【ライブレポート】Kidori Kidori、主催ライブでフレデリック&go!go!vanillasと「“1989”もっと大きいものにしていこう」
大阪から上京して約1年になる、2月18日に1st EP『El Urbano』をリリースしたKidori Kidori。彼らが主催する<1989>はタイトルが示唆する通り1989年生まれのメンバーが活躍するフレデリックとgo!go!vanillasを招いての3マン。ユニークな顔合わせに惹かれたオーディエンスが集まり、見事ソールドアウトしたFEVERは超満員だ。
◆Kidori Kidori 主催<1989>ライブ 画像
口火を切ったのはgo!go!vanillas。小気味良いロックンロール「マジック」や、スイートソウル風な「エマ」などで、フロアを瞬時にパーティ仕様に変化させる。中盤にはシャープなビートの融合が耳を惹く「バイリンガール」でさらにダンスを加速させ、オーセンティックなブギを感じさせる「ホラーショー」では、長谷川プリティ敬祐(B)によるコール&レスポンスならぬ、“コール&ウィスパー”=どれだけ囁くような音と声で会場が一つになれるか?というある種、シュールな光景が展開されるなど、ステージングはどんどん自由に。終盤に牧達弥(Vo&G)は「1989年生まれっていうと”ゆとり世代”とか言われるけど、この世代はホントに音楽好きで、いろんな音楽を吸収してると思う。東京に出てきてバンドやってるなかで感じる気持ちを歌って終わります!」と、「オリエント」になだれ込み、自分たちが受け止めてきた音楽の輝きを目一杯鳴らしてくれた。
続いてはフレデリックが登場。「新代田FEVERのダンスホールの歴史を作るのはあなたたちですよ!」という三原健司(Vo&G)の叫びとともに中毒性の高いサビのリフがグルグル回る「SPAM生活」、シームレスにディスコファンクな「ディスコプール」へとハイテンションに繋いでいく。乾いたカッティングと固いスネアにエフェクティヴなベース。一つ一つの音が研ぎ澄まされていて、フロアのノリも自ずとグルーヴィになっていく。三原康司(Bs)のダビーなベースなどアレンジが冴える「峠の幽霊」などを披露。共演者、さらにはオーディエンスの熱も相まって、すさまじく前のめりなステージを展開し、高揚した口調で「1989、もっと大きくしていかなあかん!いやなこともあるかもしれんけど、退屈は越えられる!」という康司のMCから、新曲「オワラセナイト」を披露。「俺らがおるってことは、踊ってない夜が気に入らない人は踊れ、オドループ!」の一声とともにフロアはさらに加熱。一番後ろのオーディエンスも手を挙げて、この曲の浸透ぶりを実感させた。
トリは主催のKidori Kidoriが、すっかり馴染みになったサポートの藤原寛(Bs&Cho/ex:andymori)とともに登場。UKインディとパンクを足してアップデートしたような「Say Hello!(I’m not a slave)」「Everytime I see you」と、進行形のロックの王道感を叩きつける。ニューEP『El Urbano』にも収録されている「Take Me Home ,Country Road」(カントリーシンガー、ジョン・デンバーのカバー)はマッシュ(Vo&G)のどこか不穏なコード感が原曲の素朴さをKidori Kidoriの色に変換していく。都会に暮らす人間が感じる郷愁感をテーマにしたEPの中の3曲の洋楽カバーの中では最もポピュラーな選曲だが、それでも彼らのカラーになる辺りが頼もしい。中盤には「僕らも上京1年、そろそろ東京をホームと言ってもいいんじゃないかな?みんなでホームパーティをしよう!」と、日本語詞が新鮮な新曲「ホームパーティ」へ突入。立て続けにライブでおなじみの「Watch Out!!!」、「Mass Murder」でたたみかける。「めっちゃ楽しいやん。これなに?もう、今日ここにきてくれた人のセンスを信じて、“1989”もっと大きいものにしていこう」と、対バンとオーディエンスに感謝、そして意欲を伝えるマッシュの淀みのない宣言は、この日のライブの意義を象徴していた。そして3人のセンスの塊のようなアンサンブルはラストの「Come Together」でピークに達したのだった。
「予定調和的に感じて普段はやらないアンコール」を、この日ばかりは本来の意味でのアンコールとして行ったKidori Kidori。5拍子で4つ打ちをやったらどうなるか?を試したのが「Come Together」なら、アンコールに演奏した新曲は3拍子で4つ打ちをやったらどうなるか?に挑戦したという「なんだかもう」。メロディはポップ、しかし全ての音が研ぎ澄まされた上でバトルするなんともユニークな境地で、タイトル通り”なんだかもう”理屈抜きに面白い。アイディアとスキルが並走しているからこそ実現できるスリリングな楽曲は、邦楽とか洋楽の壁をとっくに超えている。その後、競演者を呼び込んでテキーラで乾杯。そして大団円は総勢11名で「テキーラと熱帯夜」を演奏し、“1989”の狼煙が堂々とここに上がった瞬間を見た。
Text by 石角友香
Photo by にしゆきみ/Tetsuya Yamakawa
◆Kidori Kidori オフィシャルサイト
◆フレデリック オフィシャルサイト
◆go!go!vanillas オフィシャルサイト
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