【ライブレポート】天月ーあまつきー、幕張メッセ初日「明るくハッピーに行こうぜ」
天月ーあまつきーのアーティスト活動10周年の締めを祝うビッグイベント『天月10th Anniversary Live Final!!!』が、8月29、30日の2日間にわたって幕張メッセで開催。もともとは4月に予定されていたこのライブ、コロナ禍により一度は中止になったものの、無観客生配信ライブとして行うことが急遽決定。初日は「Love&Pop」、2日目は「Rock&Cool」という異なるセットリストを用意した、これはまさに10年間の集大成。無観客生配信ライブという未知の体験に、天月はどんな思いで挑むのか? まずは初日の模様をレポートしよう。
オープニングからいきなり面白い。誰もいない幕張メッセの広いフロアでアコースティックギターを爪弾き、「Dear Moon」を歌う天月。「はあ、やっぱりダメだな俺…」とつぶやく声を聞きとがめ、目の前のスクリーンに登場したのはおなじみの「正宗」…ではなく、某国民的アニメのキャラにそっくりの「マサえもん」。「今日ライブやる予定だったのに誰も来てくれない…」と落ち込む天月に、「誰もいないところから天月は始まったんだよね」と励ますマサえもん。会話はコミカルだが、込めた意味はなかなか深い。「10年間の成長を証明してみせる!」と、顔を上げ立ち上がる天月。そうこなくちゃ。ここまでがいわば序章、さあいよいよライブの始まりだ。
サックスとトランペットを加えたゴージャスな7人編成バンドが奏でる、華やかなファンファーレにも似たインストに乗って天月登場。4人のダンサーを従えステップを踏みながら笑顔で歌い踊る、1曲目は「かいしんのいちげき」だ。「幕張メッセ、楽しんでくれ!」と、画面の向こうに届くように思い切り声を張り上げる。スクリーンには漫画仕立てのミュージックビデオ、シャボン玉がきらきら流れ、レーザービームが飛び交う、なんてスリリングなスタートダッシュ。天月はストライプのジャケットに飾りネクタイ、細身の黒パンツに茶色のブーツ。「恋に溺れて」から新曲「ライフ イズビューティフル」へ、ポップなメロディと清涼感たっぷりのハイトーン、ダンサーと一緒に踊るパフォーマンスもばっちり決まった。
「僕だけ楽しんでもしょうがないからさ。見てるみんな全員で楽しもうぜ!」
曲はおなじみMONGOL800のカバー「小さな恋のうた」。もともとのメロコアチューンをピアノポップに変換して、とことん明るく華やかに。「きみだけは。」は、浮遊感覚いっぱいのピアノとエフェクティブなギター、サビの疾走感と共にちょっぴりせつなくエモく。「ホシアイ」はポップな中にロマンチックたっぷりに。ひとことで「Love&Pop」と言っても、天月の歌う楽曲にはいろんなカラーがある。
7人のバンドメンバーと4人のダンサーを紹介したあと、太めのパンツにスニーカー、パーカーにブルゾンのストリートファッションに着替えて天月再登場。おや、手にペンライトを持っている。そう、次の曲は「月曜日の憂鬱」、アイドルに恋しちゃった男の子の一途な思いを描くバーチャルラブストーリーにペンライトは欠かせない。そのままの勢いで「Sing!Swim!Swing!」になだれこむと、ステージ後方で風にそよぐ青赤黄の巨大なエアチューブ、20名にもなろうかというエキストラダンサーズ、それはまるでミュージカル映画のような華やかなシーン。ファンキーでノリノリの「カラフルタッグチーム」から高速ロックチューン「ファンサ」へと、息継ぐ暇もなく駆け抜ける。このセクション、スピード感が半端ない。
「ライブができなかった期間、たまりにたまった思いを今日ここで、歌で伝えられたらなと思っています」
