【インタビュー】杉山清貴&オメガトライブ、35周年“ラスト”ツアーの真相
杉山清貴&オメガトライブがオリジナル・メンバーで再集結し、全国ツアーを回る。それがどれほど夢のような出来事か、あの時代を共に過ごした人間にしかわからないことかもしれない。活動期間わずか2年8か月、「ふたりの夏物語」「サイレンスがいっぱい」など80年代を象徴する大ヒットを残し、あっという間に時代を駆け抜けた伝説的バンド。2004年と2018年に限定的復活はあったものの、これだけ大規模なツアーはおよそ34年振りになる。しかもタイトルは<杉山清貴&オメガトライブ 2019 Last Live Tour>。意味深なそのタイトルの真意は何か? 杉山清貴が語る。
◆ ◆ ◆
──このインタビューをしている時点で、ツアーは序盤の3本が終わったところ。調子はどうですか。
杉山:いやもう、むちゃくちゃ楽しいです。本当に楽しくて、終わるのがもったいないなと思ってます。
──やっぱりあれですか。ツアー前には、筋トレしたり走り込んだり。
杉山:全然しないです(笑)。でもメンバーの中で、してる奴はいると思いますよ。僕に隠れて(笑)。去年の5月の野音の時より、明らかに痩せた奴とかいますから。髪を伸ばしたりして、しゃれっ気を出す奴がいたり。
──今回のツアーは、その日比谷野音以来のバンド再集結です。
杉山:本当は、去年の野音が終わった流れで、年内にツアーを組みたいなと思っていたんですけどね。会場の問題、メンバーのスケジュールの問題があって、年明けの2月スタートになりました。
──元々デビュー35年はみんなでツアーをしたいと、杉山さんの中では決めていた?
杉山:いや、決めてたわけではないんですけど、せっかく35周年をやるんだったら、オメガトライブのメンバーを集めてやりたいとは思ってました。この周年を逃すと次は40周年だから、そうなるとメンバーも60代半ばになって、その前にやっておきたいなという感じは正直ありました(笑)。まだ体力があるうちに。
──いやいや。絶対やれてると思いますけどね。
杉山:その時になってみないとわからないですけどね。まだ想像の域ですけど、とりあえず、今できるならやっておこうということです。野音のリハーサルが始まったぐらいの時に、「ツアー回れるかな」という話をして、本当は年内中にやりたかったんですけど、無理だったので。周年を丸々1年ととらえて、36周年ぎりぎりまでできたらいいなということになりました。おかげさまで、野音は別として、最終日の神奈川県民ホールがちょうど36周年なんですよ。
──1983年4月21日、「SUMMER SUSPICION」でデビュー。まさにこの日。
杉山:そこで終わりにするつもりだったんですけど、僕は毎年日比谷の野音をやらせてもらっていて、今年も5月5日のスケジュールが取れたので、じゃあもう1本やっちゃおうと。
──アンコールというか、うれしいおまけ的な。
杉山:そうです。おまけですね。ツアーのチケットも場所によってはソールド・アウトになってきてるし、じゃあもう1本やって締めようかという感じです。
──ツアーを組むとなると、メンバーを全員集めるのって、大変じゃなかったですか。説得したりとか。
杉山:いや、特にそういうことはなかったですよ。みんな「やるやる!」という感じでしたね。ミュージシャンをやってるのは僕とドラムの奴だけで、あとはみんな自分の仕事を持っている自営業が多いので、会社員がいないのが良かったのかもしれない。休ませなくて済むから(笑)。
──去年の野音の時点で、再集結は14年振りですよね。久々に音を出した時の、最初の感覚は?
