【インタビュー】MOSHIMO、「大好きな人にフラれたり、苦しいとき前に進むきっかけになったら」
前身バンドであるCHEESE CAKEのことを知っている人にも、MOSHIMOという名前を初めて聞く人にも、新鮮な驚きを与えるポップでロックなカラフル・ワールド。結成1年半で届けられたファースト・ミニアルバム『命短し恋せよ乙女』は、ボーカル岩淵紗貴のキュートすぎるガーリーな歌声を中心に、四者四様の強力な個性を持ち寄って作り上げた自信作。もしも、最近ピンとくるバンドがいないんだよなとあなたが思っているなら、迷わず勧める。MOSHIMOを聴くべきだ。
◆ミニアルバム『命短し恋せよ乙女』収録曲MV映像
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■ “これが最後だと思ってるから一緒にやらない?”って電話がかかってきたんです
── このメンバーとこのバンド名になったのは、去年でしたっけ。
岩淵紗貴(Vo&Gt):去年の4月です。私とイッチー(一瀬貴之/Gt)がCHEESE CAKEというバンドを組んでいて、去年の3月にメンバーがふたり抜けることになったんですけど。颯くん(宮原颯/Ba)は地元が一緒で、バンド仲間で、高校生の時から知ってたんですよ。ちょうど就職活動をしている時に、よかったらバンドしない?って話をして。
宮原颯(Ba):電話がかかってきて、“これが最後だと思ってるから一緒にやらない?”という感じで。ベースは弾いたことなかったし、もうバンドをやるつもりはなかったんですけど、CHEESE CAKEは曲も好きだし、人間としてもすごく仲が良かったので。高校生の時にふたつ大会があって、僕らのバンドはテレビ朝日の番組で九州1位になって、CHEESE CAKEは閃光ライオットで準グランプリ、って同時に盛り上がってたことがあったんです。CHEESE CAKEは、高校生で福岡DRUM LOGOSでライブをやったりとか、誰もやってなかったことをやってたし。
岩淵:調子乗っとったね(笑)。
宮原:お互い、まだ夢を見たかったんですよね。このまま終わるのは悔しいよねって。だから、このバンドなら入ろうと思って入ったんです。
岩淵:で、彼(本多響平/Dr)は熊本出身で。知り合いにいいドラマーいないですか?って相談して、紹介してもらいました。セッションしたら一番じょうずだったし、この3人の中にすぐ溶け込んでくれたので。全然人見知りしなかったんで、これはいけるなと思って入ってもらいました。
本多響平(Dr):僕はあまりバンドに参加したことがなくて、セッションしに行っていろんな人とやったりしてたんで。人見知りはしなかったですね。
── 颯くん、いきなり熱い話だったけれど。本当にこれが最後ぐらいの気持ちがあった?
岩淵:はい。これは私の勝手な持論なんですけど、メンバー・チェンジとか解散が好きじゃなくて。同じメンバーでずっとやっていくから、年数を重ねていいグルーヴが出てきたりとか、バンドとしての色が出てくるのがバンドの一番の魅力じゃないか思ってたんです。でもどんなに“続けよう”と説得してもどうしようもできなくて、それはすごく大きな壁でしたね。正直やめちゃおうかなとも考えたんですけど、まだ音楽はやりたかったし、もう二度とそうならないように、しっかり意思を持ったバンドを組みたいと思って作った感じですね。
── 瀬貴之(Gt):僕は、彼女もやめちゃうのかなって思ってたんですよ。で、どうする?っていう話をした時に、“まだやる”と言ったのがすごく意外だった。
岩淵:私、中途半端にやってきたことが多かったんです。看護学校に行ってたんですけど、途中で休学したり、いろいろ中途半端にしてきたんで。せめて自分の選んだ音楽だけは悔いのないようにやりたいと思って、もう一度バンドをきちんとやろうと思ったのがきっかけですね。
── ソングライターのふたりは、どんな音楽がルーツですか。
岩淵:私はスピッツが好きです。言葉使いがトゲトゲしてるのに繊細だったり、ヒリッとした感じとか、草野(マサムネ)さんにしか書けない言葉が好きですね。
── サウンドよりも言葉に惹かれる?
