【ライヴレポート】黒猫チェルシー、活動10年を凝縮「続けているというのは、こういうことかと。」

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昨年結成10周年を迎えた黒猫チェルシーがアニバーサリーイヤーの締めくくりとして、<第1回輝く! 10周年ゴールデンライヴ~栄光のワンマン~>と銘打った公演を3月17日(土)に渋谷CLUB QUATTROで行なった。

◆黒猫チェルシー 画像

ご存じの方も多いと思うが、黒猫チェルシーは同じ高校に通っていた同級生4人が組んだバンドで、以来メンバー・チェンジすることなく今に至っている。10代でバンドをやっている人にとって、彼らのようなバンドに憧れている人は多いだろう。実際、いわゆる“スクールバンド”は強みになっていることが多い。

まず挙げられるのが、メンバー間の結束の強さだ。10代から一緒にいるということはメンバーが人として、ミュージシャンとして成長していく過程をお互いに見ているため、それぞれに対する理解が深い。“何物でもない普通の少年”だった頃を知っている同士ということが、メンバー間の強い絆を生んでいることは想像に難くない。もう一つは、結成10年を迎えても、まだ20代後半という若さもアドバンテージといえる。10年という長いキャリアと瑞々しさを併せ持っているバンドは独自の魅力を湛えていることが多い。瑞々しいイメージを持つ黒猫チェルシーだけに、彼らが10年選手と聞いて驚くリスナーは多いと思う。

他にも、ファンの人達とも一緒に大人になっていける、10年を経ても攻めの姿勢でいられるなど、メリットは数多い。黒猫チェルシーは良い形で10周年を迎えたなと思いながら渋谷CLUB QUATTROに向かったところ、場内はオーディエンスでビッシリと埋まり、アニバーサリーライブにふさわしい華やかな空気に包まれた公演となった。

今回のライブは、場内の上手側に降ろされたスクリーンにメンバー4人の個別インタビューの映像が流れるという趣向から始まった。「あなたにとって黒猫チェルシーとは?」や「今後の野望は?」「今日のライブの意気込みは?」といった質問に応えるメンバーの姿に客席が湧いた後、ヨーロッパの民謡っぽい陽気なオープニングSEが流れ、ステージにメンバー達が登場。熱い歓声と拍手が起こり、ライブはウォームなミディアム・テンポの「バンドマン」で幕を開けた。


アコギを弾きながら温かみのある歌声を聴かせる渡辺と、キレの良いバッキングやテイスティーかつテクニカルなギター・ソロを展開する澤。岡本のどっしりしたビートと宮田のしなやかなベースのマッチングを活かして心地好いグルーブを紡いでいくリズム・セクション。個性の強い4人が一つになって生み出す強固なバンド感と心地好いサウンドが相まって、渋谷CLUB QUATTROの場内は瞬く間に黒猫チェルシーの世界へと染まった。

「バンドマン」が終わると同時に、「10周年ライブでようこそ! 楽しもうぜ!」という渡辺の声が響き、パワフルにドライブする「アナグラ」や、ファンク・テイストを採り入れた「ファンキーガール」などが炸裂するように演奏された。「バンドマン」で溜め込んだエネルギーを放出するように熱いステージングを見せながら勢いに溢れたサウンドを轟かせるメンバー達と、そんな彼らに応えて熱いリアクションを見せるオーディエンス。“柔”から“剛”へと移るオープニングを見事に決めて、数曲で場内を一つに纏めあげたのは流石といえる。

その後は、「今日は、この10年間でいろいろ見て、聞いて感じたものを全部詰め込んだライブをします」という渡辺の言葉を挟んで、乾いた哀愁を纏った「涙のふたり」や、歌い上げる渡辺のボーカルが心に染みる導入部からアッパーなミディアム・テンポに移行する「抱きしめさせて」、R&Rとパンク・テイストを融合させた印象の「夜更け」のトリップなどを相次いでプレイ。コンパクトなサイズの楽曲を並べて、1曲ごとにテイストを変えながらスピーディーに進んでいく流れが本当に心地好い。こういった疾走感が今のリスナーの感覚にマッチしていることからは、10年を経たバンドでいながら我が道を進むことなく、時代性を敏感に感じ取っていることがうかがえた。

ライブ中盤では、ダンサブルなサウンドと弾力感のあるボーカルを配した新曲の「Clap(仮)」を聴かせた後、バック陣それぞれが特に思い入れの強い曲を自身が歌うというメドレーを披露。澤が味のある歌声を聴かせた「モーター」を皮切りに、疾走感に溢れたサウンドをフィーチュアした「YOUNG BLUE」を宮田が歌い、岡本がチョイスしたシャッフル・チューンの「ロックバラード」で締めるという流れは実に楽しくて、客席からは大歓声が起こっていた。アニバーサリー・ライブならではの演出だったわけだが、こういうシーンは普段のライブでもあって良いのでは…と思わされるヒトコマだった。