杉山:リハーサルで音を出した時に……僕はその前にみんなに「このリハーサルはリハビリですから」と言いふらしてたんですね。ところが、リハーサルの初日にもう完全に音が出来上がっていて、「こいつら自主練習してきやがったな」と思った(笑)。ちゃんとやってたみたいで、「これなら全然行けるな」と。僕は、もっとひどいと思ってたんですよ。大丈夫かな?と思ってたんですけど、実際、ドラムが現役なので。ドラムと歌がしっかりしていれば、あとは何とかなるだろうと。
──バンドのタテのラインがビシッと揃っていれば。
杉山:大丈夫だと思ったんですけど、「何だ、意外にやるじゃん」みたいな感じで。これだったらまだ行けるぞという思いがありました。
──再集結は、同窓会みたいに見られることもあるかもしれないですけど、そうではなくて……。
杉山:同窓会です。
──あ、いいんですか(笑)。
杉山:ええ、同窓会で全然いいんです。ファンの方も含めて、みんなの同窓会です。実際、最初の活動期間は2年8か月で、ボーンと売れて全国的になったのは2年目ですから。「これから」という時に解散しちゃったので、「え? せっかくコンサート行きたかったのに」という人が山ほどいたわけですよ。ですから、そんな人たちのフラストレーションのかたまりがワーッと押し寄せてきて、「よし、じゃあやろう」ということになったんです。
──フラストレーションとは違うと思いますが(笑)。
杉山:でも本当にみなさん喜んでくれてね。「まさかオメガのオリジナル・メンバーでライブが見れるとは思わなかった」って。いくら僕がソロでオメガの曲をやっても、あまり喜んでくれないんですよ。
──そんなことはないです!
杉山:いや喜んでくれないから、何だよみんな!って(笑)。でもね、あの連中とやると喜んでくれる。それはね、確かにそうなんですよ。やっぱり、たとえば僕みたいなビートルズ・ファンは、あの4人の姿が見たかったわけで、いくらポール・マッカートニーが頑張ってくれていても、「やっぱりなー」って思うのと同じでね。
──うーん。それは確かに。
杉山:あとは、よくあるバンド復活の裏話で、誰かと誰かがトラブルを起こしたとか、あいつとあいつが仲悪いとかもなく、本当に楽しくやれているので。10代からの付き合いですからね。ギターの二人なんて、中学時代から一緒のバンドでやってますから。だからもう、絆ですよ。殴り合いしても、次の日には一緒に酒飲んで笑ってる、そういう付き合いですから。それが還暦を前にしても、全然変わらずにいます。
──とはいえ、たとえば打ち上げがおとなしくなったとかは。
杉山:それはあります。一軒目でおしまいです(笑)。次の日のことを考えちゃいますから。お金もかからなくていいですし(笑)。
──お客さんも、共に年を取ってきた感じですか。子供を連れてくるとか。
杉山:全然ありますよ。大きい子は20代になってますから、親の影響ってすごいなと思います。洗脳ですよ(笑)。みんな一緒に歌ってますからね。
──少しだけ昔話をしていいですか。オメガトライブがあの頃、あれだけ受け入れられたのは、何が理由だったと思ってますか。
杉山:やっぱり、時代ですね。80年代の、バブル前で、本当に世の中が活気づいていて、若者たちがいろんなものに貪欲になって、「早く大人になってこういうことがしたい」と思う時代だったので。情報もたくさんありましたし、そんな中でオメガトライブみたいに、大人の恋愛を歌うラブソングが出てきた時に、10代の子たちが「早く大人になってああいう恋愛がしたい」という憧れが持てて、本当に時代と共にいたバンドかなと思いますね。
──ある意味、非日常的なシチュエーションというか。
杉山:非日常ですね。「こんなナンパの仕方しないだろ普通」みたいな。
──砂にルームナンバーは書かない(笑)。
杉山:書かないですよね(笑)。でもみんな、そういう思いで聴いてたと思うんですよ。いい小説を読んでいるような、4分ぐらいの物語があって、そこでポーッと夢を見る。それがあの時代の良さだと思います。現実離れしているんだけども、もしかするとできるかもしれないというような感じじゃないですか。僕らがデビューした頃、事務所が青山にあったんですけど、表参道の交差点に、でっかい飛行船の形をしたカフェ・バーができて、なんでこんなものができるんだ!?と思った、世の中みんなそんな感じだったんですよ。みんな浮かれ始めて、その浮かれ感が良かったんですよね。