そんな言葉に続いて歌われた「キミトボク」は、幻想的な青いライトと白いスモークが流れる中、天月のキーボード弾き語りでしっとりと。アーティストとしての始まりをつづった自伝的歌詞が、10年経った今だからこそじんわりと胸に沁みる。4月時の開催のために作っていた「Letters to me」は軽快なアップテンポだが、「キミトボク」と同じアーティストとしての決意とファンへの感謝をつづるメッセージチューン。そしてスクリーンには「10周年yearありがとう!これからもよろしく!」の文字。言いたいことはすべて歌に込めて伝える、それがアーティスト・天月の哲学。
「さあラストスパート、行こうぜ幕張!」
映像を使った10周年への感謝のメッセージでしんみりさせたあと、急転直下のシチュエーションチェンジ。黒服に宇宙模様のガウンに着替えた天月が再登場、星空きらめくスクリーンをバックに歌うのは「流れ星」だ。ステージ前ではスパークラーの火花がド派手にぶちあがり、ライブのクライマックスをとことん盛り上げる。「今日はみんなが一つになった日、本当にありがとう!」と叫ぶ。ラストチューンはバンドアレンジバージョンでの「Dear Moon」だ。鋭いギター、はじけるピアノ、高低差の激しいメロディを完璧になぞる歌。輝きを絶やさぬように――それは天月がアーティストであり続ける限り、ずっと持ち続けるだろう大切なテーマ。
「よっしゃ、アンコール行くぞ!」
リハーサルやステージ設営のドキュメント映像とナレーション、「みんなに会えてよかった」といううれしいセリフのあとにステージに飛び込んできた天月が、画面の向こうのファンを煽る。曲は「恋人募集中(仮)」だ。白のライブTシャツ、腰巻きにしたチェックのシャツ、ジーンズ、スニーカーという飾らない格好で、ダンサーと共に歌い踊る姿はまるでティーンエイジャー。そしてホーンセクションを加えた分厚いサウンドで突っ走る「きっと愛って」は、愛について明るく深く考察するスピードポップチューン。レーザーが飛び、銀テープが飛び、ここまで歌いっぱなしでもまったく疲れない圧巻のハイトーンが宙に飛ぶ。いろんなことがあったけど、最後は明るくハッピーに行こうぜとけしかける、それは今の時代に対する天月からのメッセージだ。『天月10th Anniversary Live Final!!!』の初日、これにて無事完結。
では次の曲…え、あれ、曲ない? 終わった? まさかの「マジでもう1曲あると思ってた」ハプニングでメンバー(と、たぶん画面のこっち側のファン全員)を爆笑させた、これが天然無欠の天月クオリティ。「やべー、締まんねー」とマジであわてながらも、「明日があるというのは素敵なことです。またみんな遊ぼうぜ、ありがとう!」と、かっこよく締めくくってジ・エンド。笑いあり感動あり、メッセージあり感謝あり、天月のすべてを、いや半分を見せ切った『天月10th Anniversary Live Final!!!』の初日。もう半分は明日のお楽しみ。どんなライブをしてくれるのか、24時間後ががぜん楽しみになってきた。
文:宮本英夫
撮影:Tatsuya Kawasaki(isai.inc)
セットリスト
2020年8月29日(土)幕張メッセ イベントホール
8/29「Love&Pop」
─映像「マサえもん登場!」─
─OP─
1 かいしんのいちげき
2 恋に溺れて
3 ライフ イズ ビューティフル
─MC─
4 小さな恋のうた
5 きみだけは。
6 ホシアイ
<BAND&DANCER紹介>
7 月曜日の憂鬱
8 Sing!Swim!Swing!
9 カラフルタッグチーム
10 ファンサ
─MC─
11 キミトボク
12 Letters to me
─映像「10年間を振り返ってみて」─
13 流れ星
14 Dear Moon
~ENCORE~
─メイキング映像「みんなに出会えてよかった」─
EN1 恋人募集中(仮)
EN2 きっと愛って
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