MASH A&R、<MASH FIGHT! Vol.2>を制したのは、LAMP IN TERREN。さらに2014年度、3回目となるオーディションも開催決定
ロックシーンの新たな才能と可能性の開拓を目的として、「MUSICA」、「A- Sketch」、「SPACE SHOWER TV」、 「HIPLAND MUSIC」4 社共同で立ち上げた継続的プロジェクト、MASH A&R。このMASH A&Rが開催するファイナルオーディション <MASH A&R FINAL AUDITION -『MASH FIGHT! Vol.2』>が昨日12月26日に渋谷 WWWにて開催された。
◆<MASH A&R FINAL AUDITION -『MASH FIGHT! Vol.2』> 画像
このファイナルオーディションには、オーディションバンドとしてSwimy、かたすみ、SAPPY、TOKYOGUM、LAMP IN TERREN、the equal lightsの全6組が登場し、グランプリの座をかけて熱き戦いを繰り広げ、また、この日はゲストアクトとして、2012年度グランプリのTHE ORAL CIGRETTES、2012年度特別賞のフレデリックが参戦した。
オーディションバンド、そしてゲストアクトのレポートをそれぞれお届けする。
■エントリーNo.1 Swimy
この日、イベントの司会を務めたハリー杉山の呼び込みで、まずステージに登場したのは、Swimy。2013年夏に行われたセミファイナルの<MASH FIGHT Vol.1.5>の大阪公演を勝ち抜いた滋賀県出身の4ピースバンドだ。幕が上がると同時に照明を背に受けたメンバー全員によるハーモニーで荘厳な空気を作り出し、フロアの空気を一変させると、そのまま1曲目“マスコットになりたくて”に突入した。中性的な男声ヴォーカルを含めたトリプルヴォーカル、フロントの3人で揃えたコミカルな仕草など、全体的に高いパフォーマンス力を持っていることがわかる。続く“あなたのことを僕に少し教えてくれないか”では、タイトで安定感のあるリズムワークと“♪ね・ね・ね・ね・ね・ね~”といった即効力のあるサビで一気に会場の心を掴んでいく。ユニークなバンドのキャラクターとは対照的に、コーラスのハモり方やテクニカルなギターのフレーズなど、実は確かな演奏力と知性に裏付けされた音楽であることが明らかだ。夏のセミファイナルから半年、さらにそのパフォーマンス能力に磨きをかけたことがわかる、素晴らしいアクトだった。
■エントリーNo.2 かたすみ
「アピール? ライブやりゃわかるさ!」と語った、ライブ前のビデオメッセージで登場したのは、<MASH FIGHT Vol.1.5」>東京公演の勝者、かたすみだ。“勢いと熱さえあればなんでもできる!”とでも言うような、衝動に身を任せる暴力的なドラムと多少の調子っぱずれをものともせずに全力でぶつかってくるヴォーカルが心地いい。決して整っているロックではない。だが、型破りというよりも、むしろ、型にハマろうという意識すらないのがこのバンドの魅力であり、何よりの武器だ。歪んだギターのノイズと激しいドラムの残響音の中に響く暑苦しいほど真っ直ぐな人間性とエモーション……「ヤバいねって言葉しか出てこないっす(苦笑)」というMCも含め、微笑ましいほどの表裏のなさと初々しい衝動は、“ロックバンドにとって何が一番大切なのか?”ということに改めて気づかせてくれる。荒涼とした世の中で鬱憤にまみれた人生だからこそ、摩擦を起こすために歌わずにはいられない。その存在をかけて音楽を鳴らそうとする、本物のエモバンドに久しぶりに出会った気がした。
■エントリーNo.3 SAPPY
3番目に登場したSAPPYは、“HAPPY&SAD=SAPPY”というバンド名を掲げて、“ちょっと涙の出そうになる音楽”を目指す神戸の4ピースバンド。元気でガーリーなヴォーカルや今ドキの女の子らしい素直な歌詞など、パッと見た感じでは可愛らしさがウリのポップバンドのようだが、ブリブリのベースラインやシューゲイズギター、和メロを活かした切ないシンセのフレーズなど、音楽的な素養の高さもうかがい知ることができる。紅一点のボーカル・佐藤咲希がステージ前方まで乗り出し、マイクをフロアに向けるシーンが何度もあったのが印象的だったが、お客さんを巻き込んで楽しませたいという貪欲なショウマンシップを強く感じることができた。そんなバンドの本性が垣間見えたのが、3曲目の「Ivy」。ポップな曲調から一転、間奏で「思い思いに体を動かしていこう!」と言いながらディープなジャムセッションを繰り広げ、その豹変ぶりには目を見張るものがあった。いろんな意味で記名性の高さとキャラクターを感じさせる強いポップバンドだった。
