黒猫チェルシー、活休前ラストライブ「また、逢いましょう」
黒猫チェルシーが、活動休止前のラストライブを2018年10月16日に神戸VARIT.にて開催した。レポートが到着したのでお届けしよう。
◆黒猫チェルシー 画像
6月5日に活動休止を発表した黒猫チェルシー。<黒猫チェルシー TOUR 2018 黒猫の恩返し>として、9月11日札幌COLONYを皮切りに、9月20日名古屋CLUB UPSET、9月24日渋谷CLUB QUATTROと周り、最後は9月30日に地元神戸の神戸VARIT.でファイナルを飾り、活動休止をするはずだった。が、台風24号の影響により延期振替となり、10月16日に改めて神戸VARIT.で開催する事に。
神戸VARIT.のステージには黒猫が結成された2007年、当時高校生だった彼らは上がっている。ギターの澤竜次いわく、3、4人の観客の前で豆腐をぶちまけたりしていた場所。今や、そこを満杯に出来るのは感慨深いが、この日の彼らは、いつも以上に気合が入っていた。ただでさえ活動休止最後のライブであるのに、その上、台風の影響で約2週間の延期振替。2週間後に同じ場所が借りられたのは中々奇跡的な事だが、当の本人たちにとって、その2週間のブランクは不安でもあったらしい。この日、リハーサルに予定された時間は3時間。
そんなに時間を取るって事は何か特別な事が色々あるのかと思い、リハーサルのスタート時間に入ったが、結果はいつも通り1時間弱で順調に終わる。後から、先述の2週間のブランクによる不安を懸念してのタイムスケジュールだったと知った。
リハーサル後、ベースの宮田岳は澤のギターを弾いたり、ドラムの岡本啓佑もスタッフと談笑したりと、いつも通りにしか見えなかった。終演後、観客にプレゼントするサインボールにサインをしたりしている内に開演の19時が迫ってきた。
1曲目は「海沿いの街」。地元である神戸を歌った、この曲で始まるのは何ともエモーショナルである。「転がる石のようにぶつかってみるよ」、「ぼくたちはどこまでも続く道を歩いていくだけなのだろう ずっとこの先もそうやって生きていくのさ」という歌詞が、ただただ沁みる。
近年の黒猫は、こういったミドルバラッドを得意にしているが、続く「恋はPEACH PUNK」のような跳ねた曲、ボーカル渡辺がハーモニカを吹きまくるブギー調の「ショートパンツ」、ミクスチャーロック感がたまらない「ファンキーガール」など、本当に幅がある音楽を鳴らせる。この魅力をこれから伝えていくとこなのになと、やはり、どうしても想ってしまう。
渡辺はMCで、「僕たちは全て、この街からですよ。最初は好き放題、好き勝手やって、そこから11年。最初は3、4人だったお客さんが今はソールドアウト。今日は大好きな曲しかしません! だから、覚悟してください!」と強く言い放つ。確かに、この日は大好きな曲しかやっていなかった。とてつもなくバンドグルーヴを感じられた「夜更けのトリップ」を経て、「グッバイ」では渡辺と澤がアコギをそれぞれ持って、ふたりきりで演奏したり、NHK連続小説ドラマ「まれ」の劇中で登場したバンドlittle voiceによる「また会おう」をアコースティックで演奏したりする。「また会おう」は、渡辺が「純粋に素直な曲をスッと出せるようになったキッカケの曲」と説明したように4人の伸び伸び感しか伝わってこない曲であった。
終盤15曲目としてまさかの新曲「コレクション」を披露。ハンドマイクのみの渡辺の動きはキレキレで、これぞロックスター、ロックヒーローという佇まいであったし、結成10年で、ようやくここまで辿り着いたのだという喜びしかなかった。この新曲、ずば抜けて良い曲である。爆発力が他の曲と違いすぎる。この曲終わり、渡辺は手応えを感じたのか、「黒猫チェルシー好き? 俺は大好きや! かっこよくなかった?」と思わず観客に問いかける。
「まだまだ、終わりじゃないです。進化して、ウワーっと度肝を抜かせるまで修行に行ってきます! もうちょっと待っていてね。終わりじゃないよ、明るいよ! 切ない感じいらんな!」と続けたが、どう考えても活動休止するバンドのライブではないし、そんな雰囲気も一切ない。
「嘘とドイツ兵」、「廃人のロックンロール」、「オンボロな紙のはさみ」、「黒い奴ら」、「ベリーゲリーギャング」など初期の曲を畳み掛け、本編最後のナンバー「バンドマン」の前に渡辺は、こう話した。「色々な活動をしてますが、腐ってもバンドマンやなと。この4人じゃないと音楽をやってなかったので、黒猫チェルシーに誘ってもらって本当に嬉しいし、バンドマンである事を誇りに想います!」。
そして、渡辺が「1回離れますけど、また、この4人でやりたい。甘いもんじゃないと想いますけど、最強やなと想えた時に帰ってきて、みんなを必ず振り返らせる覚悟でやります。必ずVARIT.に帰ってくるよ。また、逢いましょう、さよなら。俺たちがここにいる事の証明を聴いてくれ!」と訴えてから、アンコールナンバー「東京」へ。「歌はなくならない おれもなくならない」という歌詞のメッセージが、そのまま過ぎて、沁みるを通り越して、辛くなる…。実際、泣いている観客も本当に多かった。ただ、活動休止をしても黒猫チェルシーはなくならないし、メンバー誰ひとりなくならないし、必ず戻ってくると本人たちが宣言しているわけだから、それを信じるしかない。
でも、ひとつ確実に言えるのは、黒猫チェルシーは今が一番良いという事。そして、色々な想いはあるが、基本、とても明るく前向きな雰囲気で、変にウエットな雰囲気は全くない活動休止前のラストライブであった。とにかく今日から、メンバーそれぞれ動き出す活動を温かく見守り、いつの日か帰ってくる黒猫チェルシーを心から待ち望むしかない。
一番最後に渡辺が叫んだ「俺たちが黒猫チェルシーだ!」という叫びが、未だに頭にこびりついている。
取材・文◎鈴木淳史
写真◎Ohagi
セットリスト<黒猫チェルシー TOUR 2018 黒猫の恩返し>
1.海沿いの街
2.恋はPEACH PUNK
3.ショートパンツ
4.ファンキーガール
5.涙のふたり
6.アナグラ
7.ボリュームノブ
8.サニー
9.Dark Night,Spot Light
10.夜更けのトリップ
11.グッバイ
12.また会おう
13.飲みに行こう
14.Pop Life
15.コレクション
16.ベイビーユー
17.嘘とドイツ兵
18.廃人のロックンロール
19.オンボロな紙のはさみ
20.黒い奴ら
21.ベリーゲリーギャング
22.平成ストレンジャー
23.バンドマン
EC.東京
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