【インタビュー】キノコホテル「アルバムを買って実演会に来て欲しいですね。皆様に投資して頂かないと。なんてったって零細企業ですから(笑)」
ジャケットを飾るのは、今をときめく人気アーティスト、チョーヒカルのボディペイント・アート。そして中身を彩るのは、ガレージロック、ネオGS、昭和歌謡、ニューウェーブなど、様々な要素を昇華した、もはやキノコホテルサウンドとしか呼びようのない、めくるめく色気と毒気のストレンジ・ワールド。キノコホテル、約2年ぶり、レコード会社移籍第一弾、通算5作目のニューアルバム『マリアンヌの革命』。来年の創業10周年を控え、攻めの経営姿勢を貫くマリアンヌ東雲の、最新語録をお届けする。
◆キノコホテル~画像&映像~
■私がやっているのはキノコホテルであって、GSや歌謡曲をやっているわけでもない
■ニューウェーブでもパンクでもないし、そもそもロックかどうかもわからない
――今回のビジュアル、めちゃめちゃかっこいい。チョーヒカルさんですね。
マリアンヌ東雲:そうです。なかなかね、新進気鋭の方と組むのは、初めてのことなので。
――もともとお知り合いとか。
マリアンヌ東雲:いえいえ。私が一方的に、チョーさんにお願いしたいと言いました。
――目を強調した、サイバーパンクな感じのイメージは、マリアンヌさんのリクエストで?
マリアンヌ東雲:そうですね。電極やスイッチがひしめき合ったメカニックなイメージを伝えて、そのあとはチョーさんにお任せして。つい何でも細かく注文をつけがちなんですけども、チョーさんに関してはあれこれ言わずに、彼女がどんなものを作ってくれるかを、当日まで楽しみにしていました。私一人だけの世界観ではつまらないから。
――マリアンヌさん。全部できちゃうから。
マリアンヌ東雲:いえいえ。中途半端なんで。下手の横好きです。
――そして今回のアルバム。テーマやコンセプト的なものは、最初にあったんですか。
マリアンヌ東雲:いえ、まったくなかったです。何せ曲がなかったので。2015年の秋にアルバム制作の話が出て、その時にはほぼ皆無でしたね。「遠雷」は2015年からあった曲ですけども、ほかの曲はほぼほぼ、年が明けてから一気に作りました。夏休み最終日のようなノリで、久々にすさまじい集中力を発揮いたしまして、デモを夜中に一人、お酒を飲みながら作っていって。
――締め切り前の追い込み的な。
マリアンヌ東雲:目標とか期限がないとダメなんです、私は。アルバムに入れるという目標があって、5月に録音するという期限が決まって、曲を作っていました。アルバムと言えば、自分の中では、1曲1曲に個性があって、キャラかぶりしなくて、それでいながらひとつのバンドの世界観として通して聴けるもの。自分の中での素晴らしいアルバムは、そういうものなので、それを目指して、時間のない中で、思いついたイメージをすぐ形にするという作業をやっていたのが、2~4月ぐらいですね。それを3人に演奏してもらって、トラックができあがって、そこでやっと歌のメロディや、歌詞の構想が出てくるので。メロディと歌詞は、本当にギリギリのものもありましたし。
――出来上がって、どうですか。もともとキノコホテルの特徴である、GSぽさとか、歌謡曲らしさとか、そういうものもありますし、さらにディープなものも、ファンキーなものとか、いろんな方向に広がった作品だと思うんですが。
マリアンヌ東雲:まあだいぶ、GSだの歌謡だのというのは、前作ぐらいから、鳴りを潜めてきたのではないかと思いますけどね。この曲はGSぽくて、この曲は60'sっぽくて、この曲はニューウェーブですね、とか、そういうものはいらないと思うので。まあどうしても、みなさん曲を聴く糸口として、何々っぽいという表現は捨てきれないものなのかもしれないですけども、私がやっているのはキノコホテルであって、GSをやっているわけでも、歌謡曲をやっているわけでもないですし。ニューウェーブでもなければパンクでもないし、そもそもロックかどうかもわからない。どういうジャンルの音楽をやっているんですか?と聞かれた時に、一番困るというか、“ただキノコホテルをやっているだけです”と答えるんですけども。そういう意味でも、“ジャンルがキノコホテルです”と言えるぐらい、キノコホテルはもっともっと、いろんなところに出ていかなくてはいけないと思っているんですけども。ジャンルとか、本当にどうでもいいんですよね、やっている側からすると。
