「WORLD SONIC NEWS VOL.25」KTタンストール「新作は原始的なアルバム、野生に戻った気分よ」

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今回ご紹介するのは、日本でも熱狂的なファンが多い女性ロッカー、KTタンストールをフィーチャーします。

◆KTタンストールI画像

スコットランド生まれのKTは、10代の頃に音楽活動を始め、2005年にアルバム『アイ・トゥ・ザ・テレスコープ』でデビュー。ギターのボディをたたく音やタンバリンの音を、演奏する前に録音し、それをリズムにパフォーマンスする独特なスタイルが評判となり、大ブレイク。

2007年発表のセカンド・アルバム『ドラスティック・ファンタスティック』はUKチャート初登場3位を記録。そして、2010年の秋にサード・アルバム『タイガー・スーツ』をリリース。そのアルバムをひっさげ、8月下旬から9月にかけて待望のジャパン・ツアーを行ないました。渋谷のO-EASTで見たライヴは、KTとバック・バンドの息もぴったりの、ノリノリのライヴ・パフォーマンス。超満員のお客さんは大満足の様子でした。

それではそんなKTタンストールのインタビュー、お届けしましょう。最新作『タイガー・スーツ』はダンス・ミュージック的なアプローチになっています。それをKTは“ネイチャー・テクノ”と表現していますが、それがアルバムのコンセプトだったのか聞いてみました。

「アルバム全体をそうするつもりはなかったの。バラードも数曲入っているし。テンポの速いものだけではないわ。でも、ネイチャー・テクノというコンセプトはとても役にたったわ。自分がやろうとしていることにずっと集中できたから。誠実に自然な楽器の音を使うこと、ダンス・ミュージックを作ることに、すごく興奮したわ。だけど、ドラム・マシーンではなくドラム・キットを使っているの。『タイガー・スーツ』はとっても原始的なアルバムだと思う。森の中に入っていって、野生に戻った気分になるような。」

彼女は自宅に太陽光発電の設備を備えるなど、環境意識の高いアーティストとしても知られています。そんなKTはニュー・アルバムを制作する前に長期間のオフを取り、チリやペルー、ガラパゴス島、そしてインドなどを旅したほか、船に乗って、気候変動の現場グリーンランドを見てまわるツアーに参加したそうです。このツアーにはいろいろなアーティストたちが参加していたそうですが、どんな旅だったのか、話していただきました。

「“ケープ・フェアウェル”というチャリティだったの。みんな、自分たちのことを文化工作員って呼んでいたわ。どんなタイプのアーティストも文化的な創作をする人たちだから。気候変動のまっただ中に身をおいて、科学者の言葉からでもなく、本を読む訳でもなくそこにいたのよ。とても興味深かった。そのツアーに坂本龍一さんも参加していて、彼は氷山が溶ける音を録音していたわ。それを船のみんなに聴かせてくれたの。今まで聴いたことがないような美しいサウンドだった。そしてすばらしく、恐ろしく、悲しいサウンドだったわ。だって氷山が溶ける音なんて聴くべき音ではないし、氷山は凍るものでしょ。すごく心に響いたわ」

KTも、ツアーに参加したほかのアーティストも、坂本龍一さんに会えて、みんな興奮していたそうです。このときの船旅で生まれた曲が新作に収録されています。「ウマナック・ソング」と「ディフィカルティー」の2曲です。ぜひチェックしてください。今回のジャパン・ツアーでも演奏されました。

KTはライヴのMCでも、東日本大震災の被災者に向けたコメントを発していましたが、改めて、メッセージをいただきました。

「本当に私たちの人生において重大なニュースだった。この国で起きたことに無関心ではいられないわ。他の国のことが、自分の国とは全く違う世界のように感じたりすることもあるけど、日本はヨーロッパにいる私でも容易に何が起きたのか想像ができたのよ。たくさんの人々が亡くなって…。いつでもあなた達のことを思っている。だから、日本に呼んでくれたこと、こうして来ることができたことに感謝しているし、少しでも日本で起きた悲しい出来事をやわらげられたらと思っているの。こうしてここへ来ることでね」

ありがとう、KT!あなたのような環境派のアーティストに会えて、光栄でした。また、日本に戻って来て、素晴らしいパフォーマンスを見せてください。待ってるぜ~~~~!

text by kenji kurihara:UNITED PROJECTS

『タイガー・スーツ』
TOCP-66965 2,200円

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