【月刊BARKS 藤井丈司連載対談『「これからの音楽」の「中の人」たち』】第1回 椎名もた編Vol.6「ボーマス。そして家を出る」
音楽プロデューサー、藤井丈司による連載対談。第1回目となる10月は10月9日に2ndアルバムをリリースした椎名もた君との対談を全8回に渡ってお送りします。では椎名もた君との対談Vol.6をお届けしましょう。
◆【月刊BARKS 藤井丈司連載対談『「これからの音楽」の「中の人」たち』】第1回 椎名もた編Vol.5「同世代の絵師と出会う」
Vol.6「ボーマス。そして家を出る」
藤井:ちょっと話が戻るけど、最初から、ボカロで曲を作ろうってことはもう決めていたの?
椎名:そうですね。
藤井:すでに、そこが目標なんだ。
椎名:当時は投稿することが目標だった。
藤井:だんだん曲がたまっていったの?
椎名:1曲作っては発表して、1曲作っては発表してっていう感じですね。
藤井:ほー。どういうモチベーションで作ってたんですか。
椎名:うーん….どういうモチベーションかな……。最初は動画をアップロードしたっていう事実で、満たされた感じもあったし、それに加えてコメントやら“マイリスト”やらが付いてきて。モチベーションは、そんな感じですね。
藤井:コメントが「いいですね」とか来る、と(笑)。
椎名:そうですね。
藤井:うれしいでしょ(笑)?
椎名:うれしいですね(笑)。
藤井:“マイリスト”って何ですか?
椎名:気に入った曲を、“マイリスト”っていうのに入れることができるんですよね。
藤井:「お気に入り」になるわけだ。
椎名:はい。
藤井:それはうれしいよね。
椎名:100マイリスト行った時は、うれしかったですね(笑)。
藤井:100マイリスト? 初めて聞いた、そういう言葉(笑)。
椎名:“マイリス”って呼んでます。100マイリス(笑)。
藤井:で、CDが出来てイベント「ボーマス」(THE VOC@LOiD M@STER:同人即売会)行くじゃないですか。ちょっとこの「ボーマス」っていうのが、おじさんにはよくわからないんですよ(笑)。だから、初心者的にいろいろ聞いていいですか(笑)。
椎名:はい(笑)。
藤井: あの...何月に開催されるの(笑)?
曽根原(椎名もた A&R/マネージャー):えーっと、椎名が初参加したのは……2010年11月14日ですね。
藤井:2010年か、じゃあ15歳?
椎名:高1だったかな?
曽根原:15だね。高校1年の秋。
藤井:高1の秋か。ニコ動にアップし始めてから、1年あったってことか。
椎名:そうですね。
藤井:場所どこなの?「ボーマス」って。
椎名:池袋です。池袋のサンシャインシティ。
藤井:じゃあ小松から。
椎名:小松から夜行バスで来て。
藤井:ほぉー。親に何て言ったの?
椎名:「CD売りに行く」って(笑)。
藤井:(爆笑)ホント? すごいねー!!
椎名:……(笑)。
藤井:で、小松からCD300枚。バスで運ぶのは、わりと重たいよね。
椎名:でも、搬入は直接プレス工場から。
藤井:あ、送っちゃうんだ。
椎名:印刷工場から直接送ってもらうんです。現品は「ボーマス」に着いてから、初めて見るっていう。イベント会場に直接送るっていうサービスがあるんです。
藤井:へぇー。それで夜行バスに乗って、サンシャインシティに行くときの気持ちはどうなの? ぐっすり寝れた?
椎名:全然寝れなかったですね。
藤井:あ、やっぱり(笑)。
椎名:明日手に取る現品がどんななのか心配もあるし、緊張もあるし。
藤井:でも「ボーマス」に出してみたら?って話は、誰からすすめられたの?
椎名:そのころからTwitterで、他のボカロPとの交流も増えだした頃に、“花”をテーマにしたコンピレーションCDに参加したことがきっかけです。
藤井:最初はコンピからか。
椎名:コンピに誘われて、それがきっかけでCDを作るという工程を知って。で、自分も出してみようかなって、触発されたんです。
藤井:なるほど。それで、会場へ行くじゃないですか。そこは、どんな風景なの?
