【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.55 「QUEENを武道館で観るということ」
QUEENを武道館で観るということは長年の夢でした。
この奇跡のQUEENのライブIN武道館を体験するにあたり、最も懸念していたことはアダム・ランバートのこと。果たして、彼にフレディの代わりが務まるのか、ということでした。これに関しては、2012年の現形態であるクイーン+アダム・ランバートとして活動開始された時から続く世界中のファン心理における問題であり、永久に消えることのないトピックだと捉えています。なぜなら、フレディほど偉大なボーカリストも、QUEENほど伝説的なバンドも他にないからです。
しかし、アダムはとても素晴らしかったし、その彼を迎えた新たなQUEENはとても素敵でした。バンドが彼を成長させたこともあるでしょうが、それ以前にアダムは全てを凌駕する力を持つシンガーであり、表現者であったということを知ることができたことが素直に嬉しく、その才有る彼をバンドに招いたブライアン・メイとロジャー・テイラーの決断と、アダムがいたからQUEENを武道館で観ることが出来たこの奇跡に深く感謝しました。
そしてまた、アダムの「僕のヒーローであるバンド、QUEEN」といったQUEENに対する敬意ある言葉の数々や感情表現が、オーディエンスの持つそれとシンクロしたことで、アダムはフレディの代わりではなく、アダムはアダムであり、アダムがQUEENの欠けてしまった一部分を埋めてくれているんだという認識を与えてくれるものであったこともこの新生QUEENの成功の礎であるように映りました。
ブライアン・メイは、昨夜のライブ中に来日は今回で12回目だと話していましたが、QUEEN初来日の頃はまだ生まれていなかった世代にとっては、QUEENを知り、好きになったのがすでにフレディ・マーキュリーが他界した後という方も多いと思います。筆者もその中の一人であるので、フレディがいた頃のQUEENのライブを観たことがありませんし、「QUEENを武道館で観るということ」は夢でしかなく、現実に起こることとして考えたことは一度もありませんでした。
昨夜、その夢が叶ってしまったわけですが、一夜明けてもなお実感が持てません。昨夜のあれは夢だったのかしら? 実際にライブを観た後にもかかわらず、夢見心地のままでいられるほどの素晴らしいライブだった、そんな風に受け止めています。
QUEEN以外でも、天へ召されてしまったミュージシャンのライブを一度でも観ることができたならといった妄想を抱くことはしばしばあります。しかし、同時代に生きているということは、こうした素晴らしい奇跡に遭遇することもあるということなのですね。音楽とは、時空を超えて想いを繋ぎ、人間の心に作用してくる目に見えない生きた芸術。これからもこうした奇跡を見逃さないように在りたいと願うばかりです。
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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