【インタビュー】Mana × Közi、MALICE MIZERを語る「Kamiの約束が実現できる」
■当時はMALICE MIZERにしかできない
■音楽を作るというのがテーマだった
──というと?
Mana:2016年の<Deep Sanctuary Ⅴ>の時だったんですけど、フィナーレで「au revoir」(オ・ルヴォワール)のインストゥルメンタルバージョンを流して、「楽しかったね」みたいな感じでピックを投げたりしてたんですけど、ステージを去る間際にKöziが“♪もーっと”と歌って。
Közi:サビに入るところでね。
Mana:そう。たまたまそう歌った瞬間、それに続くようにファンの大合唱が起こったんですよ。それにすごく感動して。歌詞もバッチリ覚えてくれていたし。
Közi:僕ら、ステージからはけても舞台袖でずっと聴いてたもんね。
Mana:感動で震えました。だから“次回はちょうど25周年だし、お客さんにもっとMALICE MIZERの曲を聴かせてあげたいな”って、その瞬間に思いましたね。
──イベントを積み重ね、その大合唱を聴いて、みんなの中にMALICE MIZERの曲はずっと生き続けているんだっていうことを改めて感じたんですかね。
Mana:それは大きかったです。こっちから何もリクエストしてないのに全員が大合唱になったことは、本当に忘れられない。
Közi:ちょうど3人がはけるときにBメロが終わりかけてサビに入るところだったから、“♪もーっと”って歌えたんですよ。タイミングも奇跡的だった。
Mana:しかもたまたま、そこにマイクがあったから歌っただけで。
Közi:そう、偶然が重なって。ステージには誰もいないのに最後まで歌ってくれて。まぁ、震えましたね。
Mana:だから、今回のイベントも1年ぐらい前から組んでましたし、すぐに「次はMALICE MIZERメインでやろう」っていう話になったので、もう去年の9月ぐらいにセットリスト考えてましたから。
──そんなに早く!?
Mana:はい。MALICE MIZERの曲をいっぱいやろうって。Yu〜ki伯爵はトランシルバニアに住んでいることもあって、早めにお知らせしないといけないんですよ。なので曲を決めて、鳩を飛ばしました。
──真っ白な伝書鳩を?
Közi:そこは、このデジタル時代ですが非常にアナログな感じなんです(笑)。
──ヨーロッパのお城が見えてくるような話です(笑)。このへんでMALICE MIZER活動時のことを訊きたいと思っているんですが、MALICE MIZERは1990年代当時のシーンの中で異彩を放っていたし、見た目からして突き抜けていましたよね。ステージングも演劇的で楽曲もクラシカルな要素があってプログレッシブロック的な側面もあったと思うんです。お2人が今、MALICE MIZERというバンドを振り返って感じることは?
Mana:今、MALICE MIZERの曲を久々に演奏するので練習してるんですけど、ギターがとんでもないコード進行だったりしていて(笑)。“よくこんな曲作ってたな。すごく複雑なことしてるな”って実は改めてビックリしています。当時から複雑にしようとは思っていたんですけどね。MALICE MIZERにしかできない音楽を作るというのがテーマだったので、とんでもない展開をしてたり。
Közi:ホントにこんな曲よく作ったなっていう感じですね。今、ふだんはMALICE MIZERの曲を聴いたりしないので、今回のライブで使う音源を確認するためにManaちゃんの家に行ったんですけど、改めて「すげえな」と思いましたね。俺はZIZ以外にもいくつかバンドをやっているんですが、全然スタイルが違うんです。当時は普通じゃない方向を目指していたので、俺もそういうことを意識して曲を作っていたから、今と発想が違うんですよね。
──当時、どういう発想で作ってたんですか?
Közi:あまりバンドサウンドを基準には考えてなかったですね。初期こそギターで曲を作ってたけど。
──その後は打ち込みだったりとか?
Közi:鍵盤とかですね。
Mana:初期はまだ打ち込みを使ってないんですよ。「同期って何?」みたいな発展途上時代だったので、1stアルバム(『memoire』)の頃は完全にアナログなやり方ですね。当時は2人ともギターシンセを使って、パイプオルガンやバイオリンの音を出していたんです。いわゆるロックのギターより、そういう音色に惹かれてギターシンセを駆使してましたから。当時はテクノロジーも発展段階で、ギターシンセのMIDI信号って少し遅れて出力されてたんですね。だから、音を出したいタイミングの一歩前で弾かないと合わない(笑)。けっこう苦労しながらやってたんですけど、“ギターからパイプオルガンの音が出るって面白いじゃない?”っていうことのほうが重要だったし、それがMALICE MIZERらしさだったと思う。
──音の面でも他のバンドがやっていないことを追求していたわけですよね。当時、すごく覚えているのはみなさんが自分でメイクしていたことです。蝶を描いていたり、こんな芸術的なメイクを自らするって、これぞヴィジュアル系の在るべき姿だなって。
Mana:そうですね。初期からメイクは一貫して自分たちでやってました。
──しかも、メイクが絵のようでアートなんですよね。
Mana:絵が上手いメンバーが集まってたっていうのはありますね。
──楽曲のみならずメイク、衣装、ステージングも他のバンドとは違うことをやりたいという想いが強かったんですか?
Mana:サウンド、ヴィジュアル、パフォーマンスにおいても、とにかく他とは絶対的に違うことをやりたかったんですね。途中からは、曲の世界観をより表現できるんだったらギターを弾かない曲があってもいいんじゃないか?と思って。ロック的にはご法度かもしれないですけど(笑)。
──パフォーマンスで見せる曲も衝撃的でした。いろんな意味で先駆者ですが、そのパフォーマンスって時期的にはいつ頃のことでしたか?
Mana:シングル「麗しき仮面の招待状」(1995年発表)の時ですね。表題曲が打ち込みで舞踏会の曲だったので、僕とKöziはその雰囲気を出すために、ギターを置いてパフォーマンスしたほうがより世界観が伝わるんじゃないかと思ったんです。けっこう賛否両論でしたけどね(笑)。
──ははは。「なんで踊るの?」みたいな反応も楽しみだったということもあります?
Mana:はい。対バンにも踊ってるバンドはないので、ミュージシャンから「楽器弾かないで踊るって何?」って。
Közi:最初の頃はすごかったよね。
Mana:お客さんも「え? 弾かないの?」って。
Közi:「ちょっとウケるんですけど」って(笑)。
──それを貫いたのもスゴイですね。賛否両論で世間をザワつかせたってことですから。
Mana:賛否両論があるっていうことは逆にいいのかもしれないです。“何あれ?”って思っても、だんだん面白く感じてもらえたり。引っかかるところがないとダメだと思っていたので、あらゆることをやってましたね。
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