■エントリーNo.4 TOKYOGUM
オーディションバンドも半数のアクトが終わり、後半戦。続いて登場した横浜出身の3ピースバンド、TOKYOGUMは、まるで、ポケットに文庫をいつも持ち歩いているような文系青年のような佇まいと日焼けした肌にオイルが光るマッチョなダイナミズムの両面を持ったバンドだった。線の細い少年のような歌声と変則的なリズムでもグルーヴを失わない肉体性、ハードロックのようなエグさとフォークロックの親しみ、気味の悪さや居心地の悪さと対照的な爽やかさ、狂気と清純、繊細と大胆、モノクロームと鮮やかなカラー……それらの相反する要素が互いに入れ替わり続けながら、曲の展開の中にしっかりとドラマがある。だからこそ、聴いているうちにいつの間にかズブズブとその世界に引き込まれてしまうのだ。伸びやかな歌声も含め、スケールの大きさと懐の深さを感じさせる音楽だが、メンバーの年齢は21歳から23歳とまだまだ若い。その先に広がっている可能性を確信できるライブだった。
■エントリーNo.5 LAMP IN TERREN
次に登場したバンドは、LAMP IN TERREN。とにかく歌の存在感が大きく、地力を感じる。ボーカルの松本が放つしゃがれた声は、乱暴に叩きつけられるようでいて、一対一で丁寧に言葉を紡ぐような優しさも感じられる。派手さや情報量の多さが当たり前になった現在のギターロックシーンの中にあって、奇抜さのないLAMP IN TERRENの楽曲はいささかシンプル過ぎるようにも感じられるが、しかし、しっかりと歌に寄り添ったアレンジは、しっかりと焦点が定まっており、バンドとして音楽で何を届けたいのかが明確だ。「“楽しい”って、ワーッとなるだけじゃなくて。日常の中で感じる辛いことや悲しいことがここで洗い流されていくことも“楽しい”ってことだと僕は思うんです」。そう言って鳴らされた「緑閃光」には、確かにこの世の中にわずかでも光を差そうとするバンドの意志が感じられた。中学時代の友人で組んだバンドから始まっている経緯も含めて、とてもロックにロマンを感じられるバンドだった。
■エントリーNo.6 The equal lights
最後に登場したオーディションバンドは、この日の出演者の中で最年少となる平均年齢19歳の4ピースバンド、the equal lights。伸びやかなメロディにボーカル&ギターの三嶋の透き通る歌声が光る。サビなど要所要所で多用されるファルセットもとても美しかった。不安定なアンサンブルや音の駆け引きのバランスなど、演奏自体は、正直、まだ粗削りだったと言わざるを得ないものだった。でも、だからこそ、伸びしろは凄く感じられるパフォーマンスだったのも確かだ。特に印象的だったのは、三嶋が終始笑っていたこと。楽しそうに楽器をかき鳴らす様子や、「Hello」の“ハロー 新しい世界”、「Lily」の“僕らはいつも始まりを待ってる”といった前向きの歌詞からは、彼らの音楽が目指す方向が明らかだった。今後、もっと完成度を上げて、さらなる飛躍を期待したくなる音楽だった。
ゲストアクトの1番目として登場したのは、2012年度のオーディションで審査員特別賞を獲得したフレデリック。お馴染みのSEで幕を開けると、お決まりの手拍子が会場から響く。圧倒的なホームの空気感、なのに何故かシュールという、絶妙な空気がフロアを包む。「ナンバーワンにはなれませんでしたが、もともと特別なオンリーワンなんで、この場に来ることができました」といった第一声も彼ららしい。反骨とひねくれたユーモアは、初めて目にした1年前の彼らと何も変わっていない。だが、演奏はまったくと言っていいほど変わった。直線的なダイナミズムと曲線的な“ハズし”のメリハリが全然違うのだ。
ファンキーさや享楽的なセッション性と、タメの中でしっかり張るべきところは張ることができる巧みさ。だからこそ、ユルさや可笑しさが際立つのだ。少しはにかみながら「ありがとう」と「気持ちいい」を繰り返し、「俺達がMASH A&Rのフレデリックです」と言ったMCからも、先輩バンドとしての威厳と彼らが1年間の中で培ってきた成長を見て取ることができた。この日のライブでは3月にいよいよアルバムがリリースされることを発表、それがどんなものになるのか、今からとても楽しみだ。
■ゲストアクト2 THE ORAL CIGARETTES
