【インタビュー】信頼で結ばれたDannie May、新作に込めた「新しい僕らと今までの僕ら」

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2人のソングライターと、1人のアイディアマン。カラフルでポップなアレンジと、心の琴線に触れるマイナーメロディ。ブラックミュージックのグルーヴと、J-POPの親しみやすさ。そして、三つの声が生み出す絶妙のハーモニー。いくつもの要素を組み合わせた、ユニークで才気あふれる音楽が今、ゆっくりとスポットライトを浴びつつある。その名はDannie May。挫折続きの音楽人生を経て、運命的に出会った3人の魂が共鳴しあう、ワン&オンリーのDannie Mayサウンドはどのように生まれるのか? 最新EP『DUMELA』を語る、BARKS初登場インタビュー。

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■信用できるメンバーを集めてみた

──そもそもDannie Mayは、バンドなのか、グループなのか、ユニットなのか。なんと呼んだらいいですか。

田中タリラ(Vo&Key):「ユニット」が一番しっくりきますね。

Yuno(Cho&Kantoku):こうやって話す時に、「俺らって何なんだろうね?」というのがずっとあります。

マサ(Vo&G):そもそも僕ら、「こんな音楽やりたいよね」で始まったわけではなかったので。僕とタリラがやっていたボーカルユニットが終わる時に、次は周りにいる「いい奴」を集めようと思って、Yunoが入って、そこから「じゃあ何する?」で始まってるバンドなんですよ。

Yuno:僕らはみんな、十代から音楽をやってきてはいるんですけど、大成したことがなくて。たとえば高校生のバンドコンテストで賞を取ったとか、そういう経験もないし、僕もプロになろうと思ってグループをやったことがありますけど、空中分解したりとか。挫折体験というか、挫折にもならずに何もできないことが多かったので、そこにトラウマもあったし、信用できる仲間もあまりできない中で──マサが言ったみたいに、「こういう音楽をやりたい」と言ってメンバーを集めることが、そもそも違っていたんじゃないか?と思って、まずは信用できるメンバーを集めてみた、というところから始まったユニットなんです。だから、好みは違っても向いている方向は同じ、ということだと思います。


──2019年に結成して、すぐにEP『暴食(グラトニー)』をリリースして、タワーレコードの未流通リリース企画「タワクル」で4週連続1位。いきなり話題を呼びました。クレジットでは、リリック&ミュージックがマサさんで、アレンジが田中タリラさん、という形が多いですよね。実際にはどんなふうに?

田中タリラ:マサは、きれいに作るのがうまいんですよ。たぶん誰しもが聴いて「いいな」と思うものを作る。僕は逆にトゲのあるものを作るのが得意なので、そこを崩すつもりでやると、ちょうどいい感じにトゲもあり、メロディがきれいで、刺さるものになるんじゃないかな?と思って作ってます。

──マサさんは、フェイバリット・アーティストに、オリジナル・ラヴ、山下達郎、KIRINJIとか、王道のポップスを主に挙げていて。まさにそういうメロディだと感じます。逆に田中タリラさんのフェイバリットは、マイケル・ジャクソン、MIKA、ペンタトニックスとか、洋楽がメイン。

