【インタビュー】フォリナー「少しばかり歳は取ったけど、まだ進み続ける」
フォリナーの1978年4月27日、ロンドン・レインボー・シアターでのライヴ映像が発掘された。
40年以上のキャリアに及ぶフォリナーの活動の中で、『ライヴ・アット・ザ・レインボー1978』と題された映像作品/CDはルー・グラム(Vo)、ミック・ジョーンズ(G)、元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルド(G、Key、Sax)ら初期ラインアップによるステージが収められている。1stアルバム『栄光の旅立ち』(1977)全曲と、発売直前だった『ダブル・ヴィジョン』(1978)から「ホット・ブラッディッド」と「ダブル・ヴィジョン」が披露されている点にも注目だ。
2019年現在も精力的に活動を続けるフォリナーのミック・ジョーンズにインタビュー、1978年当時の思い出とその近況について訊いた。
──1978年のロンドン“レインボー”でのライヴについて、どんなことを覚えていますか?
ミック・ジョーンズ:レインボーでのライヴは、フォリナーにとって重要なショーだったんだ。当時レインボーはロンドンを代表するライヴ会場だったし、私たちにとってイギリスでは初めての大舞台だった。私の家族も来ていて、誇りに包まれた瞬間だったよ。とても良いライヴだったと思う。この年は<レディング・フェスティバル>にも出演したんだ。アメリカで成功を収めて、私の母国のイギリスに戻ってきた年だった。
──この時期、フォリナーはアルバム『栄光の旅立ち』(1977)が全米でヒット、『ダブル・ヴィジョン』(1978)発売2週間前という状況でしたが、その後に『ヘッド・ゲームス』(1979)や『4』(1981)、『プロヴォカトゥール(煽動)』(1984)でさらにヒット街道を突っ走ることになります。この時期のバンドの立ち位置はどんなものでしたか?
ミック・ジョーンズ:うーん、立ち位置なんてものは考えていなかった。当時も今もね。単に自分たちの好きなロックを書いて演奏していたんだよ。「衝撃のファースト・タイム」「つめたいお前」「ホット・ブラッディッド」「ダブル・ヴィジョン」はどれもアメリカで大ヒットした。元々フォリナーはニューヨークで結成したんだ。私はイギリス人だから外国人=フォリナーだった。結成当初はアメリカ市場を重点的に攻めていった。それからヨーロッパやアジアにも進出していったんだ。ドイツ、もちろん日本もね。当時のレコード会社に要求されたことはすべてやったし、そうしてバンドのステータスを上げていったんだ。
──初期フォリナーの音楽は強烈なフックとメロディのあるロックがコマーシャル面の成功に結びつきましたが、それと同時に元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルドもいたし、「スターライダー」のようにプログレッシヴ的な曲もありました。そんな二面性はどの程度意識していたのですか?
ミック・ジョーンズ:意図的なものではなかった。さまざまなタイプの曲を書きたかったんだ。ハード・ロックからプログレッシヴ、バラードまでね。私は若い頃フランスでセッション・ギタリストをやっていたけど、イギリスでゲイリー・ライトとワンダーホイールというバンドを結成したんだ。それがスプーキー・トゥース再結成へと発展していった。スプーキー・トゥースはアイランド・レコーズと契約して、そこそこの成功を収めたけど、いわゆるプログレッシヴ・ロックに近いバンドだった。私が真剣にソングライティングに取り組むようになったのはこの時期で、プログレッシヴなアプローチを身につけたんだ。私はジェネシスからも影響を受けてきたし、イアン・マクドナルドは初期フォリナーに実験的な要素を持ち込んできたんだ。
──1978年当時、イギリスではパンク・ロックが全盛でしたが、フォリナーへの風当たりはどんなものでしたか?
ミック・ジョーンズ:フォリナーというバンドは、誰もが嫌いたがる存在だったね。デビューした頃はディスコがブームだったし、それからパンクだろ?マスコミや評論家にさんざんオールド・ウェイヴ呼ばわりされたよ(苦笑)。でも私たちは気にしなかった。フォリナーが成功を収めたのは評論家のおかげではなく、音楽そのもの、そしてリスナーのおかげだったからね。実際のところ、私たちをバッシングしていた連中の中にも隠れファンはいたんだ。セックス・ピストルズのジョニー・ロットンだって、こっそりフォリナーのレコードを聴いていた。ずっと後になって、彼の奥さんが教えてくれたんだ。あらゆるトレンドが出てきては消えていったけど、フォリナーはまだ生きている。2018年は『ダブル・ヴィジョン』40周年を記念するライヴもやったし、2019年もアメリカやヨーロッパで大規模なツアーをやるんだ。
──そんな息の長い人気の秘密は何だと思いますか?
ミック・ジョーンズ:バンドとしての活動を休止したこともあるけど、15年前(2004年)に新しいラインアップで復活したのが大きかったね。ケリー・ハンセン(Vo)やジェフ・ピルソン(B)が加わったことで、単なるノスタルジアや懐メロではなく、現在進行形のバンドとして前進していくことができたんだ。ライヴ会場では若いファンをたくさん見かけるよ。しかもみんな歌詞を知っていて、一緒に歌ってくれるんだ。
──『ライヴ・アット・ザ・レインボー1978』は映像のリストアと音声の5.1チャンネル・リミックスが行われていますが、新たな発見などはありましたか?