──ああー。なるほど。
杉山:だから、ロックと言いながら、歌ってる世界はただのラブソングばっかりでしたし。でもそれが心地よかったんじゃないですかね。ただ、当時のライブを見れた人たちはすごく少なかったわけです。今回30数年の時を経て、みんな見に来て、一様に「オメガって、ロック・バンドだったんじゃん」って言うんですよ。サウンドがああいう感じのクリアなサウンドだったから、作品だけを聴いてるとそう思うんでしょうけど、生で演奏すると「やっぱりロック・バンドなんだね」ということはありました。よく言われてます。
──本人として、当時は葛藤もあったかもしれませんが。
杉山:だから、若気の至りですよね。解散しようぜということになったのも、もうプロモーションしたくない、めんどくさいって、メンバーで勝手に解散を決めて、「僕ら解散しますから」って事務所に言って、「はぁ?」みたいな。レコード会社も大騒ぎだし。でも「絶対やりません。年内で辞めます」って言っちゃって、ツアーも年内に全部組み替えて、大人たちはざわざわしてたけど、僕らは平然としてましたから。今だったらありえないです。そんなことができちゃった時代です。
──そこで、ファンに対しては心残りがあったんですね。
杉山:というかね、あの頃はファンがどうのこうのとか、あまり考えたことがなかった。本当にそんなバンドですよ、僕らは。ファンの人のためにとか、ファンの人に媚びてとか、ないない! 「俺たちのためにやってるんだよ」っていう感じでしたもんね。それが、だんだん大人になって気づくわけですよ。今は「みんなのためにやってます」って言えますから。
──それはよかった(笑)。
杉山:だって、「こんなにうれしそうな顔するんだ、この人たちは」って思いますもんね。日常を忘れてるなって。僕らもそうなんですけど。だからライブが始まってまずMCで言うのは、「みなさん、帰る頃には10代に戻ってますよ」って。本当にそういうエネルギーが、野音でやった時にそれをすごく感じて、「これはツアーをやってあげなきゃ失礼だな」と思ったんですね。
──今回のツアー、気になるのは「Last Live Tour」というタイトル。
杉山:ツアーがラストです。もうツアーに出れません、みんな(笑)。他の仕事もあるし。
──あ、そういう意味ですか。ほっとしたような。
杉山:集まりたければ、いつでも集まれるメンバーだし、別に辞めなくなっていいじゃんとは思ってます。だから気が向いたら「またやる?」という、そんな感じでいいかなと。
──ファイナルの神奈川県民ホールは、WOWOWの中継が入ります。緊張とか、ありそうですか。
杉山:生中継ですからね。収録だったらいくらでも直せますけど(笑)。という緊張もありながらも、そんな修羅場はいくらもくぐってきてるんで、全然大丈夫ですよ。間違えたら間違えたでいいよって。去年の野音のリハーサルの時も、「間違えたっていいから。楽しくやろうぜ」って言ってましたし。楽しけりゃお客さんは納得してくれるよっていう気持ちで始めたので、最後までその気持ちで行きたいと思ってます。
──みなさんぜひ。神奈川県民ホールのチケットはすでにソールド・アウトですが。
杉山:来れなかった人のために、WOWOWさんで中継がありますので。
──楽しみです。杉山さんの、今後の予定は。
杉山:オメガが一段落したら、毎年やっている弾き語りツアーに戻ります。ライブ、好きなんですよね。休みたいとか、あんまり思わない。南の島に行ってのんびりするのもいいなと思っても、そんなに長くいられないんですよ。ずっとライブしていたいです。
取材・文◎宮本英夫
撮影◎福岡諒祠
『生中継!杉山清貴&オメガトライブ2019 Last Live Tour』
※終了時間変更の場合あり
収録日:2019年4月21日
収録場所:神奈川・神奈川県民ホール
番組オフィシャルサイト:https://www.wowow.co.jp/s_o/
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