岩淵:どちらかといえばそうですね。そこにしっかりとメロディが乗っていて、メロディと言葉のはまりがいいものが、ずっと頭の中に残るんだなと思うので。歌詞とメロディのはまりは、ふたりとも一番重要視していると思います。ただ、スピッツは意外にギターロックなんですよね。そんなクリーンの音出しちゃうの?とか、クランチの音たまんねーとか(笑)。弱弱しい中にも、小技の効いたロック感があるんですよね。ポップなのにロックというか。ほかにはウィーザーとか、フォスター・ザ・ピープルとかが好きで聴いてました。
一瀬:僕は普通にバンプとかアジカンとか、グリーンデイやマイ・ケミカル・ロマンスとか、中学校の時に流行った世代なんで。ORANGE RANGEとかもめっちゃ聴いてました。CHEESE CAKEの時はもうちょっとポップス寄りだったんですけど、僕の持論としては、キャッチーなメロディとわかりやすくて深さがある歌詞があれば、バックサウンドはどんなジャンルのものを乗せたとしても、普遍的なものになるんじゃないか?と思うので。彼女の声と歌詞があれば、あとは好きに遊んじゃっていいのかなと。今は自分がやりたいことができていて、バックサウンドは自分が本当に好きなロックをさせてもらってます。
── たとえばシングル「猫かぶる」のイントロなんて、ほとんどハードロック。
一瀬:このイントロは響平が好きかなと思って作りました(笑)。前のドラムはシングル・ペダルだったんですけど、響平はツイン・ペダルで、手数が多いものも叩けるので、アレンジの制約がなくなったんですよ。そこはすごく進化したところだと思います。響平のプレースタイルは激しいんですけど、前に行かなくてどっしりうしろにいてくれるんでやりやすいです。
本多:芯はぶれないというか、ハード系の重いしっかりとした感じが好きなので。自然とノリもどっしりした感じになってるのかなと思います。手数が多いのも好きなんですけど、スネア一発で持って行きたいという感じですね。
宮原:……僕は、自分がMOSHIMOの曲が好きというのが一番うれしいことで。好きな曲じゃないと、やりたくないじゃないですか。ふたりのやりたいことがわかるし、イッチーの曲、ポチ(岩淵の愛称)の曲が好きでよかったなと思います。
岩淵:なんか照れくさいんだけど。
── 一番近いファンだ。
宮原:そうですね。ファンみたいな感じで入ったので。
── その「猫かぶる」も入った、MOSHIMOになって初のミニアルバム『命短し恋せよ乙女』。どんな思いで作った作品ですか。
▲ミニアルバム『命短し恋せよ乙女』 |
── それをバンドの武器として前面に押し出している。
一瀬:というか、彼女から出てくるのがナチュラルにそういうものなので。ひねくれるというか、こじらせてるというか。
岩淵:そういうつもり、ないんですけど(笑)。
一瀬:歌詞も一見強がってたり否定したりしてるんですけど、最後に救いがあったりとか。「大嫌いなラブソング」も、嫌いと言ってるけど“君のためなら悪くはないかな”とか、「命短し恋せよ乙女」も“君の笑顔にお手上げ”とか。ピュアな部分も垣間見えるので、ただ否定してるだけじゃないところが彼女の良さかなと。
── リズム隊のふたりの、アルバム完成の手ごたえは?
宮原:CHEESE CAKEから改名して、この1年間いろんなことを言われたんですよ。前のほうが良かったとか。自分の中でもいろいろ悩みもあったりしたんですけど、僕は前の人の代わりになれるわけじゃないし、なりたいと思ってるわけでもない。だから今回のレコーディングは自信を持ってやろうと思って、歌心をあるベースを意識しました。もともとボーカルをやっていたこともあって、自分の強みはそこだと思ったんで。結果的にCHEESE CAKEではなくMOSHIMOの作品になったと思うし、伝えたいことは変わってないんですけど、でも変わってるんですよと。MOSHIMOの初めてのミニアルバムとして、自信を持ってみなさんに聴かせられるものができたんじゃないかと思います。
── 推し曲、推しプレーは?
宮原:「命短し恋せよ乙女」ですね。これは男の子に翻弄される女の子の歌ですとポチは言ってるんですけど、僕としては、♪イェイイェイェイって開き直ってる女の子がすごい素敵に見えていて。“つらいこともあるけど恋は楽しいものだよ”と言ってる応援歌でもあるというか。このアルバム全体で恋を楽しんでる感じがあるんですけど、「命短し恋せよ乙女」という曲があってのこのアルバムかなと思ってるんで。
── ああ〜。確かに。
宮原:いい時間はそんなに長くないんだから、っていうメッセージ。ポチ、いっつも言ってるんですよ。いつ死ぬかわからんじゃけんって。
岩淵:ふふっ。
宮原:主人公がすごく素敵だなと思います。男の子も同じことを思うと思うんですけど、女の子をめっちゃ好きになって、わけわかんなくなった時に、男はもっと自分を責めると思うんですよ。“何やってんだ、情けねえな”とか。僕もそうなんですけど、この曲を聴いたらそういうことにも開き直って、そういう自分も楽しんじゃえばいいかなって思える気がして。“悩んでる君、恋を楽しもう”と言ってくれてる気がして、僕は「命短し恋せよ乙女」が好きです。
◆インタビュー(2)へ
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