【ライヴレポート】10-FEET主催イベント<京都大作戦>、誰もが忘れることのできないパンクロックのミラクルが起きまくった2日間
■<京都大作戦>第二日目
前日を遥かに越える酷暑となった2日目。この日も朝から入場ゲートでメンバー3人が挨拶し、来場したファンへ感謝の気持ちを伝える(毎年恒例!)。そしてステージではこちらも恒例の開演前にラジオ体操で準備万端に、と思いきや早々にサプライズが! 前日に出演していたMAN WITH A MISSIONもステージで一緒にラジオ体操。そして開演のカウントダウンを前に、TAKUMAが集まった2万人の参加者に感謝の言葉を伝える。前日のステージ終了後、積極的なゴミの自主回収をお願いしていたのだが、TAKUMAの思いをしっかりと受け止めた参加者により会場にはゴミがゼロの状態だったのだ。大勢の人間が集まる会場でゴミがひとつもない。悲しいことだが、これは全国に数ある音楽フェスの中で奇跡と言えるくらいすごいことなのだ。しかも会場のゴミ箱がいっぱいだったからと自宅や宿に持ち帰り処分する参加者もいたとか。そんな素晴らしいイベントをただの音楽イベントではなく「みんなの遊び場」と呼ぶTAKUMA、この日の会場もそんな遊び場で思いっきり遊ぶアーティスト、オーディエンスが集まった。
▲SiM
▲UZUMAKI
▲東京スカパラダイスオーケストラ
▲ROTTENGRAFFTY
▲サンボマスター
▲NAMBA69
▲Ken Yokoyama
2番手、UZUMAKIが「俺らを使って遊んでえぇで」とツインボーカルのラップメタルでオーディエンスと一緒になってステージを楽しむ。TAKUMAと共に制作したという「Extint Freedom」でステージを飛び降り、客席へダイブをキメこむ。そのままラスト「What’s up」まで、豪快なメタルサウンドでバンド名と同じく渦巻きサークルを作り会場を盛り上げた。
白スーツでビシっと決め、うだるような暑さもなんのその! 照りつける太陽を味方にし、東京スカパラダイスオーケストラは大人の魅力溢れるご機嫌なスカサウンドで会場を汗だくのダンスホールに変えてみせた。TAKUMAも堪らず踊りだした「DOWN BEAT STOMP」、セクシーで暴れん坊な「ルパン三世のテーマ‘78」、心躍るホーンの音色がオーディエンスのテンションを底上げしていく。
この日の「牛若ノ舞台」は若手もベテランも揃い、ジャンル様々な京都大作戦的“推しバン”が集まった。THE SKIPPERS、LABRET、HAKAIHAYABUSA、SLANG、G-FREAK FACTORY、SCOOBIE DO、SHANK。ハードコアからメロコア、ファンクにパンク、極上のサウンドで楽しませてくれる。SCOOBIE DOのコヤマが伝える「好きなやり方で楽しんで」「七夕よりもロマンティックなロックンロールで人間止めよ~ぜ!」、この言葉のままに、思い思いに楽しむオーディエンスの姿は10-FEETが望んだ“みんなの遊び場”そのものだ。
10-FEETとは同郷で昔から仲の良いROTTENGRAFFTY、1曲目「零戦SOUNDSYSTEM」からギターのKAZUOMIは気合が溢れて速攻でダイブをしてみせた! さらにMAN WITH A MISSION・Tokyo Tanakaがガウガウ踊り、HEY SMITH・Iori、満がホーンで煽り、TAKUMAがギターで乱入と豪華メンツが入り乱れる。京都リスペクト!な「響く都」では、N∀OKIとファンの生の声同士の張り合いで気合を見せる。夏を加速させるような勢いある楽曲陣でファンの気持ちをひとつにまとめあげた。
イベントも中盤、サンボマスターが“ミラクル”を起こすべく「世界を変えさせておくれよ」から、言うことなしのど真ん中直球ロックンロールで一途な思いを叫びまくった。故郷・東北への思いを込めた「I love you&I need you ふくしま」では会場に東北の文字が描かれた日本旗が揺れる。バンドとオーディエンス、互いの力で支えあって作り上げられるサンボの音楽、まっすぐな思いが音に乗るだけでこれでもかと心熱くなる。体の水分を全部吹き飛ばすような熱量を持って進んだ「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」「できっこないをやらなくちゃ」、心も体も一緒になって盛り上がった。
