【インタビュー】柴田聡子「音楽って、伝わらないとダメだ!って気づいた」ひとつの金字塔『愛の休日』完成
■ バンってぶつかってくる人に「おいっ! 痛いっ!」って言いたいし
■ 嬉しかったときには臆せず「嬉しい!」って言いたい
柴田:山本さんも、くるりと同じように神様的な存在ですね。山本さんの『なぞなぞ』っていうアルバムを高校生の頃に友達に貸してもらって、そこから私の全てが始まった感じがするんですよ。山本さんからの影響は、完全に自覚しているレベルであります。『なぞなぞ』の1曲目が、“もの投げるなや”っていう曲なんですけど、<腹立つからと言ってもの投げるなや/ものは投げたら壊れる>って歌うんですよ。ビックリしませんか?
──ビックリしますね(笑)。有無を言わさぬ「常識」ですもんね。
柴田:そうそう。「そうじゃん! ものは投げたら壊れるじゃん!」っていう、その衝撃がすごくて。<人も投げたら壊れる>とか、<投げたら人は怒る>とか……そこに人間の神髄がすごいあるなって。誰かにものを渡すときに、ポイッって投げたらダメだなって。ものは壊れるし、人は傷つくし。超絶普通のことだけど、普通じゃないと、その人のことを好きになっていられないのかもと。
──そうですよね。そこに、人と獣の違う部分、人間の理性があるわけで。
柴田:そうですね。でも、小さい頃は私も自分で描いた絵をビリビリ破いたりしていたし(笑)、「ものは投げちゃいけない」って知らなかったかもなって思うんです。人間になる前の「餓鬼」のような時期があって、そこに初めて「ものは投げたらいけない」って教えてくれたのが、山本さんで。未だに、その驚きを引きずっていますね。「人間」そのままだなって思うんです。くるりもそうですけど、すごく暗い歌もあるけど、大体どこかで笑っちゃう部分があったりして。私の好きな方たちはみなさんそうかもしれないです。
──でも、山本さんの言葉を借りるなら、今って、乱暴にものを投げるようにして他人に接する人が多いような気がしますね。
柴田:あぁ〜……外国の人が車のカギをひょいっと投げて渡すような、そういうブラザーな関係性の投げ方はいいと思いますけど、ただ投げたら、それは、傷ついちゃうかもしれないですね。人は多いですもんね……なんか、最近、人が増えていませんか?
──ネットの影響で感覚として接する人の数が多くなったり、現実に海外から働きに来る人も増えているし、たしかに人は増えているのかも。
柴田:でも、できることなら、全ての人とコミュニケーションを取りたいし、その反射神経は高めていきたいです。「パッと会ったときに何を喋れるか?」とか、そういう部分は素直になっていきたいです。バンってぶつかってくる人に「おいっ! 痛いっ!」って言いたいし、嬉しかったときには臆せず「嬉しい!」って言いたい。そういうコミュニケーションは大事ですよね。
──それが「愛」ですからね。今回、最後の曲のタイトルが“愛の休日”で、それがアルバムタイトルにもなっているのは、どうしてなのでしょうか?
▲アルバム『愛の休日』 |
──“愛の休日”には<ころころころころ転がって ころころころころ斜面を>という歌詞がありますけど、この転がり続ける感覚は、柴田さんにとっての人生観のようなものなのでしょうか?
柴田:なんというか、崖から転がり落ちちゃいけないときってあるとは思います。何かを堪えないと面白くないときってあると思うんです。「それをストレートにやるのはすごいけど、たしかに胸をえぐるけど……でも、表現としてどうなんだよ!」みたいに思うことは、結構あります。
──わかります。極端な表現、過度な熱狂……そういった狂気を前にして堪えなければいけない感覚って、今の時代、すごく切実に求められている気がします。
柴田:「そこから先はVOIDというか、ノーコメントになっちゃうよ!」みたいなとこってある気はします。だからこそ、崖の淵でとどまってほしい、ずっと転がり続けたら崖から落ちちゃうし、バランスを取っていたいし、バランスを取っていてほしい……そういう曲ですね、“愛の休日”は。
──ちなみに、本作のジャケットには「DO YOU NEED A REST FROM LOVE?」と書かれていますが、この疑問文には、どんな意味があるのでしょうか?
