【ライブレポート】高中正義、<東京JAZZ>で「すごく光栄なことです」

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高中正義が9月6日、日本を代表する国際的ジャズフェスティバル<第13回 東京JAZZ>に出演した。同イベントは“世代を超えて、国境を越えて”をテーマに2002年以来毎年開催されてきたものだ。本格的なジャズのみならず、ジャンルを超えた一流ミュージシャンが多彩な演奏を繰り広げた同フェスの、高中正義のステージを中心にレポートしたい。

◆高中正義 拡大画像

午後5時15分、東京国際フォーラム地上広場。早稲田大学モダンジャズ研究会&フレンズが、通りすがりの人々さえも踊りの輪に巻き込んで、総勢数十名に及ぶにぎやかな演奏を繰り広げている。周囲にはサックスなどの楽器の体験コーナー、そしてたくさんの屋台が立ち並び、おいしそうな匂いがあたりに漂って、ちょっとしたお祭り状態だ。3日間にわたって行われる第13回<東京JAZZ>の二日目、9月6日土曜日。“THE JAZZ POWER”と題した昼の部では、JAGA JAZZIST、ミシェル・カミロ×上原ひろみ、そしてランディ・ブレッカー、マイク・スターン、小曽根真のトリプル・リーダー・バンドが演奏し、これから始まる夜の部“THE GROOVE”では、高中正義、ケニー“ベイビーフェイス”エドモンズ、チャカ・カーンが登場する。今回のお目当ては高中正義だが、<東京JAZZ>はホール内での演奏はもちろん、無料で開催される屋外でのライブも素晴らしい。ジャズを愛する人を心からもてなす気持ちにあふれた、ピースフルな空間がここにはある。

午後5時33分、バンドメンバーが位置についたあと、笑顔で手を振りながら高中が登場。手にしたのは、ブルーのヤマハSGだ。そしていきなりの「BLUE LAGOON」のイントロに、広い会場のあちこちから喜びの雄たけびが上がる。バックを固めるのはおなじみの高中バンドで、ラテン・パーカッションで強烈なグルーヴを叩きだす斉藤ノヴをはじめ、全員が素晴らしい。強力なメンバーに支えられ、SGならではの、どこまでも伸びてゆく力強いトーンも最高だ。

「前座の高中です(笑)」

軽いジョークで観客をなごませたあと、「新曲作りました」と言って披露したのは、最新アルバム『SUPER STUDIO LIVE!』に収録された「BLUE WIND」。ギターをストラトキャスターに持ち替え、ラテン風のベースラインに乗り、「BLUE LAGOON」とも共通する伸びやかでポップなメロディを次々と紡ぎ出す。ラスト近く、高音域での超ロングトーンも見事に決まり、会場は拍手&大歓声に包まれる。

再びブルーのSGに持ち替えて弾き始めたのは、ドリーミーなスローナンバー「珊瑚礁の妖精」。あの独特の浮遊感あふれる、海の中を心地よく漂うような美しいフレーズに、オーディエンスは声も立てずに静かに聴き入るしかない。

「こんな国際的な舞台に立つのはすごく光栄なことです。チャカ・カーンは、いろんな時期に、よく聴きました」

と、昔六本木のディスコでチャカの曲を聴いた思い出や、ルーファス・フィーチャリング・チャカ・カーンの名作『ルーファサイズド』に収録されている「ハーフ・ムーン」が好きという話などを、いつものようにひょうひょうとしたトーンで語る高中。そのまま、ファンにはおなじみの、鉄道模型や椰子の木をボディに乗っけた“ジオラマ・ギター”(模型の中に“TOKYO JAZZ”の文字を入れ込むという細かさ!)へと移動し、流麗なスライド奏法で、ジャズのスタンダード・ナンバー「Left Alone」を。ブラシを使った心地よい4ビートに乗り、後半はSGに持ち替えて美しいメロディを紡ぎ出す、このあたりがこの日最も“ジャズっぽい”ムードだったかもしれない。

そしてここから空気は一変し、強烈に歪んだハードなリフがうなりを上げ、始まったのは「TROPIC BIRD」。バンドが一体となって叩きだすスピーディーなラテンのリズムに乗って、“ギターは顔で弾く”と言わんばかりに、表情豊かに弾きまくる姿がスクリーンに映るたび、客席から歓声が飛ぶ。エンディングではアドリブで様々なフレーズを繰り出し、全員揃っての仕掛けをわざと外して笑わせるなど、茶目っ気いっぱいに盛り上げる高中。そのまま曲は「DISCO“B”」へと移行し、今度はファンク・ロック的な揺れるリズムでぐいぐい押しまくる。動き回って盛り上げることはしないが、ステージ中央に立ってアンプとエフェクターに囲まれ、右腰でボディを支え、ネックを斜め前に突き出す弾き姿がなんとも言えず決まっている。弾き姿のいいギタリストは、それだけでカッコいい。

