【インタビュー】オレスカバンド、女としての生き様を煮詰めた等身大感に溢れる3rdフルアルバム『Slogan』
オレスカバンドが11月23日に、3枚目のフルアルバム『Slogan』をリリースする。一つの作品としてまとまったものをリリースするのはミニアルバム『Carry on!』以来、なんと3年ぶり。今年1月にテナーサックスのmoricoが子育てのために脱退し、6月に新メンバーのADDが加入というメンバーチェンジも経て、新生オレスカバンドとなった彼女たち。そんな彼女たちが、1人の女性としてのモットーを音楽で表現した力作だ。
◆オレスカバンド~画像&映像~
■女性として6人同じようなところで育って同じように成長してきたけど
■それぞれ思うことも歩む人生も違うんやなっていうことを最近実感した
――まとまった作品としてはミニアルバム『Carry on!』以来、3年ぶりですが、その間の成長ぶりが音にも歌詞にも出ていますね。背伸びなく、より等身大感に溢れていて。
HAYAMI:そうですね。今までは、メンバーがどこにいくにも一緒で生活も似たり寄ったりな感じだったので、仲間の歌とか、「この先、こうしていくぞ!」みたいな歌が多かったんです。でも、歳を重ねるとそれぞれの時間が増えていきます。前だったら「あの時は、こう言って、こう思ってたんやけど、どう思う?」とか、一個のことをみんなで考えたり共有していたんですけど、そういう時間もなくなって、ただただみんな、それぞれのことで忙しくなって。昔みたいに、時間を持て余して「SEX AND THE CITY」をめっちゃ見たり、そういうのもなくなったし、「最近、こういうことがあってん」っていう話でも、もう終わったあとに聞いたりすることも多くなりました。それはそれでちょっぴり寂しくなったりもするんですけど、曲自体は、逆にいち個人で感じるものが出てるから自然とリアリティを増しているのかもしれないですね。
iCas:今までは「こう言っていたい!」っていう感じで作ったり、歌っていたんですけど、最近は「こう思っちゃう」っていう感じなんです。しかも、今まで少し棘のあることはフワッとしか言えなかったというのもあります。だから、全員でハッピーになれることみたいなものがテーマというか、大きな発信だったんです。でも今はもっとパーソナルな、誰にも見せられないようなことも作品にしたいなと。
――そこにはあえてガードをせずに。
iCas:そうですね。言えるようになったというんもありますけど、「こう思っちゃった~」っていうのが強いです。
HAYAMI:わかるー! そう思ってしまった自分を肯定できるようになってきた。
iCas:前は「こんなこと言っていいんかな?」「ダサいんちゃう?」と思うことも、今なら「ダサくない」って思える。自分たちが勝手に思っている「オレスカバンド像」にハマってしまうこともあったけど、それももうなくなって。3年前にリリースしたミニアルバム『Carry on!』はその境目だったんですよ。25歳くらいで。今までの自分たちをちょっと覆したいけど、自分たちの良さはコレやし……ってところもあって。でも30歳に近くにつれて、moricoが抜けて新たにADDが入ったというのもあるんですけど、女性の人生って6人同じようなところで育って、同じように成長してきたけど、それぞれ思うことも、これから歩む人生も違うんやなっていうことを最近実感していて。
――そうだよね。moricoさんは出産で子育てするために脱退したんだもんね。
iCas:そうなんです。それもあって、女性としての生き方って人それぞれなんだなって。そんなに重い話ではなく、女性として普通に思うことを作品にしたいなと思って。同世代の女友達と話していて思うようなこととかも、ちゃんと歌にしたいなと思って。
――それで女の子を応援するような作品に?
HAYAMI:活動していく中で、私たちと同じ女の子に伝えたいという思いは増しています。実際、自分たちが女ばかりで活動しているからというのもあるんですけど、そういう思いが芽生えていて。女の子たちにハッピーでいてほしいし、ポジティヴでいてほしいという気持ちがあるから、曲はそういうテイストになっていきますよね。あと、心に触る音楽をやりたいと思っているから、そこは意識しています。
――女性として生きるモットーを描いてるんだなぁというのは、聞いてすぐに伝わりましたよ。
iCas:よかった! 女性って、時間も限られているところもあるっちゃあるじゃないですか。やりたいことをやれる時間が限られている中で、でもお互いにハモれる。そういうのをみんなとシェアしたいと思いました。
HAYAMI:自分が今後どうしていきたいかっていう話を女性同士で聞く機会も増えたんです。結婚したいかしたくないか、子供を産みたいか産みたくないか。仕事を頑張りたいっていう人が自分の周りには多い。それも自分で共感できるポイントだったりするし。選択するってめっちゃ難しかったんです。決められなかったけど、30歳が近づいてくると、自分がどういう人間かというのを決めざるをえないから。「きっと、これは変わらないんだろうな」っていうのが、なんとなくですけどわかってきてしまっていて(笑)。それは面白い発見でもあるし、ラクになったことでもあるんですけど。その中でも選び抜ける。それがいいとか悪いとかじゃないんですよね。
iCas:そうそう。人それぞれなんですよね。誰に頼まれているわけでもない。自分たちがバンドをやっていることも。バンドをやっていて大変なことがあっても、自分たちがやりたくてやってるし。20代前半は、可能性を探りにガムシャラにいろんなところに突っ走るみたいな感じでしたけど、今になると、それを経て、自分がどうしていくかというのを決める境目に来ているのかなと思います。
――今作はサウンドの洗練度も聞き逃せないポイントだと思うんです。『Carry on!』の時はセルフ・プロデュースでしたけど、今回は?
