増田勇一が選ぶ『3月の10枚』
桜の蕾もほころびつつある今日この頃。4月がやってくる前に「3月に聴きまくった10枚」をご紹介しておきたい。今回も国内外問わず豊作だった。
■BRUCE SPRINGSTEEN『WRECKING BALL』
■THE MARS VOLTA『NOCTOURNIQUET』
■SIGH『IN SOMNIPHOBIA』
■VINTAGE TROUBLE『THE BOMB SHELTER SESSIONS』
■THE SLUT BANKS『CYCRO』
■JAMES IHA『LOOK TO THE SKY』
■J『ON FIRE』
■DEAD END『DREAM DEMON ANALYZER』
■摩天楼オペラ『JUSTICE』
■SHINEDOWN『AMARYLLIS』
ブルース・スプリングスティーンの新作についてはあちこちで取り沙汰されているけども、まさに21世紀のプロテスト・ソングと呼ぶべきものが詰まった濃厚な1枚。音楽が社会において果たし得る役割といったものについても改めて考えさせられるが、敢えて暴言を吐かせてもらうならば「歌詞なんかどうでもいい」という人たちが聴いてもきっと心を揺さぶられるはずの何かがここにはあるはずだ。正直、僕自身にとっても80年代以降の彼の作品のなかでいちばんのフェイヴァリット・アルバムになりそうだ。
よりプリミティヴなアプローチへと移行したことで元来の特異さがより際立つ結果となったMARS VOLTAの新作もある意味、究極的といえるかもしれない。元SMASHING PUMPKINSのジェームス・イハによる14年ぶりのソロ新作は、この季節によく似合う色調と浮遊感が心地好い。この作品で彼に興味を持った方には、1998年にリリースされた最初のソロ作、『LET IT COME DOWN』にもぜひ触れてみて欲しい。
過去3作のアルバム・セールス総計が800万枚を超えるというSHINEDOWNの今作は、これまで以上にこのバンドのパワー感がダイレクトに伝わってくる力作。ここ日本での認知度向上にも期待したいところだ。エモーショナルでグルーヴ満載という意味においては、輸入盤で手に入れたVINTAGE TROUBLEのそれも絶品。実は早くも『サマーソニック2012』への出演が決まっていたりもする、英国で人気上昇中のL.A.出身4人組。このバンドには今から注目しておいて損はないだろう。
上記10枚のなかに含まれているもう1枚の輸入盤がSIGHの新作。彼らは正真正銘、日本のバンドだが、英国のキャンドルライト・レコーズから発売されているこの作品が国内盤としてリリースされる予定は現状ない。そうした事情はともかく、基本的にはブラック・メタルとカテゴライズされているこのバンドの美学の奥行きの深さには、非常に惹かれるものがある。実は最近、その首謀者である川嶋未来とコンタクトをとることができ、今作についてのメール・インタビューめいたものを行なったので、その記事もごく近いうちにお届けできる予定だ。
3月は国内アーティストの新作も花ざかりだった。毒気とウタゴコロと爆裂感とポップネスのバランスが最高なTHE SLUT BANKSによる12年ぶりの新作は、いわゆるインディーズからのリリースだが、その説得力については当然ながら超メジャー級。彼らの過去を知らない人たちにも手に取って欲しい作品だ。
DEAD ENDの新作は、前作以上に各メンバーの底力を感じさせると同時に、めずらしくコーラスを多用している点にも注目したい。まもなく来日するARCH ENEMYのマイケル・アモットがYOUのギターを高評価している事実を知っている読者もいるかと思うが、すでにマイケルは今作についてもツイッター上で絶賛の声をあげていたりする。
ソロ活動開始から15年、ずっとブレることなく我が道を歩み続けてきたJの新作は、良い意味で“相変わらず”なのだが、今作での楽曲の充実ぶりについては特筆すべきだろう。彼については骨太なロック野郎というイメージが強いはずだが、実はポップ・ソングの作り手としても優秀な一面を持ち合わせている。同時にこの作品は、とことん考え抜かれた部分と、あくまでノリや空気感重視の部分とが絶妙のバランスで噛み合っているからこそ成立するものだともいえるはずだ。
そしてもう1枚、国内アーティストから選出したのが摩天楼オペラのメジャー1stアルバム。“へヴィ・メタルとヴィジュアル系の融合”と形容してしまうと、そこで答えが出てしまう気もするが、どちらの要素もないがしろにされていないからこそ、これほどの説得力が伴う結果となったのだろう。僕にとってこの音楽は「美意識の伴った、日本のバンドにしか創造し得ないヘヴィ・メタル」である。
そしてこれら以外にも“10選入り”していて当然の作品がいくつもあった。UNISONIC、OVERKILL、メイシー・グレイによるカヴァー集、IRON MAIDENの2枚組ライヴ、SOULFLY、MESHUGGAH、BARREN EARTH……などなど。輸入盤ではCORROSION OF CONFORMITYのセルフ・タイトル作も素晴らしかった。また、同様に輸入盤で手に入れたMINISTRYの『RELAPSE』は4月に日本盤のリリースが決まっているようなので今回は選外とした。また、あくまで“アルバム10作品”という前提での選出となっているので、LUNA SEAのシングル『THE ONE-crash to create-』についても対象外としたが、この3月にもっともよく聴いた1曲であることは言うまでもない。
というわけで、春本番の4月も新譜が豊作でありますように。
