【ライブレポート】天月ーあまつきー、幕張メッセ2日目「分厚いサウンドに乗って強烈なシャウト」
8月29,30日の2日間にわたって幕張メッセで開催された、天月ーあまつきーのアーティスト活動10周年の締めを祝うビッグイベント『天月10th Anniversary Live Final!!!』の2日目。初日は「Love&Pop」をテーマに、ラブリーでポップな楽曲連発でにぎやかに盛り上げてくれたが、2日目のテーマは「Rock&Cool」。ロックでクールな楽曲をずらりと揃え、セットリストも半分以上が変わる。無観客、生配信、アリーナ2DAYS、何もかもが初体験の興奮の中、天月が魅せた渾身のパフォーマンスを速報レポートする。
オープニングは初日とは一味違う。楽屋のドアを開け、廊下を歩き、まるで星座のようにライトがセットされた幕張メッセの広いフロアに到着する天月をハンディカメラが追いかけるドキュメンタリー仕立てだ。そして昨日同様、弾き語りで「Dear Moon」を歌うシーンと、スクリーンに映るマスコットキャラ「マサえもん」との軽妙なやりとりへ。「じゃあ、今日はこっち」。天月が「Rock&Cool」のロゴを指さす。ファイナルのファイナル、10周年を締めくくるライブがさあ始まる。
「幕張メッセ、Rock&Cool、二日目ですよろしく!」
黒服ダンサーズを従えて颯爽と登場した天月は、全身黒でスーツのジャケットの下半分がカラフルなプリントになっている奇抜な装い。豪快ロックなスピードチューンでぶっ飛ばす、1曲目は「イデア」だ。ぐるぐる回る七色のライト、ハンディ中心でリアルに迫るカメラワークも昨日とは違う。「This Night」ではステージ前方から火柱がいくつもぶちあがり、ファンキーな曲調に乗せて華麗なラップを披露する。エレクトロ・ロックのスパイスをたっぷりきかせた「Mr.Fake」はダンサーと共に激しい振付をばっちり決め、チェロの重厚な響きがかっこいいハードロック「ヒロイックシンドローム」はとことんラウドで攻撃的に。そう、今日はバンドメンバーにチェリストがいる。昨日はサックス&トランペットだったが、チェロをロックに合わせるとは大胆不敵、しかし想像以上に似合っている。分厚いサウンドに乗って天月が強烈なシャウトを決めた。電光石火の早業で、画面のこちら側の観客の目と耳を釘付けにする、今日の天月、いや今日も天月はかなりヤバイ。
ここからのセクションは、セットリストは昨日と同じ「小さな恋のうた」「きみだけは。」、そして「ホシアイ」。しかし同じなのだが同じじゃない、今日は天月が完全ロックな戦闘モードに入っているため、昨日よりも歌のパワーとエモ度がアップしている。同じ歌でもシチュエーションが変われば気持ちが変わる、表情も目つきも鋭く尖っている。
中盤のバンドメンバー&ダンサー紹介を経て、ミリタリーなテイストの赤いジャケットを身にまとう天月が再登場。挑発的な誘惑ソング「儚きゴースティング」は悪魔的な魅力たっぷりに、そしてダークでグラマラスなタテノリロック「マリオネットラヴァーズ」は激しくスポーティーに。レーザービームの乱れ打ち、強烈なライトの点滅に思わず目がくらむ。運命を切り開く勇者の歌「Ark」は、赤々と燃え盛る火柱を次から次へとぶちあげる。ステージスタッフも気合満点、やりすぎ寸前の過激な演出がかっこいい。
「僕が楽しいこと、やりたいことをやって、みんなが楽しんでくれる。それでWIN-WINですよ」
無観客なら幕張メッセでやる必要はなかったかもしれない。でもこれまでみんなで作ってきた世界観に見劣りするものを作るわけにはいかなかった――。本音をかみしめるようなMCに人柄がにじむ。「久しぶりのライブ、めちゃめちゃ楽しいよ!」と、屈託ない笑顔を見せる。天月は今、生きていることをしっかりと確かめている。
中盤から後半への間をつなぐ、重要なメッセージソング2曲。キーボード弾き語りの「キミとボク」と、アップテンポで突っ走る「Letters to me」は昨日と同じ。だが表情も歌声も違う。夢果てる場所は知らない、旅はまだ続く。きりりと引き締まったその顔は決意の顔だ。
「さあラストスパート、行きましょう幕張!」
