【ライブレポート】VOCES8、クリスマス直前のオペラシティホールで感動のコンサート

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世界で最も感動的で刺激的なヴォーカル・グループ「VOCES8(ヴォーチェス・エイト)」が12月23日(金)に、東京・初台の東京オペラシティ コンサートホールでコンサートを開催した。50代以上の紳士淑女、若いカップル、そして家族連れたちが、クリスマス直前の祝日に多彩なハーモニーを堪能した。

◆VOCES8~画像~

舞台に向かって右側には、2階席に届くほどの大きさのクリスマスツリー。そしてマイクやPA装置の一切ないシンプルなステージに8名のメンバーが登場。「彼らの言いたる時、われ喜ぶ」「おお主よ、御身のしもべエリザベスが」「主を賛美して歌え」の荘厳な楽曲からコンサートは始まった。


生音だけのアカペラで、第一声で会場をピンと張り詰めた空気に変える。誰もカウントを出さない、お互いの阿吽の呼吸だけで楽曲が進行していく。緩急、交差するハーモニー、強弱というどれも完璧な調和のとれた歌声が、会場いっぱいに響いていく。

次のポップスパートでは、空気がガラリと変わる。披露されたのはナット・キング・コールの「ストレイテン・アップ・アンド・フライ・ライト」だ。ステージ横から一人ずつがステージ中央に集まっていき、ハーモニーを少しずつ重ねていく。ボイスパーカッションとスキャットのベースライン、コーラス、そしてリードボーカルが折り重なって厚みを増していき、ジャジーなナンバーが繰り広げられる。緊張感に包まれていた会場は一転してリラックスした雰囲気になり、ところどころで身体を揺らして楽しむ観客も。


続いて落ち着いたアレンジのサイモン&ガーファンクル「サウンド・オブ・サイレンス」、そして今年惜しまれながらこの世を去ったデヴィッド・ボウイの「チェンジス」に。アップテンポで“陽”の一面を見せたこの楽曲、サビで下降して行くベースラインが心地良い。つくづく名曲なんだと感じさせてくれる。

そしてステージはまたまた雰囲気が一転して、聖母マリアを敬う3曲「聖母賛歌」「“晩祷”から生神童貞女や慶べよ」「“メサイア”ハレルヤ・コーラス」が披露された。「聖母賛歌」では4人が客席中央に下りてきて、残りの4人はステージで後ろ向きにスタンバイ。繊細なメロディとコーラスを交代で歌う。荘厳な雰囲気に会場の空気が変わっていく。前半最後の曲となった「“メサイア”ハレルヤ・コーラス」は、250年前から歌い続けられている英国で一番有名なクリスマスソング。当然日本でも知らない人はいないポピュラーな曲で、重厚なハレルヤコーラスの部分が圧巻。ものすごい拍手が巻き起こった。


曲ごとにメンバーの並び順が変わるのは、曲によって変わる響きを最大限に伝えるためのフォーメーションなのだろう。

休憩を挟んで後半がスタート。客席から7人が登場し、ステージでは民族楽器ジャンベをスタンバイ。アフリカンな雄たけびから始まったのは「ライオン・キング・メドレー」だ。照明がアフリカの夕日を思わせるオレンジ色に変わり、ジャンベのリズムとともに、リードヴォーカルが次々と変わっていく。会場の温度が上がっていくのを感じられた瞬間だった。


そして透き通る女性ヴォーカルと心に染み込む清純なメロディーが印象的な「オー・ワリー・ワリー」、バスからソプラノまでの深みのある重厚なコーラスワークの「シェナンドー」と続き、スウェーデンが誇る伝説的なコーラスグループ“アバ”のメドレーへと突入していく。アンドレアとエミリーの女性二人が前面に立ち、アバを彷彿とさせる振り付けもあって、客席は大盛り上がり。エンディングのキメポーズも格好良かった。


続いて繰り出されたのは、カーリー・レイ・ジェプセン&ジャスティン・ビーバーの「ビューティフル」だ。語りかけるように男女が交互に歌うこの曲は、ミュージカル風でありながら、大げささはなくて控えめ。聴くものの心にしっかり入り込んでくる。

「日本のファンのために日本の曲を歌います」というMCに続いて、アンジェラ・アキ「手紙 ~拝啓十五の君へ~」が、日本語でのアカペラで披露された。日本語の発音の良さに観客は驚き、そしてめったに聴けないアカペラでの歌唱に大喜び。続く日本語曲は、現在大ヒット中のアニメ映画『君の名は。』の主題歌であるRADWIMPSの「なんでもないや」。言葉数が多くメロディの起伏の激しい曲だが、日本語歌詞を部分的に取り入れて完璧に歌い上げる。ボイスパーカッションのリズムの響きも効果的だ。日本のファンへのビッグプレゼントに、客席からは温かく大きな拍手がおくられた。


コンサートは終盤に入る。いまの季節はこれ! というクリスマスナンバーが続々と披露される。ボイスパーカッションとベースラインが4ビートを刻み、真っ赤な照明でジャジーに歌われた「サンタが街にやってくる」、ベートーベンの「第九・歓喜の歌」が元になった「ジョイフル・ジョイフル」は、大迫力の全員コーラス。その音量のもの凄さに客席は圧倒される。そしてジャジーでグルーヴィーな「レット・イット・スノー」、最後はミュージカルぽくて振り付けが可愛いい「ジングル・ベル」でコンサート本編は終了となった。


鳴り止まない拍手に促されて始まったアンコールでは、山下達郎の「クリスマス・イヴ」が披露された。この曲を聴くと日本人の誰もがクリスマスを思い出す名曲だ。自然と手拍子が巻き起こる。“SNSに投稿してね!”ということで、アンコールに限っては写真撮影がOK。手拍子の合間を縫って、スマホで撮影しまくる客席が微笑ましかった。

アンコールが終わっても鳴り止まない拍手に、再度ステージに現れるメンバー。最後の最後に「きよしこの夜」が披露され、これでコンサートは、本当に幕を閉じた。


人間の声は、どのようにも組み合わせてハーモニーが作れる。その魅力をまざまざと見せ付けられたコンサートだった。取り上げられた楽曲もこの季節にぴったり。気分は一気にクリスマスになったという人も多かったのではないだろうか。荘厳で清清しく、さらに楽しさも堪能できたひと時。時間を忘れて楽しめた。

取材・文●森本智
写真●大杉隼平

<セットリスト>

1.彼らの言いたる時、われ喜ぶ
2.おお主よ、御身のしもべエリザベスが
3.主を賛美して歌え
4.ストレイテン・アップ・アンド・フライ・ライト
5.サウンド・オブ・サイレンス
6.チェンジス
7.聖母賛歌
8.「晩祷」から 生神童貞女や慶べよ
9.「メサイア」から ハレルヤ・コーラス
10.ライオン・キング・メドレー
11.オー・ワリー・ワリー
12.シェナンドー
13.ABBAメドレー
14.ビューティフル
15.手紙 ~拝啓十五の君へ~
16.なんでもないや
17.サンタが街にやってくる
18.ジョイフル・ジョイフル
19.レット・イット・スノー
20.ジングル・ベル

アンコール
21.山下達郎:クリスマス・イヴ

<VOCES8 来日ツアー>

12月24日(土) 15:00 長野/長野市芸術館
問:NCACチケットセンター 026-219-3191
https://www.nagano-arts.or.jp/
12月25日(日) 14:00 大阪/ザ・シンフォニーホール
問:ABCチケットセンター 06-6453-6000
http://www.asahi.co.jp/symphony/

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