――わかります。あえて言うなら、キノコホテルは、アートだなと。
マリアンヌ東雲:理想は、そうですね。どこを切ってもキノコホテルというものを出して行けたら、というのはありますね。
――個人的に好きな曲や、気になるフレーズについて、ランダムにどんどん聞いちゃいます。とりあえず「遠雷」が素晴らしくて。
マリアンヌ東雲:ああ、「遠雷」は、お好きな方が多いです。
――大好きです。淡々としたグルーヴが、だんだん狂っていく感じが、素晴らしいと思います。
マリアンヌ東雲:まあうれしい。「遠雷」は、ライターさんとか、音楽業界でお仕事をしている方が、だいたい好きと言ってくださるんですよ。玄人受けする感じなんですかね。
――「遠雷」と、その次の「籠の中のアラステア」と。ディープな曲の二連発が最高で。
マリアンヌ東雲:変態ですね(笑)。
――いや~、とっても気持ちいいです。とはいえ、「愛はゲバゲバ」も好きなんですよ。毒っ気たっぷりのアッパーなロック・チューンで。これは何ともいっても歌詞が素晴らしい。
マリアンヌ東雲:「愛はゲバゲバ」は、ある意味昔ながらのキノコテイストを残しているので、取っ付きやすい部類の曲かと。歌詞も、とても自分らしい歌詞だと思います。こんな露骨なこと歌うの、私ぐらいじゃないかしら。
――もっと自由がほしい。もっと高いところから世界を眺めたい。だから私に投資しなさいよ。実にマリアンヌさんぽいですけど、“あなたに決して恥をかかせない私で居る為に”という一行が効いてるんですよ。
マリアンヌ東雲:うふふ。私に投資すればウィンウィンですよと(笑)。
――こういう歌詞、さらっと書けるんですか。
マリアンヌ東雲:これはさらっと書けました。自分からすると、すごく素直な歌詞なので。現実的と言いますか。
――あと、「回転レストランの悲劇」ですね。これはまた、違う意味ですごく現実的な歌詞で。どこかに本当にあったような、恋人同士が別れを予感するシーンが、リアルに描かれていて。好きです。
マリアンヌ東雲:確かに、架空の場面ではあるんですけど、ある意味ありがちと言いますか、どこかで見たような風景。だいたい食事をしに行くと、すみの方に辛気くさいカップルがいて・・・という。
――レストランあるある(笑)。
マリアンヌ東雲:妄想ですね。これは実際、回転レストランに食事をしに行ったの。もうすぐ閉鎖されてしまうお店なんですけれども。
――柏そごうですか。
マリアンヌ東雲:そうです。柏そごうの回転レストランは、昭和のランドマーク的存在と言いますか、全国で最後に残った柏店が、9月に閉鎖されるそうで。いつか行こうとは思ってたんですけど、なくなってしまうと聞いて、4月に行ってみました。そして帰りの車の中で。回転レストランの歌を書けないかな?と考えて、すぐに曲を書いてアレンジして、詞とメロディが乗ったのは5月になってからですね。
――この曲、「ミザルー」のギターリフがちょっと出てきて、ニヤリみたいな。
マリアンヌ東雲:ああ、ありましたっけ。まあ鴨川さん(イザベル=ケメ鴨川/G)のお家芸のようなものですね。あの人は、フォークとサーフでできてますから。ちょいちょい小ネタというか、いい塩梅でさりげなくぶっこんで来たりするので。あえて突っ込まずにそのままにしておく事が多いです。
――小ネタと言えば、「てのひらがえし」のコーラスの“パッパヤッパー”というのが、「他人の関係」ぽかったり。
マリアンヌ東雲:突然ああいうの、ぶっこみたくなるんですよね。だいぶ遊んでいます。
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