【インタビュー】浮気者ミニアルバム『I狂U』を武瑠が語り尽くす。「どんどん攻めて、いろんな人たちを蝕んでいきたい」
SuGのヴォーカリスト、武瑠がソロ・プロジェクト“浮気者”を発動。Tom-H@ck、ゆよゆっぺ、たむらぱん、0.8秒と衝撃。、Plus-Tech Squeeze Boxなど気鋭のアーティストと次々と浮気していくなかで生まれた1stミニ・アルバム『I 狂 U』。SuGとは全くベクトルの違うドープなこの作品について、武瑠が語り尽くす。
◆浮気者 画像
■極端だったんです。栄養素が。
■だから、どっちかだけではできない
──かなりエッジーなアルバムだと感じました。久々の音楽活動なのに、音楽シーンのど真ん中狙わなくていいんですか?
武瑠:いいんです。どうせ“浮気者”なんで、結婚はできないですから。どうあがいても“本命”にはなれないんで。浮気は浮気ですから。
──うまい!!(微笑)。
──本命(SuG)とは違って浮気だからこそ、そこは本命には見せないところも大胆にやっちゃえと。
武瑠:SuGはキャッチーな曲調のものを選んじゃうんですけど。でも、浮気者は(曲調的にも)そんなに盛り上がらないじゃないですか? サビで。だけど中毒性があって、なんか聴いちゃうような曲なんですよ。テレビで一瞬流れただけで好きになるというよりも、何回も聴いて好きになるタイプだと思うんです。SuGでもそれはカップリングなんかではやってるんですよ。だけど、シングルのタイトル曲は一瞬で耳をとらえるもののほうがいいと思うから、こういうタイプの曲でPVは撮らないんです。だけど、それができるのが浮気者。
──アンダーグラウンドにいっちゃってもいいと。
武瑠:なんとなく昔から、間ぐらいにいたいなというのがテーマとしてあって。アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの。その両足またいでる感じでいたいんですよ。
──なんで両方またいでいたいと思うようになったんですか?
武瑠:自分の出来上がり方がそうだから。テレビも好きだけど、死体写真集とかも好きだったから。極端だったんです。栄養素が。だから、どっちかだけではできない。アンダーグラウンドでやるにはミーハー過ぎるし、テレビとかにガンガン出ていくメジャーシーンでやるには暗いものとか尖ったものを見過ぎてるんで、そのハーフ。間ぐらいが一番いいんだろうなと思ったんです。
──浮気者に関してはアンダーグラウンドよりですよね?
武瑠:気持ち。全体の目盛りが10あるとしたら、SuGはメジャー方向に7ぐらい寄ってて、こっちはそこは3ぐらいかな。SuGだと中和されるんですよ。SuGは自分全開ではなくて、自分が50持ってて、残り50をメンバー4人が持ってる。そういうイメージで中和してやってる感じですね。いつかその目盛りを100か0、アンダーに振り切った表現とかもやってみたいですけどね。
武瑠:意味がない映像を撮ろうというのがコンセプト。SuGだとアルバム全体を見越して作るので意味を持たせることが多いんですけど、これは無意味でいいと。だから、絵的に面白ければいいかなと思って。PVを見た人のコメント欄に“オシャレでカッコいいけど、何が伝えたいか分からない”みたいなことが書き込まれてた事があったんですけど、伝えたいものはなかったから、多分それが正しいコメントなんですよね。
──PVにメッセージ性はなかったと。
武瑠:はい。服作ってても思うんですけど、ロゴの美しさとか、そこに意味はないじゃないですか。ただ美しいか美しくないかだけで。SuGの音楽はいろんなものに意味があって、かなりメッセージ性の強いものをやってるんです。一方こっちは……掘り下げたらネガティヴなことしか出てこないようなことしか書いてなかったりするんで。メッセージ性は多分ないです。「I狂U」は、この字面の綺麗さをどれだけ表現できるかがポイント。この文字がカッコ良くてすごく綺麗だと思ったんで。それを映像にしたらどうなるんだろうということをひたすら考えたものがこれです。
──「I狂U」という字面からひらめいた映像だったと。
武瑠:そうですね。この曲自体、タイトルから作ったものだったんで。例えばこのPVのなかに“黒い鹿威し”が出てくるシーンがあるんですけど、SuGだったらいつもはあのシーン自体に細かい設定があって、次のどこかにつながっていくんです。けど今回の浮気者では“黒い鹿威しがミルクを注いでて、それを女の子が飲んでる。”それだけで。そんなにつながりは考えないでやりました。
──つまり、あの映像は「I狂U」で武瑠さんがイメージしたカッコいいものや奇麗なものをランダムに詰め込んだものなんですね。
武瑠:だから(映像が)断片的なんです。去年歌舞伎を見た影響もすごくありますね。
──歌舞伎ですか?
武瑠:はい。そこから獅子舞が全部シルバーでできてたら面白いなとか、虚無僧がヒップホップの服着てサックス吹いてたら面白いなと思って。でも今回はサックスは入ってなくて、その虚無僧をDJにして入れました。
──歌舞伎を見て、何かシンパシーを感じるものはありましたか?
武瑠:ないです。自分のなかにあったものかといわれたら嘘になるんで。日本に住んでても触れる機会はまずないじゃないですか? なんとな~くテレビで見たことあるぐらいのレベルでしかないと思うんです。でも、それが“リアル”だなと思ったんです。表現するにおいて。これで俺が和服着ちゃったら嘘になるんです。わざとコスプレしてるだけで。でも、こういうロックな服を着て歩いてて、たまたま和食屋さんに入ったら奥に屏風があったってことはあるじゃないですか。それが、自分が育っている今の日本のリアルだなと思ったんで、その感覚はすごく映像に出てます。自分が歌舞伎を見て、これをそのまま出すのは自分のリアルじゃない。テレビでちょっとだけ見たっていうパーセンテージでの“和”の入れ方こそ、自分のなかのリアルな立ち位置だと思いました。
──じつに面白い! だから私たちはPVを見ていて、和に不自然なものを感じないんですね。
武瑠:あれが現実的なんですよね。自分のなかでは。“和”を意識的にワザとやる人が多いじゃないですか? 和な背景のなかに普段着ないような和服着て、普段聴かないような音階の音楽歌うって。リアルではないじゃないですか。演じてるだけであって。
──だって、東京の街を和服で歩いてる若者なんていないですからね。
──ちなみに、SuGはそこはどんなイメージなんですか?
武瑠:SuGはもっとファンタジーが入ってるんで、ダーク・ディズニーランドのイメージ。いま作ってる新曲もまさにそんな感じで。バットマンみたいな立ち位置になりたいなと。SuGは。
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