【ライヴレポート】サンボマスター、<終わらないミラクルの予感ツアー2013>ファイナル

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新境地ともいえるサウンド・メイキングで驚かせたアルバム『終わらないミラクルの予感アルバム』をリリースして、すぐさま全国ツアーに旅立ったサンボマスターが、<終わらないミラクルの予感ツアー2013>ファイナル公演2daysをZepp Tokyoで開催した。2日目となったこの日のフロアもギッシリ埋まり、バンドの変わらぬ求心力を感じさせた。

◆サンボマスター~拡大画像~

18時の開演時間をまわるとすぐに暗転し、オープニングSEの「モンキーマジック」が流れ、メンバーが登場。「昨日も凄かったけど、今日もこんなに沢山来てくれてありがとう!今年最後のツアー・ファイナル、行きますか~!1曲目は、“世界をかえさせておくれよ”!」と山口隆(Vo.Gt)が曲名を告げてライヴはスタート。早くもステージ前はモッシュの嵐だ。ステージ上の電光掲示板には「サンボマスター」の文字が煌びやかに映し出される。「お前ら一曲目から恥ずかしがってんじゃねえぞ!こんなもんじゃねえぞ、ツアー・ファイナル!2曲目は、俺とあんたの、“美しき人間の日々”!」。いつ見ても山口はボーカル、ギター、MCどれをとっても全く手を緩めることがない。大声でコーラスを叫ぶ木内泰史(Dr)、近藤洋一(Ba)も前に乗り出して観客を煽る。日本の音楽界有数の個性派トライアングル、それがサンボマスターだ。

「光のロック」に続き、ニュー・アルバムの先行シングル「ミラクルをキミとおこしたいんです」へ。「サボってんじゃねえぞコノヤロ~!」間奏になっても山口の煽りは止むことがない。「ファイナルにだけおこせるミラクルがあるでしょう、みなさん!?」と歌詞の一部を変えて叫ぶと、観客は大歓声だ。「彼氏に無理矢理連れて来られて、“私のX’mas、こんなうるさいX’masヤダ!”という人も、よろしくお願いします、サンボマスターです!」と改めて自己紹介。ここでベースの近藤がエレキ・ギターを持ち、パンキッシュに「ドブ野郎にはご用心」。ニュー・アルバムの一曲だ。ギターを激しくかき鳴らす近藤と山口がツイン・ボーカルのようにシャウトする。「トラウマ、デストロイ!」と何度も叫んでからスタートした「むき出しの命めざめろ」では、近藤がラップトップを操作して、打ち込み音源を使っての演奏。新作アルバムでの特徴が徐々にステージに現れてきた。

山口がMCで観客に語りかける。「ロックンロールはエリートだけのものじゃない。おめえはボブディランじゃない、ビートルズじゃねえ、忌野清志郎でもねえ、ブルーハーツも組んでねえよ。でもおめえだってロックンロールなんだよ!だから俺はロックンロールやりにきたんだよ!全てのロックンロールの神様と、君と、友達のバンド銀杏BOYZに捧げます!“ロックンロールイズノットデッド”!」異様な程気合いの入ったこの曲は「震災後のあの時は絶対、人力でやらなきゃいけなかった」と、ニュー・アルバムの打ち込み路線と比較して語っていたストレートなロックだ。“誰にも言えない孤独だとか 君の不安を終わらせにきた”と力強く歌う山口。曲が終わると即座に「セキュリティ、ちゃんとしてくれ!」とセキュリティ・スタッフに向けて声を荒げる山口。ステージ前でなにやらトラブルがあった様子だ。「(ダイブして)落ちたら、ケアしてあげてくれよ!怪我したらロックンロールできなくなっちゃうよ。お願いします!」との山口の呼びかけに大きな拍手が起きた。ライヴにかける真剣さが伺え、こちらも背筋が伸びる思いがした。

ライヴは再開し、「I’m in love 光る海」では近藤がアコースティック・ギターを弾き、木内がカホンを叩き、山口がギターを置いてスタンド・マイクでじっくりと聴かせる。レキシがピアノを弾いたアルバム収録曲ももちろん良いが、ライヴでの演奏も緊張感があって素晴らしい。冒頭スローに歌われた「この世がヤミだと言わないでおくれ」では印象的なギター・リフがワウをかけてよりファンキーになっていた。続くニュー・アルバムからの「未練は残さず踊るつもりだ」では打ち込みのブレイク・ビーツに乗って踊る観客。曲が終わり「もう未練はないね!」という山口と近藤に、木内が「いやあ、残っちゃってるんだよね…未練」と告白し、再び演奏スタート。「私このあと10時からアポがあるんで、それまではあんまり盛り上がれないんです…とか言ってんじゃねえぞ!」との山口の妄想MCから火がついた“アポ・コール”で盛り上がったあと、今度はワウ・ギター・ソロを終えた山口が体育座りでいじけている。「だって、この曲で1番盛りあがるのって、俺のギター・ソロなんですよ!?なのに全然盛り上がってない」と、未練を残した山口に再びチャンスが。再び演奏が始まり、ギター・ソロではなんとエディ・ヴァン・ヘイレンばりのライトハンド奏法でのソロを披露!そして最後はローディーのジロー氏が、残した未練を解消すべく山口から渡されたギターで見事なソロを弾きまくって延々と続いたこの曲は終了。

