いい音爆音アワー vol.69「納涼歌謡祭」

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爆音アワー
いい音爆音アワー vol.69「納涼歌謡祭」
2016年8月17日(水)@風知空知
「歌謡曲」の森は広くて深い。そしてもちろんガラパゴス。日本だけのこの音楽世界は、ジャズ、ラテン、クラシックなど既成の音楽ジャンルはもちろん、映画、TV、お笑いなど、あらゆるエンタテインメントを貪欲に飲み込みつつ、「面白ければ何でもあり!」のポリシーで増殖してきました。ただ昨今は他のジャンルと同様、すっかり元気がありません。「売れなければダメ」という息苦しさの中では歌謡曲も窒息してしまうのでしょう。
今回は共同企画。11曲目までは”選曲も水泳もできるサラリーマン=美甘純”、それ以降が福岡の選曲です。美甘氏が持ってきたのは、ほとんどがSHAZAMにも引っかからない、YouTubeにも載っていない激レアな音源ばかり。ここに掲載しても、実際探せないものも多いでしょうが、悪しからず。
福岡智彦 (いい音研究所)

セットリスト

▶コマーシャル歌謡
企業や商品の宣伝のために作られたコマーシャルソング。通称コマソン。ヒット曲に負けないくらい素晴らしい作品があるのに、「販促用」として、一般に販売されることなくひっそりと配布されただけで、忘れ去られてしまったものもたくさんあります。さらにコマソンなので、あまりフル尺で聴ける機会もありませんでした。忘れ去られるにはあまりにも惜しい、そして今聴いても新鮮な輝きを放っている、極上の昭和のCM歌謡曲です。
  • ハイ・ファイ・セット「武蔵野の道・森の道」
    吉祥寺「ロンロン」の販促用ソノシート!アコギの音色と抜群のコーラスが絶妙に絡み合う上質なソフトロック歌謡。
  • 山内賢・鍵山珠理「ヤングエコー」
    トランシーバーってこんなに宣伝してたんだー(驚)。赤盤シングルを持ってきてくれました。
  • タイム・ファイヴ&シンガーズ・スリー
    「愛をうたおう、セイコーで!」
    この時代はコマソンは販売するものじゃない、というのが常識なんですね。それを覆していくのが大瀧詠一さんの「サイダー」。
  • アンディ・ウィリアムス「すてきなそらを」
    これも当時は非売品だけれど、2007年になってCD化されたそうです。
  • クラウディア&浜口庫之助「私のカローラ」
    (「恋のカローラ」デュエットver.)
    まずここで登場、浜口庫之助さん。今日はハマクラ・デーでもあります。
▶カタコト日本語歌謡
前出のアンディ・ウィリアムス、クラウディアの流れから、“外国人がつたなくも愛らしい日本語で歌っている歌謡曲”を少し。コニーフランシス、フランスギャルなど、洋楽を日本語でカヴァーした例はいろいろありますが、ここでは日本人作家による“邦楽・歌謡曲”をご紹介。有名なものではシルヴィ・バルタン「恋人時代」(村井邦彦)もありますね。
  • アストラッド・ジルベルト
    「ストリート・サンバ」
    渡辺貞夫さん作曲のキュートなボサノヴァ歌謡。
  • ジューン・フランシス
    「エトランゼ・ロマネスク」
    作曲家の津野陽二さんがハワイで声を掛けたら、一年後に突然来日したらしい。
  • ブーン・シスターズ「恋のシャボン玉」
    パット・ブーンの娘、つまりデビー・ブーンの子供の頃、姉妹で歌った日本向けソフトロック歌謡。
  • マーク・レスター「マークのさよなら東京」
    あの「小さな恋のメロディ」で当たった後にこんなレコードを出していたなんて。唄も日本語もド下手なのになぜか好感が持てる。
▶カタコト日本語歌謡曲風洋楽
カタコト日本語歌謡から脱線して、最後に飛び道具的な「カタコト日本語歌謡曲風洋楽」をご紹介。日本人のアイデンティティを揺さぶるパンチの利いたカタコト日本語をお楽しみください。
  • THE J'S WITH JAMIE「YOSHIKO」