マサ:僕はあまり洋楽を聴かないので、2人に教えてもらってます。

Yuno:今回のEP『DUMELA』の3曲目と5曲目は、タリラの曲なんですけど。マサの曲とは全然違っていて、3曲目「ナイサイシンシャ」は特に面白い。

マサ:僕は「A、B、サビ」という形で作りがちなんですけど、彼は「A、サビ、間奏」とか、構成も全然違う。

田中タリラ:作品がいいか悪いかは別にして、マサがいいものを作ってくれるから、俺はバランスを崩すというか、自由にやってます。

マサ:役割がはっきり分かれてるんで、そこは任せちゃう。お互い信頼してるんで、今のところは問題なくやってます。

──Yunoさんの役割は「コーラスと監督」になってますけど。ミュージックビデオの制作もやっているんですよね。

Yuno:そうです。もともと、物事に意味を付けるとか、意味のあるものを形にすることがすごく好きで。前にアイドルコーラスユニットみたいな活動をやっていた時期があって、SNSで何万人のファンがいて、ワンマンもキャパ600、700人ぐらいのところでやっていたんですけど、その時も曲のコンセプト、ライブの演出をやっていました。映画やゲームも大好きなので、それを自分が表現したいことと、2人が表現したいことに付き合わせることができたらうれしいなというところから、映像の勉強をし始めて…という感じなので。表現したい世界が先にあるんだと思います。

──ざっくり言うと、音楽脳を持つマサ&タリラと、コンセプト脳を持つYunoとのバランスで、Dannie Mayは成り立ってると。

マサ:まさしくそんな感じです。



──今回のEP『DUMELA』は、まさにコロナ禍の真っただ中で作っていたわけですよね。

Yuno:そうです。当初は3月にライブをやって、シングルの連続リリースを発表し、初夏にEPをリリースしようと計画していたんですけど、そこからコロナになってしまって。ライブはできなくなったんですけど、曲がいっぱいたまっていたので、3月から4月にかけて配信で何曲かリリースしました。その後もライブもスタジオでレコーディングもできない中で、ここで何もしないと、時代の流れに流されちゃうじゃないですか。何か爪痕を残すものを作ろうということになって、曲もたまっているし、改めて「EPを出そうか」というところから始まりました。

田中タリラ:でも実際に曲が上がってきて、アレンジするまでの時間はすごく短かった。

マサ:ごめんね(笑)。俺が上げるのが遅かったから。

田中タリラ:2か月で、曲作り、アレンジ、レコーディングも全部やりました。人生で一番長く感じた時間かもしれない。

Yuno:すべてが7月末から10月までの間に起きて、走り抜けた感じなので。僕たちが次のステージに進んだことを見せたくて、アー写もロゴも一新しました。

マサ:ロゴにもすごく意味があるんです。

Yuno:僕らは何もないところから始めてるんで。能力も経験も、胸を張れる過去もないゼロという意味で、前のロゴは、精子と卵子をモチーフにしていたんですよ。そこから1年ちょっと経って、僕らも成長しましたということで、胎児をモチーフにしたロゴを作りました。今後の展開として、ロゴも育っていきたいなというイメージがあります。あんまり言ってないですけど、ここだけの話で(笑)。

▲Dannie May/「DUMELA」

──そして完成した最新EP『DUMELA』。手応えは?

マサ:僕らが今出せる、最高打点が出たと思います。コロナ期間にピアノを始めて、それで作ったのが「ユウヤケ」なんですけど、そういう挑戦もあり、かつ、今までのDannie Mayど真ん中の「灰々(ハイバイ)」みたいなリード曲もあり。全部をアップデートしながら、今の僕らを紹介するにはいい作品になったと思います。

田中タリラ:曲を作る段階で、一番ノリながら作れましたね。自分自身がすごいテンションが上がるものになっているので、それがいろんな人に伝播していけばいいなと思います。これが好きな人が必ずいるという確信はあります。

Yuno:タイトルの『DUMELA(デュメラ)』というのはアフリカのボツワナ語で“よぉ!”みたいな、カジュアルに使う言葉なんですよ。ライブもないし、情報もないし、心配してくれたファンの人たちに対して、「元気だよ」ってカジュアルに挨拶したいという意味もあるし、新しく聴いてくれる人たちに、「俺らはこういうグループなんだよ」という挨拶の意味も含めて、作ったEPです。2人の個性がよく出た曲が入っていると思うし、5曲目の「御蘇 -Gosu-」はずっとライブでやってきた曲だし、新しい僕らと今までの僕らを聴くことができる、すごくいい作品になったと自負しています。

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