【インタビュー】ROCKKEN「アーティストとして、常に未完成状態の方が変化があって面白い」
“ソウルフルな歌声と激しく唸るギター”を武器に、都内各所でライブ活動を続けるソロアーティスト、ROCKKEN。2014年にダブルシングルをリリース後、スペースシャワーTVにて特集番組『ROCKKEN スタイリッシュバッドロックエクスプロージョン』が放送、また出身地である仙台でラジオ「ロッケンのソウルグルーバー」でメインパーソナリティを務めるなど活動の幅を広げている。先ごろ8月には「Travellin' Man」をリリースするなど今度の活躍に期待したい、日本では数少ない“ロック”ソロアーティストと言えるだろう。そんなROCKKEN、どんな人物なのだろう?
■ライブのスタイルは出来上がっているし
■染みついているものがある
──ROCKKENさんが、初めて音楽を意識して聴き始めたのはいつごろでしょう?
ROCKKEN 小学校3〜4年くらいだと思います。両親が家の中で聞いていた洋楽ですね。。母親がオールディーズを流していたのを覚えています。エルヴィス・プレスリーの「マイ・ウェイ」とか。
──自分で積極的に音源を買い始めたのは?
ROCKKEN 中学生くらいですかね。チョロチョロと……買い物自体をそれほどしない人間だったので。音楽は日常的でしたけど、どちらかというと部活に力を入れてましたね。だから幼い頃から音楽を……という感じではないんです。
──ギターも年を重ねてから?
ROCKKEN かなり遅い方。音楽やり始めても最初からボーカリストという立ち位置だったので、自分で作曲はしないで、歌メロと歌詞だけは書く、みたいな感じでした。
──バンドは組みました?
ROCKKEN 本当はAC/DCみたいな、昔ながらのロックバンドに憧れてましたけど、いろいろやってみて、これはうまくいかないんだなと思ったんです(笑)。要するに自分の中でやりたいスタイルが出来上がっていて、どのバンドでやっても満足できないんです。
──初めてバンドを組んだのは?
ROCKKEN 24歳くらい……。遅いんです、僕。高校生のときはライブに飛び入りして歌うみたいなことしてました(笑)。ミュージシャンを目指すというモチベーションは全くなかった。
──初めてバンドを組んだのが24歳ということは……。
ROCKKEN それまではとある芸能事務所に所属していて、どちらかというとタレント志向でした。世に出るのは音楽より、楽しいヤツ系の方が才覚があるなと勝手に思ってたので(笑)。でも音楽自体はズッーとやりたいなって思っていて……音楽は世に出てからやりたいことができればいいなと。でも途中からそれはズルイぞ、と思いはじめて。芸能界の図式みたいなものを垣間見て、それが嫌でこの業界を変えてやる!という究極のハングリー精神を持って、自分の作品や自分の中から出るもので勝負したいと思ったんです。その作品は何かと言えば音楽かなと。事務所を辞めた後、歌えるところを探しつつ、バンドを探してたんですけど。バンドを組むというより、入って辞めるの繰り返しでしたね。
──それでソロに?
ROCKKEN 自分の音楽性に合うバンドを見つけるのは無理だなと。頭の中にあるものを自分で作らなきゃダメだと思って。実はそのころ、東京にいられない時期があって、しかも怪我をしてほとんど寝たきりの状態だったんです。社会生活を全く送れないものの、ギターとレコーダーは持って行っていたんで、寝ながらリフを溜め込んで、東京に帰ったら自分でメンバーを集めようと。で、自分で作曲してデモ音源を作って、それをいろんな人に聴かせてインターネットやスタジオのメン募でメンバー募集をして。それまでそれほど音楽経験はないし、それがコンプレックスではあったんですけど、デモを聴かせて自信を付けていった感じですね。当時作った曲を今でもやってますしね。
──当時から今のような作風だった?
ROCKKEN そうですね。前の方がもっとハードだったかな。前のライブに最後にやった曲は、僕が曲を作り始めて3曲目の曲ですから(笑)。アコースティックでやったり、バンドでやったり、紆余曲折してああいう感じになりましたけど。ほとんどデモと変わってない。
──スタイルは一貫している?
ROCKKEN そうですね。好きなものは一貫してますね。ROCKKENを名乗る前にやっていたバンドは3〜4年続いたんですが、その時も最後に怪我をして解散して、バンドを続けるのは無理だなと。曲も作れるし歌も歌えるし……どうしようかと思って。怪我する直前にやったライブで、「デスペラード」「イマジン」をピアノ&ボーカルでやったんですが、ボーカルだけだとこんなに楽にできるんだと気づいて(笑)。しかもそのボーカルオンリーの曲が一番ハネたんです、ワー!っと。家に帰ってライブビデオのそのシーンばかりを見直して、これができるんだったらこれでいいかと。ソロ活動を決めたわけなんです。その後は当時嫌だった打ち込みとか入れつつライブをやり始めて、地下アイドルみたいな人たちと共演したり……(笑)。
──そこからROCKKEN名義?
