【ライブレポート】cinema staff、決意を見せつけたツアーファイナル。「僕らは正直にずっと音楽をやり続けます」

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cinema staffのアルバムリリースツアー<cinema staff 4th FULL ALBUM [blueprint] release tour “land=ocean”>のファイナル公演が6月26日に東京・Zepp DiverCityにて開催された。

◆cinema staff 画像

自身4枚目のフルアルバム『blueprint』をひっ提げての全国ツアーとなったこのツアー。彼らの出身地である岐阜での公演が早くも3ヶ所目で行なわれ、以降の公演が中だるみにならないかと危ぶまれもしたが、実際に突っ走ってみるとそんなことはなく、1公演ごとにライブの完成度を高める形でツアーファイナルへとこぎつけた。


暗転した場内にアルバムの1曲目である「陸にある海」が流れ、青い光のなかステージバックにcinema staffのロゴが浮かび上がる形でライブは始まった。1曲目「drama」のワンコーラスが終わると場内からは待ち構えていたファンの喝采が巻き起こる。「僕たちが岐阜県から来ましたcinema staffです」というお約束のコールと共に、ライブは「theme of us」へ。爽やかな音に飯田瑞規(Vo,G)の高音パートが伸びやかだ。モッシュ寸前の観客もリズムに乗ってクラップを重ね、会場の熱もぐんぐん上がってくる。

MCでは飯田が「東京に帰ってきました。ツアーたくさん回ってきたんで、最高のライブをお見せします」と宣言。久野洋平(Dr)から「言うね」と声をかけられ「言っちゃった」と返す様がなかなか自信ありげだ。

続いてのパートは5年前にリリースしたミニアルバム曲「想像力」から、「奇跡」「borka」と徐々に新しい曲になり、最新アルバム曲「ハトガヤ・ゲットー」へ。飯田&辻友貴(G)の歯切れ良いギターから久野のドラムが会場全体に広く響きわたる。飯田のボーカルもZepp DiverCityの広い空間を満たす豊かな響きぶりだ。一方で三島想平(Ba)が入れるデスボイスは激しいながらもあたかも楽器のように響くよう全体のチューニングがなされており、最新アルバムの世界をライブに持ち込む上でいかに魅せるか、彼らが追及してきているのがよくわかる。

会場が彼らのパフォーマンスに酔いしれるなか、ここでMCタイムへ。久野によると、この6月26日はcinema staffがZepp DiverCityでの初ワンマンを行なってからちょうど一年目の日にあたるとのこと。さらに今日のこの会場にはcinema staffを好きな人達しかいない、という幸せをかみしめ、勢いでメンバーが一人ずつ観客に「愛してるよ」(飯田)、「みなさん、来てくださってありがとうございます愛してます」(三島)、「クノさん?愛してるに決まってんだろ!」(久野)、「(サムズアップと共に地声で)愛してるよ!」(辻)と愛を伝えるシーンも。そのまま後半戦「特別な朝」に入るときの4人の入りも、阿吽の呼吸で本当に楽しそうだった。


また、後半戦では三島と飯田がアコースティックギター弾き語りでの「daybreak syndrome」を披露するシーンも。この曲は三島が17歳で書き下ろした曲だ。思春期らしく青臭さを感じさせる、感受性豊かな歌詞が飯田のボーカルで歌い上げられる。さらにその後には久野のライブハウス怪談話から白装束を着た辻こと“うらみっしぇる”が登場。白装束にサングラスで自己紹介と即席ラップを披露し、微妙に扱いに困っている会場の空気を押し切って地縛霊がテーマの歌「the ghost」へもつれ込む。やりきって満足したのか、“うらみっしぇる”は曲後に無事成仏。実はツアーで毎回出現していた上、会場によっては飯田いわく“すごくスベった”回もあり、観客に(スベりを恐れない)辻の強靭なメンタルを印象づけていった。

