【インタビュー】ロスト・ソサイエティ、意欲的な進化を遂げた『BRAINDEAD』

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フィンランドの若きスラッシュ・メタル・バンド、ロスト・ソサイエティが通算3枚目のアルバム『BRAINDEAD』を完成、さらに5月1日に新木場STUDIO COASTで開催される<LOUD∞OUT FEST 2016>への緊急参戦も決定した。従来どおりのスラッシーかつ共に歌えるキャッチーなコーラスを配置した曲が収録されている一方、彼らの重要な影響源ではあるがこれまでストレートな形では曲には出ていなかったパンテラ的な感触や、アイアン・メイデンを彷彿とさせるようなドラマティックでメロディアスなパートも随所で聴くことができる。意欲的とも呼べる進化を遂げた新作について、弱冠20歳のリーダー、サミー・エルバンナが語ってくれた。

――新作には従来どおりのスピーディーなスラッシュ・ソングがある一方、これまでになかったタイプの曲もあります。あなたにとって理想の曲作りの環境というのは?ギターやあなたが受けてきた音楽的影響の他にインスピレーションとなるものはありますか?


サミー・エルバンナ:曲作りをする理想の場所は、俺達のリハーサル場所だよ。とても良い場所を持っているからね。地元のユヴァスキュラにあるんだけど、実は、ドラマーの実家の地下にあるんだよ(笑)。だから、そこが俺達にとってはいつだって最高の場所なんだ。4人がいつもそこに集まっているからだよ。基本的には、そこで沢山書いている。それから、自分の家にいる時も書くね。いつインスパイアされてクールなリフを書き始めるかわからないから。だから、リハーサル場所から自宅か、ということになるかな。あと、車の中にいる時に良いリフが頭に浮かんで、電話に録音しておくこともあるよ。そういう風に書く場所は沢山あるけれど、一番良い環境は、やはり練習場と家ということになると思う。

――電話は曲作りにとって重要な、役立つ機材の1つになっているようですね。

サミー・エルバンナ:そのとおりだよ。今はどの電話にも録音機能が付いているからね。曲作りの大きな部分を占めているよ。リフが頭に浮かんだら、ぶつぶつとつぶやいておくんだよ。後で、そこから曲作りを始められるようにね。

――ギターを弾いて録音しておくのではなく、口ずさんでおくんですね?

サミー・エルバンナ:うん、ギターを弾くこともあるけれど、大抵は、自分が録音しておいたリフやメロディのアイディアに合うように、後からギターで弾いてみることが多いね。

――「Riot」という曲にはパンテラ的なリフやグルーヴが聴けます。あなたが思うパンテラの魅力は? パンテラも音楽性を変えてきたバンドですが、そういうところについては?

サミー・エルバンナ:パンテラが俺個人にとって本当に重要な存在である理由はいくつもあると思うんだ。俺はロスト・ソサイエティのギタリストでシンガーだから、ダイムバッグ・ダレルとフィル・アンセルモの2人から凄く大きな影響を受けているんだ。だから勿論、ダイムバッグのギター、シンガーとしてのフィルが、俺にとっては大きな魅力なんだよ。だから俺はパンテラが大好きなんだ。確かに彼らは、『COWBOYS FROM HELL』の前は『POWER METAL』やその他のアルバムはどれも違っていて、あの後、もっとアグレッシヴなものに方向性を変えて、基本的にはアルバム毎にアグレッシヴになっていった。それって凄くクールなことだと思うんだ。彼らがミュージシャンとして成長できることも示していたからね。

――フィル・アンセルモが加わる以前のパンテラもお好きだったりしますか?

サミー・エルバンナ:いや、パンテラのアルバムで俺が初めて聴いていたのは勿論『COWBOYS FROM HELL』だったし、そこから聴いていったから、フィル・アンセルモが入っていない曲を聴くのは、もっと後になってからになるんだ。でも、フィル・アンセルモ以前のパンテラも好きだよ。

――パンテラの『POWER METAL』(1988年)収録の「P.S.T.88」をカバーしようと思った理由は?

