【ライヴレポート】HYDE、ツアー開幕「やっとここから始まる。誰にも負けない！」

ソロとしては約13年ぶりとなるオリジナルアルバム『ANTI』を6月19日にリリースしたHYDE。アジアツアーおよびアメリカツアーを経て、『ANTI』を中心にしたセットリストや演出も新たに、全国7都市をめぐる籠城型ツアー＜HYDE LIVE 2019＞が6月22日、ZEPP TOKYOにてスタートした。

◆HYDE 画像

HYDEにとって令和初の国内ツアーの開幕であり、籠城型ツアーの基点となるZEPP TOKYOでの101回目のライヴとなったこの日。異国情緒溢れるサイバーパンクな都市を彷彿させるステージに現れたHYDEは、ツアーの始まりを告げるアグレッシヴな曲の合間、観客を煽るように叫んだ。

「Are You Fuckin’ Ready ⁉︎」

その言葉に導かれるまでもなく、ZEPP TOKYOのフロアは開演直後からカオス状態の盛り上がり。シングルナンバー「FAKE DIVINE」や「AFTER LIGHT」といったおなじみのライヴチューンはもちろん、「OUT」や「SET IN STONE」など、極上のメロディーとラウドロックやオルタナティヴサウンドが融合した『ANTI』からの新曲が次々と披露されていく。


それにしてもアジアツアーおよびアメリカツアーで鍛え上げられた歌声とバンドサウンドが作り出すグルーヴの威力が強靱で、すでにステージとフロアのコール＆レスポンスはパーフェクト。ビートに合わせてヘッドバンギングをしたり、拳を突き上げたり、ガタイのいい男性ファン集団が次々とダイバーをリフトさせたりと、誰もがその激しいビートを思い思いに楽しんでいる。

「魂の入ってないロボットみたいなアルバムが、みんなの力によって完成形になる。俺もまだ『ANTI』の完成形をみたことないから。中途半端な反応じゃ、完成形とは言えないからな！」

HYDEがそう叫ぶと、『ANTI』の世界がさらに凄まじい熱を帯び、光を放ち始める。


アメリカの音楽シーンに向けてCrown the EmpireやMotionless In White等を手掛けるDrew Fulk、AviciiやAll Time Low等の楽曲を手掛けるNicholas Furlongをプロデューサーに、Papa Roachや5 Seconds Of Summer等の楽曲を手掛けるColin Brittainといったアメリカの音楽シーンの第一線で活躍するクリエイター勢を迎えて制作されたアルバムが『ANTI』だ。「ライヴで盛り上がる曲だけが入ったアルバム」を目指して制作された『ANTI』は、ツアーを待ちわびていた観客のエネルギーと融合して初めて、最大限のポテンシャルを放つ。今、目前で起きているこの熱狂こそ、HYDEが思い描いていた「ライヴで盛り上がる曲だけが入ったアルバム」『ANTI』の理想の姿なのだ。

全米ツアーに合わせて、6月19日のCDリリース日より約1ヵ月半早く全世界で全曲配信されていたこと。そして、昨年のツアーでもすでにアルバムからの新曲が披露されていたこともあってか、『ANTI』のリリースからわずか3日とは思えないオーディエンスの反応に、「今年はスタートダッシュがいい。明日が恐ろしいね。もう、どうなっちゃうのかな？」と、嬉しそうにHYDEがフロアに話しかける。アメリカでは、時にはアウェイに近い状況も経験するからこそ戦い甲斐もあるのだと思う。それでも、こんな風にアルバムに描いた理想の熱狂を共に作り上げてくれるオーディエンスがいることが、何よりも力強いモチベーションと誇りになっていることは間違いないだろう。アンコールの最後、「こっちから見ると癒されるんだよね」というHYDEのリクエストで観客のスマホのライトだけが光る景色の中、フロアに向かってHYDEが静かにこう話し始めた。

「こういう演出も君らの力が必要だからね。やっとここから始まる。みんなついて来いよ。俺らは誰にも負けないから！ みんな本当に愛してるよ。ツアーを最後まで見届けてください」

ツアー初日にして完璧なほどの熱狂。果たして最終日にはどんなことになってしまうのか。音楽人生を賭けたHYDEの反抗(＝ANTI)という名の創造の始まりは、ますます面白いことになりそうだ。

取材・文◎早川加奈子
撮影◎田中和子