まきちゃんぐ、5周年ベスト盤取材で潮干狩りトークに脱線
2008年のデビューから4年間、5周年を迎えるまきちゃんぐの軌跡をたどるシングル・ベスト。『Single Collection2008-2011』は、愛を求める女の深い情念の語り部であり、類稀なメロディ・メイカーであり、愛らしく表情豊かなヴォーカリストであるまきちゃんぐの世界への、入口と核心を兼ねた最良の作品だ。カップリング曲や、新録音の中島みゆきのカヴァーも含め、強力な個性が生み出すせつない愛の世界は、数多い女性シンガー・ソングライターの中でもその存在感は圧倒的。CDをかけている間は時間の流れ方が変わってしまう、そう感じるほどに、いつまでも浸っていたい強い吸引力がここにはある。
◆まきちゃんぐ『Single Collection 2008-2011』試聴
◆まきちゃんぐ 全曲試聴
◆まきちゃんぐ ジャケット写真ギャラリー
――曲は自分の子供みたいなもの、というふうにたとえる人もいますけど、まきちゃんぐは自分の曲を、どんなふうに思ってます?
まきちゃんぐ:えー、どうなんだろう? 歌う時は自分のものだと思うけど、リリースすると自分のものではなくなってしまうので…。
――あ、そういう感じですか。
まきちゃんぐ:と、思ってます。だって、聴いてる人が感じることまで、制御できないじゃないですか? だから、渡してからはその人のものでもあるかなと思ってます。
――それは昔から、アマチュアの頃からそういう考え方だった?
まきちゃんぐ:なのかなー。“この曲を聴いてこう感じました”というのが、自分と全然違う、意図していないことを言われても、“あー、そうなんですか”って、それもうれしく思います。だから、あんまり考えたことがないんです。…私、デビューの時とか、それから2年ぐらいは、曲についてしゃべるのがすごくイヤで。
――あら。そうでしたか。
まきちゃんぐ:全然しゃべってなかったんですけど。でも私がトシをとったからなのか、最近は200倍ぐらいしゃべるようになって(笑)。
――どこかで、吹っ切れたんですかね。
まきちゃんぐ:なんか、人に渡る以上、それを説明する自分を許容できるようになったというか…うまく伝えられるようになったのかな。もともと曲は自分のために作っていたところがあって、誰かに何かを伝えたいとか、まったくなかったので。今もそれはあんまり変わらないんですけど、表現したいという気持ちで歌を作っていなかったので、雑誌でよくある「僕はこの曲でこういうことを伝えたくてこうなんです、わかってください」というのがなくて、しゃべれなかったんですよね。だけど今は、作った曲に対して解説できるようになったというか。
――なるほどー。じゃあ、今回こうやって歴代シングルをまとめたアルバムを出すことになって、どうですか。感想は?
まきちゃんぐ:そうだなー、“今じゃ書けない曲もたくさんあるな”と思います。当時じゃなきゃ、書けないだろうなって。
――たとえば?
まきちゃんぐ:たとえば「ハニー」もそうだし、初期の頃ですかね。「雨と傘と繋いだ手」もそうだし。特に最初の5~6曲あたりはそう思うし、逆に当時では今みたいな曲は書けないだろうなとも思います。
――それは主に歌詞の話で?
まきちゃんぐ:そうですね。
――基本的にラブソング、恋の歌、人を思う気持ちの歌が多いですけども。それは自然にそういうテーマが出てくるんですか。
まきちゃんぐ:そうですね。何かを思ったりすることが、そういう時が多いんじゃないですかね。そういう、あふれ出した思いが、どうしようもなく作品になることが多いと思うので。それが恋だったり、ものすごく落ちた時だったり、そういうものを私は書く傾向にあるようです(笑)。
――曲をずっと聴いていると、まきちゃんぐの恋愛観、人生観の変化が浮かび上がってくるように思えて…たとえば“私を好きって言ってよ”と連呼したり(「ハニー」)、“アタシは弱い弱い弱い”と強調したり(「煙」)、初期の曲には叫ぶような気持ちを叩きつけるようなものが多いなっていう気はします。それは確かに、今の作風とは変わってきてるなと思いますね。
まきちゃんぐ:うん。それはそうしようと思っていたわけではなくて、ただ単にトシを取ったからじゃないですか(笑)。
――逆に今は、大きな包容力を感じる曲が多いので。それはいいトシの取り方ですよ。
まきちゃんぐ:だといいんですけど。
――でもずっと、せつないですね。ハッピーハッピーっていうっていう曲はほとんどなくて、ずっとせつない曲ばかり。
まきちゃんぐ:なかなかね、ハッピーだけだと人生つまらないというか。完璧じゃないのが面白いかな、と思ってます。
――あと、言葉で言うと、“雨”が多いですね。それと“手”が多い。
まきちゃんぐ:そうですね。雨は…極端に出不精なので、雨の日は外に出ないし、家にいることが多いのと。あとは雨にはいろんな表情があるので、梅雨時みたいにずっとしとしと降り続く日もあれば、ざーっと降る日もあるし、カミナリを伴うものも、晴れながら降るのもあるし、題材にしやすいというか、思い出がつきやすいというのもあります。 “♪思い出はいつも雨~”(サザンオールスターズ「TSUNAMI」)というフレーズを聴いた時に、桑田さんも雨に何かを感じる人なんだなと思っていました。“私もそうです”って。
