【インタビュー】D.Y.T、良質なボーカリゼーションとスタイリッシュ&エモーショナルな楽曲の1stミニ・アルバム『MINGLE』
フジパシフィック・ミュージックが2017年に開催したボーカル発掘オーディション『THE AUDITION』で、約4,000人に及ぶ応募者の中からグランプリを獲得した2名により結成されたD.Y.T。群を抜いた歌唱力を備えた2人が織りなす良質なボーカリゼーションやブラック・ミュージックが香るスタイリッシュ&エモーショナルな楽曲、華やかなライブなどが話題を呼び、始動から1年にして彼らは大きな注目を集めている。そんなD.Y.Tの1stミニ・アルバム『MINGLE』が、1月23日にリリースされた。同作は、J-POPシーンに気鋭のニューフェイスが登場したことを強く感じさせる一作に仕上がっている。
■陽太と僕はこの1年でいい感じになったんです
■最近は兄弟のような感覚でライブをしています
――まずはD.Y.Tがどんなふうに結成されたのかを話していただけますか。
菅野陽太(以下、菅野):2017年に、フジパシフィック・ミュージックが主催したボーカル・オーディションがあって、それに応募したところ1次、2次、3次審査を経て、最終審査までいくことができたんです。それで、最後に合格をいただいた千田と僕で、D.Y.Tを結成することになりました。
千田耀太(以下、千田):そのオーディションは、ツイン・ボーカルのユニットを結成すると謳っていたわけではなかったんです。ソロ・シンガーなのか、グループなのかといったことが全くわからない状態でスタートしたんですよ。最終審査に合格して二人でやるということで、(菅野)陽太と初めて顔合わせをしたんですけど、僕は千田耀太で、彼は菅野陽太という名前なんですよね。だから、お互いに自己紹介したときに、二人とも「えっ? もう一度名前を言ってもらっていいですか?」みたいになりました(笑)。“ようた”という名前はちょっと珍しいじゃないですか。
菅野:そう。あまりない名前なのに同じ名前だったんだねと、よく言われます(笑)。
千田:グループの中に同じ名前のメンバーがいるというのは分かるけど、二人だけのユニットで名前が同じというのはすごいなと思って。これは運命的な出会いかもしれないなと思いました(笑)。
――とはいえ、全く知らない同士でユニットを組むことになったわけですよね。とまどいなどは、なかったですか?
菅野:お互い人見知りをしないタイプなので、大丈夫でした。変に壁を作って、「よろしくお願いします」みたいな感じではなくて、最初から「がんばって、いきましょう!」みたいな感じだったよね?
千田:うん。僕は陽太よりも年が2つ上なんですよ。こっちは年上だから気を遣わないけど、陽太は年下だから気を遣うだろうなと思って。そうならないようにしないといけないなと思っていたら、陽太は全く気を遣わなかったという(笑)。最初から普通な感じで、壁とかは微塵もなかった(笑)。でも、僕はそれが良かったです。
陽太:僕が変に気を遣うと、耀太も気を遣うだろうなと思ったから。年下だけど、ペコペコし過ぎるのは違うなと思って、最初からフランクな感じでいきました。
――いい感じでD.Y.Tを始めることができたんですね。それぞれの音楽的なバックボーンなども話していただけますか。
菅野:僕は小学生の頃から歌うのが大好きで、中学くらいからみんなでカラオケにいくようになって、それがすごく楽しくて、さらに歌にハマっていきました。EXILEさんが大好きで、中~高生の頃はEXILEさんの曲を一番歌っていて、あとはコブクロさんとか、ゆずさんとか。それに、J-POPが好きで、そのときに流行った曲は片っ端から歌っていました。そこから本格的にアーティストになりたいと思うようになって、高校生くらいからボイストレーニングに通うになりました。
千田:僕はD.Y.Tを始める前は、プロ・ダンサーだったんです。
――えっ、そうなんですか?
