ペンタトニックス、最新作『クリスマス・イズ・ヒア』リリース
世界で最も人気のある男女混合アカペラ・グループのペンタトニックス。彼らからクリスマス・プレゼントと呼べる最新作『クリスマス・イズ・ヒア』がリリースされた。
メンバー各々が持つ類い希な歌唱力とハーモニーの素晴らしさはもちろんのこと、ペンタトニックスの醍醐味は何といってもアカペラという枠を逸脱した楽曲のアレンジにある。そんな彼らの魅力を伝える好例が、彼ら自身がブレイクする起爆材になった2013年にリリースした「ダフト・パンク・メドレー」だ。ダフト・パンクのエレクトロ・サウンドをヒューマンビート・ボックスとアカペラのアレンジへと落とし込んだ楽曲は、YouTubeを介して世界中の人々の心を捉え、同曲を収録、2014年にリリースした日本企画デビュー・アルバム『PTX Vols. 1&2(ジャパン・エディション)』は大ヒットを記録。さらに、初のセルフ・タイトルで、レーベルRCAからのメジャー・デビュー・アルバム『ペンタトニックス』が2015年にリリースされ、ビルボード史上初の快挙となる、“アカペラ・グループ”での全米アルバム・チャート初登場1位を記録した。同作品は、オリジナルの楽曲で構成されているが、彼らのYouTubeのオフィシャル・チャンネルには、ヒット曲や名アーティストのアカペラ・カバーも多くアップされている。マイケル・ジャクソンやリアーナをはじめ、現在ドキュメント映画が日本でも上映中のクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」から、親日家である彼ららしくPerfumeのカバー「Perfumeメドレー」まで、さまざまなアーティストをダイナミックなアカペラ・サウンドへと変貌させている。彼らはこれまでに3回のグラミー受賞経験を持ち、動画再生数は何と35億回という、モンスター・アーティストなのだ。
『クリスマス・イズ・ヒアは』毎回大ヒットを記録しているクリスマス・シリーズの第3弾となる作品だ。本作では往年のクリスマス・ソングからブレンダ・リーやナタリー・コール、ミュージカル映画まで幅広い楽曲のアカペラ・カバーが揃う。新作のコンセプトや選曲について、メンバーのスコット・ホーイングはこう語っている。
「アレンジでも色々と新しいことを試みたから、全てが新しい曲に生まれ変わっているよ。クリスマス・ソングではない曲も入れたから、それがクリスマス・ソングに聞こえるようにアレンジしたし、今作には素晴らしいゲストもフィーチャーできたよ。選曲に関しては僕らが好きな曲をランダムに選んだよ。例えば「スウェター・ウェザー」は、本来はクリスマス・ソングじゃない。でも、この曲にはホリデー・シーズンの雰囲気があるし、これを作品に収録したら面白いなって思ったんだ。実際は前作(ペンタトニックス・クリスマス)でやろうとした曲だったんだけど、後回しにして今作に入れたんだ」。
スコットの発言にあるように、アルバムに参加するゲストは、先述したナタリー・コールの「グローン・アップ・クリスマス・リスト」ではケリー・クラークソンがソウルフルな歌声を披露しているほか、ミュージカル・アニメーション映画『プリンス・オブ・エジプト』のエンディング・テーマ「ホウェン・ユー・ビリーヴ」では、マレン・モリスが壮大なアカペラ・サウンドに彩りを加えている。ゲスト・ヴォーカルについてホーイングが説明する。
「2015年の夏に僕らはケリー・クラークソンのツアーのオープニング・アクトとして一緒にツアーしたんだけど、その時にケリーと友人になれたんだ。僕らはケリー・クラークソンの大ファンなんだよ。彼女は僕らと同じテキサス出身だし、お互いにリアリティー番組から出てきたこともあって、親しい友人になれた。僕たちは彼女がこの曲をずいぶん前に歌っていたのを知っていて、そのバージョンが大好きだったから、彼女に“一緒にクリスマス・アルバムの曲をやってくれないかな?”ってお願いしたんだ。そうしたら彼女は多忙なスケジュールの中でスタジオに入る時間を作ってくれて、驚異的なヴォーカルを提供してくれたんだ。また、マレン・モリスと僕は子供の頃に、同じ合唱団に所属していたんだよ。それもあって“一緒に歌ってくれないかな?”って聞いたら快諾してくれた。この曲の彼女の声は最高だよ。このアルバムで僕が一番好きな曲の一つなんだ。美しくて強力でインスパイアされる曲になったよ」
新作からはミュージカル・アニメーション映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の「メイキング・クリスマス」のPVがすでに公開されている。ハロウィンとクリスマスを合体させた凝った演出に加えて、ミュージカルらしさに溢れためくるめく展開が印象に残る楽曲に仕上がっている。そのなかでも新加入のメンバー、マット・サリーによるキレのあるベース・ヴォイスも聴きどころだ。
「マットはすごくクリエイティヴかつエネルギッシュで楽しい人だよ。彼がいると、曲を選んだりアレンジを考える時に、作業を迅速に進めることができる。それに、彼は信じられないくらいのヴォーカル・レンジの持ち主なんだ。「メイキング・クリスマス」はディープで強烈なベースを歌っているけど、同時に彼はかなりの高音も出せて、すごくフレキシブルなんだ。今作は彼のおかげで、クレイジーなアレンジに挑戦することができたね」