    歌い方の前に歌詞自体がカタコト&意味不明だが、「ヨッチャン・ベイビー」という合いの手は強烈。やられた。
  • YAMASUKI'S「Yamasuki」
    踊りもあります(YouTubeで検索されたし)。笑うというより、もはや不気味です。
▶歌謡的洋楽
ここからは福岡選曲です。いやー、すごかった(笑)、美甘選曲。
さて、歌謡曲は貪欲な音楽ですから、洋楽でも何でも利用できるものは常に虎視眈々と狙っていますが、洋楽からは、まず歌謡曲なんて意識してない。でも、他人の空似じゃないですが、タマに歌謡曲っぽいなーって思うこともありますよね。
  • The Shadows「1861」
    ベンチャーズの歌謡曲にはさすがに負けますが、このバンドもかなり歌謡センスあります。加山雄三がこれを歌ってもおかしくない。
  • Nightnoise「A Different Shore」
    アイリッシュ・ミュージックは日本と同様、根っこは5音階。だからこんな森繁久彌さんに似合いそうな曲が…。
  • Elle King「Ex's & Oh's」
    小林旭「ダイナマイトが百五十屯」(1958)と曲調がそっくり。さらにその先輩にTennessee Ernie Ford「16 Tons」(1966)てのがあるけどね。
▶洋楽的歌謡
日本の音楽は洋楽をお手本にして育ってきました。ただそれが、ロックだと、洋楽のスピリットを学ぶんだけど、歌謡曲は面白ければ、受ければよし。ド歌謡曲なのに、サウンドは洋楽そのものなんていう「チャッカリ系」が、今となっては微笑ましいのです。
  • 市丸「三味線ブギウギ」
    大瀧詠一さん曰く「和製ロックンローラー第1号」。ちなみに世界初のロックンロールと言われるJackie Brenston「Rocket 88」(1951年)よりも早い。
  • 春日八郎「山の吊橋」
    紛れもない「和」の声を、ルンバのリズムに乗せて高らかに。
  • 小林旭「ダンチョネ節」
    ペレス・プラード楽団来日(1956年9月)以降、マンボが大流行。民謡調のこの曲も完全マンボ化。「ウー!」の掛け声まであるよ。
  • 橋幸夫「恋と涙の太陽」
    このリズムはハーブ・アルパートがマリアッチから改造した「アメリアッチ」。ジャケ裏にダンス・ステップの図解も。
  • かまやつひろし「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」
    これは歌謡曲ではないですが、サウンドがそのまんま”Tower Of Power”(本物)なので特別参加。
▶可笑しなお歌詞な歌謡曲
面白ければよし、の歌謡曲には変わった歌詞もいっぱいあります。ヘンテコな歌詞から秀逸なコミックソングまで、迷曲を集めてみました。
  • 水原弘「へんな女」
    たぶん、左卜全とひまわりキティーズ「老人と子供のポルカ」(1970年2月)のヒットに影響されたと思いますが、ムード歌謡の水原弘の超異色作です。
  • 守屋浩「僕は泣いちっち」
    「泣いちっち」が流行語になったなんて書いてあります。当時5歳の私はこの曲はよーく覚えていますが、流行語にはなってないと思います(笑)。
  • 鈴木やすし「社長さんはいい気持ち」
    それにしてもここまでの3曲の可笑しな歌詞は、全部浜口庫之助さんなのです。でも曲がいいから好きです。
  • 小林旭「自動車ショー歌」
    ダジャレ歌詞の最高峰。これに気をよくしたか、マイトガイ・アキラはダジャレ・シリーズを何曲も出している。「恋の山手線」も秀逸。
  • 植木等「ショボクレ人生」
    日本最高のコミックソングは今なお、半世紀以上も前に作られたクレージーキャッツの一連の曲だと思います。これはその中でも歌詞のクオリティが最高。
                        
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