千田:はい。ダンサーとして生活を立てていました。ダンサーを目指すような人間なので、昔から海外のヒップホップやR&Bが大好きだったんですよ。歌うことも好きでしたけど、ダンサー志望だったし、願いが叶ってプロになれたので、真剣に歌の練習をしたり、誰かに習ったりしたことはないですね。今回のオーディションも人に勧められて受けさせていただいたら合格したんです。
▲千田耀太
――でも、千田さんもすごくいい歌を歌われますよね?
菅野:そうなんですよ。大転身じゃないですか。なのに、歌が上手くて、僕もビックリした…というか、今でも驚くことが多いです。
――踊れるし、歌も上手いし、ルックスもいいって……。どうなっているんでしょうねぇ(笑)。
菅野:本当ですよ(笑)。
千田:いやいやいやっ! 僕は全然です(笑)。すごく陽太に助けられていますから。歌に関しては、陽太が引っ張ってくれている部分がかなりあるんです。レコーディングをするときも、ライブでの歌い方にしても的確なアドバイスをくれる。だから、僕はD.Y.Tをやれているんです。
菅野:僕は子供の頃から歌っているし、ボイトレも経験しているので、ある程度自分の歌い方や癖があると思うんですよ。千田は経験がない分、歌がまっさらというか。なにも手が加えられていない状態だったこともあって、すごく真っすぐな歌を歌う印象がありますね。そこを活かしつつ、レコーディングのときとかは、ここは吐息交じりに歌うといいよとか、ここはファルセットのほうがいいと思うよ…というようなテクニック面のアドバイスをしています。
千田:耀太が言ったとおり、歌に関しては真っ白でした。D.Y.Tを始めて1年になりますけど、まだ自分の特徴みたいなものも掴めていないんですよ。それを見つけて、今後は活かしていけるといいなと思っています。陽太はライブを一緒にすると特に感じることですけど、歌が上手いだけじゃなくて、人を惹きつける魅力を持っていますね。彼は、ちょっと王子様っぽい。ライブをしながら客席の女の子を見ると、みんな目がハートになっているんですよ(笑)。今までの僕はダンサーということで、アングラなところでショーケースをしていたので、そういうお客さんを見たことがなかった。だから、陽太はすごいなと思ったし、自分もハートになった目で見てもらえるようにならないといけないなと思っています(笑)。
菅野:ていうか、もうなっているでしょう(笑)。
――そうだと思います。では、1年間D.Y.Tで活動してきたうえでそれぞれが思う、ツイン・ボーカル・ユニットの魅力とは?
菅野:二人いると違った個性を活かして、楽曲により幅広さだったり、奥行きを出せますよね。交互に歌うことで楽曲の表情が豊かになるし、ハモリとかを活かすこともできる。ライブのときの演出も、二人のほうがバリエーションを出せますし。そういうところで、ソロ・アーティストよりもパワーがあるなということは感じています。それに、やっぱり一人よりも二人のほうが心強いというのもありますね。
千田:一人とか、グループにはないものはなんだろうと考えたときに、ツイン・ボーカルはステージ上で阿吽の呼吸を活かせるんですよ。人数が多いとアイ・コンタクトが取れないメンバーも出てくると思うけど、二人でやっていると見つめ合うときに見るのは一人しかいないし、ハモるときも一人の声に対してハモればいい。そういう緊密さをステージで見せられるのは、ツイン・ボーカルの強みかなと思いますね。陽太と僕は最初から息が合っていたと思うけど、この1年でさらにいい感じになったんです。最近は、兄弟のような感覚でライブをしています。
――お二人のキャラクターの違いや、歌の方向性が似ていながら個性が異なっているところなど、コンビネーションの良さは抜群といえますね。では、ここまでの話を踏まえたうえで、D.Y.Tの最新音源『MINGLE』に収録された4曲について話しましょう。1曲目の「GET UP」は、アッパーかつ煌びやかなナンバーです。