古典的なクリスマス・ソングから、バレエの楽曲までに施された斬新なアレンジも本作の魅力のひとつだ。ピョートル・チャイコフスキーが作曲した『くるみ割人形』の「花のワルツ」はヴォーカルが入っていないクラシックの楽曲。彼ら以前に『ザッツ・クリスマス・トゥー・ミー(ジャパン・エディション)』で「くるみ割人形」のカバーにチャレンジしているが、今回も難しいメロディを見事にアカペラで表現してみせたほか、クリスマス古典曲「ジングルベル」ではテンポを思いっきり早めたユニークなアレンジを披露している。
「僕らは『くるみ割人形』が大好きなんだよ。この曲はミッチが好きなんだけど、メロディは信じられないくらいに難しかった。ミッチがいなかったらアカペラで歌うのは不可能だったね(笑)。それにカースティンが歌っているパートもとても難しい。でも、難易度が高いからこそ、レコーディングは楽しかったね。「ジングルベル」に関しては、もっと面白い「ジングルベル」をやりたいと思っていた。それで、何年か前にバーブラ・ストライザンドがやったクレイジーで早いバージョンがあって、それをメンバーに聞かせたら、全員が夢中になったんだ。それで、バーブラ・ストライザンドのバージョンをもとに、僕達のバージョンを作ろうって決めたんだよ。あと、オーケストラと一緒に歌うのはいつだって楽しいから、オーケストラも入れたくて、それをやるならこの曲が最適だなって思っていた」
『クリスマス・イズ・ヒア』はEDMからR&B、ポップスまで、彼らが得意とするヒット曲のアカペラ・カバーとは、また違った趣きが感じ取れる作品だ。先述した「花のワルツ」メロディのないクラシックから、「ジングルベル」のハイスピード・バージョンなどのダイナミックなアカペラのアレンジに加えて、アメリカのオルタティブ・バンド、ザ・ネイバーフッドの「スウェター・ウェザー」はアルバムにモダンさを加えているし、MVにもなっている「メイキング・クリスマス」の矢継ぎ早な展開は、ペンタトニックス史上に残る好アレンジとも言える。彼らのクリスマス・シリーズは第二弾『ペンタトニックス・クリスマス』は全米一位を記録しているが、本作も前作にひけと取らない、親しみやすさに加えて、純粋にアカペラという音楽の楽しさをリスナーへと伝える作品に仕上がっている。
文:伊藤大輔
『クリスマス・イズ・ヒア!』
SICP-5938 2,200円+税
【国内盤】国内盤限定オリジナル・ポスター封入
初回仕様限定ステッカー封入、歌詞・対訳・ライナーノーツ付
■収録曲
1. ホワット・クリスマス・ミーンズ・トゥ・ミー | What Christmas Means to Me
★往年のクリスマス・ソングのカバー
2. ロッキン・アラウンド・ザ・クリスマス・ツリー | Rockin’ Around the Christmas Tree
★ブレンダ・リーのカバー(1958 年)
3. イッツ・ビギニング・トゥ・ルック・ア・ロット・ライク・クリスマス | It’s Beginning To Look A Lot Like Christmas
★ペリー・コモ&ザ・フォンテーン・シスターズ・ウィズ・ミッチェル・アイレス&ヒズ・オーケストラのカバー(1951 年)
4. グローン・アップ・クリスマス・リスト feat. ケリー・クラークソン | Grown–Up Christmas List featuring Kelly Clarkson
★ナタリー・コールのカバー(1990 年)
5. グリーンスリーブス(インタールード)| Greensleeves (Interlude)
★英国民謡のカバー(16 世紀後半)
6. スウェター・ウェザー | Sweater Weather
★ザ・ネイバーフッドのカバー(2012 年)
7. ホウェン・ユー・ビリーヴ feat. マレン・モリス | When You Believe featuring Maren Morris
★ミュージカル・アニメーション映画「プリンス・オブ・エジプト」ED テーマのカバー(1998 年)
8. 花のワルツ | Waltz Of The Flowers
★バレエ組曲「くるみ割り人形」第 8 曲のカバー(19 世紀)
9. サンタクロースがやってくる | Here Comes Santa Claus
★リード曲 ★往年のクリスマス・ソングのカバー(1947 年)
10. メイキング・クリスマス | Making Christmas
★ミュージカル・アニメーション映画「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」(1993 年)のカバー
11. ホウェア・アー・ユー、クリスマス? | Where Are You, Christmas?
★フェイス・ヒルのカバー(2000 年)
12. ジングルベル | Jingle Bells with Orchestra
★バーブラ・ストライサンドのカバー(1967 年)
◆ソニー・ミュージック日本公式ホームページ
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