黒服とガウンに着替えた天月が高らかに叫ぶ。スクリーンにも星、フロアにも星、スタンドにも星、見事な照明の演出に合わせ、ド派手なスパークラーの火花が飛ぶ。歌う天月の周りをぐるぐる回る、ハンディカメラのリアルなカメラワークがかっこいい。曲中のセリフを噛んで思わず吹き出す、そんな笑顔もまた天然の演出だ。ピアノとチェロのイントロをきっかけに、勢いよく走り抜けるバンドアレンジバージョンの「Dear Moon」の爽快感がいい。最後の一秒まで全力疾走、「ありがとうございました!」と叫ぶ顔がすがすがしい。
アンコールも、昨日とはまるで違うセットリストだ。白のライブTシャツにジーンズ、今日はタオルを肩にかけて颯爽と再登場した天月が、メロディックに疾走する「スターライトキセキ」の高速ビートに乗って元気いっぱい飛び回る。さっきまでの凛々しい表情がほぐれ、アンコールらしいリラックスした顔、声、パフォーマンスだ。さらに続けて告知コーナー、8月31日から「儚きゴースティング」「アイビー」「カラフルタッグチーム」「Letters to me」の4曲のサブスク&DL音楽配信スタートと、さらに自身のブランド「STELLAR store」のポップアップショップの展開、冬に向けての楽曲作りなど最新ニュース、そして2日間の配信ライブ総視聴者が5万人を超えたという、うれしい報告を発表する声がはずんでいる。
「これで終わりじゃなくて、新しいスタートとして、もっともっと天月をみんなに楽しんでもらいたい。これからもよろしくお願いします」
1000円のマイクを買ってしゃべるところから僕は始めましたーー。それはMCというよりも一人芝居のモノローグ、10年分の思いのたけを包み隠さず、時に言葉に詰まりながら語る長いセリフ。自粛期間中の心の葛藤や不安も赤裸々に、かっこ悪いほどにまっすぐ語ってしまう、それが天月。「つまり、やれてよかった、ということです」と締めくくり、涙を隠すように笑顔を見せる、それが天月。なぜ天月がここまで多くのリスナーに支持されるのか、それはただ歌がうまいからだけじゃない。たった一人の部屋から始まった、それは一人の少年のグローイングアップをつづった奇跡のストーリー。
ラストチューンは、残ったパワーをすべて振り絞って歌い上げる「Hello My Story」。宙高く発射された銀テープがキラキラきれいだ。タオルを投げ上げ、ポーズを決める。『天月10th Anniversary Live Final!!!』の2日目、大団円のグランドフィナーレ。――と思ったらまだ続きがあった。昨日のアンコールラスト、もう1曲あると思っていた勘違いに笑顔のリベンジをかますべく、予定外のダブルアンコールを高らかに宣言する天月。「きっと愛って」は、画面のこちら側のリスナー、そしてこの10年間天月を支えてきたすべての人に贈る愛の贈り物。「僕はたくさん愛をもらって幸せものです!」と叫ぶ、その笑顔がキラキラまぶしい。笑顔のメンバー紹介、そして最後の最後、楽屋に戻る天月の背中をカメラが追いかけ、ドアを閉めるところでジ・エンドという、ドキュメンタリーな演出もばっちりハマった。
「これからもこの道は続きます。みんなとまたたくさん遊べますように。バイバイ! またな!」
無観客にも関わらず、いや無観客だからことあらわになった天月の本質。歌い手からボーカリストへ、一人の部屋からアリーナのパフォーマーへ。その歌に元気をもらい、その生き方に勇気をもらう、アーティスト・天月の底力を存分に見せてくれたエポックメイキングな2DAYS。天月はさらに大きくなるに違いないと、ポジティブな可能性しか感じない2時間のショータイムだった。
文:宮本英夫
撮影:Tatsuya Kawasaki(isai.inc)
セットリスト
2020年8月30日(日)幕張メッセ イベントホール
8/30「Rock&Cool」
─映像「マサえもん登場!」─
─OP─
1 イデア
2 This Night
3 Mr.Fake
4 ヒロイックシンドローム
─MC─
5 小さな恋の歌
6 きみだけは。
7 ホシアイ
<BAND&DANCER紹介>
8 儚きゴースティング
9 マリオネットラヴァーズ
10 Ark
─MC─
11 キミトボク
12 Letters to me
─映像「10年間を振り返ってみて」─
13 流れ星
14 Dear Moon
─メイキング映像「みんなに出会えてよかった」─
~ENCORE~
EN1 スターライトキセキ
EN2 Hello,My Story
[DOUBLE ENCORE]
EN3 きっと愛って
◆初日詳細レポへ
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