【ライブレポート】高中正義、30年ぶりのLA公演でアメリカ人のハートをつかむ

ギタリストの高中正義が3月9日と10日、米ロサンゼルスのウィルターン・シアター(WILTERN THEATER)でコンサートを開き、集まった5,000人(2日間)の地元ファンを熱狂の渦に叩き込んだ。
高中正義のLA公演は1995年にアルバム『COVERS』のレコーディングで、Media Complex Studio & Stage で開催以来30年ぶり。会場となったウィルターン・シアターは2002年にザ・ローリング・ストーンズもライブを開催した名門シアターだ。かつて日本のミュージシャンが海外でライブを開く際、観客は日系人の割合が多かった。ところが開演が近づきこの日会場に集まってきた観客をみると、そのほとんどがTシャツやアロハシャツを着た地元の人で日系人はあまり見当たらない。日本では8割ぐらいが男性客だが、こちらでは6:4ぐらいで男性ファンが女性より少し多い程度。中にはどこで手に入れたのか、高中正義のロゴTシャツを着ている熱心なファンもいる。あらためて海外における日本のシティポップ/フューチャーAOR人気を見せつけられた。

開演時間が近づくと、今か今かと待ちわびるオーディエンスの熱気がすさまじい。そしてステージがパッと明るくなると、下手から真っ赤なスーツに身を包んだ高中正義が右腕を大きく上に掲げながら登場するや、場内から待ってましたとばかりに大きな歓声があがり冒頭から総立ちとなる。オープニングはサディスティック・ミカ・バンドの「黒船(嘉永6年6月4日)」だ。嘉永6年(1853年)に日本の浦賀沖に現れた黒船は、170年超の時を経てアメリカに帰還したのだ。悠久のときを連想させるゆったりした演奏で幕を開けたLA公演は、軽快なサンバのリズムに乗せた「BLUE CURACAO」に続く。「OH! TENGO SUERTE」ではトーキングモジュレーターを使ってエフェクト・ボイスを、「トーキョー・レギー」ではボーカルも披露し客席を沸かせる。前半はメロウでブリージンなナンバーをじっくりと奏でていった。特にサンタナの「哀愁のヨーロッパ」は世界的に知られる楽曲だけに、メロディ・ラインが弾かれるや「ウォー」という野太いリアクションがあがる。

MCでは「I've been waiting for this day! I've been waiting for so long!」となんと英語で披露。さらに「ボクはみんなから見るとおじいちゃん世代ですが、気持ちは若いです」と英語で話し「ボクの夢はグラミー賞とることです」と続けると会場から「Ye~s!」と大きく応じた。
後半はダンサブルな「SHAKE IT」でスタート。「渚・モデラート」「Saudade」といった日本でも人気の高い鉄板ナンバーを次々に演奏していく場内は徐々にヒートアップさせていく。エキゾチックなディスコ調のナンバー「TAJ MAHAL」ではコーラスのアマゾンズの3人がフロントに出てきて客席を煽る。オーディエンスは演奏に合わせ両腕を大きく左右に振って熱く応える。ここでアマゾンズの3人は一旦舞台を降り、ここからは高中のギター1本と観客が真っ正面で向かい合う。高中が舞台の左右を移動しながら縦横無尽にギターを響き渡らせると、フレーズひとつひとつ決める度に怒濤の歓声で応えていく。日本のコンサートでも盛り上がるが、アメリカのオーディエンスのリアクションは日本の比ではない。大きな声をあげながら、激しくクラッピングし身体を揺らし続ける。これは演奏する側にとっても気持ちいいだろう。「THUNDERSTORM」ではイントロが奏でられるや、凄まじいまでの歓声があがる。どこまでも上昇していくようなギタープレイにオーディエンスのアドレナリンは上がりっ放し。演奏を終わるとギターを野球のバットに見立てて何度も大きくスイングし、ベースボールの国のハートをしっかりつかむ。本編ラストはお馴染み「READY TO FLY」で締め、大きな拍手に送られステージを降りた。