iCas:今回は『Hot Number』の時と同じ方にプロデュースをお願いしたんですけど、アレンジはメンバーで詰めた部分が結構多いです。プロデューサーさんもバンドの成長とかライヴもずっと見てくれていたので、バンドとしてアーティストとして何を発信するのかということを制作に入る前にすごく話し合いました。じゃあ、バンドだけでできることは最後までやったほうがいいよねということになって。新メンバーのADDが入ったということもあって、新しい私たちのサウンドを今一度見つめ直そうみたいな感じだったんです。結構タイトなスケジュールの中、勢いもありましたね。
――アルバムに収録されている「NEXSPOT」はシングルとしてもリリースしているけど、これは楽曲提供ですよね。スピード感があると思ったらダブっぽくなったり、水の中のようになったり、構成が本当にユニークでカッコいい。この曲のアレンジは?
iCas:このアレンジは、曲を作ってくれたRei Mastrogiovanniという方がすでに作っていたものなんです。Reiさんは仲の良いミュージシャン仲間で、スカという音楽を日本にもっと広めたいと言ってる人。一緒に新しいスカの音楽を作りたいという話をしている中で、いろんなデモを聴かせてもらって、「これ、ウチらがやってたらすごい新しいな」と思うものをチョイスして、メンバーで集まって(音を)合わせてみたという感じで。
HAYAMI:実はReiさんは『Carry on!』の時も英詞の部分で手伝ってくれていたんです。自分たちがスカバンドとして活動しているのと同じように、彼は彼で一番新しいスカを研究し続けて、音源を作り続けていたんですよ。前のレーベルを離れた時にガッチリ出会って、一緒にイベントに出る機会も多くなって。その中でも「スカを盛り上げて行こう!」とか、今後どうしていきたいかみたいな話を、自分たちだけじゃなく仲間たちと一緒にする機会が出てきて。「NEXSPOT」も「NEXT」と「SPOT」を合体させた造語だったり、そういうところにも今までにない何かをやろうという意気込みが現れてると思うんです。歌詞はtaeちゃんが書いているのでオレスカって感じなんですけど。
――「NEXSPOT」と同じくシングルに収録されたのが今作の10曲目「!Fiebre!」ですよね。歌詞も大人っぽくて、ラテンのノリが新たなオレスカという感じ。
iCas:もともとアイデアはあったんですけど、なかなかカッコよく演奏できなくて、しばらく温めていたんです。3回くらいブラジルでライヴをやらせてもらってから、現地の人たちの熱狂ぶりとか、ダンスの感じを肌で感じたんですよね。メンバーはクラブに行ったりもして、そこで刺激になったものがあって、こういう風に完成させればいいのか!というのが見えたという感じ。
――本場のラテンのノリを感じることで完成したんですね。経験値があったからこそできたということなんですね。「Hands Up Girls」も配信していたから、アルバムは「NEXSPOT」「iFiebre!」「Hands Up Girls」の3曲が最初にありつつ、1枚として作り上げたと思うんですけど、インタールードの「Heart Waves」がレコードのA面B面感を醸し出してますよね。カセットを裏返す効果音も入っているし。
HAYAMI:わかってくれてるー! 最初はそんなに意味はなかったんですけどね。インタールードが入ってるアルバムを作りたいっていう話をしていて、そのアイデアとして私が持っていったんです。あと、歌って、Aメロ、Bメロ、サビみたいな展開があって、ゴージャスですよね。でも、なんも展開しないっていう曲の面白さもわかってほしいというのがあって。インタールードくらいだったら入れやすいなと思って。自分はそういうのが結構好きなんです。展開しないで、そのグルーヴを楽しむみたいな。
iCas:去年、HAYAMIが海の家でイベントをやったんですけど、それがレゲエのイベントで、インタールードの曲名にもなってる「Heart Waves」っていうタイトルなんですよ。その空気感もちゃんと作品になってるなぁと思ってて。
――メンバーが蓄積したものがすべて入ってるみたいな。
HAYAMI:そう。日々の活動がね。逆にそれを形にしていきたいというのもあるかも。
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