――あー、それはまきちゃんぐの歌を聴いた人もきっと、“私もそうです”って思ってると思いますよ。
まきちゃんぐ:あと、手は…てのひらってとても神経が敏感で、いろんなことをするじゃないですか。持ったり、触ったり、つかんだり、温度を感じ取ったり。そういう感じです。あ…ぜんっぜん、関係ない話していいですか? 今、すごい言いたい気持ちになったので。
――はい、どうぞ(笑)。
まきちゃんぐ:潮干狩りに行った時に、アサリを手で探してたら、一緒に行った人に“アサリは足の裏でぐりぐりしながら探すとすぐ見つかるよ”って言われたのを、今思い出しました(笑)。足の裏の神経のほうが、手よりも見つけやすいみたいです。アサリに関しては。…ごめんなさい(笑)。
――ためになりました(笑)。でも、そんなふうにまきちゃんぐの歌には、リスナーの思い出に引っ掛かるいろんな言葉があるんですよね。雨も手も、あとは太陽やひかり、星、夜とか、感情を象徴するようなワードが心に残るんですよね、自然界の。個人的な感じ方ですけど。
まきちゃんぐ:そういう物理的なものを言うインタビュアーさんもいるし、“強い”とか“弱い”という感覚的なワードが多いよねって言う人もいるし。その人によって全然違うんですよね。
――ドキッ。どこに感情移入するかは本当に人それぞれで…ああ、まきちゃんぐが最初に言ったみたいに、やっぱり曲を渡したらその人のものになるんだなって、自分で今納得しました。
まきちゃんぐ:そうなんです。その人の経験だとか、その時の気持ちによっても全然違うし。
――なるほどー。そして、新録音で、中島みゆきさんの「誕生」のカヴァーが入ってますけど、これは?
まきちゃんぐ:私が春まで所属していた事務所の大先輩というのが大きいんですけど。みゆきさんのコンサートを何度か見させていただいて…デビューまでは、みゆきさんの本当に有名な曲しか知らなくて。デビューしてからコンサートを見させてもらうようになって、“みゆきさんってすごい!”と。特に最初にコンサートに行った時に聴いた「誕生」が衝撃的すぎて、“なんて曲がこの世にあるんだ”と思って、鳥肌立ちまくりで、椅子に座ったまま動けなくて。そこからみゆきさんの曲をしこたま聴くんですけど、やっぱり「誕生」に戻ってくるんですよ。冒頭も大好きだし、“泣きながら生まれる子供のように、もいちど生まれるため泣いて来たのね”というところも大好きで、これは人類を救う曲だと私は思ってるんですけど。で、ライヴで何度か歌っていて、アンケートでも“音源化してほしい”という声がとても多かったので、大好きな大切な曲を今回のベストの中にあえて入れさせていただきました。
――この機会に、あらためて聴いていいですか? まきちゃんぐのルーツや、影響を受けたものについて。
まきちゃんぐ:それが…ないんです。普通の人の半分ぐらいしか、今まで音楽を聴いていないので。あえて出すとすれば、小6から中学にかけてゆずがものすごく好きで、それでギターのコードを覚えて、初めて曲を作ったのがきっかけと言えばきっかけです。
――ギターなんですね。ピアノじゃなく。
まきちゃんぐ:ピアノはずっと、クラシック・ピアノを習っていたんですよ。で、バンドは高校の時に始めて、ギター&ヴォーカルで、卒業する時に解散するんですけど、まだ歌いたいなーと思ったから、ピアノに戻って…あ、ルーツと言えば“みを”さんだ。今は“みをあわつばさ”というユニットで、岡山でピアノ弾き語りをされている方で、もうそれはそれは素敵なんです。私は女性ヴォーカルに対して、すごいと思うことがあんまりなくて…って、感じ悪いですけど(笑)。男の人のギターロックが好きなので、女性の音楽にあんまりピンとくることがなかったんですけど。みをさんは本当に素敵で、“みをさんのスタイルで行こう”と思ってピアノ弾き語りでやったのが始まりです。でもやっぱり…話が飛びますけど、今カラオケにハマッてて、週3ぐらいで行くんですけど、自分の選曲であらためて気づくことも多くて。当時はゆず、GLAY、T.M. Revolutionが好きで、女性ならCoccoさん、鬼塚ちひろさんとか、やっぱり詞が大事な人が多いなって思います。
――ああー、何かつながってる感じはします。詞にはメッセージや思いが強く入っていて、曲はどちらかといえばシンプルでメロディアスな感じ、というか。
まきちゃんぐ:やっぱり日本人はメロディアスな感じが好きだと思うし、私ももちろん、J-POPをずっと聴いてたんで、キャッチーなメロディが好きだし、そのほうがシンプルで歌詞も入りやすいし、というのはいつも気をつけています。
――この『Single Collection2008-2011』で、デビューからの一区切りというか、そういう気持ちはあります?
