BiSH、一筋縄ではいかない無敵の“楽器を持たないパンクバンド”
BiSHの勢いが止まらない。BiSHは2016年5月にシングル「DEADMAN」でメジャーデビュー。以降“楽器を持たないパンクバンド”の異名どおり、パンクバンドばりの鬼のような本数のライブをこなし、同年秋に行った日比谷野外大音楽堂での単独公演は満員御礼、2017年7月には幕張メッセ イベントホールにて7000人の聴衆を集めた。
◆最新ミュージックビデオ ほか
1年足らずで野音の倍以上のキャパシティをソールドさせたことにも驚きだが、そのあともBiSHチームの企みは続く。9月にはセブンイレブンとのコラボレーションで「ありがとうおでん」キャンペーン・ソングを担当。ライブハウスで活動してきた彼女たちが、今年に入りじわじわと大胆にお茶の間進出を始めたのだ。つい先日は『スッキリ!』に出演し朝から生パフォーマンスを披露するなど、番狂わせを続けるBiSH。彼女たちの勢いはいったいどこから生まれたのだろうか?
BiSHはもともと、奇抜な活動でリスナーの度肝を抜き続けてきた新生アイドル研究会・BiSの解散(※2016年7月にBiSは再結成している)から半年経った2015年1月に、“BiSをもう一度始める”というコンセプトのもとメンバー公募が始まったプロジェクトだった。インディーズ時代は“新生クソアイドル”という冠のもと解散前のBiSの活動をなぞることも多く、BiSHのメジャーデビュー直後に行われた<24時間耐久イベント>(BiSH、トータル26時間のメジャーデビュー記念24時間パーティー完走)もそのひとつ。いまも続いているメンバーでダンスを考える、メンバーで作詞をする、というDIY感もBiSから受け継がれたものだ。
だがあるときを境に、BiSの影をふと感じることがなくなった。その決定的な出来事は現在のメンバー編成になった直後に発表された「オーケストラ」(※アルバム『KiLLER BiSH』収録)だろう。この曲はBiSHファンだけではなくアイドルファン、それを超えて音楽ファンにまで急速に広まっていった。その理由はシンプルに曲のクオリティが高かったからだ。バラードながらにラウドロックな要素を孕むだけでなく、ゴージャスなストリングスが施されたサウンド、キャッチーでドラマチックなメロディ、この楽曲でメインボーカルを担当しているアイナ・ジ・エンドとセントチヒロ・チッチの表現力、それらすべてが相まって、一般的なアイドルの常識を壊したのだろう。特にアイナのハスキー・ボイスと歌唱力、表現力、リズム感は、アイドル界だけでなくボーカリストとして圧倒的な才能を放っていた。“BiSHはBiSHである”ことを楽曲とともに立証した象徴的な出来事だったと思う。
BiSHは楽曲がいい。その評判の期待を裏切ることなく、サウンド・プロデューサーである松隈ケンタは「プロミスザスター」という「オーケストラ」を超えると言っていいほどの楽曲を彼女たちに捧げる。彼女たちもフィールドを超えた対バンやワンマンなど精力的なライブ活動のなかでダンス、歌唱ともにクオリティを上げることに注力していった。その片鱗が見え始めたのは2017年3月、Zepp Tokyoで開催された<NEVERMiND TOUR>のファイナル公演。初めてバックバンドと回ったワンマンツアーということもあってか、メンバー全員がナチュラルで生き生きとした表情を浮かべていることも多かった。このころから彼女たちは自分たちの楽曲の新しい楽しみ方、ライブでやりたいことのイメージ、ファンに伝えたい強い想いなどが見えてきたのではないだろうか。
そのイメージが具現化したのが先述の幕張メッセ単独公演だった。それまでのBiSHはまだ手の届かないところに向かってがむしゃらに挑戦していく姿が最大の魅力だったが、このステージに立っていた6人は歌もダンスも観客を“魅せる”パフォーマンスをしていた。こんなに短期間で人間はこれほどまでに変わるのかと面食らうと同時に、現在のメンバー6人の結束の強さと個々のキャラクターの立ち方をまざまざと見せつけられたライブだった。彼女たちは追い風や外野からの期待に足元をすくわれるどころか、それを全部味方につけてしまった。やはり“BiSをもう一度始める”という言葉のもとに集まったメンバーである。6人全員が一筋縄でいくわけがないたくましさを持っているのだ。
現在のBiSHが凝縮されているのが最新アルバム『THE GUERRiLLA BiSH』。6人全員がそれぞれソロで作詞を担当しており、幅広い音楽性と6人のボーカルの個性がエネルギッシュに炸裂する作品である。タイトルに関連してゲリラ的プロモーションを展開しており、11月4日にタワーレコード全店で予告なく同作を先行リリース。おまけに299円という破格で、売り切れ店は続出、オリコンデイリーチャートでぶっちぎりの1位を獲得した。同日公開された収録曲「My landscape」のミュージックビデオは、飛行機の墓場と呼ばれるモハベ砂漠など広大なロケーションで撮影されたもので、その翌日は大阪道頓堀で船上ゲリラライブを行うなど、ひとつひとつのスケールもとにかくでかい。2017年の音楽界のゲリラ戦法と言えば、日本のパンクシーンのレジェンド・Hi-STANDARDだが、こんな大御所と張り合えるのは楽器を持たないパンクバンドであるBiSHだけではなかろうか。
だがBiSHの仕掛けるゲリラ戦法がこれで終わるとは思えない。この何が起こるかわからない、気が抜けないというスリリング感も、多くの人々が彼女たちにどっぷりとはまってしまう要因だろう。6人それぞれが個性という武器を手にし、活動範囲も規模も拡大しつづけているBiSH。いま、かなり無敵状態だ。なお、BiSHは今週12月1日(金)にテレビ朝日系『ミュージックステーション』への出演も決定している。初出演となる同番組ではどんな爪痕を残すかも気になるところだ。
文◎沖 さやこ
『THE GUERRiLLA BiSH』
■AL+Blu-ray+PHOTOBOOOK(100P)
初回生産限定盤 EP サイズ豪華BOX 仕様
AVCD-93752/B ¥10,000+tax
PHOTOBOOK:LAオフショット満載
■AL+DVD
AVCD-93753/B ¥5,800+tax
■AL
AVCD-93754 ¥3,000+tax
[AL収録内容] ※3形態共通
01 My landscape
02 SHARR
03 GiANT KiLLERS
04 SMACK baby SMACK
05 spare of despair
06 プロミスザスター
07 JAM
08 Hereʼ s looking at you, kid.
09 ろっくんろおるのかみさま
10 BODiES
11 ALLS
12 パール
13 FOR HiM
[Blu-ray収録内容] ※AVCD-93752/B
2017.06.28 YOYOGi GiANT KiLLERS
2017.08.23 TOKYO BiSH SHiNE 3
-Music Video-
プロミスザスター
GiANT KiLLERS
Nothing.
My landscape
-Making Movie-
LAでの撮影のMaking映像
[DVD収録内容] ※AVCD-93753/B
2017.06.28 YOYOGi GiANT KiLLERS
2017.08.23 TOKYO BiSH SHiNE 3
◆BiSH オフィシャルサイト
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