【レポート】<TODD TERJE JAPAN TOUR 2019>北欧ディスコが聴きたくて……多幸感あふれる一夜
クラブミュージックのなかでも、ディスコは人をハッピーに、エネルギッシュにして、そしてひとさじの官能をも感じさせるジャンルだと思う。そんなディスコシーンを牽引するトッド・テリエが来日した9月28日土曜日の夜、渋谷Contactには多くのディスコファンが集った。
■ノルウェーのディスコヒーローが
■再びContactに
米ローリングストーン誌の「世界のトップDJ25人のひとりに選ばれた」トッド・テリエが、昨年の来日から再び渋谷Contactに降り立った。
彼を筆頭に、オスロ在住のケッペン、タウロウ 、そしてトッド・テリエ作品のアートワークを担当するベンディク・カルテンボーンの3人によるユニットDJ スムース・フォーリング、Sayo Yoshida、Yamarchy、Kenji TakimiらがバーカウンターのあるContactフロアを担う。DJスムース・フォーリングは心の浮き立つサウンドを選び、零時前には、すでに人が自然とフロア前方に集まって踊っていた。スパンコールの煌めくワンピースやビジューの目立つゴージャスなファッションの客が見受けられ、「ディスコ」の空気感を会場全体が醸していた。
そして一角には、ベンディク・カルテンボーンの作品が。テリエファンならレコードジャケットなどでお馴染みのイラストが大版で拝める、貴重な機会だ。
メインステージStudio Xでは、オープンにダビー&サム・フィッツジェラルドが出演。序盤からやや重めでダークな雰囲気を醸しているけれど、自然と笑みのこぼれる癒しのサウンドで人々を熱狂させていた。ミラーボールの光が、まるで熱帯雨林の木漏れ日のように私たちを照らしている……そう感じるのは、その音がどこかナチュラルな、濡れた音だからかもしれない。気持ちの良い音に思わず歓声をあげる人が、夜が深まるにつれて増えていく。
零時、kikiorixが前のメロディに重みのある妖艶な音を重ねてバトンタッチ。ディスコではあるが重低音をとても効かせていて、心臓に直にクる音。感極まった叫びや、ゆらゆらと気持ちよさそうに回って踊る人が見受けられ、フロアの皆が音に酔いしれているのが伝わってきた。
予定の2時よりやや早く、トッド・テリエがステージにあがると、割れんばかりの歓声と熱気でもみくちゃにされた。70年代のクラブを彷彿とさせるニューディスコ・サウンドから、音だけに集中させるような重みのある音までを駆使し、さすがはディスコシーンの牽引者たる存在感を溢れんばかりに発揮していた。4時を回ったころに、大ヒット曲The Gene Dudley Group の「Inspector Norse」カバーバージョンを観測。名曲が、より躍らせるサウンドにして私たちに届けられ、この夜一番の盛り上がりに。
朝5時を回ってもフロアの人々の熱気は収まることがなく、テリエはいったん音を切るものの、あまりのアンコールの渦に曲を続ける。タブ・レイ・ロシュロー「Hafi Deo」の、太陽が昇る朝を思わせるサウンドが、皆で夜を越しためちゃくちゃなテンションの残る夜明けにぴったりだった。ラストは、80年代にリリースされて大ヒットし、今やクラブの「みんなの唄」とも言えるTotoの「Africa」のリミックスで締め、フロアは爽やかな空気に包まれる。
フロアにコップを落としてしまっても歓声があがるほど、会場全体がハッピーオーラに包まれていた。クラブはただの箱ではなく、ジャンルによってその姿を大きく変える。ディスコの現場は、大胆に場を使って踊ったり、ステップを踏んだり、「フロアを楽しむ」人がとても多い。直感的に楽しめる、それがディスコの醍醐味だ。
帰宅して眠りにつき、目が覚めると、「昨晩はいったい何だったんだろう……?」とぽかんとしてしまう。夢の国に行ってきたような、狐につままれたような、けれど大きな幸福感だけが心に残って取れない、そんなパーティだった。
取材・文・写真:MORISAMA
◆Contact オフィシャルサイト