【音踊人11】<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>が生まれたワケ(BARKS編集長)

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日本の音楽産業が飛躍した1990年代は、洋楽への憧憬とコンプレックスから完全脱却し、日本独自の音楽が続々と産声をあげJ-POP/J-ROCKが急速に進化を遂げた時代でもあった。なかでも日本独特の美意識と価値感から生まれた「ヴィジュアル系」は、世界でも例を見ない特異な開化を見せることとなる。

1990年代はまさにヴィジュアル戦国時代で、数多くのバンドが誕生した。何をもってヴィジュアル系と称し、どこからどこまでがそのカテゴリーなのかを線引することは難しいが、その時、既にXとYOSHIKI設立のエクスタシーレコードは、ヴィジュアル系を牽引させる先駆者として、日本のロックムーブメントを引っ掻き回すような圧倒的な存在感を示していた。「ヴィジュアル系」とは何かという問いには様々な答が考えられるが、YOSHIKIは「突き詰めれば、それは信念」であると答えている。

今では日本を代表する存在となったGLAY、L'Arc〜en〜Ciel、LUNA SEA、X JAPANといったバンドは、いずれも1990年代に自らのアイデンティティを確立した連中だ。彼らは、お互いのリスペクトは深層心理の一番奥にしまい込んで、それぞれが敵意をむき出しにして切磋琢磨し続けた。まだ誰も描かなかった最尖端の美学を己の価値観で磨き込んだヴィジュアルムーブメントは、やがて日本が放つ独自文化の本流へと姿を変えていき、2000年代には地球規模の文化として、世界共通で通じる“ヴィジュアルケイ(Visual Kei)”という言葉さえも生み出すこととなる。

もちろん「ヴィジュアル系」には、反発の力も強力に作用した。ガラパゴスな日本文化を揶揄する風潮とともに、目立つがゆえそれを嫌悪する反勢力を全力で誘発してしまう。ことのほかアマチュアシーンにおいては、外面を着飾ることに偏重し、肝心の楽曲や演奏がおざなりになる本末転倒な現象も多発した。逆風はヴィジュアル系という文化自体に偏見を生み、やがて“ヴィジュアル系”という言葉自体が差別や侮蔑のニュアンスを抱えることとなる。多くのバンドが「ヴィジュアル系」と呼ばれることを忌み嫌うこととなったのはそういうわけだ。


そんな荒波に揉まれながらも、それをも反骨のエネルギーに換えて成長を続けた「ヴィジュアル系」の系譜があった。そう、YOSHIKIの存在である。彼は“PSYCEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCK”というコンセプトを背負い、逆風の中孤軍奮闘を続けた。YOSHIKIは自らの生き様をさらけ出し、気合というエネルギーで、「音楽」も「パフォーマンス」も「見た目」も全てを飲み込み“ヴィジュアルショック”であることを身をもって提唱し続けた。「自信と不安のギリギリのところに立っていた」と振り返るYOSHIKIだが、彼をそこまで駆り立て続けた背景には、「どんどん風当たりが増していく中で、逆にファンは増えていった」という事実がある。

YOSHIKIの生き方そのものがヴィジュアル・ムーブメントの醸成を担い、やがて世界規模のヴィジュアルケイとして評価を受けるようになったのは、御存知の通り。自ら作ったルールを壊しながら独自文化を形成し変革をみせてきたYOSHIKIの生き様は、ヴィジュアルシーンの歴史とそのままシンクロする。X JAPANのドキュメンタリー映画『We Are X』の誕生も、「ヴィジュアル系」再評価を世界規模で大きく加速させる一端となったことだろう。

2016年、今や「ヴィジュアル系」は、世界が憧れ多くの羨望を集める日本が誇る輸出文化のひとつとなった。2016年を「ヴィジュアル・ムーブメント再評価元年」とは誰も言わないけれど、今、完全に機は熟した。日本のロック史に残された戦々の爪痕は、熟成の時を経て今、「点在していたV文化」から「世界を飲み込むV現象」へと大きな進化を遂げる時を迎えたわけだ。

2016年10月14日&15日&16日、<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>@幕張メッセ。これは、世界から熱き視線を集める歴史的瞬間の幕開けともいえる。伝説のイベント<エクスタシー・サミット>の24年ぶりとなる復活も、新たな伝説の幕開けを刻む狼煙となるものだ。

「<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten>を立ち上げさせて頂きまして、SUGIZO、TAKUROという力強いパートナー、それでいて友達と一緒に立ち上げることにはわくわくしています。<エクスタシー・サミット>の頃にはフェスという概念がまだ無かった中やってたんですけど、今回はこの滞っている音楽シーンに挑戦状を叩きつけるような気持ちで、一緒になってできればなと思っていますので、ぜひよろしくお願いします」── YOSHIKI(2016年7月25日 記者発表会見にて)

文:BARKS編集長 烏丸哲也

<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten>

2016年10月14日(金)、15日(土)、16日(日)
@幕張メッセホール 9-11ホール
開場8:00AM/開演9:00AM/終演10:00PM(予定)
※10/16(日)は終演9:00PM(予定)

10月14日(金)出演アーティスト
X JAPAN、LUNA SEA、GLAY、ユナイト、CLØWD、lynch.、Psycho le Cému、LADIES ROOM、GARGOYLE、TOKYO YANKEES、NOCTURNAL BLOODLUST、DaizyStripper、HERO、BY-SEXUAL、かまいたち、Anli Pollicino

10月15日(土)出演アーティスト
X JAPAN、GLAY、hide with Spread Beaver、シド、カメレオ、VALS、Plastic Tree、A9、R指定、LM.C、DEZERT、ASH DA HERO、FEST VAINQUEUR、摩天楼オペラ、heidi.、The Thirteen、defspiral、グリーヴァ、ALDIOUS

10月16日(日)出演アーティスト
X JAPAN、LUNA SEA、ゴールデンボンバー、MUCC、Angelo、己龍、vistlip、cali≠gari、Royz、DIAURA、THE SLUT BUNKS、ダウト、Versailles、THE MICRO HEAD 4N'S、NoGoD、ゴシップ、ぞんび

主催・企画:VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 実行委員会、Rakuten VISUAL JAPAN 合同会社
運営・制作:ウドー音楽事務所
制作協力:楽天マネジメント
[問]VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 実行委員会事務局(楽天マネジメント) 電話:03-6695-0497(10:00~18:00、土日祝日を除く)

◆<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>オフィシャルサイト

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