ミック・ジョーンズ:ずっとツアーに出ていたし、直接のリマスタリング作業などには関わっていないんだ。でもラフ・ミックスの映像と音声は私自身もチェックしたよ。もう40年以上前とは思えない生々しい臨場感のある作品だった。「とても良い若手バンドだね」と感心したよ(笑)。撮影しているカメラも2台しかなかったけど、そんなシンプルさが私たちのライヴの本質と興奮を捉えている。若き日のバンドをよくおさえているよ。
──2018年のアメリカでのライヴは2部構成で、第1部が現在のラインアップからあなたを除いた編成、第2部は存命のオリジナル・メンバーが集結しましたが、これからも同様の構成でツアーを行うのですか?
ミック・ジョーンズ:いや、去年のツアーはフォリナーの歴史と『ダブル・ヴィジョン』の40周年を祝うスペシャルな編成だった。ルー(グラム)と一緒にやるのは楽しかったよ。4~5年前に「ソングライターズ・ホール・オブ・フェイム」に殿堂入りしたとき、久々に会っていろいろ話し合ったんだ。それまでわだかまりもあったけど、直接話し合ってわかり合えたよ。ルーと一緒に作ったアルバムはどれも誇りにしているしね。そうして話すうちに、40周年ライヴのことが持ち上がったんだ。それで今でも生きているオリジナル・メンバーに働きかけた。イアン(マクドナルド)、アル(グリーンウッド)、デニス(エリオット)、リック(ウィルス)...ルーと現在のシンガー、ケリー・ハンセンはすぐに親しくなった。全員が同じ方向を見ていたし、みんな冗談を言い合って一緒にやることを楽しんでいた。これからもフォリナーの歴史の節々を記念するアニヴァーサリー・ライヴとして、時々この形式のショーをやりたいね。
──2019年は『ヘッド・ゲームス』の40周年、2021年は『4』の40周年だし、再びリユニオン・ライヴが実現するでしょうか?
ミック・ジョーンズ:うん、ぜひそうしたい。フォリナーの歴史を一望できるライヴに、ファンもすごく盛り上がってくれて楽しかったよ。
──2018年11月にオーストラリアとニュージーランドでオーケストラとの共演ツアーをやりましたが、ぜひ2007年以来となる日本公演も実現させて下さい。
ミック・ジョーンズ:オーストラリアのツアーは大成功だったんだ。あのまま日本に行けたらいいと考えていたよ。オーケストラは数人のみ同行して、多くのメンバーは地元の音楽学校の学生だったり、若手ミュージシャンだったりする。彼らと共演するのは、さまざまな国や都市の人々との音楽交流となってエキサイティングなんだ。「アイ・ウォナ・ノウ」をやるときも世界各地の合唱隊と共演したことがあるけど、それと共通する音楽のコミュニケーションを感じる。もちろんオーケストラがいても、ロック・ショーであることに変わりないよ。オーケストラが加わることで、フォリナーの音楽に新たな厚みが加わるんだ。今のバンドはすごく良い状態だよ。2019年はツアーも行うし、ミュージカル『ジューク・ボックス・ヒーロー』も上演される。1978年と較べると少しばかり歳は取ったけど、フォリナーはまだ進み続けるよ。
取材・文 山崎智之
写真クレジット:Barry Plummer
フォリナー『ライヴ・アット・ザ・レインボー1978』
【初回限定盤Blu-ray+CD】 GQXS-90374~5 / 4562387208654 / ¥7,500+税
【初回限定盤DVD+CD】 GQBS-90413~4 / 4562387208678 / ¥6,500+税
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【通常盤DVD】 GQBS-90415 / 4562387208685 / ¥4,500+税
※日本語解説書封入/日本語字幕付き
Blu-ray/DVD
1.ロング、ロング・ウェイ・フロム・ホーム
2.アイ・ニード・ユー
3.ウーマン・オー・ウーマン
4.ホット・ブラッディッド
5.ダメージ・イズ・ダン
6.つめたいお前
7.スターライダー
8.ダブル・ヴィジョン
9.衝撃のファースト・タイム
10.お前に夢中
11.人生は闘い
12.ヘッドノッカー
CD
1.ロング、ロング・ウェイ・フロム・ホーム
2.アイ・ニード・ユー
3.ウーマン・オー・ウーマン
4.ホット・ブラッディッド
5.ダメージ・イズ・ダン
6.つめたいお前
7.スターライダー
8.ダブル・ヴィジョン
9.衝撃のファースト・タイム
10.お前に夢中
11.人生は闘い
12.ヘッドノッカー
【メンバー】
ルー・グラム(ヴォーカル)
イアン・マクドナルド(ギター/キーボード/サックス)
ミック・ジョーンズ(ギター)
エド・ガリアルディ(ベース)
デニス・エリオット(ドラムス)
アル・グリーンウッド(キーボード)
◆フォリナー『ライヴ・アット・ザ・レインボー1978』レーベルサイト
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