まきちゃんぐ:デビュー5年目で、再スタートの気持ちも込めてます。こんなに長くメジャーで歌を歌えるとは思ってなかったので…シュッと出てシュッと終わるかなと思ってたので(笑)。たくさんの人の前で歌える喜びを歌に変えて、“4年間ありがとうございました”と。5年目の抱負を込めてリリースします。
――そして5周年記念ライヴが7月にあります。
まきちゃんぐ:チェロとギターが弾ける伊藤ハルトシさんという方とずっと一緒にやってたんですけど、今回はちょっと変えまして。安藤裕子さんとやられている山本タカシさんと一緒に廻ります。このアルバムの中からほとんど演奏する予定なので、聴いて来ていただければより楽しめると思います。
――では最後に、リスナーの方へメッセージを。
まきちゃんぐ:今までありがとう、これからもよろしく、かな。アルバム写真のように聴いていただければと思います。
――今日はありがとうございました。うれしいインタビューでした。
まきちゃんぐ:ありがとうございました。最後に「アサリとは?」というウィキペディアを入れておいてください(笑)。
取材・文●宮本英夫
【5周年特設サイト】
「独断と偏見!貴方が選ぶ”ワタシノウタ”祭(まつり)」
http://www.vap.co.jp/makichang/form/index.cgi
●投票期間:6月6日~6月30日
●投票方法:応募フォームの投票ボタンをクリック!(好きな楽曲は何曲でも選べます笑)
発表方法:(1)7月1日タワーレコード秋葉原店インストアライブにて発表
(2)7月2日HPにて発表
特典:投票してくれた方にはもれなく、「5周年スペシャル待ち受け画像」プレゼント!(iPhone、スマホ用)
【2012年6月15日現在】
誕生 226票
光 183票
ハニー 165票
鋼の心 155票
愛と星 137票
TOTAL 3000票以上
New Album
『Single Collection 2008-2011』
VPCC-84183 ¥2,625(tax in)
1. ハニー (2008年ANB「恋愛百景」 エンディングテーマ)
2. ちぐさ
3. 煙 (2008年日本テレビ系アニメ「秘密(トップシークレット)~The Revelation~」 エンディングテーマ)
4. 雨と傘と繋いだ手
5. 鋼の心
(2008年映画「青い鳥」オープニング・テーマ)
6. からまる毛糸
7. 愛の雫
(2009年MBS毎日放送 6月のおいしい歌/第25回国民文化祭・おかやま2010イメージソング)
8. レイン
9. サプリ
10. 泣きたい夜に
11. 鼓動 (2010年日本テレビ系「歌スタ!!」"お題歌“)
12. 罪の果実
13. 愛と星
(2011年日本テレビ系ドラマ 「デカワンコ」主題歌)
14. 誕生(作詞作曲:中島みゆき、新録)
15. 誰が為に鐘は鳴る
(2011年映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六」ラブ・テーマ)
<インストア・ライヴ>
6月24日(日)阪急西宮ガーデンズ 4Fスカイガーデン 16:00~
7月1日(日)タワーレコード秋葉原店 イベントスペース 16:00~
<まきちゃんぐ5周年記念ライヴ“おめでとう、自分”>
●7月5日(木)大阪 心斎橋JANUS
開場/開演:19:00/19:30
料金:前売り¥4,000(税込)※別途ドリンク代¥500
(問)心斎橋JANUS 06-6214-7255
●7月6日(金)名古屋 広小路ヤマハホール
開場/開演:18:30/19:00
料金:前売り¥4,000(税込)
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100(10:00~18:00)
●7月7日(土)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
開場/開演:17:30/18:00
料金:前売り¥4,000(税込)※別途ドリンク代¥500
(問)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM 086-233-9014
●7月13日(金)東京 南青山MANDALA
開場/開演:18:30/19:30
料金:前売り¥4,500(税込)※1ドリンク付き
(問)南青山MANDALA 03-5474-0411
◆オフィシャル・サイト
◆オフィシャルブログ だって女に生まれたの
◆Youtubeちゃんねるまきちゃんぐ
◆オフィシャルTwitter @makichang_info