「君を守って君を愛して」に続いて歌われたのは、この時期ならでは、松任谷由実の「恋人がサンタクロース」!ハードなアレンジに乗ってBメロでは、「ヘイ!ヘイ!」と観客がジャンプ。完全にサンボマスターの曲と化していた。そして「本当は木内がサンタクロース!本当は木内がサンタクロース!」というコール&レスポンス(笑)に合わせてサンタ帽をかぶった木内がドラムを叩く。「結局、本当は木内がサンタクロースなわけですよ!」の声に納得した(?)観客も盛りがる。暗転すると打ち込みのリズムが流れ、バックに“I LOVE YOU”の文字が。曲は「愛したいし怖れないし急がない」。ニュー・アルバムでのサンボマスターの変化を象徴する曲だ。ハンドマイクで飛び跳ねながら歌う山口。そして会場のミラーボールがまわりだし、全員がハンドマイクを手にステージ中央でEXILEばりのフォーメーションを見せてからの「孤独とランデヴー」。ビースティ・ボーイズを思わせる3MCでステージを縦横無尽に歌い踊る。新しいサンボマスターの魅力を詰め込んだパフォーマンスだ。2階席にいるちびっ子が飛び跳ねてはしゃいでいたのが印象的だった。

後半に楽器を持って曲を終わらせると「そのぬくもりに用がある」、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」と定番曲を連発。明るくなったフロアに一斉にあがる大勢の両手が“LOVE&PEACE”とピースサインをしている。「皆さん今年もありがとうございました!また会いましょうね!」と叫んで「できっこないを やらなくちゃ」から最後はニュー・アルバムからの名曲「スローモーションラブ」。木内が中央でティンパニを叩き、ステージ上にはハートのマーク。シンセ・サウンドと同期したビートが、琴線に触れるメロディと共に照明を落とした会場に広がり、感動的な演奏となった。

アンコールを求める何故か“ジローコール”(笑)に呼ばれて再びステージに上がった3人。アンコール1曲目はファースト・アルバムから「朝」。山口が母親に向けて作ったというこの曲に続いて、「最後の曲はこの曲です!この東京に、“歌声をおこれ”!」とセカンド・アルバムから「歌声よおこれ」。2時間半以上のライヴにもかかわらず観客は力を振り絞り大合唱、大爆発!最後はSEの「うまくいくんだよきっと」に合わせて歌いながらのハッピーなエンディング。

こうしてツアーの有終の美を飾った…と思ったのもつかの間、スタッフが袖から現れ、ステージ上には“重大発表”の文字が。なんと来年引き続き「まだまだ終わらないミラクルの予感ツアー2014」が開催されることが発表された。「というわけでみなさん、右から左までズズズイ~ッと、来年もよろしくお願い致します!みんなありがとな~!」と山口が感謝の言葉で締めくくり、お馴染みのエンディングSE、カーティス・メイフィールドの「MOVE ON」が流れる中、ライヴは終了。打ち込みを多用した新境地を聴かせながらも、日本のロック・クラシックともいえる名曲たちを持ったサンボマスターはいまや最小編成で最強のロック・バンドだ。来年からはどんな音楽を世の中に届けてくれるのか、今から彼らの活動が楽しみだ。

取材・文●岡本貴之
撮影●山本倫子(Michiko Yamamoto)

<セットリスト>2013年12月22日(日)東京・Zepp Tokyo
1.世界をかえさせておくれよ
2.美しき人間の日々
3.光のロック
4.ミラクルをキミとおこしたいんです
5.ドブ野郎にはご用心
6.むき出しの命めざめろ
7.ロックンロールイズノットデッド
8.I’m in love光る海
9.この世がヤミだと言わないでおくれ
10.未練は残さず踊るつもりだ
11.君を守って君を愛して
12.恋人がサンタクロース
13.愛したいし怖れないし急がない
14.孤独とランデブー
15.そのぬくもりに用がある
16.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
17.できっこないを やらなくちゃ
18.スローモーションラブ
アンコール
19.朝
20.歌声よおこれ


◆サンボマスター オフィシャルサイト
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