【対談】zopp×Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)×清水翔太、“作詞”を通して探る言葉のチカラ
作詞家zoppが11月に出版した処女小説「1+1=Namida」。その「言葉」の持つ力をより深く突き詰め発信するべく、今回2人の音楽人“zopp”、“清水翔太”、そして1匹の音楽狼“Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)”によるスペシャル対談が都内某所にて開催された。
◆zopp×Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)×清水翔太 対談写真
■映像をどうやって言葉化したら、言葉から映像が見えるだろう? ってところをまず考えるんです。(zopp)
──今回は、みなさんの共通点でもある“作詞”について、いろいろとお話させてもらえたらと思います。まず、みなさんお会いになられたことは?
zopp:Jean-Ken Johnnyさんとはちょこちょこと。
Jean-Ken Johnny:YES。ヨク会ッテタリシマスガ、清水サントハ初メテニナリマスネ。
清水翔太:はい。よろしくお願いします。
zopp:そうですね、僕は、いつも歌詞を書くとき、ひとつの大きな世界を作っていくんです。そしてそこに、登場人物を置いていき、仮想世界を作り上げていく感じですね。なので、自分の経験談というよりかは、自分で世界を作っていくっていう形ですね。
──なるほど。Johnnyさんは如何ですか?
Jean-Ken Johnny:ワタクシハ、ベースニアルノハ、経験談デアルコトガ多カッタリスルンデスガ、ソコヲベースニシナガラモ、映画ヤ漫画ヤ小説トイウモノノ中デ、自分ガ感動シタエッセンスナンカヲ取リ入レナガラ、経験談ヲ誇張シナガラ書イテイッタリシテマスネ。
ナノデ、ワタクシモ少シ物語ヲ自分デ作ル形ノトキモアッタリスルカナッテ思イマスネ。
──翔太くんは?
清水翔太:そうですね、僕はトラックも作るので、歌詞となると、音楽との相性も重要視してますね。歌詞を先に書くこともあれば、メロを先に作ることもあるんですが、やはり、一番多いのは、トラックを最初に作ってしまって、そこにメロと歌詞を書いていくという場合なので、音が自分に与えるインスピレーションが、すごく大きいと思うんです。
──音に引き出される、というイメージで歌詞を書くってこと?
清水翔太:そう。最初に、“こういう歌詞が書きたいな”と思っていても、音にその歌詞がハマらないようであれば、そのときはそういう歌詞を書かないんで。
zopp:そういう部分では、僕も同じですね。僕は作詞家なので、受け取った曲に合わせて世界観や物語を作って、それに合った言葉選びをしていきます。なので、暗い歌詞が書きたい気分でも、アップテンポの曲だったら、それは叶いませんよね。でも、僕と清水さんが違うのは、僕は曲を作らないから、曲と歌詞を同時に作るということは絶対にないので、そこは清水さんの方が両方の産みの苦しみはあったりするでしょうね。
──zoppさんは、歌詞だけを先に提供する、ということはないんですか?
zoop:ほとんどないですね。いままで100作以上書いてきたんですけど、2作くらいしかないです。そこが小説とは違うところだなって思います。小説って、何ページでも書けちゃうし、どんなに短くてもいいけど、歌詞の場合は3分とか4分の中で物語を完結させなくてはいけないですからね。そういう意味では、音っていうのは、すごく重要になってくるんですよ。
Jean-Ken Johnny:ワタクシノ場合モ、バンドデヤル音楽ソノモノガ、メロ先デ作ルノデ、詞先トイウコトハ、ホボホボナイデスネ。楽曲ヲ作ッテイル段階デ、ナントナクボンヤリト、コンナ歌詞ニシタイナッテイウ感ジデ進ンデイクコトハアッテ、ソウイウトキハ、ホボ同時進行ミタイナ感ジデハアリマスケドネ。
──なるほど。そもそも、みなさん。今はごくごく当たり前のように歌詞を書かれていると思うんですけど、歌詞を書く、ということをしてみたいと思われたんですか? もしくは、歌うことになり、歌詞をおのずと書くようになったという感じだったんですか?
清水翔太:僕は歌が先でしたね。僕の場合は、またすごく特殊だと思うんですけど、15歳くらいの頃に、“絶対に歌手になってやる!”って思った中で、曲を作れないとアーティストじゃない気がしたので、まずは、“認めてもらうには曲を作れなくちゃいけないんだ!”っていう使命感から入ったんです。ちゃんと音楽の道に進むのなら、そこは最低限出来なくちゃいけないことだって。なので、最初は手探り状態だったんです。だから、そこにはまだアーティスト性なんて呼べるモノもなくて。そこはだんだん後からついてきたって感じだったんです。最初から、清水翔太にしか書けない歌詞を書こうとか、そこになんとかアーティスト性を持たせようとか、そんなことは考えてなかった。どうすればアーティスト性が生まれるかってことすらわからなかったですからね。本当に手探りでしたから。最初はAメロだけをちょっと書いてみたり、サビだけ書いてみたりして。だんだん今の歌詞が書けるようになっていったんです。
Jean-Ken Johnny:我々ノ場合ハ、バンドヲ始メテマダ3年クライナノデ、マダマダ書キ始メテ間モナイ感ジダッタリハシマスケド、書キタイコトガアッタトイウヨリ、バンドヲ始メテカラ歌詞トイウモノガ必要ニナッタトイウ感覚ダッタノデ、最初ハ、自分タチガ好キダッタバンドノ歌詞ノ模倣カラ始マリマシタネ。自分タチガ好キナバンドノ歌詞ハ、イッタイドンナ言葉デ構築サレテイッテルンダロウ?ッテ、スゴク細カク分析シタリシテ。ドウイウコトヲ歌ッテイルンダロウ?ッテ。ソコカラ始マリ、ダンダン後カラ自分タチガ思ッテイルコトヲ歌詞ニ投影出来ルヨウニナッテイッタッテイウ。後付ケナ感ジデシタネ。コレネ、説明出来ル法則ジャナイト思ウンデスケド、ダンダンソノ中デ、“コレガ自分ノ法則ナノカナ?”ッテ思ウトコロガ出来テクルンデス。
──すごくわかります。甲本ヒロトさんがおっしゃっていたんですけど、なんでも最初は模倣から始まるって。それがいつか自分のモノになるんだって。自分たちもそうだったよって。その言葉を聞いたとき、すごく納得したというか、すごい説得力があったんですよね。それと同じですよね。
Jean-Ken Johnny:ソウデスネ。ヤッパリ誰モガ、最初ハ憧レカラ入ルモノダト思イマスカラネ。最初ハソレデイインジャナイカナッテ、ワタクシモ思イマスネ。
──そうですね。zoppさんは、“作詞家”という、作詞を専門とされていますけど、アーティストではなく、作詞家を目指されたきっかけは何だったんですか?
