【詳細レポート】SHIN、ソロ第2章の幕開け
ヴィジュアル系ロックバンド、ViViD解散後はソロ・アーティストとして自作曲を歌い、音楽活動を始動させたSHIN。8月7日には早くもソロ3作目となるアルバム『AZALEA』をリリース、それにともなうワンマンツアー<Alternative Sublimation>を東名阪で開催。大盛況に終えたこのツアーのなかから、自身の誕生日である9月4日、東京・LIQUIDROOMで行なったツアー最終日のレポートをお届けする。
◆ライブ画像
様々な葛藤を経て、3年前にソロ活動を本格始動。そのときから毎年誕生日にはここリキッドでワンマンライブを行ってきたSHIN。こういう企画めいたライブは、番外編的な立ち位置になりがちだが、SHINの場合はむしろ、今後のSHINをもっとも早く体感できる場となっている。今日目の前に現れた彼は、驚くほど肩の力が抜けていて、表情も柔和で、ここからSHINの音楽性がもっと洗練され、さらに高いところへと羽ばたいて行くことをたっぷり予感させるものになっていた。今回のワンマンツアーは、いわばソロになって以降の自分の“これまで”と“これから”を“鎖”と“光”というテーマで分けて、2部構成で表現していくという新たな試みにチャレンジしたものだった。
第1部がスタートすると、ステージを覆っていた幕がオープン。目の前には天井から垂れ下がったチェーンやコイルがズラリ。サポートメンバーの前には金網の柵が置かれるなど、いつものリキッドとはかけ離れたステージの装飾にまずは圧倒され、フロアからは感嘆の声があがる。大きなフラッグを背負い、ワイルドな振る舞いで登場したSHINは、ビッグサイズのTシャツの袖を切ったノースリーブ姿。メンバーを含め、全員が黒づくめ。ライブは「4444」で勢いよく幕開け。ライブで鍛え上げた破壊力満点のギターサウンドが満場のフロアに響き渡る。
ソロをスタートさせて以降、ラウドなギターロックの音圧にまみれながら、エモーショナルな唱法で英語詞を叫ぶSHINのステージングが浸透してきたことを示すように、オーディエンスはしょっぱなから激アツな盛り上がりで応戦。拳を勢いよく突き上げてOiコールを叫び、ジャンプを繰り返すフロアに向かって、SHINはいまやライブのキラーチューンへと育ったソロ始まりのナンバー「jack the ripper」までノンストップで激しくフロアを揺らし、会場の熱量をどんどん高めていった。
「よーこそリキッド、いい景色作ろうぜ」とSHINが挨拶したあと「ぶっ壊せ!」の声を合図に「Miss Lily」ではフロア中の観客の頭上でタオルが勢いよく旋回。続けて、SHINの音楽の原点でもある「GLAMAROUS SKY」のカバーでメロディアスな歌をとき放つと、とたんに爽快感たっぷりの景色が広がり、盛り上がりは沸点を迎えた。
聞き手の身体にダイレクトに作用する狂騒感たっぷりのサウンドは、ショートSEを挟んで突入した終盤戦からその雰囲気をガラリと変える。SHINがギターを構えて始まった「9 deadly sins」のイントロからバンドサンドはこれまでとは異なる研ぎ澄まされた世界観へとギアをシフト。深く沈み込んでいくようなダークな色彩感をもった壮厳な音像が響き渡るなか、SHINはじわじわと心の深淵の奥底を刻み込んでいくようなヴォーカリングで、聴き手をひとり残らず楽曲の世界へと引き込んでいって1部は終了。
ステージ上のカーテンが閉まり、そこに時計が逆回転映していくムービーが映し出される。このような映像を使った転換も、ツアーでは今回が初の試みとなる。巻き戻された時代が、刻々と現代へと近づいていって、“令和”の年号が映し出された直後、カーテンが開くと、ここから最新アルバム『AZALEA』を表現する第2部がスタート。
金網がなくなったステージに最初に登場したのは、真っ白いブラウスに着替えたSHIN。1部とは真逆の明るい照明がSHINを照らすと、白いブラウスに、気品漂う端正なルックスが映える。そうしてバックバンドがいないなか、静かに「AZALEA」を歌い出す。懐かしい記憶を蘇らせるような幻想的なメロディにのせた日本語詞を、さっきまでステージに立ってたSHINとは別人のようにミックスボイスを使った美しい歌声で、情感たっぷりに歌う姿に観客たちは笑顔を浮かべながら陶酔していく。華麗な立ち振る舞い、柔らかに動く指先、1部とは唱法から音楽性、照明からステージングまでもが対照的だ。
バンドがオンステージ後、SHINのアコギのストロークから始まったのは「SHIRABE」。真っ白い衣装に着替えたメンバーが鳴らすアンサンブルは軽快なビートを刻み、SHINのファルセットが気持ちよく天空へと抜けていく。続けて「Mirage」が始まると、エフェクティブなギターでさらに視界は開け、サビパートでドラムに合わせてオーディエンスが楽しそうに手を左右に振ると、心地よい風が場内を吹き抜けた。
