【ライヴレポート】ザ・たこさん、宮藤官九郎やグレート義太夫らが登場した大興奮のワンマン・ライブ@渋谷クラブクアトロ

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“関西ソウル・シーンのゴッドファーザー・バンド”などと言われ、笑いと泣き、ファンクを軸にしたグルーヴとプロレスのエンターテインメント性とが奇跡的に同居するライブで観る者に歓びと勇気を与えているザ・たこさん。今年結成20周年を迎えた彼らが4年ぶりの新作『タコスペース』を発表し、渋谷のクラブクアトロでワンマン・ライブを行なった。

◆ザ・たこさん、ワンマン・ライブ@渋谷クラブクアトロ~拡大画像~

饒舌ながらも個性あるギターでこのバンドのサウンドを決定づけている山口しんじ。安定感のあるドラムに定評のあるマサ☆吉永。もの静かなようで熱い魂と心意気を持った長身ベーシストのオカウチポテト。いつものようにこの3人がまず登場して演奏を開始。そして煽り役のMCキチュウがステージにあがり、ヴォーカリストの安藤八主博を呼び込みながらコール&レスポンス。

と、客席後方から現れたのが、いつもより派手な装飾のミル・マスカラスふうマスクをかぶった“悲しき怪人”こと安藤だ。興奮した観客の波をかきわけて、ゆっくりとステージに近づいていく安藤。プロレスをこよなく愛する男ゆえ、入場シーンから場を沸かせないではいられないのだ。そしてライブ本編はお馴染みの「ナイスミドルのテーマ」でスタート。続く「ザ・たこさんのテーマ」で山口とオカウチが安藤の前に立ちはだかって邪魔をするという恒例のネタも、この日はいつにも増してウケていた。というのも、この公演で初めてザ・たこさんのライブを体感するという人がかなり多かったから。TVBros.誌の「あまちゃん」特集号で宮藤官九郎が“激推しバンド”として紹介し、大きくフィーチャーされたことから興味を持って観に来た人が多数いたからだ。

そうした人たちへのサービスの気持ちと、20周年だから賑やかに盛り上げたいという気持ちの両方があってのことだろう。中盤からはゲスト・ギタリストを招き入れ、普段のライブとは異なる見せ方となった。まず山口しんじがディープ・パープル「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の有名な前奏部分を弾き、そこでザ・たこさんのライブに頻繁に足を運んでいるグレート義太夫が登場。近年のライブではめっきり演奏されなくなっていた初期のロック曲「サイレンが鳴った。アンパイア出動」が山口と義太夫のツイン・ギターでハードに演奏され、さらにヘヴィ・ファンク曲「ゴリラの息子」へと続いた。

義太夫が退場して2曲を挿んだのち、次に山口が弾き始めたのはRCサクセション「雨あがりの夜空に」のイントロ。それにのって登場したのがふたりめのゲスト・ギタリスト宮藤官九郎で、そこから山口しんじのヴォーカル曲「『初期のRCサクセション』を聴きながら」へと展開。さらに新作『タコスペース』収録の泥臭いスワンプ曲「レバー・フォーレバー」も宮藤のギターをフィーチャーした形で演奏された。

宮藤が退場すると、ストーンズの「アンダー・カヴァー・オブ・ザ・ナイト」を想起させるザ・たこさん初の全編4つ打ち曲「BLUE MOUNTAIN BLUES」でグルーヴの渦に観客を巻き込み、約20分に及ぶJ.B.流ファンク曲「突撃! となりの女風呂(On A Blow)」からのマントショー(ジェイムス・ブラウンのライブの定番で、マントをかけられ舞台を去ると見せかけていきなり復活し、また歌いだすというアレ。忌野清志郎もそのマナーを踏襲していた)で本編締め。

当然、観客の興奮は収まらずにアンコールとなったのだが、そこで登場したのはこの日のオープニング・アクトを務めたファンク・グループのオーサカ=モノレールと、なんと大ベテラン歌手の田中星児! 曲はもちろん1976年の特大ヒット曲「ビューティフル・サンデー」だ。67歳とは思えない爽やかな笑顔と伸びのある声で、サビでは「ビュ・ビュ・ビューティフ~ルた~こさ~ん」と歌い、観客も合わせて大合唱。続く「ケンタッキーの東」ではこの日のゲストが全員揃い、それぞれのソロも聴かせながらザ・たこさんの20周年を祝福した。さらに鳴りやまない拍手と声援に応えての再アンコールでは、バンドの代表曲と言ってもいい感動的な人生讃歌「我が人生、最良の日」が歌われ、大団円。105分に及んだショーが幕を閉じた。

振り返ればバラードやポップな歌もの曲はほとんどやらず、主にゴリ押しファンク曲を中心に組まれた攻めの構成だったが、それでも笑いと感動をしっかり盛り込み、初めて観に来た人と前からのファンとを一体にして楽しませたあたり、20年バンドならではの底力と凄みを見せつけられた思いだった。まさに大阪が誇るキング・オブ・ライブ。未だ彼らのライブを体感してない人は、次回こそ足を運ぶべし。

取材・文●内本順一
写真●Tsuneo Koga

ザ・たこさん 結成20周年&ニュー・アルバム『タコスペース』発売記念ライブ
ザ・たこさん
ゲスト:オーサカ=モノレール、渡辺祐(DJ)、グレート義太夫(ギター)、宮藤官九郎(ギター)、田中星児(歌)。
10月2日(水) 渋谷クラブクアトロ

<ザ・たこさんワンマンライブ「元祖!ザ・タコサンアワー」東京編>
日程:2013年12月27日(金)
会場:下北沢・mona records
価格:前売2000円、当日2300円(共にドリンク代別途)
時間:開場19:00、開演19:30
11月10日よりmona recordsにて予約受付開始
http://www.mona-records.com/

<ザ・たこさんワンマンライブ「元祖!ザ・タコサンアワー」大阪編>
日程:2013年12月28日(土)
会場:十三・CLUB WATER
価格:投げ銭
時間:未定
http://www4.ocn.ne.jp/~c.water/

◆ザ・たこさんオフィシャルサイト
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