柴田:これは、英語の慣用句で「ちょっと息抜きしたら?」っていう意味らしいんですけど、私的には、「愛、休んでますか?」っていう感じから発想しました。そもそも、「このアルバムに帯コメントを入れるとしたらなんだろう?」って考えたとき、「愛、休んでますか?」となんとなく思っていて。疑問形にしたかったんです。感情って、自分でもよくわからないことが多すぎるけど、そのなかで必死に、よくわからないなりに考えて作ったのが、このアルバムだなと思うんです。なので、何かに辿り着いたというよりは、余計、どうしようもない感じとか、言葉にできない感じにもなるんです。だからこそ、「あなたはどうですか?」って、ちょっと訊いてみたくなったんです。
取材・文◎天野史彬
◆ ◆ ◆
2017年5月17日発売
PCD-18820
<Track list>
1. スプライト・フォー・ユー
2. 後悔
3. 大作戦
4. あなたはあなた
5. 天使を見てる
6. 遊んで暮らして
7. ゆべし先輩
8. 思惑
9. 忘れたい
10. さばーく
11. リスが来た
12. コーポオリンピア
13. 愛の休日
<参加ミュージシャン 五十音順>
石橋英子、 一樂誉志幸、 伊藤大地、 伊藤名佳子、 うーちゃん(どついたるねん)、
かわいしのぶ、 岸田繁(くるり)、ゴンドウトモヒコ、 須藤俊明、
DaBass (どついたるねん)、山本精一、 ラミ子 etc
2017年6月2日(金) 山口 防府bar印度洋
出演:柴田聡子 / 天井 / shiNmm
開場:19:00/開演:19:30
2017年6月3日(土) 福岡 風街珈琲店
出演:柴田聡子 / 倉地久美夫
開場:19:30/開演:20:00
2017年6月4日(日) 大分 アトホール
出演:柴田聡子 / スポーツマン/ 後藤慎太郎グループ ほか
開場:19:00/開演:19:30
2017年6月5日(月) 熊本 NAVARO
出演:柴田聡子 / 対バンあり
開場:19:30/開演:20:00
2017年6月9日(金) 岡山 岡山禁酒会館
出演:柴田聡子
開場:18:30/開演:19:00
2017年6月10日(土) 島根 大根島HOME(島根県松江市八束町入江88)
出演:柴田聡子 / ラミ子
開場:14:30/開演:15:30
2017年6月16日(金) 京都 UrBANGUILD
出演:柴田聡子
開場:18:30/開演:19:30
2017年6月17日(土) 大阪 FOLK old book store
サブタイトル:FOLKの12ヶ月
出演:柴田聡子
開場:18:30/開演:19:00
2017年6月18日(日) 富山 Hotori × ほとり座
サブタイトル:めざめ
出演:柴田聡子 / 真黒(DJ)
開場:18:00/開演:19:00
2017年6月19日(月) 富山 スケッチ
出演:柴田聡子
開場:18:30/開演:19:00
2017年6月20日(火) 愛知 金山ブラジルコーヒー
出演:柴田聡子 / Gofish
開場:19:00/開演:19:30
2017年6月24日(土) 神奈川 鎌倉moln
サブタイトル:貸切り図書館47冊目
出演:柴田聡子
開場:18:00/開演:18:30
2017年6月27日(火) 秋田 café Epice
出演:柴田聡子
開場:18:00/開演:19:00
■柴田聡子 ツアー2017 “愛の休日” FINAL
2017年7月6日(木) SHIBUYA CLUB QUATTRO
出演:(※BAND SET)
柴田聡子
浜公氣 (Drums) from どついたるねん
DaBass (Bass) from どついたるねん
Dr.kyOn (Keyboards)
かわいしのぶ (Bass, Chorus)
ラミ子 (Chorus)
うーちゃん from どついたるねん [Guest] 伊藤名佳子 [Guest]
◆柴田聡子 オフィシャルサイト