アンコール待つ客席は「MORE!」「MORE!」の声が飛び交う。ステージに再び表れた彼らが演奏し始めたのは大ヒット曲「BLUE LAGOON」。高中正義の曲はインストゥルメンタルなのに「歌」を感じさせると言われる。確かに、バンドでいうところのボーカル・パート(=メロディ)はメロディアスなギター・フレーズを弾き、ソロ・パートでは熱量溢れるギターを弾く。そんなことを強く感じたのは、この「BLUE LAGOON」のとき。アメリカのお客さんはなんとメロディ・パートを大きな声で一緒に歌っているのだ!なるほど!やはり高中の曲は「歌」そのものなのだ。改めてアメリカのお客さんに教わった。

曲が終わるとこの日、2回目のMC(もちろん英語で)。「温かい声援ありがとうございます。私は南の島が大好きで、セイシェル諸島の曲は書きましたが、実は行ったことありません」と話すと場内大爆笑。日本でも時折、小ネタを披露するがなんとアメリカでも笑いと取ることに成功!続けては名盤『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』にも触れ、最後は「美しい虹がロサンゼルスの山にかかることを願っています」と告げ、LAのファンを喜ばせた。そしてアンコール2曲目はその『虹伝説』ラストに収められた「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」。ゆっくりとしたギターの音色を広い会場の隅々までに届くよう、高らかに響き渡らせた。そして最後は1969年のウッドストックでジミ・ヘンドリックスが演奏した「星条旗よ永遠なれ」をエモーショナルに弾きあげる。アメリカの国歌だけあって、みんなが大声で歌う。アメリカ人のハートをしっかりと捕らえた感動的なフィナーレで2時間に及んだ高中正義のLA公演は大盛況の中、閉幕した。

高中正義のロサンゼルス凱旋公演は4月18日(金)に東京・昭和女子大学 人見記念講堂で開催される。
<TAKANAKA SUPER LIVE 2025 BLACK SHIP in LA
2025年3月9日(日)&10日(日)
@THE WILTERN(LA)
1.黒船(嘉永6年6月4日)
2.BLUE CURACAO
3.SWEET AGNES
4.OH! TENGO SUERTE
5.トーキョー・レギー
6.ALONE
7.哀愁のヨーロッパ
8.Hold On
9.The Party Just Begun
10.SHAKE IT
11.渚・モデラート
12.A Fair Wind
13.Saudade
14.TAJ MAHAL
15.EARLY BIRD
16.Finger Dancin'
17.THUNDERSTORM
18.READY TO FLY
ENCORE
19.BLUE LAGOON
20.YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE
出演:高中正義(Guitar)
斉藤ノヴ(Percussion)/岡沢章(Bass)/宮崎まさひろ(Drums)/柴田敏孝(Keyboard)/井上薫(Keyboard)
AMAZONS 大滝裕子・斉藤久美・吉川智子(Chorus)
@THE WILTERN(LA)
1.黒船(嘉永6年6月4日)
2.BLUE CURACAO
3.SWEET AGNES
4.OH! TENGO SUERTE
5.トーキョー・レギー
6.ALONE
7.哀愁のヨーロッパ
8.Hold On
9.The Party Just Begun
10.SHAKE IT
11.渚・モデラート
12.A Fair Wind
13.Saudade
14.TAJ MAHAL
15.EARLY BIRD
16.Finger Dancin'
17.THUNDERSTORM
18.READY TO FLY
ENCORE
19.BLUE LAGOON
20.YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE
出演:高中正義(Guitar)
斉藤ノヴ(Percussion)/岡沢章(Bass)/宮崎まさひろ(Drums)/柴田敏孝(Keyboard)/井上薫(Keyboard)
AMAZONS 大滝裕子・斉藤久美・吉川智子(Chorus)

<LA凱旋公演 TAKANAKA LA凱旋 LIVE 2025>
2025年4月18日(金)
@東京・昭和女子大学 人見記念講堂
開場17:30/開演18:30
チケット:9,900円(税込/全席指定)
@東京・昭和女子大学 人見記念講堂
開場17:30/開演18:30
チケット:9,900円(税込/全席指定)
◆高中正義オフィシャルサイト
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