【インタビュー】アイス・エイジ、結成から30年以上の時を経た奇跡の1stアルバム
結成から30年以上の時を経て完成した奇跡の1stフル・アルバムが発売となった。1980年代に活動、1990年に解散するも2014年に息を吹き返したガールズ・スラッシュ・メタル・バンド、アイス・エイジの『ブレイキング・ジ・アイス』である。
◆アイス・エイジ画像
アイス・エイジは、レコード・ショップで知り合ったサブリナとピアによって1985年にスタートしたスウェーデンのフィメール・スラッシュ・バンドだ。結成間もない頃のステージではパワー・メタル色を打ち出し、最初のデモ「Rock Solid」にもその色合いが反映されていた。後に、現メンバーでもあるヴィクトリアが新たに加入することで、より生々しいサウンドへと変貌を遂げ、アイアン・メイデンやクイーンズライク系スタンダード・メタルから初期メガデスやメタリカに近いスラッシュ・スタイルへと向かっていった。
1989年のツアー途中でシンガーのサブリナがマネージャーとのトラブルを理由にバンドを脱退してしまい、新しいシンガーとギターを迎えるも修復不能の問題を抱え6ヶ月で活動停止状態、1990年にはついにバンド解散の道を辿ることとなってしまう。それから10年もの年月がたった2011年、スウェーデンのヨーテボリで開催されたThe Big 4 Show(メタリカ、スレイヤー、メガデス、アンスラックス)がテレビでオンエアされた際、その放映はアイス・エイジへと捧げられたという。
そして2014年、サブリナとヴィクトリアのオリジナル・メンバーに加え、TYRANEXのリニアと唯一の男性である元MANIMALのアンドレという4人編成でアイス・エイジは復活を果たした。新生アイス・エイジは、かつてリリースしたデモの5曲と新曲5曲でアルバムを構成、結成から30年以上の時を経て完成した1stフル・アルバム『ブレイキング・ジ・アイス』では、変わることのないオールド・スクールでピュアなスラッシュ・メタルを聴かせてくれている。
──30年越しの1stアルバム…今のお気持ちは?
サブリナ:これだけの時間が経過したからシュールな感覚もある。でも音楽業界に戻ることができて素直に嬉しいわ。こんな素晴らしいアルバムを誰も予想できなかったはずよ(笑)。
──アルバムの最大のポイントは?
サブリナ:捨て曲なしよ。メロディ、リフ、アティテュードと待った甲斐があった内容で、キャッチーな曲もあるからスラッシュ以外のファンにも訴求するはず。ロック・ファン全員に聴いてもらえるポップ・スラッシュね。でも、しばらく新曲を作っていなかったから今回は時間を要したわ。ギター・リフを書いてからコードを決めて曲の全体像を作ってから、メロディと歌詞を加えていくのが私のスタイルなの。
──アルバム・タイトル『ブレイキング・ジ・アイス』というのはどういう意味ですか?
サブリナ:私達にピッタリのタイトルだと思ったの。ずっと多くの困難を抱えてきたし、私は一度バンドを脱退した。四半世紀活動を停止していたけどみんなが様々な困難にも負けずにそれに立ち向かい、強くなることを望んでいるのよ。
──アイス・エイジというバンド名はどのようにして命名したのですか?
サブリナ:女性4人で地球と寒々しいものをイメージするバンド名を…と考えて。忘れないで、これはディズニー映画よりもずっと前に付けた名前なのよ(笑)。
──1980年代のアイス・エイジを振り返って、印象的だったことや想い出は?
サブリナ:バンドが解散したことも含めて、今思うといい想い出ばかりよ。たくさんツアーすることができたし、デモ・カセットが何千本と売れたの。ロンドンのマーキーで何回もライブを行うことができたけど、レコードリリースなしにここまでできるバンドはそう存在しなかったと思うわ。そういう意味からもアイス・エイジは誇りに思うバンドよ。メタルの歴史にもハッキリと跡を残したバンドだわ。
──当時、多くのデモを発表していながら、アルバムをリリースしなかったのはなぜですか?
サブリナ:いくつかのレーベルから興味を持たれていたし、契約寸前までいったこともあった。でも残念なことに私たちの悪徳マネージャーのおかげで全てがボツよ。レーベルが彼を怖がっていたしね。
──1989年にあなたはバンドを去ってしまいましたが、その理由は?
