椎名慶治、全身全霊体当たり

ポスト
SRUFACE解散から約1年、ミニ・アルバム『I』、1stフル・アルバム『RABBIT-MAN』と作品を連発し、兎年の年男ぶりを体現していた椎名慶治が、初のワンマンツアーを敢行。ファイナルとなった渋谷O-EASTは、開演前から手拍子と歓声で沸き返っていた。

◆椎名慶治画像

『RABBIT-MAN』冒頭の収録曲がSEとして流れてくると、いよいよソロの椎名と対面かと誰もが一瞬身構えた。その瞬間始まったのは、なんと「それじゃあバイバイ」。大ヒットとなったSURFACEのデビュー曲だ。裏をかくのが大好きな椎名らしいツカミ。後にMCで「やっぱ原点だなと思って」と1曲目にやった理由を語ったが、つまり彼は、“SURFACEがみんなに愛されてると今でも感じてる。俺も愛してる。あの時の俺もソロの俺もみんな同じ俺”ということを、まず示したかったのだろう。過去否定を少なからず懸念していた観客は、これで一気に安心し、屈託なく椎名慶治の世界になだれこんだ。

とにかく生音が太くて、心地いい。山口寛雄(B)、友森昭一(G)、佐治宣英(Dr)、磯貝サイモン(Key、G、Cho)ら強者たちによる冴えたプレイに、椎名もどんどん熱くなる。中盤「バレちゃいけない」「Pussy Cat」「CALL」の流れでは、大人の粋もアピール。特に新曲「Pussy~」は、アップめの4ビートで実にオシャレ。新たな魅力に満ちていた。

後半には、互いにフィーチャリングしたり、されたりの交流が続いているZEROが登場。キレのいいラップにヒップホップ・マナーでからむ椎名が新鮮だった。支えてくれている人々への感謝をこめた本編ラスト「取り調べマイセルフ」では、駆け抜けてきた1年を思いホッとしたのか、気づけば椎名は男泣き。代わりに観客は大合唱でエールを送った。

アンコール、震災への募金活動に触れた後、「頑張れなんていらないと思う。もうすでにみんな頑張ってるから。俺がそう認めるよ。だから、これまでと同じように暮らしていってください」と優しく語りかかけた椎名。その思いをまんまこめた「よーいドン」で、初ソロ・ライブを力強く、爽快に締めくくった。

歌声も感情もまさに全身全霊体当たり。その人間くささに、また多くの人が魅了されたに違いない。
text by miho fujii
この記事をポスト

この記事の関連情報