リハの時点でベース音が暴れまくり、その期待を大きく超える痛快なまでのパンクロックではしゃぎまわったNAMBA69。3ピース構成となって2年ぶりの登場となった今回、“あの丘”を超えて宇治市全体に広がるんじゃないかってくらいのシンプルにかつ強靭なサウンドを打ち込む。「FIGHT IT OUT」、「PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT」とスピードアップしたメロがギッラギラの西日とともに熱さに追い討ちをかける。そしてお約束、ハイスタ「STAY GOLD」でトドメを刺し、これから出てくるあのバンドに最高のテンションのままバトンを繋ぐ。
意外に京都大作戦初出演のKen Yokoyamaは「甘いんだか辛いんだか、わかんねー音楽聴いてんじゃないんだろうな~?」と、ニヤリとしながら切れ味抜群のパンクロックで会場を沸かす。ステージに“東北ライブハウス大作戦”の幟を立て、日本の国旗を背負い歌う「This Is Your Land」、その土地に生きる意味や教え、“今”を考えて生きることの大切さを強く歌う。オーディエンスに思いや歌を叫ばせようと何度もマイクを会場へ投げ込み、「マナー違反だけど、いいよな」なんてトボケつつ予定外の楽曲も披露。オーディエンスと一緒になって遊び、「来年も再来年も予定空けて待ってる」とイベントの楽しさにハマったらしい横山。ラスト「Let The Beat Carry On」ではステージを降りてオーディエンスと同じ目線に立ち、東北へ感情や人、もの、音楽を繋げたいと確固たる気持ちを音に乗せ全10曲のステージを一気に突き進めていった。
陽がとっぷりと沈み、2日間のイベントを締める最後のステージが始まった。出演者から紡いだ思い、オーディエンスはもちろん、イベントに尽力してくれたスタッフ、ボランティアスタッフ、友人や家族への感謝の気持ち。“みんなの遊び場”に集結した人たちに思いを返すべく、全力のライヴで魅せた10-FEETのステージは天の川以上に輝いていた。
▲10-FEET
そして今年のツアー中にTAKUMAの愛犬が亡くなったことを初めてファンに話した。鬱を患った時に優しく支えてくれた愛犬の存在、そして色んなことが起きる毎日、わからんことがいっぱいで、平和なことや日々のこと、たくさんのことが起こるけれど明日からの毎日、勇気を持って進んでいこうと「シガードッグ」でゆっくりと切々と思いを歌い上げる。じわりと染みる空気から一転、「RIVER」で思いっきりジャンプしてはしゃぐ。前日の携帯の光ではなく、まさかの靴を片手に掲げようと提案するTAKUMA。最初は戸惑いながらもノリノリで靴を脱ぎ、頭上高く掲げるオーディエンスたち。その景色はもはや圧巻なのかもわからないし、何より臭そうだ(笑)! そして定番のタオルの代わりに大量の靴が空高く舞う。京都大作戦用にアレンジする楽曲も多く、もう体は揺れっぱなし、顔は笑いっぱなしであっという間に本編が終わってしまった。
そしてアンコールでミラクルが起きた。「super stomper」が終わり、次に演奏されたのが「STAY GOLD」! メンバー全員が影響を受け、コピーバンドまで組むほど大好きなハイスタへのリスペクト、そして感謝の気持ちを込めたカバーに会場が拳を突き上げ喜びの雄叫びを上げる…と、そこに難波と横山の本人が登場。しかもメンバーからギターとベースを受け取り、再度演奏を始める。誰も予想していなかったまさかの展開に楽器を持たないTAKUMAとNAOKIはオーディエンスと同じように、純粋なロックキッズに戻って2人でサークルを作りはしゃぎ回る。
2人からのドデカイサプライズにマジ泣きするTAKUMA。「オレのギター、あんな音出んねや…」「生きてたら…すげーこと起こる! 死んだらアカン!」と、まるで自身に言い聞かすように叫び、ラスト「CHERRY BLOSSOM」に。「1年に1度の桜、あと何回見る?」、命の儚さを知っているからこそ今輝く命を守りたい。深深と染みこむリリックに涙するも、楽しかった2日間に花を添えるように高く高く舞う無数のタオルは圧巻の風景だった。
終演後、再びステージで挨拶をするメンバー。ひたすら「スッゲー!!!」ばかり言い合っていたらしいが、その気持ちはこのフェスに参加した全員が思っているだろう。帰途につくバスの中、参加者たちは今年の感想を言い合いながらもうすでに来年の作戦を練っていた。
取材・文●黒田 奈保子
撮影●HayachiN
撮影●宮崎まゆみ(UZUMAKIのみ)
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