「改めましてこんばんは。ツアーファイナルへようこそ」と笑顔で短い挨拶をしたあと、SHINは新作『AZALEA』について「みんなと楽しめるアルバムを作りました」と解説。そして、次に演奏する曲は「みなさんと踊りたい」と提案し「私、可愛い振りを考えてきました。これ、みんなでやると絶対可愛いから」といって、手を広げて羽をはためかす振りをオーディエンスに自らレクチャーしていく。いままでなかったようなSHINとオーディエンスとの触れ合いで、場内はなんともいえないピースフルな空気に包まれ、そのあとに放った「センターオブトーキョー」はファンキーなダンスグルーヴと可愛い振り付けがあいまって、歓喜溢れる盛り上がりとなった。
タオル回しが沸き起こった「6inchの凶器」からの後半戦は、再びロックモードへシフト。「俺は普段道を歩くときはずっと下向いてる。それぐらい人見知りなんだ。でも、みんなの前だと自分をさらけ出せる。だから、お前らもさらけ出してくれー!」──SHINのエモーショナルなMCが熱いコール&レスポンスを呼び起こし、そこに希望感をたっぷり含んだ「just going true side」を勢いよくぶちまけてみんなを笑顔にしたあと、最後に「花」を歌い届けて2部は終了。「歌い続けられる限り、歌いたいと思います」といってSHINはステージを後にした。
アンコールはSHINの誕生日を祝ってオーディエンスがバースデーソングを歌って届けると「みんながこうしてライブに来てくれることが一番の誕生日プレゼントだから」と、お礼を伝えたSHIN。そうして、このあとはソロになってからの自身のことを振り返った。
バンド解散後は自分の弱さを克服することと自分がやりたい音楽を見つけるために自分自身と必死に向き合ってきたこと。そうして3年前、自分がやりたい音楽を詰め込んだ1stアルバム『Good Moring Dreamer』でこのシーンに戻ってみると「僕のやりだしたソロが、僕に対して期待していた姿と違った人も(ファンのなかには)たくさんいた」ことを告白。それでも、1stアルバムに続く2ndアルバム『on my way with innocent to「U」』でもひたすら自分と向き合いながらやりたい音楽を追求し続けた結果、いまは自分ではなく「こうやったら“みんな”が喜んでくれるかな」ということを考えられるようになり、3rdアルバム『AZALEA』が完成したことを打ち明けた。そして「今年、ようやくみんなを違う景色に連れて行く決心がつきました」と言って、1stツアー以降、封印していたSHINと愛すべきファンにとって大切なバラード「2015.4.29」を最後に絶唱し、この日のライブは終了した。
まさに、これまでのSHINと、これから始まる輝かしきソロ第2章、その幕を開けの瞬間を目撃することになったこの日のライブ。今後の活動については、ライブ終演後に12月22日、東京・TSUTAYA O-EASTでワンマンライブ<原点回帰〜from the beginning〜>を開催すること。また、12月21〜23日にかけて東京・デザインフェスタギャラリー原宿において、ViViD解散後からSHINが本格的にソロ復帰するまでの空白の2年間を収めた写真展<空白>を開催することを発表。
ソロ第2章が幕開けしたこの日のライブを節目に、SHINのこれからは、みんなとともに歩んでいく。
取材・文◎東條祥恵
撮影◎インテツ
セットリスト
M2 paradox
M3 rose / ANNA inspi' NANA(BLACK STONES)
M4 jack the ripper
M5 Miss Lily
M6 GLAMOROUS SKY
M7 9 deadly sins
M8 diluculo
M9 WEAKEND
M10 AZALEA
M11 SHIRABE
M12 Mirage
M13 センターオブトーキョー
M14 6inchの凶器
M15 just going true side
M16 花
En
M17 on my way with innocent to 「U」
M18 2015.4.29
ライブ情報
2019年12月22日(日)東京・TSUTAYA O-EAST
開場17:15 / 開演18:00
チケット料金:前売り ¥5,200(税込 / 別途D代)
座種:1Fオールスタンディング、2F指定席
[チケット]
■ファンクラブ[echoes]会員
2019年9月5日(木)12:00〜9月16日(月祝)23:59
※上記受付期間内にFCに入会いただいた方が申込対象
■WEB有料会員
2019年9月19日(木)12:00〜9月27日(金)23:59
■一般発売
2019年10月20日(日)10:00〜
写真展情報
2019年12月21日(土)〜23日(月)東京・デザインフェスタギャラリー原宿
入場無料
※開場時間など他詳細は後日発表
「SHIN」が歩んできたバンド解散後からソロになるまでの明かされなかった2年間
「空白」の中に刻まれた苦悩・希望・葛藤の中知られざる当時の姿を初公開となる写真展開催
これは シンとSHINの間のストーリー
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