【ライブレポート】澤野弘之、熱狂する5,000人に示した揺るぎない決意「みなさんと、10年、20年とライブをやっていきたい」
澤野弘之が、2019年6月9日(日)に神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにてワンマンライブ<澤野弘之 LIVE [nZk]006>を開催した。
◆澤野弘之 画像(全13枚)
澤野のワンマンライブは、3月6日、7日の<SawanoHiroyuki[nZk] LIVE "R∃/MEMBER">(東京チームスマイル・豊洲PIT)以来3ヵ月ぶり。LIVE[nZk]シリーズとしては、2018年5月13日(日)に同じくパシフィコ横浜 国立大ホールにて開催した<澤野弘之 LIVE [nZk]005>から約1年ぶりとなった。西川貴教やLiSA、Aimer、SUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN)、岡野昭仁(ポルノグラフィティ)、スキマスイッチ、Uru、さユり、ASCAなど、豪華なゲストが参加した最新作『R∃/MEMBER』を経て、この日は岡野昭仁(ポルノグラフィティ)、スキマスイッチ、さユり、 ASCAがゲストボーカルとして出演。同作の楽曲をはじめ、これまで発表してきたボーカル曲や劇伴インスト曲など、澤野の幅広い音楽性を存分に堪能できる公演となった。
『R∃/MEMBER』のオープニングナンバー「Glory -into the RM-」のイントロ部分とTVドラマ『医龍-Team Medical Dragon-』の劇伴曲「BL@CK」をシームレスに繋いだインストナンバーから口火を切った<LIVE [nZk]006>。ライブ序盤は、「Vigilante」「Warcry」「S_TEAM」といった澤野らしいアーバンな薫りが漂うデジタルロック系のボーカル曲をアクト。デジタルサウンドを活かしながらも卓越した技術を持つバンドによって有機的なグルーヴを生み出していく。その中で、彼のライブではお馴染みのボーカリストmpi、Gemie、Elianaは、その実力の高さを見せる。mpiは熱い歌声とともに積極的にオーディエンスをアジテートし、R!N名義でAldiousのゲストボーカルを担当していたGemieはより逞しさが増した歌声を響かせ、Elianaはディーバ然としたパワフルなフェイクで観客を圧倒した。「NEXUS」と「Zero Eclipse」を担当したLacoは、澤野のライブに初登場のボーカリスト。力強さを持ちながらも、どこか色気を感じさせる歌声は、澤野の楽曲にまた新しい彩りを加えていた。
▲mpi
▲Gemie
▲Eliana
▲Laco
澤野がスキマスイッチの2人をステージに呼び込むと、ひときわ大きな歓声が上がる。スキマスイッチのリアレンジ・リプロデュース・アルバム『re:Action』の「Ah Yeah!!」を澤野がプロデュースしたことをきっかけに、『R∃/MEMBER』へのスキマスイッチの参加とこの日の共演が実現。“スキマスイッチが自分のライブに出演しているのは不思議な感覚”と澤野が語ると、即座に“(自分たちを)呼んだのは澤野くんでしょ(笑)!”とツッコむスキマスイッチ。このやり取りに、会場には大きな笑いが起こった。澤野はスキマスイッチを迎えて、『R∃/MEMBER』収録のスキマスイッチ参加曲「never gonna change」と「Ah Yeah!!」をパフォーマンス。澤野のアルバム曲である前者ではスキマスイッチのような爽快感とポップ性に溢れたメロディを聴かせ、原曲がスキマスイッチの後者では澤野らしいボトムの効いたバンドサウンドを放つ。高い音楽性を持つ2組が共鳴し合い、お互いの個性をさらに高め合う濃密な音像を生み出していた。
▲スキマスイッチ