「ファンキーガール」とは一味異なるパワフル&ファンキーな「LIFE IS A MIRACLE」やバック陣のソロを織り込んだ「オンボロな紙のはさみ」などを聴かせた後、「黒い奴ら」でゲストのオカモトショウ(OKAMOTO’S)がステージに呼びこまれた。サプライズに客席が騒然となる中、渡辺とショウのツイン・ボーカル形態で「Dark Night,Spot Light」と「共犯者」を披露。良い意味で少年っぽさが香る渡辺とセクシーなショウによるツイン・ボーカルは絶妙だったし、「共犯者」で見せた2人のブルース・ハープの競演も聴き応えがあった。「OKAMOTO’Sとはすごく思い出が多い。もう8~9年の付き合いになる盟友です」(渡辺)。「10代の頃からの付き合いで、今日お祝いに来れて嬉しいです」(オカモトショウ)という言葉に、客席からは温かみに溢れた拍手が湧き起こっていた。

「10年前に作って、10年間事あるごとに歌ってきた曲を歌います」という言葉と共に演奏された「嘘とドイツ兵」を経て、「廃人のロックンロール」からライブは後半へ。ダンス・テイストを活かした「ベリーゲリーギャング」やキャッチーな「恋はPEACH PUNK」などが演奏された。1曲ごとに盛り上がりの波を作っていき、それが折り重なった終盤でパワフルなナンバーを畳み掛けて大きな波を生み出す流れは実に見事。メンバー全員が織りなすフィジカルなステージングと爽快感に溢れたサウンドの応酬にオーディエンスのボルテージはさらに高まり、場内は盛大な盛り上がりを見せた。

その後は本編のラストソングとして、モータウンに通じるテイストを活かした「ベイビーユー」をプレイ。ウォーム&メロディアスなナンバーに応える形で客席からは合唱が起こり、バンドとオーディエンスが完全に一つになったことが如実に感じられた。「ベイビーユー」を聴かせてメンバーが去った後の場内は、柔らかな笑顔で溢れていることが印象的だった。




10周年という大きな節目を飾るにふさわしい上質なライブで、オーディエンスを魅了した黒猫チェルシー。10年を経てもメンバー全員が黒猫チェルシーというバンドを愛し、楽しんでいることが伝わってきたし、2曲の新曲を聴かせたことも含めて、彼らにとって10周年は単なる通過点で、今なお未来を見据えていることが伝わってきた。さらなるスケールアップを果たすことを感じさせただけに、今後の彼らにも大いに注目していきたいと思う。

最後に、アンコールでメンバー4人が10周年について語った言葉を記しておこう。

「初めてワンマンをした時は40分のライブを作るのも一苦労だったけど、今日は3~4時間あっても足りないぞというくらいやりたい曲がいっぱいあって、そこに10年を感じました。みんな応援してきてくれて、ありがとう。嬉しいです」(岡本)

「僕らは、分かりにくい人達だと思うんですよ。芸能感とかもないし。あっ、渡辺は、ちょっとあるけど(笑)。分かりにくいバンドなのに、今日来てくれた人は僕らの味方です(笑)。ありがとう」(宮田)

「10年。今日で、ちょうど11年目になりました。神戸の僕の部屋でこのバンドを結成して、ここまでやって来た。もっとデカい会場でやりたいという気持ちがあるけど、まずは今日ここに集まってくれて、ありがとう。みんなが俺の励みになっています」(澤)

「東京に出てきた年に、CLUB QUATTROさんにはお世話になっているんです。そのライブが東京デビューで、エンケン(遠藤賢司)さんの主催ライブだった。エンケンさんが亡くなった時はショックだったし、東京で初めてライブをした場所ということで、いろんなことを思いながら今日を迎えたんです。そのうえで、今日ここに来て、思いました。続けているというのは、こういうことかと。ずっとライブをし続けていられるのは幸せなことだなと。みんなが僕らを支えてくれていることに、本当に感謝しています。もっと大きい会場でもライブができるようにがんばりますので、これからもよろしくお願いします」(渡辺)

取材・文◎村上孝之

■ライブ情報

<黒猫チェルシー ワンマン2018 〜痛快 To You in 大阪〜>
2018年6月17日(日)大阪・心斎橋Pangea
開場 17:30/開演 18:00
前売り:3500円(ドリンク代別)
お問い合わせ:サウンドクリエーター 06-6357-4400  http://www.sound-c.co.jp
チケット取り扱い:イープラス、ローソンチケット、チケットぴあ、SCチケット

<黒猫チェルシー ワンマン2018~裏猫チェルシーホテル~>
2018年6月22日(金)渋谷チェルシーホテル
・OPEN/START 18:30/19:00
・チケット料金:前売り3500円/当日券4000円(共にドリンク代別)
・チケット一般発売日:4月28日(土)
・チケット取り扱い:チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス

(※2018/4/20 16:44編集部追記:ライブ情報の大阪・心斎橋Pangea公演の開催日付表記に誤りがございました。正しくは6月17日(日)になります。お詫びして訂正いたします)

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