椎名:うーん……。
曽根原:一番多いときって朝の山の手線みたいな感じですかね。ギュウギュウな。
藤井:へぇー。デカいイベントホールというか、体育館みたいな感じなの?
椎名:そうですね。
藤井:そこにズラッと、並ぶわけだ、ボカロPのみんなが。CDは、どんな感じで並んでるんですか?
椎名:もう平積みですよ(笑)。
藤井:床に?
椎名:いや、テーブルがあって(笑)。
曽根原:会議机みたいな。1m80の会議机の半分ぐらいですよね、ひとり分は。
藤井:へぇー。
椎名:で、CD置いて、“やったぜ”みたいな。
藤井:へぇー。じゃ、会場では、CDを並べるだけなの?試聴とか、宣伝はどうやってするんだろう。
椎名:あらかじめニコニコ動画に、クロスフェードデモっていう、全曲入りダイジェスト視聴デモみたいなのを、投稿するんですよ。
藤井:ああ、なるほど。ニコ動でプロモーションして、お店が「ボーマス」なんだね。
椎名:はい。
藤井:何人ぐらいがブースを出してるの?
曽根原:どれぐらいだったんだろ。100くらいかなぁ…(調べる)いや、もっとですよ。474サークル。
藤井:474!?すごいねー。完全にお祭りだね。CDは、何時間ぐらいで完売したんですか。
椎名:1時間半ぐらい。
藤井:そんな!?
椎名:2時間だったかな。
藤井:じゃあ、1時間に200枚売れたの?
椎名:そうっすね。
藤井:すっごいなー(笑)。完売するなって思ってたの?
椎名:いや、わかんない。初めてだったから。
藤井:じゃあ、びっくりじゃない(笑)?
椎名:びっくりですね(笑)。
藤井:あのー、ちょっと変なこと聞くけど、終わって、お金はどうやって持って帰るの?
椎名:とりあえず袋に下げて、持って帰りました。
藤井:でも、千円札の束を持ってるのは不安だよね?
椎名:まぁ、不安です(笑)。
藤井:じゃ、お金を抱えて、また夜行バスに乗って、小松に帰ったんだ。
椎名:はい。
藤井:ボーマスが終わって、CDが300枚完売して、人間変わったって部分は、なかった“俺やったぜ”みたいな(笑)。
椎名:それは…ありました(笑)。
藤井:学校のみんなは知ってたの?「あいつ人気あるPなんだよね」とか。
椎名:……学校は行ってなかったので。
藤井:あー(笑)。じゃあ学校行ってないと、“俺はやったぞ!”みたいな高揚感をぶつける人はいなかった?
椎名:まぁ、唯一いた友達には言ったりしましたけど……
藤井:相当うらやましがられたんじゃない(笑)。
椎名:いや、「あ、そう」みたいな(笑)。
藤井:えー!そういうもんなのか(笑)。さみしい世の中だなぁ(笑)。じゃあ、1枚作って、次のCDを作ることになるわけだけど、学校行かないで、ずっと家で作ってたの?
椎名:まぁ、そうですね。ずっと休みだから曲作るしかないなぁって。
藤井:ふーん……。それはそれで、ヘヴィな毎日だな。
椎名:同人時代の1st『セピアレコード』を作り終えて、学校を辞めて、もう1回別の学校に入り直すんですよ。でも、そこも通えなくなって。
藤井:うん。
椎名:それから、曽根原さんにいろいろ相談と言うか、話してたら、ある時「じゃあ辞めたら?」って言われたんです。
藤井:ちゃんと背中を押してくれる人がいるんだ。それ、高2?