zopp:僕は、高校時代にアメリカ留学してたとき、勉強のついでに、自分の好きな洋楽のアーティストの歌詞を翻訳してたんです。そこで日本の歌詞にはなくて、向こうの歌詞にある独特な宗教色みたいなのを感じたんです。戦争の歌詞もすごく多いですしね。アメリカは、日本よりも、死がすごく身近にある国でもあると感じました。なので日本でも、そういう歌詞を書いていけたらいいなと思ったんです。昔の歌謡曲には、そういう色を感じる作品が多かったんですけど、最近は減ってきたなと思って。だから、21世紀の今、そういう歌詞を書く作詞家になっていけたらなと。修二と彰の「青春アミーゴ」は、まさにそうで。ちょっとバイオレンスな表現も入ってますからね。それに、僕は映像が好きなので、映像をどうやって言葉化したら、言葉から映像が見えるだろう? ってところをまず考えるんです。1回聴いてもらっただけで、その歌詞が、どういう世界観の映像を聴き手に焼き付けるかっていうのを重要視してます。なので、色々と細かいところに気を配っているんです。譜割りももちろんですし、普段喋るときに音を乗っけない言葉には音を乗っけないとか。そういうところは、作詞家ならではの歌詞の書き方だと思いますね。シンガーソングライターの人たちが書くような歌詞を書いてたんじゃ、職業作家ではないと思っているので。やっぱり、作詞家が書いた歌詞だね、って思われるような書き方をしないと、意味がないと思うんです。今回初めて書かせてもらった小説『1+1=Namida』(2013年11月にマガジンハウスより発行)は、普段僕が書いてる歌詞を長くしたものというか。僕がいつも頭の中で描いている世界を、歌詞ではなく小説にすると、こうなるんだよ、っていう証明だったというか。自分に対するアンサーみたいな感覚でしたね。
──なるほどなるほど。やはり、作詞家とアーティストとは、同じ歌詞でも書き方が随分違うんですね。
zopp:そうですね。それが面白さでもあるんでしょうね。
──zoppさんは、ご自分で歌いたいと思ったことはなかったんですか?
zopp:なかったです。聴く方が好きでしたね。自分が表現してしまうと、嫌いになってしまいそうで。人前で歌って、笑われたりでもしたら、もう絶対に歌えなくなっちゃうんじゃないかなって。だから、自分が歌うっていう選択肢はなかったです。
清水翔太:書いてみたいなと思ったこともあったので、書いてみたんですよ。でも、ダメでした(笑)。恥ずかしくて(笑)。文章を書くのは好きなんですけどね、コラムとかの方が向いてるのかなって。
Jean-Ken Johnny:アァ~、一話完結ミタイナネ。ワカルワカル。ワタクシモネ、ソレダッタライケルカナッテ思イマスネ(笑)。スッゴイクダラナイコラムヲ書イテタリモスルンデスケドネ(笑)。
清水翔太:清水翔太としての小説だったら書けるのかもしれないけど、まっさらな所から、物語を作り出して構築していくというのは、本当に苦手でした(笑)。
zopp:あははは。でもね、その気持ちちょっとわかるなぁ。小説って、自己表現だから、恥ずかしいんですよね。けど、僕の場合、作詞家として普段からそこはやり慣れてるんで、ダサイくらい突き抜けてやろう! って思ってるから、もう恥ずかしさはないんですよ。カッコイイ人にダサイこと言わせるって、それはそれですごくカッコイイことだったりするし。そのギャップが良かったりするんですよね。歌詞でもギャップが重要なんです。まず、物語のゴールを設定して、悲しく終わらせたいなら、嬉しいところから落とした方がいいし、楽しく終わらせたいなら悲しいところから上げていけばいい。いかにスタートとエンディングにギャップを付けるかってとこだと思うんです。僕の一番の理想は、同じ曲を、10代で聴くのと20代で聴くのと、30代で聴くのとでは景色が変化してほしいんです。その瞬間で聴き終わってしまう曲ではなく、50歳になって聴いたときには、50歳で聴いたときの良さを感じてもらえるような、そんな歌詞が理想なんです。10代で聴いたときは憧れだったモノが、20代では共感に変わって、30代ではそれを懐かしく思って、40代50代で聴いたときには、“もう一度こんな恋愛してみたいな”っていう感覚に変化していくというか。表情のある物語を作っていくのが、僕の美学なんです。
──なるほど。素敵ですね、それ。
zopp:ぼくらはそれを、意図して作れなくちゃいけないんです。アーティストの方の書く歌詞や曲は、聞く側が共感するもので、僕らは共感させないといけないんです。
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