菅野:「GET UP」は、新たな環境でスタートする人を後押しするような曲になっています。自分達にとっても、この曲がスタートだったんですよ。曲調的にも、歌詞の内容的にもD.Y.Tの最初の曲にピッタリだねという話をしたことを覚えています。一発目のライブもこの曲で始めたんですけど、そういう曲なのでより思いが乗って、いいパフォーマンスできました。そんなふうに、僕達にとってすごく大きな1曲です。
千田:D.Y.Tの1曲目であると同時に、僕はこの曲で初めて本格的なレコーディングに臨んだんです。だから、歌録りのときに横に置いてあるモニターのミキサーを、どういじったらいいのかわからなくて(笑)。それがバレないように陽太のレコーディングを観察したけど、結局わからないんですよ。自分が歌う番になって、ブースに入ってヘッドフォンをして、ミキサーを適当にいじったら何も聴こえなくて。「すみません、何も聴こえないんですけど」と言って、わかっていないことがバレるみたいな(笑)。
▲菅野陽太
菅野:そうそう(笑)。「GET UP」の歌に関しては、レコーディングするにあたって、ポップな曲だけど、歌はR&Bの要素を入れたほうがいいと曲を作ってくれた方に言われまして。でも、R&Bになり過ぎなくて、爽やかで、いろんな人にとって聴きやすい音楽にしたかったんです。なので、一番いいところに落とし込むことを、かなり意識して歌いました。
千田:僕にとっては、この曲は歌のグルーヴが大変でした。「GET UP」は最初に聴いたときに、キャッチーなブラック・ミュージックと捉えたんですよ。でも、メロディーには違うグルーヴが入っていて、それを表現するのがすごく難しかった。そうしたら、陽太が二人で練習するためにスタジオに入ったときに、いろいろ指導してくれたんです、年下ですけど(笑)。それが、本当に助かりました。
――ブラック・ミュージックのテイストを活かしつつ、良質なJ-POPに仕上げていることが印象的です。レコーディングするにあたって、それぞれが歌うパートの振り分けは、どうやって決めているのでしょう?
菅野:歌の振り分けも、どこにハモリを入れるかということも、全部自分達で決めています。レコーディングする前にいろいろ試して、ツイン・ボーカルが一番映えるパターンを探すんです。そうすると、この振り分けがいいだろうというのが見えてくる。ハモる場所は僕が決めることが多いです。
千田:あとはレコーディングの現場でプロデューサーに提案されて、二人の振り分けを変えることもあります。プロデューサーの客観的な目線のほうが的確なこともあって、そのほうがいいなと思ったら柔軟に変える。でも、基本は自分達だよね?
菅野:うん。アイドル・グループとかはメンバー全員が1曲通して歌って、後からプロデューサーが歌の振り分けを決めることが多いみたいですけど、僕らはそうじゃなくて、事前に自分達で決めています。
――先ほど話が出たように千田さんはシンガーとして真っ白な状態だったわけですよね。そういう中で、菅野さんのボーカル・スタイルに寄せずに自分らしさを出しているのはさすがです。
菅野:そう。千田はシンガーとしてのポテンシャルが高いから、たぶん僕みたいな歌い方をしようと思えばできると思うんですよ。でも、そうはしない。そこがすごいなと思うし、僕も自分らしい歌が歌えて助かっています。
千田:僕は、人のマネをするのが好きじゃないんです。だから、陽太みたいに歌おうとは思わないですね。陽太は本当に歌が上手くて、ニュアンスの出し方とか、語尾の処理とか、参考になることがすごく多いんですよ。手本になる陽太がいるんだから、彼をマネしたほうがいいのかもしれないけど、そうはしたくない。二人で同じような歌を歌うと、D.Y.Tとしてのパワーが落ちてしまう気がするし。だから、自分は陽太に影響されずに、違うほうに行こうと考えています。
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