大瀧詠一のルーツを探る
書籍『ナイアガラに愛をこめて~大瀧詠一ルーツ探訪の旅~』が3月29日に発売となる。今では考えられないことだが、1960年代には「日本語はロックに向かない言葉」と考えられており、基本的には日本のバンドもほとんどは英語で歌っていた。そんな状況下において「日本語でやるロック」にこだわってその世界を開拓し、日本のポップ・ミュージック界に革命を起こしたアーティストのひとりが大瀧詠一であった。
◆『ナイアガラに愛をこめて~大瀧詠一ルーツ探訪の旅~』画像
2013年末の突然の他界は、ロック/ポップ・マニアのみならず、「ロング・バケーション」や「ナイアガラ・トライアングル」の大ヒットを知る一般の音楽ファンにも大きな哀しみをもたらした。大瀧詠一は、海外・国内を問わずあらゆる音楽に精通してそのエッセンスを咀嚼し、様々な要素を再構築し、自らの音楽に昇華して先達にオマージュを捧げていた。単なる安直な模倣と決定的に違うのは、圧倒的なクオリティとともにその対象に向けられた深い愛情と尊敬の念である。
新刊『ナイアガラに愛をこめて~大瀧詠一ルーツ探訪の旅~』は、大瀧詠一が自作に盛り込んだ音楽的な影響源を、メロディやサウンド、アレンジなどの音楽的な面はもちろん、歌詞や洒落っ気といったスピリットの部分にまで踏み込んで、事細かに解説するガイド本である。影響源となった曲と大瀧作品を照らし合わせて探究しているのでとてもわかりやすく、当該曲を聴きながら読むと「なるほど!」と納得と合点の連発だ。
もちろんそこにはマニアックな曲も多いが、曲名を見てすぐに頭の中にメロディが流れるマニアでなくとも、すぐにいろんな曲に触れられる今の時代であればこそ、大瀧ビギナーでも大いに楽しめることだろう。新たな発見や確認をしながらも、そこで知った新たなアーティストの曲を更に聴き進め、大瀧作品に深く触れることは、自らの音楽的な世界をも大きく広げてくれることだろう。そんな音楽ファンが増えることは、大瀧詠一の喜びでもあるはずだ。
著者は「ディスク・コレクション・ジャパニーズ・シティ・ポップ」「はっぴいえんどコンプリート」などを手がけた、ナビゲーターとしてはうってつけの木村ユタカである。
『ナイアガラに愛をこめて~大瀧詠一ルーツ探訪の旅~』
発行予定日:3月29日
本体予価:2,000円+税
著者:木村ユタカ
判型:A5判
頁数:176ページ
2013年末に急逝した大瀧詠一の膨大な量のポップスの知識を、彼の作品の音楽性からルーツを辿ることでひもとく一冊。プレスリーからフィル・スペクター、サーフ・ミュージック、ニューオーリンズ、アイドル・ポップスまでを網羅する、広大な大瀧ワールドの真髄に迫る。