椎名:うん。
曽根原:高1の終わりぐらいに、僕から連絡したんですよ。
藤井:「ボーマス」に出た直後ぐらいだ。
曽根原:ですね。その3ヶ月後とか4ヶ月後か…2011年の3月とか4月に連絡して。その頃はまだ、学校に行ってたんですよ。いや、行ってなかったけど、在籍してた。正確に言うとそうだよね。
椎名:うん。
曽根原:でも、たまーに行ってたよね。「今日は学校行ってきた」みたいなことを言ったりするんですよ。で、「それ意味あんの?」みたいな(笑)。
藤井:うん、確かに(笑)。
曽根原:その頃、本人が「学校、行く意味あるのかな?」っていう相談を軽くしてきて。「高校ぐらいは出たほうがいいんじゃないの?」って僕は言いましたけど、最初は。
藤井:最初は。
曽根原:でも「行きたくないんだよ」とか言って。じゃあ、辞めたら?って(笑)。
藤井:ストレートだなぁ(笑)。
曽根原:そしたら数日後に「辞めた」って。
藤井:早いねー(笑)。
曽根原:(笑)。学校に「辞める」って言いに行ったのは、自分でだっけ?
椎名:覚えてない。
曽根原:でも、辞めたら元気になってたじゃん。
椎名:でも今は、高校に行っておけばよかったなぁって。ものすごい暗い話をしますけど、音楽で食えるのはいつまでなんだろうって。
曽根原:常にその恐怖心はあるよね?
椎名:うん。
藤井:俺だって、今でも音楽で食べられなくなる恐怖はいつでもあるよ。
椎名:ですよね。
藤井:30年経った今でも、作ってないと怖くなるし。
椎名:僕は、作ってても怖いです。次売れるのかなぁって。
藤井:心配だよね、でも自分の作ったモノで生きていく人は、みんなそうなんだよ。自分の作った「嘘」で生きていくことって、大変に決まってる。でも、それを18才で考えすぎるとなぁ..(笑)。
椎名:……(笑)。
藤井:話を元に戻すけど、次のCD『AWARD STROBE HELLO』が、1年後に、バーンと売れるよね。
椎名:はい。
藤井:その頃も、親と一緒に住んでるの?
椎名:一緒に住んでました。だけど、あるきっかけで家を出ました。
藤井:へー……。17才で家を飛び出すんだ。
椎名:上京を決意して。曽根原さんに上京したい、と。親にも、曽根さんの家の近くならいいよって言われて。
藤井:あ、そんなに、親御さんと曽根原さんは、信頼関係できてたんだ。
曽根原: 上京前に、お母さんから連絡が来て、「1年食っていけるの?」って聞かれて「わかんないけど、なんとかします」って言いました。
藤井:「わかんないけど、なんとかします」か(笑)!えらい(笑)!
曽根原:で、椎名からは、究極の一言を言われたんですよ。「曲が作れないから上京したい」って。曲を作る時間がほしいから、一人暮らしをしたいって。
藤井:それは、わかるな。それで、東京に住んだら、曲は書けるようになったの?
椎名:はい。でも、炊事、洗濯が大変ですけど(笑)。
藤井:それは、誰でもいつだって、大変なんですよ (笑)。今朝もウチのカミサンが、「洗濯が大変だ」って言ってたもの(笑)。
インタビュー&文◎藤井丈司
◆ ◆ ◆
続きは次回。連載対談、椎名もた編Vol.7「J-POPと戦う」をお届けいたします。
【椎名もた Information】
2nd Album
『アルターワー・セツナポップ』
2013年10月9日発売
[初回生産限定盤]
UMA-9026~9027 ¥3,000円(税込)
※商品仕様 CD+DVD
三方背スリーブ+ブリキ缶ケース
カード型リリック集 12枚封入
[通常盤]
UMA-1026 ¥2,700(税込)
※商品仕様CD
ジュエルケース
Tracklisting
1.ピッコーン!!