いよいよ終盤では、三島の「いけますか!」という煽りから「great escape」へ。この曲も今や彼らの定番ナンバーとしてライブを盛り上げる。さらに続く「exp」では会場が一体になって歌い、「tokyo surf」でよりハイテンションな状態へ。最新アルバムの裏タイトル曲「青写真」では疾走感と広がりのあるパフォーマンスで締めくくった。

本編終了を前に三島がマイクの前に立つ。2公演が振替になったことに触れつつも、三島は一旦のツアーファイナルについて「何とか辿り着いた感じがして、ちょっとほっとしています」としファンへの感謝を述べた。このツアーのタイトルにある<“land=ocean”>は、岐阜県出身で海を遠く感じがちなcinema staffが何度も歌のモチーフとしてきた“海”というイメージから離れ、地に足をつけていく決意表明としてつけられたものだという。また、三島は最新アルバムリード曲の「シャドウ」についても「いろんなことに後悔と嫉妬を繰り返して生きているんですが、それも含めて自分だということに向き合わなきゃいかんと思う機会があって、作りました。自分を含め、誰かの背中を押せればと思っています」と朴訥に語る。

「cinema staffはまだまだ止まりませんので。弱い人間ですし、弱いバンドなのかもしれない。けど、僕らは正直にずっと音楽をやり続けますので、ついてきてください。よろしくお願いします。」──三島想平

もう一度、「岐阜県から来ました、cinema staffです。ありがとうございました」と挨拶するのをファンが拍手で讃え、本編最後に披露されたのはエモーショナルなナンバー「シャドウ」。正直に地に足をつけ、踏みしめる彼らの強さが胸をうつ。アウトロの中で歌い上げられる「また会えるよ」というフレーズに、観客からは惜しみない拍手と歓声があがっていた。

アンコールでは、飯田も改めてMCでファンへと語り掛ける。「『blueprint』を28歳の年に出して、ここから考えて13年バンドやってるんですけど、音楽楽しいんですけど、楽しいだけじゃやれなくて、あの、誰かのためにやりたいなと思ってるわけなんですよ」話をしながら感極まって声を詰まらせる飯田の姿を、ファンが温かく見守っていた。挨拶後にはゲストにハイスイノナサの森谷一貴を迎え、彼のピアノを入れた形で「孤独のルール」「望郷」を披露。感動的かつ貴重なパフォーマンスでの締めくくりとなった。


……のみならず、ファイナルではまさかのダブルアンコールも実現。久野が「今年後半ね、結構忙しいことになると思うよ」とファンを歓喜させる予告を残してからメンバー全員が暴れまわる「Poltergeist」で締めくくった。飯田が「かかって来いよ!」と人が変わったように叫び、三島がデスボイスを決めて観客の上にダイブする。辻がシャツを脱いで会場中を跳ね回った挙句、演奏が終わるとそのまま潔くステージアウト。辻が最後に置き去りにしたギターからいつまでも会場に不協和音が鳴り続け、誰かがギターまで走っていってそれを止める。ここまでがcinema staffの様式美。ロックだ。

なお、今回のリリースツアーは延期になった2公演について、8月14日に宮古KLUB COUNTER ACTION、16日に仙台MACANAでの振替公演が予定されている。

写真:橋本塁【SOUND SHOOTER】

セットリスト<cinema staff 4th FULL ALBUM [blueprint] release tour “land=ocean”>6月26日 Zepp DiverCity公演

SE.陸にある海
01.drama
02.竹下通りクラウドサーフ
03.地下室の花
04.theme of us
05.想像力
06.奇跡
07.borka
08.ハトガヤ・ゲットー
09.特別な朝
10.skeleton
11.compass
12.daybreak syndrome
13.the ghost
14.great escape
15.exp
16.tokyo surf
17.青写真
18.シャドウ
EN1.孤独のルール
EN2.望郷
WEN1.Poltergeist

<cinema staff presents“OOPARTS 2015”>

日時:10月3日(土)
会場:岐阜CLUB G
開場/開演:13:00/14:00
問:JAIL HOUSE 052-936-6041
詳細リンク:http://cinemastaff.net/

◆cinema staff オフィシャルサイト
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