いい意味で容赦なく、えげつないくらいに観客を煽り、それにフロアも熱く呼応していく。1年前は同じアグレッシヴさでも背伸びの跡が見えた4人だったが、今年の彼らはむしろ既にこの規模に収まってないぐらいの大きなスケールを感じさせていた。山中の色気や歌声も、攻撃的なバンドのアンサンブルも、ビシビシと突き刺さってくる。「去年ひとつだけ力不足でできへんことがあったんです。渋谷WWW全員の手がバーンと上がる瞬間を観れへんかったんです。お客さんもスタッフも、お偉いさん4人も関係なく、今日ここで全員が手を上げるシーンを観たいんです」。山中がそう告げると、見事に審査員も含めた会場にいる全員が手を上げた。そのまま「N.I.R.A」、「大魔王参上」と畳み掛ける。極めつけは「Mr.ファントム」。
自ら「MASH A&Rの中で最高のキラーチューン」と称し、掲げた看板の通りに今日一番の盛り上がりを作ってステージを後にした。バンドの成長のみならず、MASH A&Rというプロジェクトの1年間の集大成となるようなライブだった。
この日、来場したロックファンによる一般投票やWEB投票も交えた審査の結果、2013年度、<MASH A&R FINAL AUDITION -『MASH FIGHT! Vol.2』>を制したのは、LAMP IN TERREN。1年をかけた長いオーディションの結果、約1000組の頂点に立った。
グランプリアーティストは、MASH A&Rが総力を挙げて育成から成功まで最大限サポートすることが約束されているが、グランプリの副賞として、12月31日に大阪城ホールで行われる<Ready Set Go!! Count Down Live 2013→2014>、2014年3月21日に新木場スタジオコーストで行われる<HighApps Vol.18 SPECIAL!!~スリー・ツー・ワン!SPRING Rock Party~>、さらには5月3日~5日にさいたまスーパーアリーナで開催される<VIVA LA ROCK>に出演することが決定。2014年前半からいきなりの大舞台に立つことが決定したLAMP IN TERRENは一体どのようなパフォーマンスを、活動展開を見せてくれるのか、今からとても楽しみだ。
また、このオーディションの審査総評とLAMP IN TERRENからのコメントが下記のように寄せられている。
◆ ◆ ◆
■審査員総評(鹿野 淳:MASH A&R)
Swimyとかたすみは、夏のオーディションに出てくれましたが、あの頃とは全然違う、素晴らしいパフォーマンスでした。改めて、可能性に満ちたバンドなんだなということを感じさせてもらいました。そして、SAPPY、TOKYOGUM、the equal lightsの3組に関しても、これほどの大舞台に立つのはおそらく初めてだったと思いますが、とてもハイレベルな演奏をしてくれました。こちらが期待していた以上のものでした。ただし、その中でも我々がLAMP IN TERRENを選んだのは、『僕らを観て!』というよりも、『僕らの歌を観てくれ!』という姿勢が凄く感じられたからです。そこに凄く打たれました。正直、もう少しアレンジがなんとかなるんじゃないか?って思う部分があったりしますが(笑)、何よりもそこに打たれて彼らを選ばせてもらいました。
■LAMP IN TERREN:松本大(Vo&G)コメント
もし名前を呼ばれたらどんな顔をしようかずっと考えていたんです。エラそうな顔をしようかとも思ってたんですけど、ただただ今は泣きそうです。僕らは21歳だし、まだまだ何も知らないんですけど、もっと僕らの歌を聴いてもらいたいし、まだまだ頑張っていきたいです。僕らがこの先どこに立つとしても、たとえメジャーのアーティストと一緒にやるとしても、僕らは張り合えると思うし、歌を聴いてもらえば勝てる自信はあります。頑張りますので、よろしくお願いします。
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なお、2012年に続く2回目の開催となった『MASH FIGHT! Vol.2』。1年を通じて熱きバトルが繰り広げられてきたが、なんと、2014年もまた、3回目となるオーディションが開催されることが決定。そして早くも1月1日からオーディションへのエントリー受付が開始されることがアナウンスされた。THE ORAL CIGARETTES、フレデリック、そして、LAMP IN TERRENに続く次世代のロックアーティストは誰になるのか? ロックの明日を夢見る人、我こそはという方は、ぜひエントリーしてみよう。
◆MASH A&R オフィシャルサイト
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