ここでメンバー紹介をはさみ、ヴォコーダーでひとしきり遊んだあと、おなじみの“さおだけ~”のフレーズが飛び出す。曲はもちろん「READY TO FLY」。速弾き高中の面目躍如たるアップテンポの情熱的なナンバーを、もう何十年もずっと変わらない気がする滑らかな指さばきで大いに盛り上げる。さらに曲を途切れさせず、白のSGに持ち替えて、そのまま本日のラストナンバー「黒船」へ。メロディの旨みがたっぷり詰まった美しいスローナンバーを、ピアノの伴奏から分厚いバンドサウンドへと展開させながら、ドラマチックに盛り上げる流れは圧巻のひとこと。曲が終わった瞬間、右手を軽く上げてガッツポーズのような仕草を見せたのは、会心の演奏だったことの証明だろう。最後はメンバー全員揃ってのラインナップで、観客はもちろんスタンディング・オベーションで熱演を讃えている。

終わってみれば、セットリストはほぼ『SUPER STUDIO LIVE!』から。ということは80年の名作ライブ盤『SUPER TAKANAKA LIVE!』からということでもあり、新旧の高中ファンをどちらも満足させる、そして<東京JAZZ>のファンの心にも強く刻まれたであろう、50分間の素晴らしいショーだった。

さて、その後の様子を少しだけ紹介しておくと、そのあとに登場したケニー“ベイビーフェイス”エドモンズは、伝統的なソウル・ミュージックのショーを思わせるスマートでエネルギッシュなステージングで、観客席に飛び込んで会場内を一周したり、そうかと思えばアコースティック・ギターで静かな弾き語りを聴かせたりと、表情豊かなライブで大いに盛り上げてくれた。そしてもちろんチャカ・カーンは、圧倒的なパワー溢れるハイトーンを惜しげもなく繰り出し、どんな曲でもすべてその日のハイライトにしてしまう、強烈な存在感でオーディエンスを総立ちにした。3日間の<東京JAZZ>のメニューの中でも、この夜の“THE GROOVE”はいわば異色の組み合わせなのだが、だからこそ三者三様の個性の違いが華やかに浮かび上がる、最もカラフルなライブになったと言ってもいいだろう。

午後9時10分、チャカ・カーンが終わって外に出ると、地上広場ではイタリアからやってきたトランペッター、ファブリッツィオ・ボッソのカルテットが、エネルギッシュな情熱みなぎる演奏を繰り広げていた。このままここにいれば、ウーター・ヘメルのステージが終わるまで、11時近くまで素晴らしい演奏が楽しめるだろう。東京の秋に欠かせないイベントして定着した<東京JAZZ>、もうすでに2015年の開催が待ち遠しい気持ちになってしまった。

取材・文◎宮本英夫

■<第13回 東京JAZZ>
2014年9月6日(土)@東京国際フォーラム ホールAセットリスト
1.BLUE LAGOON
MC
2.BLUE WIND
3.珊瑚礁の妖精
MC
4.Left Alone
5.TROPIC BIRD
6.DISCO "B"
7.READY TO FLY
8.黒船


『SUPER STUDIO LIVE!』
2014年9月3日(水)発売
【初回限定盤(CD+DVD)】QYZI-10023 3,500円(税抜)
【通常盤(CD)】QYCI-10019 3,000円(税抜)
1.BLUE LAGOON
2.EXPLOSION
3.珊瑚礁の妖精
4.RAINY DAY BLUE
5.TROPIC BIRD
6.DISCO “B”
7.READY TO FLY
8.黒船
9.BLUE WIND(新曲)
10.三元閣(新曲)
※初回限定盤DVD収録内容:「BLUE LAGOON」ミュージック・ビデオ、History of BLUE LAGOON
※レコーディングメンバー:高中正義(G)、岡沢章(B)、小島良喜(Key)、斉藤ノヴ(Per)、青柳誠(Key/Sax)、宮崎まさひろ(Dr)、稲葉ナルヒ(G)

■<TAKANAKA SUPER LIVE 2014 ツアー>
2014年10月11日(土) Zepp NAGOYA
開場16:30 開演17:00
[問]サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
2014年10月18日(土) 大阪・森ノ宮ピロティホール
開場16:30 開演17:00
[問]キョードーインフォメーション 06-7732-8888
2014年10月31日(金) 渋谷公会堂 SOLD OUT
※各公演 全席指定 ¥7,800(税込み)
※名古屋のみ1ドリンク代¥500別途

■<SUPER CHRISTMAS LIVE 2014>
2014年12月4日(木) 渋谷公会堂
開場18:00 開演18:30 全席指定 ¥7,800(税込)
オフィシャルWEB先行予約 http://eplus.jp/takanaka1204-hp
[問]キョードー東京 0570-550-799

◆高中正義オフィシャルサイト
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