2.MOSAIC
3.パレットには君がいっぱい
4.Q
5.ウソナキツクリワライ
6.forgot me not
7.シティライツ
8.Halo
9.ツギハギ
10.嘘ップ
11.かげふみさんは言う
12.LIVEWELL
13.vanilla flavor piece
◆椎名もた オフィシャルサイト
◆椎名もた オフィシャルTwitter
◆椎名もた 『アルターワー・セツナポップ』特設サイト
◆藤井丈司プロフィール
◆藤井丈司Facebook
◆【月刊BARKS 藤井丈司連載対談『「これからの音楽」の「中の人」たち』】第1回 椎名もた編Vol.5「同世代の絵師と出会う」
Vol.6「ボーマス。そして家を出る」
藤井:ちょっと話が戻るけど、最初から、ボカロで曲を作ろうってことはもう決めていたの?
椎名:そうですね。
藤井:すでに、そこが目標なんだ。
椎名:当時は投稿することが目標だった。
藤井:だんだん曲がたまっていったの?
椎名:1曲作っては発表して、1曲作っては発表してっていう感じですね。
藤井:ほー。どういうモチベーションで作ってたんですか。
椎名:うーん….どういうモチベーションかな……。最初は動画をアップロードしたっていう事実で、満たされた感じもあったし、それに加えてコメントやら“マイリスト”やらが付いてきて。モチベーションは、そんな感じですね。
藤井:コメントが「いいですね」とか来る、と(笑)。
椎名:そうですね。
藤井:うれしいでしょ(笑)?
椎名:うれしいですね(笑)。
藤井:“マイリスト”って何ですか?
椎名:気に入った曲を、“マイリスト”っていうのに入れることができるんですよね。
藤井:「お気に入り」になるわけだ。
椎名:はい。
藤井:それはうれしいよね。
椎名:100マイリスト行った時は、うれしかったですね(笑)。
藤井:100マイリスト? 初めて聞いた、そういう言葉(笑)。
椎名:“マイリス”って呼んでます。100マイリス(笑)。
藤井:で、CDが出来てイベント「ボーマス」(THE VOC@LOiD M@STER:同人即売会)行くじゃないですか。ちょっとこの「ボーマス」っていうのが、おじさんにはよくわからないんですよ(笑)。だから、初心者的にいろいろ聞いていいですか(笑)。
椎名:はい(笑)。
藤井: あの...何月に開催されるの(笑)?
曽根原(椎名もた A&R/マネージャー):えーっと、椎名が初参加したのは……2010年11月14日ですね。
藤井:2010年か、じゃあ15歳?
椎名:高1だったかな?
曽根原:15だね。高校1年の秋。
藤井:高1の秋か。ニコ動にアップし始めてから、1年あったってことか。
椎名:そうですね。
藤井:場所どこなの?「ボーマス」って。
椎名:池袋です。池袋のサンシャインシティ。
藤井:じゃあ小松から。
椎名:小松から夜行バスで来て。
藤井:ほぉー。親に何て言ったの?
椎名:「CD売りに行く」って(笑)。
藤井:(爆笑)ホント? すごいねー!!
椎名:……(笑)。
藤井:で、小松からCD300枚。バスで運ぶのは、わりと重たいよね。
椎名:でも、搬入は直接プレス工場から。
藤井:あ、送っちゃうんだ。
椎名:印刷工場から直接送ってもらうんです。現品は「ボーマス」に着いてから、初めて見るっていう。イベント会場に直接送るっていうサービスがあるんです。
藤井:へぇー。それで夜行バスに乗って、サンシャインシティに行くときの気持ちはどうなの? ぐっすり寝れた?
椎名:全然寝れなかったですね。
藤井:あ、やっぱり(笑)。
椎名:明日手に取る現品がどんななのか心配もあるし、緊張もあるし。
藤井:でも「ボーマス」に出してみたら?って話は、誰からすすめられたの?
椎名:そのころからTwitterで、他のボカロPとの交流も増えだした頃に、“花”をテーマにしたコンピレーションCDに参加したことがきっかけです。
藤井:最初はコンピからか。
椎名:コンピに誘われて、それがきっかけでCDを作るという工程を知って。で、自分も出してみようかなって、触発されたんです。
藤井:なるほど。それで、会場へ行くじゃないですか。そこは、どんな風景なの?
