【ライヴレポート】ヴァイオリニスト高嶋ちさ子、世界文化遺産・上賀茂神社で幻想的なコンサートを開催

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ヴァイオリニスト・高嶋ちさ子が世界文化遺産・上賀茂神社でコンサート開催を開催。巫女のような幻想的な姿を披露した。

ライトアップされた国の重要文化財「細殿」に並ぶ、青いドレスと白いドレスの「高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト」が、まるで巫女のようで実に幻想的だ。

「古都京都の文化財」として、境内全域が世界文化遺産に登録されている上賀茂神社(正式名:賀茂別雷神社=かもわけいかづちじんじゃ)。

秋の京都にしては、まだ異例の暑さがのこる10月5日。恒例の「JR東海 都のかなで」コンサートが、高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニストが出演して行なわれた。旧称の「京都 観月の夕べコンサート by JR東海」を含めると今年で23回目の開催という、歴史あるコンサートだ。

あいにくの曇天で月影こそなかったが、出演者たちの日頃の行ないか、雨天中止も心配された雨の予報を吹き飛ばして、夕方と夜の2公演とも無事に開催された。

同社の宮司・田中安比呂さんの挨拶と、聴衆に向けてのお祓いのあと「パッヘルベルのカノン」で、コンサートが幕を開ける。高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニストは、9月から始まった全国29箇所を巡るツアー中ということもあり、息もぴったり。

「神社で演奏するのはもちろん、上賀茂神社を訪れたのも初めて。自然に囲まれた、歴史ある佇まいに、品格を感じました」という高嶋。この日は約1時間のプログラムで、もともとMCは少なめにセットされていたようだが、「やはり空気を読まないといけませんよね」と言うとおり、普段の毒舌系おもしろトークは封印。それでも、「私もお祓いしていただいて、邪気や毒気が抜けて、聖母のような演奏ができるはずです」と、観客の笑いを取りながら、9月にリリースされた新譜『ロマンティック・メロディーズ~マイ・ベスト・クラシックス』にも収録されている、シューベルトとグノーの2つの「アヴェ・マリア」につないでゆく。

続けてCDにも収録されている「歌の翼に」の他、「ラ・カンパネラ」「2つのヴィオリンのための協奏曲」(バッハ)、「シャコンヌ」など、緩急が楽しめる多彩なプログラムがつづく。貴重な世界遺産でのコンサートで、高嶋を中心に選曲された。ただ一曲、「ジブリ・メドレー」は主催者側からのリクエストで新たにアレンジしたものである。

高嶋が携えるのは、この日も愛器ストラディヴァリウス。1736年製の愛称「ルーシー」だ。「ヴァイオリンは湿度に影響されやすいので、雨の場合を考えて、全員サブの楽器で弾こうかと考えていたのですが、リハーサルしてみたら、どうにも音が鳴らない。それに、神社の創建が、ヴァイオリンよりずっと古い飛鳥時代と聞いて、これは出し惜しみしている場合ではないなと、みんな自分の楽器で弾くことに決めました。そうしたら、本番は湿気の少ない快適なお天気。やっぱり神さまが降りてくださるんでしょうね」と話すと、会場からは大きな拍手が湧き起こる。

その「ルーシー」の艶やかな響きも美しい「タイスの瞑想曲」、弾むような「チャルダーシュ」(モンティ)で本プログラム終了。アンコールにピアソラの「リベルタンゴ」が告げられると、「おーっ」とどよめく人びとも。切れのあるスタイリッシュなプレイが、熱い拍手を呼んだ。


会場の厳粛な空気がそうさせるのか、約1,000席の客席を埋めた聴衆が、微動だにせず演奏に聴き入っていたのは、ややもすると、ざわざわとラフな雰囲気に流れがちな野外コンサートとはひと味ちがうところ。とはいえ、屋外ステージはやはり開放感があって気持ちいい。しかも世界遺産! クラシックの場合、PAによる音響を気にする向きもあるかもしれないが、欧米では、気軽にクラシック音楽を楽しむ場として、野外コンサートは少なくない。今後こうした機会がもっと増えるとうれしい。

また、9月13日から始まった>高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニストロマンティック・メロディーズ~マイ・ベスト・クラシックス・全国ツアー>の中で、2011年に台風で被災したフィリピンの50名の子ども達を、チャイルド・ファンド・ジャパンのスポンサーシップ・プログラムにより支援するため、各会場にて募金活動を行っている。募金目標は480万円。3年後に、現地フィリピンにてコンサートをひらく事を目標としており、コンサートツアーは、12月22日まで全国各地で行われる。

文●宮本 明

『ロマンティック・メロディーズ~マイ・ベスト・クラシックス』
COCQ-85022 ¥2,940(tax in)
1.エストレリータ(作曲:Manuel Ponce)
2.ケルトの歌(作曲:Bill Bridges)
3.カフェミュージックより第1楽章(作曲:Paul Schoenfield)
4.アヴェ・マリア(作曲:Franz Schubert)
5.アヴェ・マリア(作曲:Johann Sebastian Bach,Charles Francois Gounod)
6.子守歌(作曲:Johannes Brahms)
7.ラシーヌ讃歌(作曲:Gabriel Faure)
8.亜麻色の髪の乙女(作曲:Claude Debussy)
9.ロマンス(作曲:Francois Bazin)
10.歌の翼に(作曲:Felix Mendelssohn)
11.Blue Forest(作曲:高嶋ちさ子)
12.リベルタンゴ(作曲:Astor Piazzolla)
13.ブラジル風バッハ第5番 から 「アリア」(作曲:Heitor Villa=Lobos)
14.前奏曲とアレグロ(作曲:Fritz Kreisler)

<高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト ロマンティック・メロディーズ~マイ・ベスト・クラシックス>
10月12日(土) 茨城 鹿嶋勤労文化会館
10月13日(日) 東京 秋川きららホール
10月14日(月・祝) 愛知 愛知県日進市民会館
10月17日(木) 茨城 茨城県立県民文化センター
10月19日(土) 岡山 高梁総合文化会館
10月23日(水) 茨城 茨城県立県民文化センター
10月26日(土) 大阪 ザ・シンフォニーホール
10月27日(日) 東京 かつしかシンフォニーヒルズ
11月15日(金) 北海道 札幌コンサートホールKitara大ホール
11月17日(日) 埼玉 深谷市民文化会館
11月23日(土) 神奈川 平塚市中央公民館
11月24日(日) 宮城 仙台市民会館
12月7日(土) 三重 三重県亀山市文化会館
12月8日(日) 京都 宇治市文化センター大ホール
12月12日(木) 静岡 三島市民文化会館
12月14日(土) 福岡 福岡国際会議場
12月17日(火) 東京 サントリーホール
12月21日(土) 和歌山 新宮市市民会館
12月22日(日) 愛知 愛知県芸術劇場コンサートホール

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