ROCKKEN ですね。
──では、バンド時代もROCKKENになってからも、自分の中ではやっていることは変わらない感じでしょうか?
ROCKKEN 戻ってきました。ソロになった当時はソロっぽい、ROCKKENという名義を作って、キャラクター/雰囲気を作って、こいつが歌えそうな曲を作ってたんですけど、今は昔の曲をやってもROCKKENだなってなるような雰囲気を持ててきた。融合してきた感じではありますね。
──ちなみにバンドを組んでいて、何がダメになってしまうんでしょう?
ROCKKEN それが分かってたらみんな解散しないと思いますね(笑)。永遠の謎です。
──しっくりこない感じ? バンドメンバーはこれを弾いてといえば、譜面通りに弾いてくれますよね?
ROCKKEN ところがみんなが弾けるわけじゃないんですよね(笑)。
──自分のフィーリングに合わない感じでしょうか?
ROCKKEN そうですね。人に合わせる方が得意なんですが、リフがあれば歌メロをいつまでも載せられるのが僕の特技なんです。決められないとできないとか、アイデアが出てくるまで時間がかかっちゃうと鮮度が落ちるというか、ダメですね。
──キャッチボールがうまくできない感じですかね。
ROCKKEN バンドが続かない一番の原因は、自分の中で全部の音やグルーヴ感が、ある程度出来上がっているんだと思います。
──そのまんま譜面通りに弾いてもらっても違う?
ROCKKEN グルーブ感、タイム感が違う。それがたとえ違くても、グッとくればいいんですが……かなり稀ですね。それを修正、僕の考えに近づけてくる作業が結構大変で、それって向こうから、こちら側への愛がないと難しい。相思相愛な(笑)、お互いが愛で向き合わないと。
──先日のライブもインスタントのメンバーでのライブでした?
ROCKKEN あのメンバーでは初めてでした。
──かなりまとまって聴こえたのですが、ROCKKENさんの評価としては……。
ROCKKEN 全くもってダメでした(笑)、というのは冗談で、それほど不満はなかったです。リハで、これくらいはできるな、これくらいまとまってるな、という自負はあったので。そのレベルを超えられる自信はあって、僕が一番に超えたし、間違えたのも僕ですけど(笑)。バンドのみんなはROCKKENのライブなのでチャンとやらなきゃってのがあったと思いますけど、そういう土台があって、僕は好きなように違うソロ弾いたり、予定にないことができた。最後にセッションみたいになっちゃったときは僕以外のメンバーは、「ヤバい、いつ終わるんだろう」と、みんな時計を見てたらしくて(笑)。結構楽しんでできましたね。
──ライブのスタイルは模索中?
ROCKKEN 自分の中では出来上がっているというか、染みついているものがある。あまりカチッと決めるのが嫌なタイプなんです。
──すごくいいメンバーがいたらパーマネントでバンドを組んでいこうみたいな考えもない?
ROCKKEN それだったら楽だなって思いますけど。その大変さは経験上知ってるんで。昔はその時その時が楽しければいいって奴はぶん殴りたいと思ってたけど、今は自分がそうなってきた(笑)。長く続けるにはそれが大事なのかな、と思い始めましたね。自分の中で収まっているこだわりはいいんですが、出過ぎちゃうとめんどくさいやつになっちゃう。気楽にやりながら……求めていることは大変ですけど。
■自分のこだわりが強すぎて
■損してるんじゃないか
──ROCKKENさんの中でアーティストとしての最終形態は? こういうふうに曲を作れて、こういうふうにライブできたらいいという形は?
ROCKKEN 模索しながらライブをして、固まっていきながらもその間に曲も作って……常に未完成状態の方が変化があって面白い気はします。ROCKKEN名義になる前に曲を作ろうと思って作った3曲目の曲が、今のライブのラスト曲になったりしてるし、この前完成したと思っても、今が一番カッコよくなってるし。そうやって変わっていく過程が楽しい。
──昔作った曲でも、そのままという曲はない?
ROCKKEN ないですね。
──考え方が現代アート的というか……。
ROCKKEN かもしれないですね。真面目にはやってるんですけど、社会人の人からは適当と言われます(笑)。こだわるところはこだわって頑固に譲らないけど、適当なところは本当に適当だから、その差が激しいとはよく言われますね(笑)。音楽とは別のところで適当ならわかると思いますが、僕は、自分の音楽の中でそうらしいんです。この部分は絶対こう弾いてほしいと言っておきながら、この部分はお任せしますよ、とか……感じたまんまに言ってるらしいです。
──音の対するこだわりはありますか?