椎名:うーん……。
曽根原:一番多いときって朝の山の手線みたいな感じですかね。ギュウギュウな。
藤井:へぇー。デカいイベントホールというか、体育館みたいな感じなの?
椎名:そうですね。
藤井:そこにズラッと、並ぶわけだ、ボカロPのみんなが。CDは、どんな感じで並んでるんですか?
椎名:もう平積みですよ(笑)。
藤井:床に?
椎名:いや、テーブルがあって(笑)。
曽根原:会議机みたいな。1m80の会議机の半分ぐらいですよね、ひとり分は。
藤井:へぇー。
椎名:で、CD置いて、“やったぜ”みたいな。
藤井:へぇー。じゃ、会場では、CDを並べるだけなの?試聴とか、宣伝はどうやってするんだろう。
椎名:あらかじめニコニコ動画に、クロスフェードデモっていう、全曲入りダイジェスト視聴デモみたいなのを、投稿するんですよ。
藤井:ああ、なるほど。ニコ動でプロモーションして、お店が「ボーマス」なんだね。
椎名:はい。
藤井:何人ぐらいがブースを出してるの?
曽根原:どれぐらいだったんだろ。100くらいかなぁ…(調べる)いや、もっとですよ。474サークル。
藤井:474!?すごいねー。完全にお祭りだね。CDは、何時間ぐらいで完売したんですか。
椎名:1時間半ぐらい。
藤井:そんな!?
椎名:2時間だったかな。
藤井:じゃあ、1時間に200枚売れたの?
椎名:そうっすね。
藤井:すっごいなー(笑)。完売するなって思ってたの?
椎名:いや、わかんない。初めてだったから。
藤井:じゃあ、びっくりじゃない(笑)?
椎名:びっくりですね(笑)。
藤井:あのー、ちょっと変なこと聞くけど、終わって、お金はどうやって持って帰るの?
椎名:とりあえず袋に下げて、持って帰りました。
藤井:でも、千円札の束を持ってるのは不安だよね?
椎名:まぁ、不安です(笑)。
藤井:じゃ、お金を抱えて、また夜行バスに乗って、小松に帰ったんだ。
椎名:はい。
藤井:ボーマスが終わって、CDが300枚完売して、人間変わったって部分は、なかった“俺やったぜ”みたいな(笑)。
椎名:それは…ありました(笑)。
藤井:学校のみんなは知ってたの?「あいつ人気あるPなんだよね」とか。
椎名:……学校は行ってなかったので。
藤井:あー(笑)。じゃあ学校行ってないと、“俺はやったぞ!”みたいな高揚感をぶつける人はいなかった?
椎名:まぁ、唯一いた友達には言ったりしましたけど……
藤井:相当うらやましがられたんじゃない(笑)。
椎名:いや、「あ、そう」みたいな(笑)。
藤井:えー!そういうもんなのか(笑)。さみしい世の中だなぁ(笑)。じゃあ、1枚作って、次のCDを作ることになるわけだけど、学校行かないで、ずっと家で作ってたの?
椎名:まぁ、そうですね。ずっと休みだから曲作るしかないなぁって。
藤井:ふーん……。それはそれで、ヘヴィな毎日だな。
椎名:同人時代の1st『セピアレコード』を作り終えて、学校を辞めて、もう1回別の学校に入り直すんですよ。でも、そこも通えなくなって。
藤井:うん。
椎名:それから、曽根原さんにいろいろ相談と言うか、話してたら、ある時「じゃあ辞めたら?」って言われたんです。
藤井:ちゃんと背中を押してくれる人がいるんだ。それ、高2?