サミー・エルバンナ:特にフィンランドのバンドにとっては、珍しい曲をカバーをするのが伝統みたいになっているからね。そしてこの曲は、俺達が何年も何年もリハーサル場所でプレイし続けている曲の1つなんだよ。本当に楽しんでいる曲なんだ。それで、このアルバムのレコーディングを始めた時に、これは誰もが楽しめる最高のカバー・トラックになると思ったんだよ。「P.S.T.88」をやるのは、俺達にとってはごく自然なことだったんだ。

――新作には一緒に歌えるコーラスのある曲が多いです。シンガロングできるスラッシュ・メタル・バンドとしてアンスラックスやエクソダスに共感を覚えているのではないですか?

サミー・エルバンナ:勿論だよ。スラッシュ・メタルをプレイするバンド同士だし、アンスラックスとエクソダスのライブは俺は数え切れないほど観ているしね。歌えるというのはクールなことだよ。スラッシュは、あまりにも速過ぎるから一緒に歌える音楽のジャンルではないけれど、俺が彼らを凄く尊敬している理由の1つが、サークルピットやら何やらが起こっていても、同時に一緒に歌えるからなんだ。ライブという経験は俺達にとって凄く大事なものだし、ファンにはいつも楽しんでもらいたいと思っている。今は俺達にも、ありったけの大声で一緒に叫んでもらえる曲があるよ(笑)。


――今回のアルバム・タイトルとアートワークは連動しているのでしょうか? 暗く狭いところに閉じ込められている半裸の女性の後ろ姿が描かれていますが。

サミー・エルバンナ:ああ、まず、とても素晴らしいアートワークだから、俺達も凄く気に入っているんだ。『TERROR HORROR』のアートワークも手掛けたヤン・メイニングハウスによるもので、基本的には、自分の総てを諦めた女性が、精神病院に閉じ籠っているんだよ。彼女の周りでは耐えられないような酷いことばかりが起こっているからなんだ。だから、このアルバム・タイトルを、とても見事に表現したものになっていると思う。

――アーティストには具体的なアイディアを提示したのですか?

サミー・エルバンナ:アートワークについてプランを立てていた時に俺達がヤンに言ったのは、俺達のロゴを、ほら、三角形とXが入った奴を、このアルバムにも上手く配置して欲しいということだったんだ。そして色々なアイディアを出していくうちに精神病院のアイディアが出て来て、それが凄く気に入ったんだよ。このアルバムとも大いに関係があるからね。そこから彼は描き始めて、届いたアルバム・カバーを観て、俺達は凄く興奮してしまったよ。本当に気に入っている。

――「Only(My)Death Is Certain」は8分を超える曲で、IRON MAIDENを思わせる展開もあります。初めてこういうタイプの曲を書き上げたと思いますが、曲を仕上げたことであなた方の創作面が更に活性化したと感じているのでは?

サミー・エルバンナ:うん、間違いなくそうだと言えるよ。基本的には、一緒に曲を書くことが、まず俺達の結束を強めてくれるんだ。俺の影響、ドラマーの影響、ベーシストの影響、もう1人のギタリストの影響と、沢山のものが入っているから、俺達全員が一緒に書いた曲だとわかるし、そうすることが俺達に大きな自信をくれるんだ。俺達、実際にこんなこともやれるんだぞ、しかも凄く良い感じに聞こえる、という風にね。だから間違いなく俺達の創作面を活性化してくれているね。

――ここで幾つかの収録曲の歌詞についても話していただけますか?