MCでは、『R∃/MEMBER』のタイトルにかけて“思い出した”こととして、小学校3、4年生の時にセクシーな挿絵が気になって『究極の選択』という本を購入したことが母親にバレてしまった話を赤裸々に披露。ライブの後半に登場する岡野昭仁(ポルノグラフィティ)から壮大な音楽性に対して緩急の“緩”が過ぎるMCと評された澤野らしい飾らない人柄が表れたトークを展開していた。
“Side【emU】”と銘打たれた中盤は、「K2-」「T:T / Call of Silence」「ətˈæk 0N tάɪtn<WMId>」「Apple Seed」の4曲を組み合わせた“進撃の巨人メドレー”と、「銅鑼Gong4N」「DRAGON RISES」「fire9d」といったインスト曲を中心とした劇伴の数々をパフォーマンス。山内“masshoi”優(Dr)、田辺トシノ(B)、飯室博(G)、椿本匡賜(G)、室屋光一郎(Vn)、相澤光紀(マニピュレーター)という澤野のライブを長年支えているバンドメンバーたちによる鉄壁のアンサンブルが、壮大な音世界を構築していた。
“ここから勢いのある曲をお届けします。生きているか、横浜!”と叫ぶと、澤野はライブ本編のフィナーレに向けて多彩なサウンドを描いていく。映画『プロメア』のテーマ曲であり、Benjaminとmpiの熱いツインボーカルが高揚感を誘うロックナンバー「Inferno」、乾いたアコースティックギターと憂いのあるメロディが融合した「Next of Kin」、Tielleが叙情的なメロディを表情豊かに歌い上がるバラード「Cage <NTv>」、GemieとTielleの強力なハーモニーによって大きな熱狂を生むアッパーなナンバー「gravityWall」を投下。
▲Benjamin
▲Tielle
観客のボルテージが上がったところで、アコースティックギターを携えたさユりが登場。“かつて同じイベントに出演した時に、魅力的な声だと思った”と澤野がさユりの印象を口にすると、さユりも『R∃/MEMBER』で自身がボーカルを担当した「ME & CREED <nZkv>」について“日本語詞が好きなんです。自分のことが見透かされているような、まるで自分の内側を光の剣で突き刺されたような気持ちになった”という独特な表現で語った。さユりを迎えて、「ME & CREED <nZkv>」と、さユりとMY FIRST STORYのコラボ曲「レイメイ」のカバーを披露。少女のようなイノセンスさを持ちながら、どこか儚さも宿したさユりの歌声は、これまで[nZk]プロジェクトに参加してきたボーカリストとは異なるもので、澤野の音楽の味わいを広げるものであった。また、「レイメイ」は、澤野が“本当のアップテンポ”と話していたように、彼の楽曲にはあまりないスピーディなテンポ感の楽曲だったため、このライブの中でのアクセントの1つになっていた(ちなみに、澤野は、3月の豊洲PIT公演に出演した西川貴教からアップテンポの感覚が“遅い”という指摘を受けていた)。
▲さユり
本編の最後にステージに登場したのは、ポルノグラフィティの岡野昭仁。岡野と澤野は、それまで音楽的な接点があまりなかったため、『R∃/MEMBER』のゲストボーカルとして彼の参加が発表された時には、その意外性に驚いた。しかし、歯切れのよさと力強さを有した彼の歌声は、グルーヴ感を重視する澤野の楽曲と見事にマッチし、彼が担当した「EVERCHiLD」はアルバムの中でも大きな存在感を放っていたのだ。この日、雨男という共通点を見つけた澤野と岡野は(この日のみならず、3月の豊洲PITの2デイス公演、昨年12月の上海公演、昨年5月の<LIVE [nZk]005>も雨であった)、ステージ上で大きな化学反応を起こす。大きなスケール感のバンドサウンドに乗りながら、岡野は長年音楽シーンのトップを走り続けて来たシンガーとしての実力を発揮した説得力のある歌声を響き渡らせる。会場のテンションを最高潮に押し上げて、メンバーたちはステージを後にした。
▲岡野昭仁(ポルノグラフィティ)