サブリナ:そのマネージャーとバンド内の緊張感がマックスに達したから。もうそれ以上耐えられなかった。私が去った6ヶ月後にバンドは解散してしまった。
──そして、2014年に再結成ですね。
サブリナ:実は、世界中からずっとリユニオン・ツアーとアルバムのリクエストを受けていたの。そして2013年に一度解散から初めてオリジナル・メンバーが集まった。でもその時はメンバーそれぞれの理由があって実現はできなかった。それから私とヴィクトリアが話し合い、新たに2人のメンバーを加えての再結成を決意したのよ。2015年1月に新生アイス・エイジとしてステージに立ったけど、それは素晴らしかったわ。その時のバイブが良かったから、アルバムへと進むことにしたの。
──このアルバムには新曲5曲とかつてのデモ5曲から構成されていますね。
サブリナ:かつてのファンに当時のデモからの曲を聴かせたかったから。「遂にアルバムになったわよ!」ってね。デモからベストな5曲を選んだけど、新しい曲との相性も良かったし、バランス良く構成できたと思うわ。
──アルバムの中から特にオススメの曲はありますか?
サブリナ:「Breaking The Ice」はアイス・エイジというバンドをまさに表した曲ね。「Hell Or Nothing」は、かつてのマネージャーについて書いた曲。聴いて感じて欲しいわね。「Clever」は最もキャッチーな曲だけど、昔からの友人に向けて書いた曲よ。
──あなたの音楽的バックボーンは?
サブリナ:スイート、キッスからスタートして、ジューダス・プリースト、アイアン・メイデンをはじめとしたNWOBHMを聴いていたの。そこからギターのハーモニーが奏でるツイン・ギターが好きになった。特にグレン・ティプトンとK.K.ダウニングよ。それからメタリカやメガデスのスラッシュが気に入ってその世界に入っていった。強烈なリフとソングライトに大きな影響を受けたの。ボーカルについて言えば何といってもロニー・ジェイムス・ディオね。ブラック・サバスの彼にはぶっ飛んだわ。彼はメロディの組み立て方が素晴らしいし、歌詞とメロディを融合させる天才よ。今でも彼からの影響はあると思う。今でも好きなバンドと断言できるのはメガデスとジューダス・プリースト…私にとっては欠かせない先生ね。
──あなたの人生の中で大切なアルバムと言えば?
サブリナ:ランナウェイズ『The Runaways』は、女性でもハード・ロックをプレイできるんだと勇気づけられたアルバムね。メタリカ『Ride The Lightning』は、普通のメタルからスラッシュへの道を教えてくれた大切な1枚。ジューダス・プリーストの『Screaming For Vengeance』は、2人のギタリストを筆頭に全てが素晴らしい作品だと思う。そしてレインボー『Rising』は、最も優れたシンガーであるロニーの真骨頂だわ。メロディ、ハーモニーと多大な影響を与えてくれた。メガデスの『Peace Sells...But Who's Buying?』は、プレイする上で見本となったアルバムなの。
──30年の間に音楽ビジネスも様変わりしましたが、メタル・シーンの将来についてどう思いますか?
サブリナ:将来の推測は難しいけど、メタルがなくなることはないわ。様々なスタイルが現れては消えていくこの世界だけど真のメタルは変わることはないし永遠に存続する。CDが売れなくなって久しいけど、もはやCDが何千~何万枚と売れるとは思っていないの。あの頃が懐かしいけど(笑)、こっちでは完全にスポティファイのようなデジタル・プラットフォームに代わったわ。でもメタル・ファンはまだまだCDやLPを購入したいと思うファンが多い。音楽ビジネスも変化してレーベルと契約してフィジカルをリリースするという形態はさらに減って、アーティストが自身の手でアルバムを制作しプロモーションしていく時代になっていくでしょうね。インターネットで何でも可能な時代になったからこその現象だと思うの。その一方で個々の競争は激しくなるでしょう。
──これからの夢とゴールはどういうものですか?
サブリナ:音楽をプレイし続けること。みんなが聴いてくれる音楽を創り続けるわよ。
──ツアー・スケジュールは決定しましたか?
サブリナ:来年からスウェーデンで行う予定よ。その後はヨーロピアン・ツアーを行ってから夏のフェスに出演することになると思うわ。
──日本のメタルヘッドも活躍を楽しみにしています。
サブリナ:アイス・エイジからのデビュー・アルバムを気に入ってくれることを願っているわ。そしていつの日か日本でプレイできる日が訪れることを望んでいるの。ビデオ「Breaking The Ice」が公開されているからそれも楽しんでね。ありがとう。Hugs!
アイス・エイジ『ブレイキング・ジ・アイス』
BKMY-1058 2,222円(税抜価格)
※日本盤仕様
1.Fleet Street
2.Hell Or Nothing
3.Clever
4.General Alert
5.Instant Justice
6.Breaking The Ice
7.Total Collapse
8.Mental Disorder
9.No Need To Bleed
10.A Case Of Cerebral Death
Produced by Daniel Antonsson
Line-up ;
・Sabrina Kihlstrand(vo / g)
・Viktoria Larsson(b)
・Linnea Landstedt(g)
・Andre Holmqvist(ds)