロノメトリー」のMVを公開
TEARS OF TRAGEDY、11/25リリースの最新作『TRINITY』より「Nonsite」のMV公開
TEARS OF TRAGEDY、4年振り待望の4thアルバム『TRINITY』を11/25にリリース
TEARS OF TRAGEDY、さらなる規模のワンマンに挑戦
TEARS OF TRAGEDYが提示する、J-POP&J-ROCKを融合させた独自のメタルサウンド