増田勇一
■BRUCE SPRINGSTEEN『WRECKING BALL』
■THE MARS VOLTA『NOCTOURNIQUET』
■SIGH『IN SOMNIPHOBIA』
■VINTAGE TROUBLE『THE BOMB SHELTER SESSIONS』
■THE SLUT BANKS『CYCRO』
■JAMES IHA『LOOK TO THE SKY』
■J『ON FIRE』
■DEAD END『DREAM DEMON ANALYZER』
■摩天楼オペラ『JUSTICE』
■SHINEDOWN『AMARYLLIS』
ブルース・スプリングスティーンの新作についてはあちこちで取り沙汰されているけども、まさに21世紀のプロテスト・ソングと呼ぶべきものが詰まった濃厚な1枚。音楽が社会において果たし得る役割といったものについても改めて考えさせられるが、敢えて暴言を吐かせてもらうならば「歌詞なんかどうでもいい」という人たちが聴いてもきっと心を揺さぶられるはずの何かがここにはあるはずだ。正直、僕自身にとっても80年代以降の彼の作品のなかでいちばんのフェイヴァリット・アルバムになりそうだ。
よりプリミティヴなアプローチへと移行したことで元来の特異さがより際立つ結果となったMARS VOLTAの新作もある意味、究極的といえるかもしれない。元SMASHING PUMPKINSのジェームス・イハによる14年ぶりのソロ新作は、この季節によく似合う色調と浮遊感が心地好い。この作品で彼に興味を持った方には、1998年にリリースされた最初のソロ作、『LET IT COME DOWN』にもぜひ触れてみて欲しい。
過去3作のアルバム・セールス総計が800万枚を超えるというSHINEDOWNの今作は、これまで以上にこのバンドのパワー感がダイレクトに伝わってくる力作。ここ日本での認知度向上にも期待したいところだ。エモーショナルでグルーヴ満載という意味においては、輸入盤で手に入れたVINTAGE TROUBLEのそれも絶品。実は早くも『サマーソニック2012』への出演が決まっていたりもする、英国で人気上昇中のL.A.出身4人組。このバンドには今から注目しておいて損はないだろう。
上記10枚のなかに含まれているもう1枚の輸入盤がSIGHの新作。彼らは正真正銘、日本のバンドだが、英国のキャンドルライト・レコーズから発売されているこの作品が国内盤としてリリースされる予定は現状ない。そうした事情はともかく、基本的にはブラック・メタルとカテゴライズされているこのバンドの美学の奥行きの深さには、非常に惹かれるものがある。実は最近、その首謀者である川嶋未来とコンタクトをとることができ、今作についてのメール・インタビューめいたものを行なったので、その記事もごく近いうちにお届けできる予定だ。
3月は国内アーティストの新作も花ざかりだった。毒気とウタゴコロと爆裂感とポップネスのバランスが最高なTHE SLUT BANKSによる12年ぶりの新作は、いわゆるインディーズからのリリースだが、その説得力については当然ながら超メジャー級。彼らの過去を知らない人たちにも手に取って欲しい作品だ。
DEAD ENDの新作は、前作以上に各メンバーの底力を感じさせると同時に、めずらしくコーラスを多用している点にも注目したい。まもなく来日するARCH ENEMYのマイケル・アモットがYOUのギターを高評価している事実を知っている読者もいるかと思うが、すでにマイケルは今作についてもツイッター上で絶賛の声をあげていたりする。
ソロ活動開始から15年、ずっとブレることなく我が道を歩み続けてきたJの新作は、良い意味で“相変わらず”なのだが、今作での楽曲の充実ぶりについては特筆すべきだろう。彼については骨太なロック野郎というイメージが強いはずだが、実はポップ・ソングの作り手としても優秀な一面を持ち合わせている。同時にこの作品は、とことん考え抜かれた部分と、あくまでノリや空気感重視の部分とが絶妙のバランスで噛み合っているからこそ成立するものだともいえるはずだ。
そしてもう1枚、国内アーティストから選出したのが摩天楼オペラのメジャー1stアルバム。“へヴィ・メタルとヴィジュアル系の融合”と形容してしまうと、そこで答えが出てしまう気もするが、どちらの要素もないがしろにされていないからこそ、これほどの説得力が伴う結果となったのだろう。僕にとってこの音楽は「美意識の伴った、日本のバンドにしか創造し得ないヘヴィ・メタル」である。
そしてこれら以外にも“10選入り”していて当然の作品がいくつもあった。UNISONIC、OVERKILL、メイシー・グレイによるカヴァー集、IRON MAIDENの2枚組ライヴ、SOULFLY、MESHUGGAH、BARREN EARTH……などなど。輸入盤ではCORROSION OF CONFORMITYのセルフ・タイトル作も素晴らしかった。また、同様に輸入盤で手に入れたMINISTRYの『RELAPSE』は4月に日本盤のリリースが決まっているようなので今回は選外とした。また、あくまで“アルバム10作品”という前提での選出となっているので、LUNA SEAのシングル『THE ONE-crash to create-』についても対象外としたが、この3月にもっともよく聴いた1曲であることは言うまでもない。
というわけで、春本番の4月も新譜が豊作でありますように。
増田勇一
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