サミー・エルバンナ:喜んで。「Riot」は、救いを求めている国民が、俺達はもう嫌なことには我慢しないと言っている曲だ。コーラスの歌詞もそうなっているように、暴動を起こす時だと言っているんだよ。人々が社会そのものに対して抱いているフラストレーションや攻撃性について書かれた曲だ。

「Mad Torture」はミュニシパル・ウェイスト的な感じの曲の1つで、この曲の歌詞は、クレイジーな、酷い苦痛を与える者に捕まっているキャラクターが、それを生き延びて逃れるか、そのままの状態に永遠に閉じ込められた状態でいるか、というフィクションのストーリーになっている。

次の「Hangover Activator」はロスト・ソサイエティと俺達のツアーについて書いた曲だから、ストレートな曲になっているよ。

そして最後の曲が「Only(My)Death Is Certain」で、これもさっき話したとおり、毎晩眠ると夢の中で殺される人物の架空のストーリーで、最後の夜にやはり殺される夢を見た彼は、もう目を覚まさないんだ。彼はその架空の空間から出られなくなってしまうんだ。

――今は新作のプロモーション中でお忙しいと思いますが、2016年中に日本公演を期待したいところです(本インタビューは来日公演の決定する前、2015年12月に実施された)。

サミー・エルバンナ:うん、日本に戻れるのはいつだって嬉しいことだよ。

――あなたの、日本について気に入っているところは何でしょうか?

サミー・エルバンナ:日本では、過去2回、それぞれ2日ほどのオフがあったんだけど、俺達は東京の都市部を歩き回って色々なものを見るのが大好きなんだ。クレイジーだと思うのは、俺達は凄く沢山のエリアを歩き回っているはずなんだけど、まだ東京のほんの一部しか見ていないということだよ。いつも色々な場所に行ってみて、美味しい食べ物を探して歩くというだけでも、本当に楽しいと思えるね。だから魅力の1つは、勿論、素晴らしい食べ物だよ。どこでも美味しいね。そして日本の親切なもてなしには驚かされてしまう。だから俺達は日本に行くのが大好きなんだ。しかも聴衆はいつだってクレイジーだしね。

――新たに特に気に入った日本の食べ物はありますか? 何か新しく見付けましたか?

サミー・エルバンナ:この間、東京で良いレストランを見つけたんだよ。店名は勿論覚えていないんだけど、でも、ヌードルと、とてもとても良い肉料理が入っているもので、俺がこれまでに食べたものの中で一番美味しい食べ物に入ると思ったよ(笑)。

――ラーメンか何かですか?

サミー・エルバンナ:うん、ラーメンで、美味しく調理された肉が入っているんだ。豚肉じゃないかと思う。

――最後に、日本のスラッシュ・メタル・ヘッドに言っておきたいことは?

サミー・エルバンナ:まず、ロスト・ソサイエティをずっとサポートしてくれて、本当にありがとう。俺達にとって凄く意味のあることだし、素晴らしいファンがいてくれなかったら、俺達はこれを続けてこられなかった。情報が入るようにしておいてくれよ。俺達、出来るだけ早く日本に戻るから。その時に皆に会うのを楽しみにしてるよ!


取材・文:奥野高久/BURRN!
Photo By Iiro Palva-aho

【メンバー】
サミー・エルバンナ(ギター/ヴォーカル)
アルットゥ・レソネン(ギター)
ミルコ・レーティネン(ベース)
オッシ・パーナネン(ドラムス)

ロスト・ソサイエティ『ブレインデッド』

2016年2月12日発売
日本盤限定ボーナス・トラック追加収録/歌詞対訳付き/日本語解説書封入
【通販限定CD+Tシャツ】5,000円+税
【CD】2,300円+税
1.アイム・ジ・アンチドート
2.ライオット
3.マッド・トーチャー
4.ホロー・アイズ
5.レイジ・ミー・アップ
6.ハングオーヴァー・アクティヴェイター
7.オンリー・(マイ)・デス・イズ・サーテン
8.P.S.T.88
9.テラー・ハングリー(カリフォルニア・イージー・リスニング・ヴァージョン)*ボーナストラック
10.オヴァードースト・ブレイン(ライブ)*日本盤限定ボーナストラック

<LOUD∞OUT FEST 2016>

2016年5月1日(日)東京 新木場STUDIO COAST
OPEN 16:00 / START 16:45
LOUDNESS/OUTRAGE
SPECIAL GUEST:ANTHEM
GUEST ACT:LOST SOCIETY
http://www.creativeman.co.jp/artist/2016/05loudoutfest/

◆ロスト・ソサイエティ『ブレインデッド』オフィシャルページ
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