ROCKKEN 自分以外に聞いてもらった方がいいかもしれないですけど……性格的に自分に持ってないものを持ってる人を見ると、なんでもすごいなって思ってしまう。例えば同業者でギタリストがいたとして、一般的にその人のギターが僕より下手という評価だったとしても、僕ができないフレーズとかを弾いたりできると、単純に「すごいな」って思ってしまう。って考えるとそういう音楽的なことにこだわりはないのかも。作っていく過程で、だんだん曲の大枠が見えてきて、この音を外したいとか、ある種のこだわりが出てくるのかな。
──ギターの音に関してのこだわりは?
ROCKKEN コーラスをかけすぎてる人は嫌ですね(笑)。80年代ジャパニーズロックの音ってギラギラしてすごくないですか? フランジャーとかフェイザーとか、ショワンショワンいってるのはあまり好きじゃない。
──割とアンプにシールドを直結してジャーンみたいな方が好み?
ROCKKEN 僕はほぼ直結に至りました。エフェクターにこだわった時期とかもないですね。エフェクターにはこれでいいのかって思うくらい興味がなくて。最初に買ったギターがギブソンのSGだったんです。AC/DCのアンガス・ヤングの音が欲しくて。でも見た目だけで違うタイプのSGを買っちゃったんで、全然違う音だったんですけど(笑)。だからあのギブソンとマーシャルの音は……この間のライブではフェンダーのテレキャスだったので、何言ってんだって感じになりますが(笑)。でも始めたときはホントにギブソン&マーシャルが好みで、レスポール狂でしたね。
──曲がトータルで頭に中に出来上がっているのですね。ギターの音はこうじゃないと嫌だ、とか細かな部分ではなく。
ROCKKEN 前はそういう細かなこだわりもありましたけど、自分のこだわりが強すぎて、もっと楽しいことに関して損してるんじゃないかって思った時期もあって……。簡単に言えばもっと人の意見を聞いてみようかなと。当然人に預けないと成り立たない状況もありますし、やはり自分のこだわりの部分と人に預ける部分と、そのバランスをうまくプロデュース出来るかがこれからの自分課題だと思います。
──最近の作品で人に演奏を預けることは?
ROCKKEN やってもらってますが、それは僕の曲がいいから良くなったんだろなと思ってしまってます(笑)。例えばベースは僕もそれほど弾けないですけど、決めのフレーズはこう弾いてほしいという思いはある。僕のキーポイントを抑えつつ、その人のカラーを出してほしいんです。
──曲作りはギターで?
ROCKKEN たまにピアノから入るときもありますが、ほぼギターです。
──特に何からインスパイアを得て曲作りを始める、とかありますか?
ROCKKEN ありますよ。例えばこういうところ(喫茶店のBGM)に流れている音楽をパッと録音するとか。SoundHound(音楽認識検索アプリ)を使って、流れてる曲のタイトルを調べたり……。
──ちなみに今、持ち曲は何曲くらい?
ROCKKEN 数えたことないけど……100はあると思います。全部ライブではできないですけど(笑)。コード進行を思い出すのに時間がかかる曲もありますし。
──ここ最近のライブではセットリストはある程度決まっているのですか?
ROCKKEN ですね。アコースティックのときは、ROCKKENになる前の作品もプレイすることもありますが。そういうときにストリートでやってた曲は一番できるんです。やり込んでるから。バンドスタイルメインで作った曲だと、アコースティックアレンジをしなくてはいけないので、手間がかかるんです。なので、この間やったストリートでやってた曲を演奏したときは気持ち良かったですね。
──最終的にどういうアーティストになっていたいですか?
ROCKKEN 例えばレニー・クラヴィッツが好きなんです。シンプルだけど、かっこいい。例えば「Are You Gonna Be My Way」なんていつかかっても、「おっ!」ってなりますよね?
──なんなのか、あの高揚感(笑)。
ROCKKEN ニルヴァーナの「Smell Like A Teen Spirit」もそうですけど、シンプルで誰でもコピーできそうだけど、かっこいい。それにレニーは演奏、録音など全部自分でやってるし、ROCKKENとしてソロになるきっかけとしては意識しましたね。ROCKKENについてわかりやすい例えだと思って説明しても、ピンときてくれない人が多いですけどね(笑)。自分で作って自分で演奏して自分で歌って…………結局僕の好きなアーティストってそういう人が多いんです。
「TRAVELLIN' MAN」
2018年11月17日よりライブ会場販売予定/ボーナストラック2曲収録
◆ROCKKEN オフィシャルサイト