椎名:うん。
曽根原:高1の終わりぐらいに、僕から連絡したんですよ。
藤井:「ボーマス」に出た直後ぐらいだ。
曽根原:ですね。その3ヶ月後とか4ヶ月後か…2011年の3月とか4月に連絡して。その頃はまだ、学校に行ってたんですよ。いや、行ってなかったけど、在籍してた。正確に言うとそうだよね。
椎名:うん。
曽根原:でも、たまーに行ってたよね。「今日は学校行ってきた」みたいなことを言ったりするんですよ。で、「それ意味あんの?」みたいな(笑)。
藤井:うん、確かに(笑)。
曽根原:その頃、本人が「学校、行く意味あるのかな?」っていう相談を軽くしてきて。「高校ぐらいは出たほうがいいんじゃないの?」って僕は言いましたけど、最初は。
藤井:最初は。
曽根原:でも「行きたくないんだよ」とか言って。じゃあ、辞めたら?って(笑)。
藤井:ストレートだなぁ(笑)。
曽根原:そしたら数日後に「辞めた」って。
藤井:早いねー(笑)。
曽根原:(笑)。学校に「辞める」って言いに行ったのは、自分でだっけ?
椎名:覚えてない。
曽根原:でも、辞めたら元気になってたじゃん。
椎名:でも今は、高校に行っておけばよかったなぁって。ものすごい暗い話をしますけど、音楽で食えるのはいつまでなんだろうって。
曽根原:常にその恐怖心はあるよね?
椎名:うん。
藤井:俺だって、今でも音楽で食べられなくなる恐怖はいつでもあるよ。
椎名:ですよね。
藤井:30年経った今でも、作ってないと怖くなるし。
椎名:僕は、作ってても怖いです。次売れるのかなぁって。
藤井:心配だよね、でも自分の作ったモノで生きていく人は、みんなそうなんだよ。自分の作った「嘘」で生きていくことって、大変に決まってる。でも、それを18才で考えすぎるとなぁ..(笑)。
椎名:……(笑)。
藤井:話を元に戻すけど、次のCD『AWARD STROBE HELLO』が、1年後に、バーンと売れるよね。
椎名:はい。
藤井:その頃も、親と一緒に住んでるの?
椎名:一緒に住んでました。だけど、あるきっかけで家を出ました。
藤井:へー……。17才で家を飛び出すんだ。
椎名:上京を決意して。曽根原さんに上京したい、と。親にも、曽根さんの家の近くならいいよって言われて。
藤井:あ、そんなに、親御さんと曽根原さんは、信頼関係できてたんだ。
曽根原: 上京前に、お母さんから連絡が来て、「1年食っていけるの?」って聞かれて「わかんないけど、なんとかします」って言いました。
藤井:「わかんないけど、なんとかします」か(笑)!えらい(笑)!
曽根原:で、椎名からは、究極の一言を言われたんですよ。「曲が作れないから上京したい」って。曲を作る時間がほしいから、一人暮らしをしたいって。
藤井:それは、わかるな。それで、東京に住んだら、曲は書けるようになったの?
椎名:はい。でも、炊事、洗濯が大変ですけど(笑)。
藤井:それは、誰でもいつだって、大変なんですよ (笑)。今朝もウチのカミサンが、「洗濯が大変だ」って言ってたもの(笑)。
インタビュー&文◎藤井丈司
◆ ◆ ◆
続きは次回。連載対談、椎名もた編Vol.7「J-POPと戦う」をお届けいたします。
【椎名もた Information】
2nd Album
『アルターワー・セツナポップ』
2013年10月9日発売
[初回生産限定盤]
UMA-9026~9027 ¥3,000円(税込)
※商品仕様 CD+DVD
三方背スリーブ+ブリキ缶ケース
カード型リリック集 12枚封入
[通常盤]
UMA-1026 ¥2,700(税込)
※商品仕様CD
ジュエルケース
Tracklisting
1.ピッコーン!!
2.MOSAIC
3.パレットには君がいっぱい
4.Q
5.ウソナキツクリワライ
6.forgot me not
7.シティライツ
8.Halo
9.ツギハギ
10.嘘ップ
11.かげふみさんは言う
12.LIVEWELL
13.vanilla flavor piece
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◆椎名もた 『アルターワー・セツナポップ』特設サイト
◆藤井丈司プロフィール
◆藤井丈司Facebook
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